財産権は、これを侵してはならない。 2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。 3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。
1. 29条の三層構造と3項の位置づけ
2. 損失補償の3要件
① 公共のために用いる(公共目的性)
② 特別の犠牲(内在的制約との区別)
③ 正当な補償(完全補償か相当補償か)
3. 三大判例
4. 完全補償と相当補償の使い分け
5. 補償規定欠缺の処理
6. 答案の論証パターン
7. よくある落とし穴
落とし穴①:補償規定欠缺を直ちに違憲と結論する
落とし穴②:完全補償説と相当補償説を事案無視で選択する
落とし穴③:特別の犠牲の判定を形式的要件だけで完結させる
落とし穴④:ため池条例事件を「条例規制は常に補償不要」と読む
落とし穴⑤:29条2項と3項の切り分けを省略する
FAQ — よくある質問
Q. 損失補償と国家賠償はどう違いますか?
A.損失補償は適法な公権力行使によって生じた特別の犠牲を財産的に填補する制度(憲法29条3項)、国家賠償は違法な公権力行使による損害を賠償する制
Q. 「特別の犠牲」はどう判断しますか?
A.侵害行為の対象が特定の個人・集団に限られるか(形式的基準)と、侵害が財産権に内在する制約を超えて受忍限度を上回るか(実質的基準)を総合考慮して判断します。
判例・通説は実質的基準を重視し、規制の目的(消極目的か積極目的か)や侵害の程度から、内在的制約にとどまるか特別の犠牲かを分けます。
Q. 完全補償と相当補償はどう使い分けますか?
A.財産権を収用する場合の対価補償は、原則として完全補償(客観的な市場価格の全額)が必要です(最判昭和48年10月18日)。
これに対し、社会・経済政策の実現のための財産権の内容変更に伴う補償については、相当補償で足りる場合があります(農地改革・最大判昭和28年12月23日)。 事案の性質を無視して説を選ぶと減点されます。
Q. 補償規定のない法律で財産権が制限されたら違憲ですか?
A.直ちに違憲とはなりません。
補償規定を欠いても、憲法29条3項を直接の根拠として補償を請求する余地があると解されるためです(河川附近地制限令事件・最大判昭和43年11月27日)。
したがって「補償規定がない=当然に違憲無効」と短絡せず、直接請求の可否を論じる必要があります。
Q. ため池条例事件(最大判昭和38年6月26日)の意義は何ですか?
A.災害防止という消極目的による財産権の制限は、財産権に内在する制約であり、損失補償を要しないとした点にあります。
もっとも、これを「条例による規制は常に補償不要」と一般化するのは誤りです。制限が内在的制約を超えて特別の犠牲に至る場合には、なお補償の要否を検討する必要があります。
Q. 29条2項と3項はどう切り分けますか?
A.2項は財産権の内容を公共の福祉に適合するよう法律で定める場面(内在的制約・内容形成)、3項は正当な補償を条件に私有財産を公共のために用いる場