取締役会決議は、会社法369条が定める要件のもとで成立する。招集手続や決議方法に瑕疵がある場合に決議の効力がどうなるか、特別利害関係取締役の取扱い、瑕疵ある決議に基づく対外的取引の効力など、複数の論点が重なる。本稿でこの構造を整理する。
扱うのは、①会社法369条の決議要件、②招集手続の瑕疵、③特別利害関係取締役の議決権制限、④決議の瑕疵と対外的取引、⑤論証の組み立て、の順である。
条文と決議要件
1項 取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行う。 2項 前項の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない。
369条1項は、議決に加わることができる取締役の過半数の出席と、出席した取締役の過半数の賛成を、決議成立の要件として定める。2項は、特別の利害関係を有する取締役の議決権を制限する。これらの要件を満たさない決議は、原則として無効となる方向で整理される。
招集手続の瑕疵
取締役会の招集手続については、会社法366条以下が規律する。一部の取締役に招集通知を発しなかった、招集期間が法定の期間を下回ったなどの瑕疵がある場合に、決議の効力がどうなるかが論点となる。
通説・判例の整理では、招集通知の欠落その他の手続上の瑕疵がある場合でも、その取締役が出席してもなお決議の結果に影響を及ぼさないと認められる『特段の事情』があるときには、決議は無効とならない、という枠組みが採られている。論文では、本件における瑕疵の内容と、結果への影響の評価を本件事実から拾うことになる。
特別利害関係取締役
369条2項は、決議について特別の利害関係を有する取締役の議決権を制限する。利益相反取引(会社法356条1項)の承認決議における当該取引の当事者となる取締役などが典型例である。特別利害関係取締役が議決に加わった結果、決議要件の充足が左右されるような場面では、決議の効力が問題となる。
決議の瑕疵と対外的取引
取締役会の承認を要する取引について、瑕疵ある決議に基づいて代表取締役が対外的な取引を行った場合、当該取引の効力は、第三者保護の観点から議論される。判例は、相手方が決議の瑕疵について悪意または重大な過失がある場合に限り、当該取引が無効になりうる、との整理を採ってきた。 論文では、相手方の主観面(悪意・重過失)の認定を、本件事実から具体的に評価する流れになる。
論証の組み立て方
決議の瑕疵の論証
問題の所在
本件では、〇〇に関する取締役会決議に瑕疵があるところ、当該決議の効力および当該決議に基づく対外的取引の効力が問題となる。
決議要件と瑕疵
369条1項の出席・賛成要件、招集手続の瑕疵の有無、369条2項の特別利害関係取締役の議決権制限を順に検討する。
結果に影響しない瑕疵
招集手続の瑕疵については、当該取締役が出席してもなお決議の結果に影響を及ぼさないと認められる『特段の事情』があるかを評価する。
対外的取引への影響
瑕疵ある決議に基づく対外的取引について、相手方の悪意・重過失の有無を踏まえて、取引の効力を論じる。
当てはめ
本件では、〇〇という事実関係のもとで、決議の瑕疵が結果に影響を及ぼすか、相手方が悪意・重過失といえるかを評価する。
結論
以上から、本件決議は無効である(あるいは有効である)。対外的取引は無効である(あるいは有効である)。
よくある質問
Q. 招集通知の欠落で常に決議無効になるか
A.ならない。判例・通説の整理では、招集通知の欠落その他の手続上の瑕疵があっても、その取締役が出席してもなお決議の結果に影響を及ぼさないと認めら
Q. 特別利害関係取締役の範囲はどう判断するか
A.利益相反取引の当事者となる取締役のほか、その取引から特に大きな個人的利益を得る取締役などが該当しうる、と整理される。
形式的に取締役の地位にあるだけでは足りず、当該決議事項との具体的な利害関係の存在が必要となる。
Q. 瑕疵ある決議に基づく取引の効力は
A.判例は、相手方が決議の瑕疵について悪意または重大な過失がある場合に限り、当該取引が無効になりうるとの整理を採ってきた。
相手方が善意・無重過失であれば、取引の効力は維持される方向となる。
Q. 決議無効を争う方法は
A.取締役会決議には、株主総会決議のような取消しの訴え(会社法831条)の制度はなく、決議の無効・不存在を一般的な民事訴訟(決議無効確認訴訟など