解雇通告を受けたとき、争うことができるかどうかは、解雇権濫用法理(労働契約法16条)と整理解雇の4要件(4要素)という2つの枠組みで整理して判断するのが基本である。本稿で、これらの枠組みと、労基法20条の解雇予告、労働審判の活用までを整理する。
扱うのは、①労契法16条の解雇権濫用法理、②普通解雇の客観的合理性と社会的相当性、③整理解雇の4要件(4要素)、④労基法20条の解雇予告、⑤労働審判・地位確認訴訟への進め方、の順である。
労契法16条——解雇権濫用法理
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
労契法16条は、解雇権濫用法理を条文化したものである。判例上、最判昭和50年4月25日(日本食塩製造事件)以降、解雇権濫用法理が確立し、その後の最判昭和52年1月31日(高知放送事件)が、客観的合理性と社会通念上の相当性という二段階の審査の整理を示してきた。労契法16条はこの判例法理を立法化したものとして位置づけられる。
普通解雇の判断——客観的合理性と社会的相当性
労契法16条の判断要素
客観的に合理的な理由
解雇事由として挙げられた事実が、就業規則の解雇事由に該当するか、解雇に値する程度の重大性をもつかが評価される。能力不足、勤務態度不良、職務命令違反、企業秩序違反など、解雇事由の類型ごとに具体的な事実と程度が問題となる。
社会通念上の相当性
解雇事由が認められても、その事案の経緯、改善の機会の付与の有無、過去の処分との均衡、他の処分の可能性など、当該解雇が社会通念上相当といえるかが評価される。事案の経緯を丁寧に拾うことが、当てはめでの中心作業となる。
整理解雇の4要件(4要素)
経営上の理由による整理解雇については、判例上、いわゆる整理解雇の4要件(4要素)の枠組みで判断されてきた。すなわち、(i) 人員削減の必要性、(ii) 解雇回避努力義務の履行、(iii) 被解雇者選定の合理性、(iv) 手続の妥当性(説明・協議の状況)、である。
整理解雇の4要件(4要素)
人員削減の必要性
経営上、人員削減を行う必要性があったかどうか。経営状態、業績の推移、財務状況などを踏まえて評価される。
解雇回避努力義務の履行
解雇に至るまでに、配置転換、希望退職募集、労働時間短縮など、解雇を回避するための合理的な努力を尽くしたかどうか。
被解雇者選定の合理性
被解雇者の選定基準が合理的で、その基準に沿った適用がされていたかどうか。基準が恣意的でないこと、基準の適用が公正であることが評価される。
手続の妥当性
労働者や労働組合に対する説明・協議が誠実に行われていたかどうか。整理解雇の必要性、回避努力、選定基準について、相当な期間と内容での説明・協議が求められる。
労基法20条——解雇予告
労基法20条は、原則として、使用者が労働者を解雇する場合に、少なくとも30日前にその予告をするか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払うことを義務づける。予告と手当は併用も可能で、予告日数と平均賃金の合計が30日に達するかたちでも要件を満たす。手続上の規定であり、解雇権濫用法理(労契法16条)とは別の論点として整理する必要がある。
労働審判・地位確認訴訟
解雇の効力を争うときの手段としては、労働審判、地位確認訴訟(民事訴訟)、労働組合経由の団体交渉などがある。労働審判は原則3回以内の期日で迅速な解決を目指す制度で、解雇事件で広く活用されている。労働審判で解決に至らなければ訴訟に移行する。バックペイ(解雇期間中の未払い賃金)の請求や慰謝料の請求も、これらの手続のなかで併せて主張することが多い。
よくある質問
Elenco では労働関係の条文・論点の検索と、論点別のAI演習を一画面で扱える。 — [条文を検索する](/search) / [AIで演習する](/practice)