憲法81条は、最高裁判所が一切の法律・命令・規則・処分の合憲性を判断する権限をもつ終審裁判所であると定める。日本における違憲審査の方式は付随的審査制か抽象的審査制かをめぐる議論があり、判例は警察予備隊違憲訴訟以降、付随的審査制を採用してきた。本稿でこの構造を整理する。
扱うのは、①81条の本質、②付随的審査制と抽象的審査制、③警察予備隊違憲訴訟(最大判昭和27年10月8日)、④違憲判決の効力(個別的効力説・一般的効力説)、⑤司法消極主義との関係、⑥論証の組み立て、の順である。司法権の限界全般は[憲法76条 司法権の独立](/blog/kenpo-76-sihoken-dokuritsu)もあわせて参照してほしい。
条文と違憲審査の本質
最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
条文の文言上は『一切の法律・命令・規則・処分』が対象であり、最高裁が『終審裁判所』である旨が定められている。問題は、この違憲審査権が具体的事件を要件とする付随的審査制なのか、それとも具体的事件を要件としない抽象的審査制かである。日本の判例は、警察予備隊違憲訴訟(最大判昭和27年10月8日)で付随的審査制を採用したと整理されている。
違憲審査の2方式
付随的審査制
具体的な争訟事件のなかで、その解決に必要な限度で法令の合憲性を審査する方式である。アメリカ型の違憲審査として知られ、日本の判例もこの立場を採る。具体的事件があってはじめて違憲審査が発動するため、抽象的・将来予測的な判断は権限外と整理される。
抽象的審査制
具体的事件の存否にかかわらず、法令そのものの合憲性を独立に審査する方式である。ドイツ連邦憲法裁判所のような特別の機関を置く制度設計が代表的で、フランスの憲法評議会も類似の制度をもつ。日本の判例はこの立場を採っていない。
警察予備隊違憲訴訟——最大判昭和27年10月8日
最大判昭和27年10月8日(警察予備隊違憲訴訟)は、原告が警察予備隊(後の自衛隊)の設置に関する措置の違憲確認を求めて、最高裁に直接訴えを提起した事案である。最高裁は、裁判所に与えられているのは司法権を行う権限であり、司法権が発動するには具体的な争訟事件の提起を要する、として、具体的事件を離れた抽象的な違憲判断を下す権限を否定した。
この判決により、日本の違憲審査は付随的審査制によることが明らかになった。論文では、訴えの対象となる行為が具体的な権利義務に関わる争訟として扱えるか、抽象的な合憲性審査を求めるにとどまるか、を切り分けたうえで、付随的審査制の枠組みのなかで本件を位置づけることになる。
違憲判決の効力
違憲判決が下された場合に、その効力をどう理解するかについては、(i) 当該事件にだけ効力が及ぶとする個別的効力説と、(ii) 当該法令を一般的に無効とする一般的効力説の対立がある。通説は個別的効力説に立ち、一般的効力説は裁判所に立法権類似の権能を与えるとして三権分立に反する、と批判する。判例自身は明示の立場を示していないが、個別的効力説を前提とした運用が定着しているとみるのが一般的である。
もっとも、最大判昭和48年4月4日(尊属殺重罰規定違憲判決)以降の運用に見られるように、最高裁が違憲判決を下した条文については、検察官の起訴や下級審の判断において事実上適用されない形で運用されることが多く、形式的には個別的効力説でも実質的には一般的な効果に近い運用となる。論文では、両説の対立と、判例運用の実情を整理して論じる。
違憲判決の効力をめぐる2説
個別的効力説(通説)
違憲判決の効力は当該事件にとどまり、違憲とされた法令の一般的な効力には影響しないとする立場。一般的効力説に対する三権分立違反の批判を回避する。
一般的効力説
違憲判決は当該法令を一般的に無効にするとする立場。法的安定性を重視するが、立法権との関係で問題があるとの批判を受ける。
司法消極主義との関係
違憲審査が形式的には可能でも、裁判所が判断を控えるべき領域があるとされる場面がある。代表的な論理として、極めて高度な政治性を有する国家行為について裁判所が判断を控える統治行為論(最大判昭和34年12月16日 砂川事件)、自律的団体内部の決定について司法審査を控える部分社会論(最判昭和52年3月15日 富山大学事件)がある。違憲審査制の議論と並行して、司法権の限界の論理として整理しておく必要がある。
論証の組み立て方
違憲審査制の論証
問題の所在
本件では、Xが〇〇の違憲性を主張して訴えを提起しているところ、これが憲法81条の違憲審査の対象として扱えるかが問題となる。
枠組みの提示
判例(最大判昭和27年10月8日 警察予備隊違憲訴訟)は付随的審査制を採用しており、違憲審査は具体的な争訟事件の解決に必要な限度で行われる。
効力の検討
違憲判決が下された場合の効力については、個別的効力説と一般的効力説の対立がある。通説は個別的効力説に立つが、実務運用では事実上一般的な効果に近い運用がされる場面もある。
規範の趣旨
司法権の作用としての違憲審査と、三権分立のもとでの裁判所の役割の調整を踏まえた整理である。
当てはめ
本件では、〇〇という具体的事件の存在のもとで、判例の枠組みに照らせば違憲審査の対象となる(あるいはならない)。
結論
以上から、Xの主張は本案審理で判断される(あるいは訴えが却下される)。
よくある質問
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