民法90条は、公の秩序または善良の風俗に反する法律行為を無効とする規定である。私的自治の原則の枠組みのなかで、当事者の合意が法的な強制力をもたない場面を画する基本条項として機能する。本稿で、この条文の整理と典型類型を扱う。
扱うのは、①90条の役割、②典型類型(強行法規違反・公序違反・暴利行為など)、③暴利行為の判断要素、④動機の不法と公序良俗、⑤論証の組み立て、の順である。
条文と役割
公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
90条は、契約自由の原則のもとでも、内容や動機が社会の根本秩序や倫理に反する法律行為について、私法上の効力を否定する一般条項として機能する。具体的にどの場面で90条違反となるかは、判例の積み重ねと学説の整理を通じて類型化されてきた。
典型類型
公序良俗違反の典型類型
強行法規違反
強行法規違反は本来、強行法規違反として無効となる場面だが、その違反が公序良俗にも反すると評価される場面で90条が補充的に機能することがある。
公序違反(基本秩序違反)
犯罪行為を助長する契約、賭博類似の契約、人身売買的な契約など、社会の基本秩序に反する内容の契約が典型である。
倫理違反(善良の風俗違反)
不貞の継続を内容とする契約、性的サービスを目的とする違法な契約など、社会の倫理に反する内容の契約が含まれる。
暴利行為
相手方の窮迫・無経験・軽率などに乗じて、著しく過大な対価や利益を得る契約類型である。客観的な不均衡と主観的な要素の双方を踏まえて判断される。
動機の不法
契約の内容そのものは適法でも、当事者がその契約を不法な目的のために利用することを認識して締結する場合などに、90条違反として評価される場面がある。動機が相手方に表示されていたかなどが評価の対象となる。
暴利行為の判断要素
暴利行為は、(i) 客観的要素として給付と反対給付の著しい不均衡、(ii) 主観的要素として相手方の窮迫・無経験・軽率などに乗じることを認識していたこと、を中心に判断するのが基本的な整理である。客観的な不均衡だけで90条違反が認められるわけではなく、主観的要素を加えて、社会的相当性を欠く取引行為と評価できるかを論じる。
動機の不法と公序良俗
契約の内容そのものは適法でも、当事者の動機が不法(賭博資金、犯罪資金の融通など)である場合に、契約全体を90条違反とするかが論点となる。動機の不法が相手方に表示されていたか、相手方が認識していたかなどを踏まえて判断するのが、判例・通説の整理である。動機の不法が当事者の一方のみにとどまり、相手方が知り得なかった場合には、無効としにくい方向となる。
論証の組み立て方
90条の論証
問題の所在
本件契約が、民法90条の公序良俗に反するものとして無効になるかが問題となる。
類型の特定
本件は、強行法規違反・公序違反・倫理違反・暴利行為・動機の不法のいずれの類型に属するかを最初に切り分ける。
判断の枠組み
暴利行為については、給付と反対給付の著しい不均衡という客観的要素と、相手方の窮迫・無経験等に乗じたという主観的要素を踏まえて判断する。動機の不法については、動機の相手方への表示・認識の有無を踏まえて判断する。
規範の趣旨
私的自治の原則のなかで、社会の基本秩序・倫理に反する取引を私法上の効力面で否定することで、当事者と社会の双方を保護する一般条項である。
当てはめ
本件では、〇〇という客観的・主観的事情のもとで、当該契約は公序良俗に反する(あるいは反しない)と評価される。
結論
以上から、本件契約は90条により無効である(あるいは有効である)。
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