取消訴訟(行政事件訴訟法3条2項)は、行政法の中で最も出題頻度が高い抗告訴訟だ。答案では「訴訟要件→本案」の順で論じるが、訴訟要件の段階で多くの論点が集中している。特に「処分性」「原告適格」は毎年のように問われる。
取消訴訟の訴訟要件一覧
取消訴訟の訴訟要件(行訴法3条・9条・14条等)
①処分性
行政庁の処分その他公権力の行使にあたる行為であること(3条2項)。公権力性・法的効果の発生・具体性の3要素で判断。
②原告適格
法律上の利益を有する者(9条1項)。9条2項の考慮要素(根拠法令・関係法令・侵害の態様)を具体的に当てはめる。
③被告適格
処分または裁決をした行政庁が所属する国・公共団体(11条)。
④出訴期間
処分があったことを知った日から6ヶ月、処分の日から1年(14条)。正当な理由がある場合は例外。
⑤訴えの利益
処分の取消しによって回復すべき法律上の利益があること。処分の執行終了後でも回復可能な場合あり(最判昭和55年)。
⑥管轄
処分庁の所在地を管轄する地裁(12条)。国を被告とする場合は東京地裁でも可。
処分性の判断基準
処分性は「公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているもの」(最大判昭和39年)と定義される。
- 処分性あり:営業許可の拒否、課税処分、行政代執行の戒告
- 処分性なし(原則):行政指導、通達、一般的な法規範
- 問題となる類型:病院開設中止勧告(最判平成17年)、土地区画整理事業計画(最大判平成20年)
原告適格(9条2項)の論証方法
9条2項は原告適格の判断において、①処分の根拠法令の目的・趣旨、②関係法令(根拠法令と目的を共通にする法令)の目的・趣旨、③侵害される利益の内容・性質、④侵害の態様・程度を考慮することを求める。答案では各要素を具体的に当てはめることが不可欠だ。
原告適格の判断ステップ
Step 1
根拠法令の目的・趣旨を確認する(個人の利益保護か、公益のみか)。
Step 2
関係法令(環境法・建築基準法等)の目的・趣旨も参照する。
Step 3
侵害される利益が「法律上保護された利益」か「反射的利益」かを判断する。
Step 4
結論:法律上の利益を有する者として原告適格を認める/否定する。
訴えの利益の消滅と例外
処分の効果が消滅した後は原則として訴えの利益は消滅する。例外として、①処分の取消しにより回復される法的地位がある場合、②名誉・信用等の回復が問題となる場合には訴えの利益が残る(9条ただし書)。試験では「なぜ利益が残るのか」の実質的理由を論じること。