行政法12
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Elenco編集部監修・編集
公開 2026.05.07最終更新 2026.05.19

国家賠償法1条——公権力の行使と違法・過失の枠組み

この記事のポイント

国家賠償法1条1項が定める公権力の行使に基づく国・公共団体の損害賠償責任について、要件(公権力の行使・職務関連性・違法・故意過失・損害・因果関係)と判例の整理を解説する。

国家賠償法1条1項は、公権力の行使に当たる公務員が、その職務を行うについて違法に他人に損害を加えた場合に、国または公共団体が賠償責任を負う旨を定める。民法709条の不法行為とは別個の独自の要件構造をもち、論文ではここを意識した整理が求められる。 本稿で1条の枠組みを整理する。

扱うのは、①国賠法1条1項の要件、②『公権力の行使』の意義、③違法と職務関連性、④故意過失、⑤論証の組み立て、の順である。国賠法2条(営造物責任)と取消訴訟の枠組みは別途、関連論点として参照してほしい。

条文と要件

条文
国家賠償法1条

1項 国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。 2項 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があったときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。

1条1項の要件

公権力の行使

国または公共団体の活動のうち、純粋な私経済作用と国賠法2条の営造物責任を除いた、広い意味での公的な作用を指すと整理されている(広義説)。行政処分や行政指導、警察活動、公立学校における教育活動なども含まれる方向で運用されてきた。

公務員の職務行為性

加害行為が、当該公務員の職務として、またはその外形上職務に関わるものとしてなされたこと。職務行為そのものでなくても、外形上職務の遂行と認められる行為については職務関連性が認められる、という整理が定着している。

違法性

公務員の職務行為が、法令の定めに違反するか、職務上尽くすべき注意義務を尽くさなかったとして、客観的に違法と評価できること。取消訴訟における違法と国賠法上の違法の関係をどう理解するかには議論があるが、論文では両者を区別して書く準備が必要である。

故意・過失

公務員の主観的責任要件として故意・過失を要する。過失は、当該職務上要求される注意義務を尽くしたかどうか、という客観化された枠組みで判断されるのが基本である。

損害と因果関係

被害者に損害が発生し、当該違法な職務行為と損害との間に相当因果関係があること。民法709条と同様、相当因果関係の枠組みで賠償範囲を画する。

『公権力の行使』の意義

国賠法1条にいう『公権力の行使』の範囲については、(i) 行政処分のような典型的な公権力の行使に限定する立場、(ii) 純粋な私経済作用と2条の営造物責任を除いた広い範囲を含む立場(広義説)など、複数の整理がある。判例・通説は広義説に親和的に運用されてきた。 立法不作為についても、最判昭和60年11月21日(在宅投票制度違憲訴訟)が、立法不作為が国賠法上の違法とされうる場面の枠組みを示しており、その後の議論の出発点となっている。

違法と故意過失

国賠法上の違法は、必ずしも当該行政処分が取消訴訟で違法と判断されることと一致しない、という整理がされてきた(職務行為基準説)。取消訴訟では処分そのものの違法性が問題となる一方、国賠法では公務員が職務上尽くすべき注意義務を尽くしたかが評価される、という発想である。 論文では、本件で問題となるのが取消訴訟における違法か、国賠法上の違法か、を最初に切り分ける作業が大切である。

故意・過失については、警察活動の場面で過失の有無が問題となる事案が繰り返し争われてきた。 たとえば、最判昭和61年2月27日(パトカー追跡事件)は、警察官の追跡行為の適否について、追跡の必要性と方法の相当性を踏まえた判断枠組みを示しており、公務員の職務裁量と被害者の救済との調整が議論されてきた。

国家賠償法1条 1項の枠組み
国家賠償法1条1項の枠組み公権力の行使(広義説)— 私経済作用と2条を除く職務行為性 — 外形上の職務関連性で足りる違法 — 職務上の注意義務違反(職務行為基準説)故意過失・損害・因果関係を当てはめ

論証の組み立て方

国賠法1条の論証

問題の所在

本件では、Xが国(あるいは公共団体)に対し、国家賠償法1条1項に基づき損害賠償を請求できるかが問題となる。

要件の特定

1条1項は、公権力の行使、公務員の職務行為性、違法、故意過失、損害、因果関係を要件とする。本件で特に争点となるのは〇〇要件である。

判例の枠組み

立法不作為については最判昭和60年11月21日、警察活動の違法・過失については最判昭和61年2月27日が判断枠組みを示している。職務行為基準説のもとで、国賠法上の違法を取消訴訟の違法と区別して論じる。

規範の趣旨

公務員の職務行為に対する被害者の救済と、公務遂行の安定性との調整を、職務上の注意義務違反という枠組みで図る趣旨である。

当てはめ

本件では、〇〇という事実関係のもとで、当該行為が公権力の行使にあたり、職務として行われ、職務上の注意義務違反による違法があったといえるか(あるいは否か)を評価する。

結論

以上から、Xは国賠法1条1項に基づき〇万円の損害賠償を請求できる(あるいはできない)。

よくある質問

Q. 国賠法1条と民法709条はどう違うか

A.国賠法1条は公権力の行使に当たる公務員の職務行為について、国・公共団体に賠償責任を負わせる規定である。

民法709条は一般的な不法行為責任を定める規定で、要件構造と義務者が異なる。論文では、本件で問題となる行為が国賠法の対象となるかを最初に切り分ける必要がある。

Q. 取消訴訟の違法と国賠法の違法は同じか

A.判例上は、取消訴訟における違法と国賠法上の違法が当然に同じになるわけではない、という整理がされてきた。

職務行為基準説のもとで、国賠法では公務員が職務上尽くすべき注意義務を尽くしたかが評価され、取消訴訟とは別の枠組みで判断される。

Q. 立法不作為は国賠法の対象となるか

A.原則として、立法行為や立法不作為は国賠法上の違法とは評価されにくいが、最判昭和60年11月21日(在宅投票制度違憲訴訟)が示した枠組みのもと

Q. 公務員の個人責任は問えるか

A.国賠法1条1項は、加害公務員個人ではなく国・公共団体の責任を定める規定であり、公務員個人に対する直接の責任追及は原則として否定される、というのが判例の整理である。

2項により、国・公共団体は、故意または重大な過失のある公務員に対して求償権を行使することができる。

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