民法177条は、不動産物権変動の対抗要件として登記を要求する。論文で繰り返し問われるのは、177条の『第三者』にどの範囲の者が含まれるか、背信的悪意者をどう扱うか、取消後・解除後・時効取得との関係でどう処理するか、といった論点である。本稿でこの構造を整理する。
扱うのは、①177条の要件、②第三者の範囲、③背信的悪意者の除外、④取消後・解除後の第三者、⑤時効取得と登記、⑥論証の組み立て、の順である。
条文と要件
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
177条は、当事者間で有効に物権変動が生じていても、登記を備えなければ第三者にその変動を主張できない旨を定める。対抗要件主義のもと、二重譲渡の場面では登記の先後で優劣が決する、という基本的な構造を生んでいる。
177条の第三者の範囲
判例上、177条の『第三者』は、当事者およびその包括承継人以外の者で、登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する者と整理されている。単なる無権利者、不法行為者、不法占拠者などは、ここでいう正当な利益を有する第三者には当たらないとされる。
背信的悪意者の除外——最判昭和43年8月2日
判例は、177条の第三者から背信的悪意者を除外する整理を採用してきた。最判昭和43年8月2日は、第一譲受人の登記の欠缺を主張することが信義則に反すると認められる程度の事情がある者(背信的悪意者)は、177条の第三者として保護されない旨を示した。 論文では、相手方が単に悪意であるにとどまるか、信義則違反といえる程度の事情があるかを、本件事実から具体的に評価することが中心となる。
取消後・解除後の第三者
詐欺取消後に登場した第三者と、契約解除後に登場した第三者については、判例上、取消し・解除によって目的物が真の権利者に復帰した後、相手方が改めて第三者に譲渡したかたちとして把握し、177条の対抗関係として処理する整理が定着してきた。取消前・解除前の第三者については、それぞれ96条3項・545条1項ただし書の枠組みで処理される。
取得時効と登記
取得時効によって所有権を取得した者と、原所有者から目的物を譲り受けた第三者との関係についても、判例の整理は、時効完成前の第三者との関係では時効取得者は登記なくして対抗できる方向、時効完成後の第三者との関係では民法177条の対抗関係として登記を要する、という枠組みを採ってきた。
論証の組み立て方
177条の論証
問題の所在
本件では、〇〇の物権変動について、AがCに対して登記なくして対抗できるか、177条の対抗関係の処理が問題となる。
第三者該当性
Cが177条にいう『第三者』にあたるか、すなわち登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する者かを評価する。
背信的悪意者の除外
Cが単に悪意であるにとどまらず、信義則違反といえる程度の事情があれば、最判昭和43年8月2日の枠組みのもと、177条の第三者から除外される。
場面ごとの整理
本件が取消後・解除後・時効取得などの場面に該当する場合は、当該場面に応じた判例の整理を踏まえて、登記の要否を判断する。
当てはめ
本件では、〇〇という事実関係のもとで、Cが177条の第三者にあたるか、背信的悪意者にあたるかを評価する。
結論
以上から、AはCに対して登記なくして対抗できる(あるいは対抗できない)。
よくある質問
Q. 177条の『第三者』にあたるのは誰か
A.判例上、当事者およびその包括承継人以外の者で、登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する者と整理されている。
無権利者、不法行為者、不法占拠者などは、ここでいう正当な利益を有する第三者には当たらない。
Q. 悪意者は177条で保護されるか
A.悪意であるだけでは177条の第三者から外れず、登記の有無で優劣が決する。
判例は、最判昭和43年8月2日のとおり、信義則違反といえる程度の事情がある背信的悪意者を例外的に第三者から除外する整理を採る。
Q. 取消後・解除後の第三者はどう処理するか
A.判例の整理は、取消し・解除によって目的物が真の権利者に復帰した後、相手方が改めて第三者に譲渡したかたちとして把握し、177条の対抗関係として
Q. 時効取得者と第三者の関係は
A.時効完成前の第三者との関係では、時効取得者は登記なくして対抗できる方向、時効完成後の第三者との関係では177条の対抗関係として登記を要する、