①パワハラの法的3要件を正確に説明できる。②6類型の区別と具体例を示せる。③民法709条・715条・労働契約法5条それぞれを根拠とする損害賠償請求の構造を論述できる。④使用者の措置義務(30条の2)の内容を説明できる。
正当な業務指導とパワハラの境界は「必要性・相当性」にある。ミスに対して一度強く叱責することは直ちにパワハラにならないが、長時間にわたる叱責・人格否定を含む言動・全員の前での見せしめ的叱責は相当性を欠くとして認定される可能性が高い。
司法試験・予備試験の答案や実務で最も争われやすいのは②精神的な攻撃(暴言・侮辱)と④過大な要求(達成不能業務の強制)の2類型である。電通事件(最判平12・3・24)のような長時間労働強制は④+安全配慮義務違反の複合型の典型。
使用者責任(715条)は加害者の不法行為(709条)が前提となる。安全配慮義務違反(労契5条・415条)は加害者の行為とは独立して会社の義務違反を直接問えるため、加害者が特定困難な場合や組織的なパワハラの場合は後者を主たる根拠とすることが多い。
電通の新入社員が長時間労働・過重業務によりうつ病を発症して自殺した事案。最高裁は①使用者は労働者が過重な業務により健康を損なわないよう注意する義務を負う、②労働者の性格・心因的脆弱性が原因の一端にあっても使用者の責任は免れないと判示し、安全配慮義務違反を肯定した。
①社内相談窓口への申告 → ②都道府県労働局あっせん(無料・行政機関)→ ③労働審判(3回以内の審理・解決金の早期確定)→ ④民事訴訟(確実な認定と相当額の賠償を求める場合)。③労働審判は費用・時間の点で最も実用的。労働組合経由の団体交渉も選択肢の一つ。
措置義務を怠った事業主は、厚生労働大臣による報告命令・助言・指導・勧告の対象となる(30条の6)。勧告に従わない場合は企業名が公表される(30条の7)。また措置義務違反は安全配慮義務違反(労契5条)の立証において会社の過失を推認させる要素となる。
パワハラは①優越的関係を背景・②業務上相当範囲超過・③就業環境侵害の3要件を要する(労働施策総合推進法30条の2)。損害賠償は加害者個人(民法709条)と会社(民法715条・労契5条)の両方を相手に請求できる。会社は措置義務を負い、違反は安全配慮義務違反の立証を補強する。証拠(録音・記録・診断書)の確保が手続成功の鍵となる。