不法行為(民法709条)の構造
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民法709条の不法行為責任は①故意または過失②権利・利益侵害③損害の発生④因果関係⑤違法性の各要件を満たすことで成立する。加害者は損害賠償責任を負い、被害者は損害の填補を受ける。近時は「故意・過失」と「違法性」を独立要件として区別するか否かで争いがあるが、試験実務上は各要件を順に検討するスタイルが定着している。
① 故意または過失
② 権利・利益の侵害(違法性)
③ 損害の発生
④ 因果関係
過失の客観化と注意義務の内容
- 過失の客観化:個人の主観的能力でなく、当該職業・立場の平均人が払うべき客観的注意義務を基準とする
- 予見可能性:結果を予見できた(または予見すべきだった)かが注意義務の前提
- 結果回避可能性・回避義務:予見可能でも回避不可能なら過失なし。回避義務の内容は具体的状況で決まる
- 医師・弁護士等の専門家:高度の注意義務が課される(最判昭和36.2.16等)
損害賠償の範囲と過失相殺(722条)
- 相当因果関係の範囲:通常損害(当然発生する損害)は当然賠償。特別損害は加害者が予見可能な場合に賠償(416条類推)
- 過失相殺(722条2項):被害者の過失を考慮して賠償額を減額。裁判所の裁量による(必要的減額でなく任意的)
- 損益相殺:損害賠償請求権と同一原因から利益を受けた場合、利益を控除する(遺族年金・生命保険金の取扱いは争いあり)
不法行為の答案は①故意・過失(注意義務の内容→違反の有無)②権利・利益侵害③損害④因果関係の順に検討し、過失相殺・損益相殺を後段で処理する。複数の加害者がいる場合(共同不法行為・719条)は連帯責任になる点も押さえること。