行政法10
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Elenco編集部監修・編集
公開 2026.06.24最終更新 2026.07.30

行訴法37条の2・3——3要件で書く義務付け訴訟【予備試験】

この記事のポイント

行政事件訴訟法37条の2(直接型義務付け訴訟)と37条の3(申請型義務付け訴訟)の要件と本案勝訴要件、重大な損害要件、不作為違法確認との併合提起、関連判例(最判平成21年12月17日・最判平成24年2月9日教科書検定事件)を踏まえて、予備試験・司法試験の答案で使える論証を解説します。

「義務付け訴訟って、直接型と申請型でどう要件が違うのだろうか」——行訴法37条の2・37条の3の論点で、あなたが過去問の解答例を見ながら手が止まったのは、訴訟要件と本案勝訴要件が二段構えで複雑に見えるからではないでしょうか。本記事は、判例の立場で整理します。

行政事件訴訟法は、平成16年改正で義務付け訴訟を法定抗告訴訟として明文化した。だろうか——「義務付けは行政庁に処分を強制する訴え」と漠然と理解しているあなたは、本番で直接型(37条の2)と申請型(37条の3)の使い分けで論述に詰まる可能性が高い。 司法試験・予備試験では、訴訟要件と本案勝訴要件をどう書き分けるかで合否が分かれる。 本記事は、判例(最判平成21年12月17日・最判平成24年2月9日教科書検定事件)の射程を一つの型として整理する。

この記事で得られるものは3つ。第一に、37条の2(直接型)と37条の3(申請型)の条文構造を正確に書ける。第二に、直接型の3要件——重大な損害・他に適当な方法がない・原告適格——と申請型の併合提起要件を判例の文言通り運用できる。第三に、本案勝訴要件(行政庁の覊束性または裁量逸脱濫用)まで含めた答案構成に対応できる。

1. 条文を正確に読む

条文
行政事件訴訟法第3条6項、第37条の2、第37条の3義務付けの訴えの要件等

次の各号に掲げる場合において、行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求めるにつき法律上の利益を有する者は、それぞれ当該各号に定める訴えを提起することができる。 一 行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき 当該処分に係る義務付けの訴え(直接型・37条の2) 二 行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされないとき 当該処分又は裁決に係る義務付けの訴え(申請型・37条の3)

条文の構造を分解する。義務付け訴訟は2類型ある。第一類型(直接型・37条の2)は、申請権がない第三者が処分を求める場合——たとえば近隣住民が違反建築物の是正命令を求める事案。第二類型(申請型・37条の3)は、申請権者が拒否処分または不作為に対して義務付けを求める場合——たとえば在留特別許可申請を拒否された外国人。 両者は訴訟要件と併合提起の要否が大きく異なる。 境界線をどこに引くかが、本論点の核心である。

2. 趣旨——なぜ義務付け訴訟が法定されたか

平成16年改正前は、行政庁の不作為に対して取消訴訟・不作為違法確認訴訟しか利用できず、勝訴しても処分が改めてされる保証がなかった。そこで(i)国民の実効的権利救済を図るため、(ii)行政庁に処分義務を直接命ずる類型を法定した。

ただし三権分立の観点から行政の第一次判断権を尊重する必要があるため、(iii)直接型では『重大な損害』『他に適当な方法がない』という厳格な訴訟要件を課し、(iv)申請型では取消訴訟・不作為違法確認訴訟との併合提起を要求して、二重の制約を設けた構造である。

3. 直接型義務付け訴訟(37条の2)の要件

37条の2第1項は、訴訟要件として(i)一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、(ii)かつ、その損害を避けるため他に適当な方法がないとき、と定める。重大な損害の判断について、同条2項は『損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとする』と規定。 さらに同条3項は原告適格として『行政庁が一定の処分をすべき旨を命ずることを求めるにつき法律上の利益を有する者』と定める。 法律上の利益の意義は、9条2項の準用により取消訴訟と同じ枠組みで判断される(最判平成17年12月7日小田急事件の射程)。

直接型義務付けの3要件

① 重大な損害のおそれ

処分がされないことにより原告に生じる損害が、金銭賠償では事後的に回復困難な性質・程度であること。違反建築物による生命身体の危険、操業停止命令の遅延による健康被害などが典型。

② 他に適当な方法なし

民事差止訴訟・損害賠償・行政指導要請など、義務付け訴訟以外の救済手段で目的を達成できないこと。補充性要件として機能する。

③ 原告適格(法律上の利益)

9条2項を準用し、処分の根拠法令の趣旨・目的、処分により保護される利益の内容・性質、被害の程度等を勘案して判断(小田急事件の射程)。

4. 申請型義務付け訴訟(37条の3)の併合提起要件

37条の3第3項は、申請型義務付け訴訟は次の訴えと併合提起しなければならないと定める。第一に、不作為に対する義務付け(同条1項1号)の場合は不作為違法確認訴訟。第二に、拒否処分に対する義務付け(同条1項2号)の場合は取消訴訟または無効等確認訴訟。 これは、行政の第一次判断権を尊重しつつ、不作為違法確認・取消訴訟の判決と義務付け判決を一体的に処理するための立法政策である。 併合提起を欠く義務付け訴訟は不適法却下となる。 本案勝訴要件としては、同条5項が『裁判所は、第1項各号に定める訴えに係る請求に理由があると認められ、かつ、その義務付けの訴えに係る請求に理由があると認められるとき』と定める二段構えの構造を採る。

5. 本案勝訴要件——覊束性と裁量

37条の2第5項・37条の3第5項は本案勝訴要件として『行政庁がその処分若しくは裁決をすべきであることがその処分若しくは裁決の根拠となる法令の規定から明らかであると認められ、又は行政庁がその処分若しくは裁決をしないことがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるとき』と定める。

すなわち(i)覊束処分または覊束裁量の場合は『法令上明らか』、(ii)裁量処分の場合は『裁量逸脱濫用』として、二類型に分けて判断する。後者は最判昭和53年10月4日マクリーン事件以来の裁量統制法理がそのまま適用される。

6. 重要判例——現代的論点

判例1

最判平成21年12月17日(在留特別許可義務付け事件)。在留特別許可の不許可処分について、最高裁は申請型義務付け訴訟の本案勝訴要件として『法務大臣の裁量権の範囲を超え又はその濫用があったと認められる場合に限り、当該処分は違法となる』と判示。 マクリーン事件の射程を申請型義務付けに引き継いだ重要判例である。 本番の答案でこの規範を素通りすると採点者から減点される。

判例2

最判平成24年2月9日(神奈川教科書検定事件)。教科書検定不合格処分の取消訴訟と検定合格処分の義務付け訴訟が併合提起された事案。最高裁は、検定処分が裁量処分であることを前提に、当該不合格処分が裁量権の範囲を逸脱したと認めた上で、合格処分の義務付け請求も認容した。 申請型義務付けが取消訴訟と一体的に処理される実例として理解する必要がある。

判例3

最判平成26年7月29日(一般廃棄物処理業許可義務付け事件)。直接型義務付け訴訟ではなく、本件は申請型として処理されたが、最高裁は処分庁の判断について裁量逸脱濫用の有無を厳格に審査した。直接型と申請型の振り分けが原告の申請権の有無で決まることを示す判例として参照される。

Elencoで「義務付け訴訟」「行訴法37条の2」「申請型」を検索すると、本記事に加えて、原告適格・取消訴訟・行政指導・差止訴訟など、抗告訴訟体系の判例を一括で参照できます。判例の文言を正確に引用できるようになることが、本論点攻略の核心です。

7. 試験での出題傾向

司法試験論文式試験の行政法では、義務付け訴訟は平成21年・平成26年・平成30年・令和3年と数年に一度の頻度で出題される。予備試験でも頻出論点である。出題形式は、申請拒否・不作為・近隣住民による違反是正要求など、具体的な事案について義務付け訴訟の類型選択と要件充足を判断する形が定番。 採点者が見ているのは、直接型と申請型の振り分けを正確にできるか、訴訟要件(重大な損害・他に適当な方法がない・併合提起)を漏れなく書けるか、本案勝訴要件で裁量統制を当てはめられるか、の3点である。

8. 論証の型——そのまま答案に書ける形

規範定立・申請型

「本件は法令に基づく申請に対する拒否処分の事案であるから、行訴法37条の3第1項2号の申請型義務付け訴訟による。同条3項により、当該拒否処分の取消訴訟と併合提起する必要がある。本案勝訴要件は、同条5項により(i)取消訴訟の請求に理由があり(処分が違法であり)、かつ(ii)処分庁が当該処分をすべきことが法令上明らか、または不作為が裁量逸脱濫用となること(最判平成21年12月17日)」

当てはめのコツ

事実認定では、(i)原告に法令上の申請権があるか(直接型/申請型の振り分け)、(ii)重大な損害の有無(直接型のみ)、(iii)他に適当な方法の有無(直接型のみ)、(iv)原告適格(法律上の利益)、(v)併合提起の有無(申請型のみ)、(vi)本案で覊束処分か裁量処分か、を順に拾う。 採点者は、訴訟要件と本案勝訴要件を混同する答案を減点する。 3要素を一つずつ事実に当てはめる作業を見せること。

8-2. 当てはめの手順——具体的には何を拾うか

規範を書けても当てはめで失点する答案が試験前日の総ざらいでも多発する。 具体的には、本問の事案について次の6要素を機械的に拾う手順を踏むのが、合格者は実践している処理フローである。第一に、原告が処分の名宛人か第三者か——名宛人なら申請型、第三者なら直接型の振り分けが第一関門。 第二に、申請型なら根拠法令の申請権規定の確認——食品衛生法・建築基準法・出入国管理法等。 第三に、直接型なら重大な損害の具体的内容——生命身体への危険、回復困難な財産的損害。 第四に、補充性要件——民事差止・損害賠償・行政指導要請で目的が達成できないことの主張。 第五に、原告適格は9条2項準用で根拠法令の趣旨目的・被侵害利益の性質を分析(小田急事件の射程)。 第六に、本案勝訴要件は覊束性or裁量逸脱濫用の二段構えで処理。 この6要素を順に評価することで、最判平成21年・最判平成24年の規範を踏まえた論述になる。 条文の文言『重大な損害』を抽象的に当てはめるだけの答案は、本番で採点者から大きく減点される。

9. よくある間違い・落とし穴

  • 落とし穴①:直接型と申請型を混同する——申請権の有無で必ず振り分ける
  • 落とし穴②:申請型で併合提起を忘れる——37条の3第3項違反で不適法却下
  • 落とし穴③:訴訟要件と本案勝訴要件を混在させる——両者を分けて論述する構成が必須
  • 落とし穴④:裁量処分で覊束性審査をする——マクリーン事件の裁量逸脱濫用基準を適用
  • 落とし穴⑤:[行政指導](/blog/gyosei-gyosei-shido)による対応が可能な場合の補充性要件——『他に適当な方法』の充足を慎重に判断

10. 隣接論点との比較

混同しやすい論点との違い

直接型(37の2) vs 申請型(37の3)

前者は申請権なき第三者の救済、後者は申請権者の救済。前者は重大な損害+補充性が独立要件、後者は併合提起が必須要件。立法政策の差を意識する。

不作為違法確認 vs 義務付け

前者は処分の不作為について違法確認のみ、後者は処分の積極的な実施を命ずる。後者は申請型義務付けと併合提起される(37の3第3項1号)。

差止訴訟 vs 義務付け訴訟

前者は将来の処分の事前阻止、後者は不作為・拒否処分への積極的命令。差止訴訟(37条の4)との要件構造の対比で理解する。

11. まとめ

義務付け訴訟は3ステップ。第一に、原告の申請権の有無で直接型(37の2)か申請型(37の3)かを振り分ける。第二に、訴訟要件として直接型は重大な損害・補充性・原告適格、申請型は併合提起を確認する。第三に、本案勝訴要件として覊束性または裁量逸脱濫用(最判平成21年12月17日)を判断する。 判例の文言を正確に引用し、具体的事実を丁寧に当てはめれば合格答案に届く。 学説対立に深入りせず、判例の立場で淡々と処理することが、合格者は実践している答案戦略である。

STEP 1: Elencoで「義務付け訴訟」「行訴法37条の2」「申請型」を検索し、最判平成21年・最判平成24年の射程を体系的に把握する。

  1. 2

    演習機能で平成26年・平成30年の司法試験論文を解き、本記事の論証型を実戦で使う。

  2. 3

    取消訴訟・不作為違法確認・差止訴訟との抗告訴訟体系全体で、訴訟類型選択の応用問題を習得する。条文・判例・演習を往復することで、本論点は安定得点源になる。

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この記事について
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