「同性カップルが婚姻届を出せないのは憲法24条1項違反なのだろうか」「夫婦同氏制を強制する民法750条は違憲ではないのか」——あなたが本番でこの事案を読んだ瞬間、24条の射程と違憲審査基準で手が止まるなら、それは令和3年〜令和5年の同性婚違憲判決を判例の射程で固めていないからではないでしょうか。本記事は判例の立場で型を確定させます。
憲法24条は婚姻の自由と家族に関する両性の本質的平等を定める条文だが、答案で問われるのは『1項の射程(同性婚を含むか)』『2項の立法裁量(夫婦同氏制・嫡出推定の合憲性)』『立法不作為の違憲審査』の3つの論点をいかに正確に書き分けるかである。 だろうか——「24条は両性の合意で婚姻が成立すると規定しているから同性婚は対象外」と単純化しているあなたは、本番で『令和3年札幌地判の14条違反論』『令和5年福岡地判・名古屋地判の24条2項違反論』『最大決令和3年6月23日の夫婦同氏制再判断』の3点で論述に詰まる可能性が高い。 司法試験・予備試験の採点者が見ているのは、3つの論点を判例の射程で書けるかであり、ここを外すと一発で大量失点する論点である。
この記事で得られるものは3つ。第一に、24条1項の婚姻の自由と13条幸福追求権の関係を体系的に書ける。第二に、最大決平成27年12月16日・最大決令和3年6月23日の夫婦同氏制判決を射程で正確に書き分けられる。第三に、令和3年札幌地判から令和5年地裁判決までの同性婚違憲訴訟の流れと立法不作為の違憲審査まで含めた答案構成を完成させられる。
1. 条文を正確に読む
婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。 2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
条文の構造を分解する。24条1項は婚姻成立の要件として『両性の合意のみ』を要求し、夫婦の同等の権利と相互協力義務を定める。2項は婚姻・家族に関する立法に対し、個人の尊厳と両性の本質的平等を基準として要求する。1項の『両性』が同性カップルを排除する趣旨かが現代的論点であり、判例は『直接同性婚を保障する規定ではないが、否定する規定でもない』との立場(令和3年札幌地判)と『家族のあり方を国会の立法裁量に委ねる趣旨』との立場(令和4年大阪地判)に分かれる。 改正民法・改正前後で24条の文言は維持されている。
2. 趣旨——なぜ婚姻に憲法保障が必要か
24条の趣旨は、戦前の家制度を解体し、個人の尊厳と両性の本質的平等を家族生活の基本原理として確立することにある。1項は婚姻が当事者の合意のみによって成立することを保障し、家父長や戸主の同意を要求した戦前の制度を否定する。2項は婚姻・家族に関する立法に対し憲法上の制約を課し、立法裁量の限界を画する。 判例上、24条は13条(個人の尊厳)・14条(法の下の平等)と相互補完的に機能し、家族法領域の違憲審査における中核条文として位置付けられる。 同性婚や夫婦同氏制をめぐる現代的論点は、24条の射程を1項と2項のいずれで処理するかで結論が分かれる構造になっている。
3. 3つの論点——1項・2項・立法不作為
24条で失点しやすい3つの論点
① 1項の射程(同性婚を含むか)
判例は『両性の合意』が異性婚の保障規定であり同性婚の禁止規定ではないと解する(札幌地判令和3年3月17日)。同性カップルの婚姻類似の関係も13条幸福追求権・14条平等原則の対象となる。1項違反の主張は否定的だが、2項・14条との連動で違憲となりうる。
② 2項の立法裁量(夫婦同氏制・嫡出推定)
夫婦同氏制(民法750条)について最大決平成27年12月16日は合憲、最大決令和3年6月23日も合憲を維持したが、両決定とも『立法政策の問題として国会で議論すべき』と付言。2項は立法裁量を広く認めつつ、個人の尊厳と両性の本質的平等の観点で限界を画する。嫡出推定の改正(令和6年)も2項の射程内で行われた。
③ 立法不作為の違憲審査(同性婚訴訟)
札幌地判令和3年(14条違反・国賠請求棄却)・大阪地判令和4年(合憲)・東京地判令和4年(24条2項違反)・名古屋地判令和5年(24条2項・14条違反)・福岡地判令和5年(24条2項違反)と判決が分かれる。最高裁判断未確定(最高裁令和7年6月期日見込み)。論証では『立法不作為違憲性は明白性要件と必要性要件で判断する』枠組みを使う。
4. 重要判例
判例1
最大決平成27年12月16日(夫婦同氏制合憲)。本件は民法750条が憲法13条・14条・24条に違反するかが争われた事案で、最高裁は『夫婦同氏制は個人の尊厳と両性の本質的平等に違反せず合憲』と判示した。射程は、24条2項の立法裁量を広く認める枠組みとして令和3年再判断にも引き継がれている。 論証では『2項は立法政策に広く委ねる枠組み』と書く。
判例2
最大決令和3年6月23日(夫婦同氏制再判断・合憲維持)。本件は平成27年判決後の社会状況変化を踏まえ夫婦同氏制の合憲性が再度争われた事案で、最高裁は『社会状況の変化を考慮しても合憲性の判断を変更すべき事情は認められない』と判示した。
一方で複数の裁判官が補足意見・反対意見で立法的解決を促した点が注目される。射程は、24条2項の立法裁量の広さを再確認しつつ、立法府への課題提起として現代的に妥当する。
判例3
札幌地判令和3年3月17日(同性婚訴訟リーディングケース)。本件は同性カップルが婚姻届を不受理とされたことが憲法24条1項・2項・14条1項に違反するかが争われた事案で、札幌地裁は『同性愛者にも婚姻によって生じる法的効果を享受する利益を一切認めないことは合理的根拠を欠き14条1項違反』と判示した。 24条1項違反は否定したが、14条違反の枠組みを示した点で同性婚違憲訴訟のリーディングケースとなった。 射程は、後続の東京地判・名古屋地判・福岡地判が24条2項違反へと展開する基礎を提供した点にある。 論証では『14条平等原則と24条2項立法裁量の限界の交錯』と書く。
Elencoで「憲法24条」「婚姻の自由」「同性婚 違憲」を検索すると、本記事に加えて、幸福追求権(13条)・法の下の平等(14条)・人権の私人間効力を一括で参照できます。家族法領域の憲法問題は条文間の連関で得点が決まります。
5. 試験での出題傾向
司法試験論文式試験の憲法では、24条は家族法領域の必須論点として令和4年・令和5年と出題されている。予備試験でも複数回出題されている。出題形式は、同性婚・夫婦同氏制・嫡出推定・離婚後の再婚禁止期間・親権制度などを設定し、24条と13条・14条の連動した違憲審査を順に検討させる形が定番。 採点者が見ているのは、(i)24条1項と2項の射程を区別できるか、(ii)14条との連動で違憲審査基準を構築できるか、(iii)立法不作為違憲性の判断枠組み(明白性・必要性)を書けるか、の3点である。
6. 論証の型——そのまま答案に書ける形
規範定立
「憲法24条1項は婚姻の成立を当事者の合意のみに委ね、戦前の家制度を解体する趣旨である。判例は『両性』を異性婚の保障規定であり同性婚の禁止規定ではないと解する(札幌地判令和3年3月17日)。24条2項は婚姻・家族に関する立法に個人の尊厳と両性の本質的平等を要求し、立法裁量を広く認めつつ限界を画する。夫婦同氏制は最大決平成27年・令和3年で合憲とされたが、同性婚の不受理は札幌地判令和3年で14条違反、東京地判令和4年・名古屋地判令和5年・福岡地判令和5年で24条2項違反と判断され、最高裁判断未確定の状態にある。立法不作為違憲性は明白性要件と必要性要件で判断する」
当てはめのコツ
事実認定では、まず(i)論点が1項(婚姻成立要件)か2項(婚姻・家族に関する立法)かを区別し、次に(ii)14条平等原則との連動の必要性を判定し、その次に(iii)立法裁量の限界として個人の尊厳と両性の本質的平等の観点を当てはめ、続いて(iv)令和3年〜令和5年の同性婚地裁判決の射程で類型化し、最後に(v)立法不作為違憲性として明白性・必要性要件を検討する。 この5段階の手順を機械的に踏めば論述に詰まらない。 採点者は、24条1項違反のみで処理して2項・14条との連動を素通りする答案を減点する。 連動関係を明示する答案が高得点となる。
7. よくある間違い・落とし穴
- 落とし穴①:24条1項を同性婚の禁止規定と解する——判例は両性が異性婚の保障規定であり禁止規定ではないと判示(札幌地判令和3年)
- 落とし穴②:14条との連動を素通りする——同性婚訴訟では14条平等原則が中核論点。24条単独では論述が完結しない
- 落とし穴③:立法裁量を絶対視する——2項は立法裁量を認めつつ個人の尊厳と両性の本質的平等で限界を画する。無条件の裁量ではない
- 落とし穴④:地裁判決の射程を機械的に処理する——札幌(14条違反)・東京・名古屋・福岡(24条2項違反)・大阪(合憲)と判断が分かれる点を整理しないと失点
- 落とし穴⑤:立法不作為違憲性の枠組みを書かない——明白性要件・必要性要件・相当期間要件の3要件を判例の射程で論じる必要がある
8. 隣接論点との比較
混同しやすい論点との違い
24条 vs [13条幸福追求権](/blog/kenpo-13-kosei-tsuikyu)
前者は家族・婚姻領域の固有規定、後者は包括的人権の根拠規定。同性婚訴訟では24条と13条が連動する場面があり、自己決定権の延長として論じる構成も可能。
24条 vs [14条法の下の平等](/blog/kenpo-14-byodo-gensoku)
前者は家族領域の立法基準、後者は一般的平等原則。同性婚訴訟では14条1項の合理的根拠審査と24条2項の立法裁量限界が交錯する。札幌地判令和3年は14条違反枠組みを採用。
24条 vs [私人間効力](/blog/kenpo-ninken-shajin-kouka)
前者は対国家規範(立法に対する制約)、後者は私人間関係への憲法適用問題。家族法領域では国家による立法を介して私人間にも影響するため、間接適用説で処理する。
最大決平成27年12月16日・最大決令和3年6月23日(夫婦同氏制)・札幌地判令和3年3月17日(同性婚14条違反)の3件をセットで論証に組み込めば、24条の判例射程を網羅できる。論証では『24条1項と2項の射程区別、14条との連動、立法不作為違憲性の3要件で処理する』という型を固定すれば、採点者が要求する『判例の正確な引用』に確実に応えられる。
9. まとめ
24条の処理は、(i)論点を1項(成立要件)と2項(立法基準)で区別し、(ii)14条平等原則との連動を明示し、(iii)立法裁量の限界として個人の尊厳と両性の本質的平等を当てはめ、(iv)地裁判決群の射程で類型化し、(v)立法不作為違憲性の3要件を検討する、という5段階である。 札幌地判令和3年から福岡地判令和5年までの判例の流れを射程で整理し、最高裁判断未確定の状態で論じる型を固定すれば合格点に届く。 地裁レベルの判断分岐を整理しつつ立法政策論で締める答案が、合格者は実践している答案戦略である。