民事訴訟法179条は、証明を要しない事実として、裁判所に顕著な事実、当事者間に争いのない事実(自白事実)を挙げる。これに加えて、証明責任の分配をめぐる議論として法律要件分類説などが論じられる。本稿で179条の枠組みと証明責任の整理を扱う。
扱うのは、①179条の条文と不要証事実、②裁判所に顕著な事実、③自白事実と弁論主義第2テーゼ、④証明責任の分配(法律要件分類説)、⑤論証の組み立て、の順である。弁論主義全般は予備試験 民事訴訟法の学習法もあわせて参照してほしい。
条文と不要証事実
裁判所において当事者が自白した事実及び顕著な事実は、証明することを要しない。
179条は、(i) 当事者間で自白された事実、(ii) 裁判所に顕著な事実、を証明の対象から外す。これらの事実については、当事者が証拠を提出することなく、判決の基礎とすることができる。
裁判所に顕著な事実
裁判所に顕著な事実は、(i) 公知の事実(不特定多数の一般人が広く知っている事実)と、(ii) 職務上顕著な事実(裁判官が職務上知っている事実)に分かれるのが通説的整理である。 たとえば、社会的に広く知られた歴史的事件などが公知の事実、当該裁判所がした過去の判決の存在などが職務上顕著な事実の例として挙げられる。
自白事実と弁論主義第2テーゼ
当事者間で争いのない事実(裁判上の自白事実)については、裁判所はその事実をそのまま判決の基礎としなければならない(弁論主義第2テーゼ、自白の拘束力)。当事者が一旦行った自白の撤回は、原則として制限される。論文では、裁判上の自白の成立要件と、撤回の許される例外的場面を区別して整理する必要がある。
証明責任の分配——法律要件分類説
証明責任の分配については、法律要件分類説が通説的地位を占めてきた。
すなわち、各当事者は、自分に有利な法律効果を生じさせる法規の要件事実について、証明責任を負うとする立場である。請求原因事実は原告が、抗弁事実は被告が、再抗弁事実は原告が、それぞれ証明責任を負う、という整理になる。
論文では、本件における各事実が、どの当事者にとって有利な法律効果を生じさせる要件事実にあたるかを最初に切り分け、証明責任の所在を明らかにしたうえで、立証の評価を行う流れになる。
論証の組み立て方
179条と証明責任の論証
問題の所在
本件では、〇〇という事実について、証明の要否と、証明責任の所在が問題となる。
不要証事実の検討
当該事実が、裁判上の自白事実や裁判所に顕著な事実にあたれば、179条のもとで証明を要しない。
証明責任の分配
証明を要する事実については、法律要件分類説のもとで、当該事実がいずれの当事者にとって有利な法律効果を生じさせる要件事実かを評価し、証明責任の所在を確定する。
弁論主義との関係
自白事実については、弁論主義第2テーゼによる自白の拘束力が及び、裁判所は当該事実をそのまま判決の基礎にしなければならない。
当てはめ
本件では、〇〇という事実が自白されているか、顕著な事実にあたるか、証明責任が原告と被告のどちらにあるか、を整理して論じる。
結論
以上から、本件における立証の枠組みは〇〇となる。
よくある質問
Q. 顕著な事実にはどんなものがあるか
A.公知の事実(不特定多数の一般人が広く知っている事実)と、職務上顕著な事実(裁判官が職務上知っている事実)が代表例である。
前者は社会的に広く知られた事象、後者は同一裁判所の過去の判決の存在などが例として挙げられる。
Q. 自白を撤回することはできるか
A.裁判上の自白の撤回は、原則として制限される。
例外として、自白が真実に反し、かつ錯誤に基づくものであることが認められる場合などには、撤回が認められる方向となる。論点として整理し、本件事実から要件を評価する。
Q. 証明責任は誰が負うか
A.法律要件分類説のもとで、自分に有利な法律効果を生じさせる法規の要件事実について、各当事者が証明責任を負う。
請求原因は原告、抗弁は被告、再抗弁は原告、という具合に分配される。
Q. 間接事実は弁論主義の対象か
A.通説的整理では、弁論主義は主要事実を対象とし、間接事実や補助事実は対象外とする立場が採られてきた。
論文では、本件で問題となる事実が主要事実か間接事実かを切り分けたうえで、弁論主義の各テーゼを当てはめる。