予備試験の刑法論文は、構成要件→違法性→責任→共犯→罪数、という処理順序を骨格に組み立てるのが基本である。罪名が決まったあと、各段階で何を当てはめるかをあらかじめ手順化しておくと、答案構成が安定する。本稿でこの組み立て方を整理する。
扱うのは、①刑法論文の処理順序、②構成要件レベルの論点(因果関係・故意・錯誤など)、③違法性レベルの論点(正当防衛・緊急避難)、④責任レベルの論点(責任能力・違法性の意識)、⑤共犯と罪数、⑥論文の組み立て方、の順である。個別論点は[刑法36条 正当防衛](/blog/keiho-36-seitai-boei)・[刑法252条 横領罪](/blog/keiho-252-ouryou-zai)もあわせて参照してほしい。
刑法論文の処理順序
5段階の処理順序
1. 構成要件該当性
罪名を特定し、当該罪の構成要件(行為・結果・因果関係・故意など)を順に当てはめる。財産犯であれば財物性・占有・領得意思、人身犯であれば暴行・傷害・致死の連鎖など、罪ごとの構造を最初に押さえる。
2. 違法性阻却事由
正当防衛(36条)、緊急避難(37条)、正当業務行為(35条)などの違法性阻却事由を検討する。本件で問題となる阻却事由を1つに絞り、要件を順に当てはめる。
3. 責任阻却事由
責任能力(39条)、違法性の意識・違法性の錯誤、期待可能性など、責任レベルの論点を検討する。論点となる場合に限って論じ、問題にならない場面では簡潔に充足確認にとどめる。
4. 共犯
共同正犯(60条)・教唆犯(61条)・幇助犯(62条)の成否を検討する。実行行為への関与の程度や、共謀共同正犯における共謀の認定が中心となる。
5. 罪数
数罪が成立する場合の処理(観念的競合・牽連犯・併合罪)、一罪としての処理(包括一罪・接続犯)を、罪数論の枠組みで処理する。
構成要件レベル——因果関係と故意
構成要件レベルで論点となりやすいのは、因果関係、故意(とくに錯誤)、不真正不作為犯の作為義務などである。因果関係については、最決平成2年11月20日(大阪南港事件)が、行為の危険性が結果へと現実化したと評価できるかを基準とする整理(危険の現実化)を示しており、論文で繰り返し参照される。事実的因果関係(条件関係)と法的因果関係(危険の現実化)を切り分けて当てはめる。
故意・錯誤については、構成要件的故意(事実の認識)と違法性の意識を区別し、事実の錯誤と違法性の錯誤の区別を意識する。具体的事実の錯誤や因果関係の錯誤については、抽象的法定符合説のもとで、認識した事実と発生した事実が同じ構成要件内に収まるかを当てはめる。
違法性・責任レベル
違法性阻却事由としてもっとも論文で問われるのが正当防衛(36条)と緊急避難(37条)である。正当防衛では、急迫不正の侵害、防衛の意思、防衛行為の相当性が中心論点となる。緊急避難では、現在の危難、補充性、法益均衡が問題となる。論文では、本件で問題となる阻却事由を最初に特定し、要件を順に当てはめる。
責任レベルでは、責任能力(39条)、違法性の意識・違法性の錯誤、期待可能性などが論点となる。多くの事案では責任阻却事由は問題にならないため、論点として明確に挙がっていない場面では簡潔に充足を確認するにとどめ、構成要件・違法性に紙幅を割く。
共犯と罪数
共犯の局面では、まず共同正犯(60条)・教唆犯(61条)・幇助犯(62条)のどれが問題かを切り分ける。共同正犯では、共謀共同正犯としての処理が問われることが多く、共謀の存否、実行行為への関与、正犯意思などを本件事実から拾う。共犯と身分(65条)、共犯からの離脱、承継的共犯なども論点となる。
罪数論では、観念的競合(54条1項前段)・牽連犯(54条1項後段)・併合罪(45条以下)の区別、包括一罪・接続犯としての処理が問われる。本件における犯罪の数、行為と結果の関係、保護法益の同一性などを踏まえて、罪数の処理を行う。
学習の進め方
刑法学習の進め方
罪ごとの構成要件をテンプレート化
頻出の罪(殺人・傷害・窃盗・強盗・詐欺・横領など)について、構成要件の骨格を頭のなかでテンプレ化し、事案を見たら当該テンプレに当てはめる作業に入れるようにする。
判例は要旨で押さえる
判例集の網羅的な読解より、頻出判例(因果関係なら大阪南港事件、置忘れの占有なら最決S55.10.30など)を要旨で押さえる方が効率がよい。論文では判例の射程を本件事実に当てはめる作業が中心となる。
過去問で5段階を再現
予備試験の過去問を時間を計って解く。終わったあとに、構成要件→違法性→責任→共犯→罪数の各段階で取りこぼしがなかったかを振り返ると、処理の精度が上がる。
よくある質問
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