予備試験の民法論文は、事案から請求権を特定し、要件を本件事実に当てはめ、効果を具体的に書く、という3階層で整理して扱うと安定する。条文や論点を網羅的に詰め込む前に、この処理手順を固めるほうが、結果として点が伸びやすい。本稿で3階層の組み立て方と、2020年改正後の留意点を整理する。
扱うのは、①3階層の処理(請求権特定→要件検討→効果当てはめ)、②2020年改正の影響、③請求権の選択と併存、④論文での書き方、⑤学習の進め方、の順である。個別論点は[民法415条 債務不履行](/blog/minpo-415-saimu-furikou)や[民法703条 不当利得](/blog/minpo-703-futo-ritoku)もあわせて参照してほしい。
民法論文の3階層
予備試験の民法論文は、事案から請求権を特定し、その請求権の要件を当てはめ、最後に効果(金額・原状回復・解除の遡及効など)を具体的に書く、という3階層で整理できる。冒頭で請求権を取り違えると、その後の論述全体が論点ずれを起こすため、最初の請求権特定が最大の山場である。
3階層の整理
第1階層 請求権の特定
誰が誰に対して何を請求できるかを、冒頭で明確にする。契約解除(541条・542条)と債務不履行による損害賠償(415条)、不当利得返還(703条)と不法行為による損害賠償(709条)など、選択や併存が問題になる場面では、最初に整理しておく。
第2階層 要件の検討
選んだ請求権の要件を本件事実に当てはめる。改正前後で要件が変わった条文(415条1項の帰責事由、541条但書の軽微性、545条2項3項の果実・利息など)については、改正後の条文を前提に論じることが基本となる。
第3階層 効果の当てはめ
請求が認められた場合の効果を具体的に書く。履行利益・信頼利益・賃料相当損害金などの損害論、解除に伴う原状回復や遡及効、不当利得における現存利益などの場面で、どこまで請求できるかを本件事実に即して論じる。
2020年改正の影響
民法(債権関係)の改正により、答案で押さえるべき条文がいくつか変わった。代表的なものを挙げると、415条1項では『契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして』債務者の責めに帰することができない事由による場合の免責が明文化された。541条には但書として、不履行が軽微であるときの解除制限が加わった。545条には2項・3項として、原状回復における果実返還と金銭の利息に関する規律が明文化された。
423条の債権者代位権、424条以下の詐害行為取消権など、要件と効果が条文上整理し直された分野も多い。論文では、現行条文を前提に当てはめれば足りる場面が大半だが、改正前の判例の射程がどこまで現行法で維持されているかを意識しておくと安定する。
請求権の選択と併存
解除(541条等)と債務不履行に基づく損害賠償(415条)は、どちらか一方しか選べないわけではなく、両者が併存しうるというのが基本的な整理である。解除によって契約が遡及的に消滅したとしても、それまでに発生した損害について415条で請求できる場面はある。論文では、両請求権の関係を最初に整理してから、本件で問題となる側に紙幅を割く。
不当利得(703条)と不法行為(709条)の選択は、当事者と請求権の対応を整理することが鍵となる。たとえば、被害者Aから金銭を騙取したXに対しては709条、その金銭を受領した第三者Yに対しては703条、という具合に、誰が誰に何を請求するのかをまず確定する。
学習の進め方
民法学習の進め方
条文と論証の型をセットで読む
条文を読むときに、その条文が論文でどの請求権の構成要件として使われるかをセットで意識する。要件・効果がどの順番で論じられるかが頭に入っていると、過去問演習の理解が早くなる。
判例は要旨で押さえる
判例集を網羅的に読むより、頻出論点に絞って、規範部分を要旨でしっかり押さえる方が効率がよい。論文では判旨そのものよりも、規範を本件事実に当てはめる作業に重みがある。
過去問で3階層を実戦する
予備試験の過去問を、時間を計って解く。終わったあとに、(i) 請求権特定でぶれていないか、(ii) 要件のうちどこに紙幅を割けたか、(iii) 効果を具体的に書けたか、を振り返ると次回の精度が上がる。
よくある質問
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