故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
民法709条は不法行為の一般規定であり、司法試験・予備試験の民法において最重要条文の一つである。4つの要件すべての充足が必要で、各要件の認定と論証が答案の骨格を決める。
4要件の構造
民法709条 構成要件分析
① 故意または過失
「故意」は結果発生を認識・意欲すること。「過失」は結果発生を予見できたのに注意義務を怠ること(予見可能性 + 結果回避義務違反)。過失の判断は行為時の一般人基準(客観的過失)が通説・判例。職業的専門家(医師・弁護士等)は職業的注意義務が加重される。
② 権利または法律上保護される利益の侵害
従来「権利侵害」と規定されていたが、2004年改正で「法律上保護される利益」も保護対象に明記(宴のあと事件を契機とした立法的解決)。プライバシー・純粋経済的損失・環境利益なども保護されうる。利益の性質・重要性に応じて保護の程度が異なる。
③ 損害の発生
財産的損害(積極損害・消極損害)と非財産的損害(慰謝料)の両方が対象。損害の発生と損害額の両方を主張・立証する必要がある(立証責任は被害者側)。損益相殺・過失相殺(722条2項)により実際の賠償額が調整される。
④ 因果関係
侵害行為と損害の間の相当因果関係が必要(416条類推適用・大判大正15年)。通常損害は当然賠償の対象。特別損害は行為者が予見可能であった場合に賠償対象となる。医療訴訟・公害訴訟では因果関係の証明が最大の争点になる。
試験頻出の応用論点
- 共同不法行為(719条):複数の行為者がいる場合の連帯責任
- 使用者責任(715条):被用者が第三者に損害を与えた場合の使用者の責任
- 工作物責任(717条):土地工作物の瑕疵による損害の賠償
- 過失相殺(722条2項):被害者側の過失による賠償額の減額
- 消滅時効(724条):知った時から3年 or 行為時から20年
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