刑法211条とは
()
刑法211条は業務上の過失により人を死傷させた場合と、重大な過失により人を死傷させた場合を規定する。業務上過失致死傷は5年以下の懲役・禁錮または100万円以下の罰金で、過失致死傷(210条・209条)より重く処罰される。
「業務」の定義
判例・通説は「業務」を「社会生活上の地位に基づき反復継続して行う行為であって、他人の生命・身体等に危害を加えるおそれのある行為」と定義する。
- 職業・営業である必要はない(無償でも可)
- 反復継続性が必要(1回限りでは業務に当たらない)
- 他人の生命・身体への危険性が内在することが必要
- 自動車運転(道路交通法上の運転)→ 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(2013年)で別途規定化(「自動車運転死傷行為処罰法」)
過失論:旧過失論と新過失論
旧過失論(意思説)
新過失論(行為無価値論)
信頼の原則
重要判例
- 最判昭和26.6.7:競馬の騎手は「業務」に当たる(反復継続性・危険性あり)
- 最判昭和33.4.18:柔道の稽古で死傷事故→指導者の業務上過失致死が成立
- 最決平成元.3.14(信頼の原則):交差点で優先道路を直進中に無謀に進入してきた車に衝突→直進車の運転者に過失なし
- 最決平成17.11.15(予見可能性の具体性):どの程度具体的な予見が必要かについて、「予見される危険の内容が特定されていれば足り、結果の詳細まで予見する必要はない」
自動車運転過失致死傷は2013年の特別法(自動車運転死傷行為処罰法)で独立規定化。刑法211条は医療過誤・建設工事事故・食中毒などが主な適用場面になった。