刑法2026-04-1310

刑法36条(正当防衛)— 成立要件の論証と過剰防衛・誤想防衛の処理

急迫性・防衛の意思・相当性の3要件を正確に論証する。過剰防衛・誤想防衛・誤想過剰防衛の処理まで、司法試験・予備試験の頻出論点を網羅的に解説。

正当防衛(刑法36条)は、刑法総論の中で最も出題頻度が高い論点のひとつだ。条文は短いが、判例・学説の蓄積が厚く、「急迫性」「防衛の意思」「相当性」の各要件について精緻な論証が求められる。

条文を正確に読む

刑法第36条正当防衛

急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。 2 防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。

図解正当防衛・過剰防衛・緊急避難の比較
正当防衛・過剰防衛・緊急避難の比較

正当防衛の成立要件(5要件)

刑法36条1項の成立要件

①急迫性

侵害が現在し、またはまさに始まろうとしていること(最判昭和46年)。自招侵害・積極的加害意思がある場合は急迫性が否定されうる。

②不正の侵害

違法な侵害であること。正当行為・緊急避難に対しては正当防衛不成立。侵害者の責任能力は不要。

③防衛の意思

侵害を認識しつつ防衛しようとする意思。専ら攻撃意思のみの場合は否定(最判昭和50年)。防衛意思と攻撃意思が併存してもよい。

④防衛行為性

防衛のためにした行為であること(目的・手段の対応)。

⑤相当性(やむを得ず)

防衛行為が必要最小限度であること。防衛行為と侵害の均衡は不要だが、著しく均衡を失してはならない。

過剰防衛(36条2項)

防衛行為が「相当性」を超えた場合、正当防衛は成立せず過剰防衛となる(36条2項)。過剰防衛は刑事責任が発生するが、情状による刑の減軽・免除が認められる。過剰防衛の成否は①侵害の急迫性はある+②相当性を超えた、という構造で論じる。

図解正当防衛の5要件フローチャート
正当防衛の5要件フローチャート

誤想防衛・誤想過剰防衛

錯誤がある場合の処理

誤想防衛

侵害がないのに侵害があると誤信して防衛行為をした場合。故意犯成立なし(事実の錯誤)。過失犯の成否は過失の有無による。

誤想過剰防衛

侵害があると誤信して、かつ相当性を超えた行為をした場合。故意犯不成立。36条2項を類推適用して刑の減軽・免除の余地あり(判例)。

自招侵害の処理

故意に侵害を招いた場合(自招侵害)、急迫性が否定される。ただし「侵害と反撃行為との間に量的・質的均衡がある場合」には正当防衛が認められる余地がある(最判平成20年)。試験では「侵害の誘致→急迫性否定」の論理を明示すること。

Elenco で刑法36条を検索すると、正当防衛・緊急避難・過剰防衛の要件比較表をAIが即座に提示します。関連判例(最判昭和46年・最判平成20年)へのリンクも表示されます。