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公開 2026.05.07最終更新 2026.05.18

刑法108条(現住建造物等放火罪)——3類型と焼損の整理

この記事のポイント

刑法108条の3類型(現住・現在・汽車等)と焼損の判断枠組み(独立燃焼説)について、最判昭和25年12月14日・最決平成元年7月7日・最決平成9年10月21日を踏まえて整理する。

刑法108条は条文1行のなかに『放火』『現住建造物等』『焼損』という複数の構成要件を含み、答案では3類型の振り分けと焼損の認定で筆が止まりやすい。本稿では、3類型の整理と独立燃焼説の判例を手掛かりに、論証の組み立て方まで通して扱う。

①108条の3類型(現住・現在・汽車等)、②焼損の判断枠組み(独立燃焼説)、③109条との区別、④論証の組み立て方、の順で扱う。住居侵入と組み合わせて出題される事案では 刑法130条 住居侵入 を、財産犯と複合する事案では 刑法235条 窃盗罪 も併読してほしい。

108条の3類型

条文
刑法108条(現住建造物等放火罪)

放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

108条は『現に人が住居に使用している建造物』『現に人がいる建造物』『汽車・電車・艦船・鉱坑(のうち現住または現在のもの)』の3類型を対象とする。答案では、本問の建造物がどの類型に当たるかを冒頭で1行で示すと、以後の検討が整理される。

108条 3類型の整理

現住建造物

現に人が住居に使用している建造物。最決平成9年10月21日刑集51巻9号755頁は、家族殺害後に家屋を放火した事案で、行為時に居住者が殺害されていても、当該家屋が居住の用に供されている事実があれば現住建造物に当たる旨を判示したものとして引かれる。一時的な居住者の不在を理由に現住性を否定する書き方には注意が必要である。

現在建造物

住居に使用されていなくても、行為時に人がいる建造物。オフィスビル・倉庫・工場で従業員や警備員が在勤している場面が想定される。行為者が現在の事実を認識していたか(故意)は、別途構成要件的故意の段階で検討する。

汽車・電車・艦船・鉱坑

明文で列挙された対象のうち、現に人が住居に使用しているか現に人がいるものに限られる。無人運転の貨物列車のように、住居でもなく行為時に人もいないものは、108条ではなく109条1項の対象として整理される。

焼損の判断枠組み(独立燃焼説)

108条の核となる『焼損』について、判例は独立燃焼説を採用していると一般に理解されている。最判昭和25年12月14日刑集4巻12号2548頁は、火が媒介物を離れて目的物それ自体において独立して燃焼を継続する状態に達した時点で焼損が成立する旨を判示した。 最決平成元年7月7日刑集43巻7号607頁も、建物の一部が炭化した段階で焼損を認める判断を示した事例として引用される。

学説には、目的物の効用が喪失する程度の燃焼を要するとする効用喪失説や、毀棄罪との均衡を考える毀棄説などがあるが、答案では判例の独立燃焼説を基本に据え、本件の燃焼状況が独立燃焼の段階に達しているかを当てはめで示すのが標準的な書き方になる。

刑法108条 3類型と焼損の判定フロー
刑法108条 3類型と焼損の判定3類型のいずれに当たるか(現住・現在・汽車等)居住の用に供されている事実があるか(最決H9.10.21)独立燃焼の段階に達したか(最判S25.12.14・最決H1.7.7)該当しない場合は109条1項との区別を示す

109条との区別

109条1項(非現住建造物等放火罪)は、現に人が住居に使用せず、かつ現に人がいない建造物を対象とする。108条と109条の境界は、行為時に人がいたか、住居の用に供されていたか、に集約される。長期間居住者が不在で家具も搬出されているような空き家については、住居性が失われていないかを答案で意識的に検討すると、108条と109条の振り分けが整理される。

また、108条・109条1項は抽象的危険犯と理解されており、公共の危険の発生は別途要件とされない。これに対し109条2項(自己所有非現住建造物)・110条(建造物等以外放火)は具体的危険犯と整理されるため、公共の危険の発生を当てはめで論じる必要がある。

論証の組み立て方

108条 論証の型

問題の所在

本件で問題となるのは、Xの放火行為が刑法108条(現住建造物等放火罪)を構成するかである。

構成要件と争点

108条は①放火②現住建造物等③焼損の3要件を要求しており、本件で特に問題となるのは〇〇要件である。

判例規範

焼損については、最判昭和25年12月14日が、火が媒介物を離れて目的物それ自体において独立して燃焼を継続する状態に達した時点で焼損が成立する旨を判示している。現住性については、最決平成9年10月21日が、居住の用に供されている事実があれば現住に当たるとした。

規範の趣旨

公共危険罪としての性格と、媒介物からの自立燃焼により公共危険が現実化する点を踏まえた整理と理解される。

当てはめ

本件では、火が〇〇から〇〇に移り独立して燃焼している事実があり、独立燃焼の段階に達しているといえる(あるいはそうではない)。

結論

以上から、Xの行為は108条を構成する(あるいは109条1項を構成する)。

よくある誤解

よくある質問

Q. 行為時に居住者が不在なら現住建造物には当たらないか

A.最決平成9年10月21日は、家族殺害後の家屋への放火事案で、居住の用に供されている事実があれば現住建造物に当たる旨を判示している。

一時的な不在のみを根拠に現住性を否定する整理は採られない。

Q. 焼損は目的物の効用が失われた時点で成立するか

A.判例は、火が媒介物を離れて目的物それ自体において独立して燃焼を継続する状態に達した時点で焼損が成立する立場(独立燃焼説)と整理される。

効用喪失説は学説の整理で、答案では判例の枠組みを基本に据えるのが穏当である。

Q. 108条と109条1項はどう書き分けるか

A.行為時の現住性・現在性で振り分ける。

住居性については、長期間の不在や家具の搬出など、住居としての用に供されていない事情があるかどうかを当てはめで検討する。

Q. 公共の危険の発生は108条でも当てはめが必要か

A.108条・109条1項は抽象的危険犯と整理されているため、公共の危険の発生は構成要件要素として要件化されていない。

これに対し109条2項・110条は具体的危険犯と整理されるため、公共の危険の発生を当てはめで論じる必要がある。

放火罪と他罪との複合事例では、住居侵入は 刑法130条 住居侵入、財産的処分との関係は 刑法235条 窃盗罪 を併せて整理しておくと、答案の構成が安定する。

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