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不動産の売買の先取特権は、不動産の代価及びその利息に関し、その不動産について存在する。
規律
不動産売買の先取特権は、不動産の代価および利息に関し、その不動産について存在する。
趣旨
売主が引き渡した不動産自体に代金回収のための優先権を認める。動産売買先取特権(321)の不動産版。
対抗要件
340条で売買契約と同時に「代価または利息の弁済がされていない旨」を登記。事後登記では対抗力を持たない。
順位
331条で不動産先取特権の中で第3順位(保存・工事に劣後)。同一不動産が順次転売された場合、売主相互間では売買の前後(331条2項)。
この条文の練習問題を解く
一般の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、第三百六条各号に掲げる順序に従う。
2一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合には、特別の先取特権は、一般の先取特権に優先する。
3ただし、共益の費用の先取特権は、その利益を受けたすべての債権者に対して優先する効力を有する。
規律
一般先取特権相互の競合は306条各号順序(1項)。一般先取特権と特別先取特権の競合では特別先取特権が優先(2項本文)。ただし共益費用の先取特権は受益者全員に優先する(2項但書)。
趣旨
順位ルールにより複数先取特権の競合を整理。物的牽連性のある特別先取特権を一般先取特権に優先させ、共益費用は他債権者にも利益を与える性質から例外的に常時優先。
一般先取特権の順位(1項)
①共益費用、②雇用関係、③子の監護費用、④葬式費用、⑤日用品供給の順。
共益費用の常時優先(2項但書)
共益費用は他債権者の配当原資を作り出した功労ゆえ、特別先取特権・登記抵当権より優先する例外。担保物権論で最も強い優先順位。
この条文の練習問題を解く
同一の動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、次に掲げる順序に従う。
2この場合において、第二号に掲げる動産の保存の先取特権について数人の保存者があるときは、後の保存者が前の保存者に優先する。
3不動産の賃貸、旅館の宿泊及び運輸の先取特権
4動産の保存の先取特権
5動産の売買、種苗又は肥料の供給、農業の労務及び工業の労務の先取特権
6前項の場合において、第一順位の先取特権者は、その債権取得の時において第二順位又は第三順位の先取特権者があることを知っていたときは、これらの者に対して優先権を行使することができない。
7第一順位の先取特権者のために物を保存した者に対しても、同様とする。
8果実に関しては、第一の順位は農業の労務に従事する者に、第二の順位は種苗又は肥料の供給者に、第三の順位は土地の賃貸人に属する。
規律
動産特別先取特権相互の競合順位は①不動産賃貸・旅館宿泊・運輸、②動産保存、③動産売買・種苗肥料・農業労務・工業労務の順(1項)。第1順位者が取得時に第2・3順位者の存在を知っていれば優先権行使不可(2項)。果実に関しては①農業労務、②種苗肥料供給、③土地賃貸人の順(3項)。
趣旨
動産特別先取特権の競合解決。事実的支配型を最優先(1号)、価値維持型を2位(2号)、信用関係型を3位(3号)と段階化。
2項の悪意者排除
第1順位者が下位順位者の存在を悪意で先取特権を取得した場合、優先権を主張できない。信義則的調整。動産保存者に対する第1順位者も同様。
3項の果実特則
果実については労務提供者を最優先とする例外順位。植え付けから収穫までの労働貢献を最重視する政策判断。
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同一の不動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、第三百二十五条各号に掲げる順序に従う。
2同一の不動産について売買が順次された場合には、売主相互間における不動産売買の先取特権の優先権の順位は、売買の前後による。
規律
不動産特別先取特権相互の競合順位は325条各号順序=保存→工事→売買(1項)。同一不動産が順次売買された場合、売主相互間における不動産売買先取特権の順位は売買の前後(2項)。
趣旨
不動産価値の維持・増加・移転の3段階で順位を設定。物的牽連性の強さに対応した順位付け。
1項順位
①保存(価値減少防止)>②工事(価値増加)>③売買(権利移転)。維持の方が増加より優先される論理は、保存なくして増加なしという発想。
2項の意義
順次転売されたABCDの売主間では、最初の売主A>次の売主B>その次の売主Cの順。古い売主ほど優先する直感に反する規律だが、最初の売買が成立しなければ後の売買も成立しないという理屈。
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同一の目的物について同一順位の先取特権者が数人あるときは、各先取特権者は、その債権額の割合に応じて弁済を受ける。
規律
同一目的物について同一順位の先取特権者が数人あるときは、各先取特権者は債権額の割合に応じて弁済を受ける。
趣旨
同順位者間では債権者平等原則(按分弁済)。担保物権の優先性は他順位者との関係であって、同順位内では公平が要求される。
適用場面
①一般先取特権で複数の同種債権者(複数の使用人の賃金等)、②動産先取特権の同順位類型内の競合、③同一売買売主が複数いる場合等。
他担保物権との対比
抵当権では同順位は実務上稀(順位1番複数等)だが、先取特権では同順位が頻発するため明文化。
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先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができない。
動産先取特権の追及効制限
動産について先取特権を有する者は、債務者がその動産を第三取得者に引き渡した後はその動産について先取特権を行使できない。
趣旨
動産取引の安全保護。動産の公示の困難性に対応して善意の第三取得者を保護する。
「引渡し」の意義(判例)
占有改定を含む(最判昭62・11・10)。
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先取特権と動産質権とが競合する場合には、動産質権者は、第三百三十条の規定による第一順位の先取特権者と同一の権利を有する。
規律
先取特権と動産質権が競合する場合、動産質権者は330条の第1順位先取特権者と同一の権利を有する。
趣旨
動産質権は質権者が現実的占有を有することから、事実的支配型先取特権(不動産賃貸・旅館宿泊・運輸)と同等の優先性を認める。占有の対外的公示力を根拠とする。
具体的順位
動産質権 = 第1順位先取特権 > 動産保存 > 動産売買等。動産質権者は事実上、ほぼ最優先で弁済を受ける立場。
実務上の意義
動産質権は占有改定が禁止される(345条)ため現実占有を維持する必要があり、その負担と引き換えに最強の優先弁済力を得る。
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一般の先取特権者は、まず不動産以外の財産から弁済を受け、なお不足があるのでなければ、不動産から弁済を受けることができない。
2一般の先取特権者は、不動産については、まず特別担保の目的とされていないものから弁済を受けなければならない。
3一般の先取特権者は、前二項の規定に従って配当に加入することを怠ったときは、その配当加入をしたならば弁済を受けることができた額については、登記をした第三者に対してその先取特権を行使することができない。
4前三項の規定は、不動産以外の財産の代価に先立って不動産の代価を配当し、又は他の不動産の代価に先立って特別担保の目的である不動産の代価を配当する場合には、適用しない。
規律
一般先取特権者は、まず不動産以外の財産から弁済を受け、不足あれば不動産から弁済(1項)。不動産では特別担保未設定のものから先に弁済(2項)。1・2項違反で配当加入を怠れば、登記第三者に対して先取特権を行使できない(3項)。不動産代価が動産代価に先立つ場合等は適用なし(4項)。
趣旨
一般先取特権の総財産担保性を制限し、抵当権者等の登記担保権者を保護。一般先取特権者には動産優先・無担保不動産優先の負担を課す代わりに、無登記対抗力を336条で認める。
順位の段階
①動産(不動産以外)→②無担保不動産→③特別担保(抵当権等)目的不動産。後位ほど他債権者の利益が大きい財産。
3項の制裁
順序を守らず配当加入を怠ると、登記第三者に対し失権効。怠った債権者は自業自得として登記担保権者の信頼を保護。
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一般の先取特権は、不動産について登記をしなくても、特別担保を有しない債権者に対抗することができる。
2ただし、登記をした第三者に対しては、この限りでない。
規律
一般先取特権は不動産について登記をしなくても、特別担保を有しない債権者に対抗できる。ただし登記第三者に対してはこの限りでない。
趣旨
一般先取特権は社会政策的に保護される性質ゆえ、登記なくして特別担保なき一般債権者に対抗可能。ただし対抗要件主義との調和のため、登記担保権者には登記がない限り劣後する。
「特別担保」の意義
抵当権・質権・特別先取特権等、登記または占有による公示を伴う担保権。これら登記第三者には先取特権の登記なくしては対抗不可。
対抗要件主義との関係
177条の例外的扱い。社会政策的優先と取引安全の調和を、登記担保権者保護で図る妥協的規律。
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不動産の保存の先取特権の効力を保存するためには、保存行為が完了した後直ちに登記をしなければならない。
規律
不動産保存の先取特権の効力を保存するためには、保存行為完了後直ちに登記しなければならない。
趣旨
保存行為の事後でも登記を可能とすることで保存者を保護。ただし「直ちに」の時間制約により他債権者の予測可能性を維持。
「直ちに」の意義
保存行為完了後の合理的期間内。判例は数日から1か月程度を許容する傾向。具体的事案で個別判断。
登記の効果
本条+339条により、抵当権の登記後でも保存先取特権の登記をすれば抵当権に優先する逆転効。物的価値維持の功労を厚く保護。
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不動産の工事の先取特権の効力を保存するためには、工事を始める前にその費用の予算額を登記しなければならない。
2この場合において、工事の費用が予算額を超えるときは、先取特権は、その超過額については存在しない。
3工事によって生じた不動産の増価額は、配当加入の時に、裁判所が選任した鑑定人に評価させなければならない。
規律
不動産工事の先取特権の効力保存には工事開始前にその費用予算額を登記(1項前段)。工事費用が予算額を超えるときは超過分について先取特権は存在しない(1項後段)。工事による不動産増価額は配当加入時に裁判所選任鑑定人が評価(2項)。
趣旨
工事先取特権は将来の工事費債権を担保するため、事前登記主義により他債権者の予測可能性を確保。予算超過分は無担保とし、過剰登記による濫用を防止。
予算額登記の意義
工事着工前の事前登記により、後発の抵当権者等は工事先取特権の存在と上限額を把握可能。物権の公示原則を貫徹。
鑑定人評価(2項)
現存増価額は配当加入時点で裁判所選任鑑定人が評価。客観性確保のための制度。
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前二条の規定に従って登記をした先取特権は、抵当権に先立って行使することができる。
登記した不動産保存・工事先取特権の優先
不動産保存の先取特権と不動産工事の先取特権は、登記をした場合、登記の時期にかかわらず抵当権に優先する。
趣旨
保存・工事費用が不動産の価値維持・増加に直接寄与しているため、抵当権より優先させる政策判断。
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不動産の売買の先取特権の効力を保存するためには、売買契約と同時に、不動産の代価又はその利息の弁済がされていない旨を登記しなければならない。
規律
不動産売買の先取特権の効力保存には、売買契約と同時に不動産の代価または利息の弁済がされていない旨を登記しなければならない。
趣旨
売買と同時の登記を要件とすることで、買主による即時転売や担保設定から売主の代金債権を保護。同時登記主義により事後的偽装を防止。
同時性の意義
売買契約締結時から所有権移転登記時までの間が「同時」の許容範囲(実務)。所有権移転登記より明らかに遅れる場合は要件不充足。
登記事項
「代価または利息の弁済がされていない旨」を明示。被担保債権の存在を公示し、後発の抵当権者・転得者の予測可能性を確保。
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先取特権の効力については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、抵当権に関する規定を準用する。
抵当権規定の準用
先取特権の効力については、本節に定めるもののほか、その性質に反しない限り抵当権の規定を準用する。
実益
順位・実行手続・物上代位の細則等を抵当権規定で補完する。
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質権者は、その債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有し、かつ、その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
質権の目的・効力
債権者がその債権の担保として債務者または第三者から受け取った物を占有し、その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利。
性質
約定担保物権。留置的効力+優先弁済的効力の両者を備える。
目的物
動産・不動産・財産権(債権・株式・知的財産権等)。譲渡できない物は質権の目的にできない(343条)。
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質権は、譲り渡すことができない物をその目的とすることができない。
規律
質権は、譲り渡すことができない物をその目的とすることができない。
趣旨
質権実行(競売)には換価可能性が前提となるため、譲渡禁止物(一身専属権・国の特定財産等)は質権の対象たり得ない。
例外
譲渡制限特約付き債権は466条2項・3項により債権譲渡が原則有効であるため、債権質も可能。
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質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる。
要物契約性
質権の設定は債権者にその目的物を引き渡すことによって効力を生ずる。
趣旨
公示機能の確保と留置的効力による弁済促進。
引渡しの内容
現実の引渡し・簡易の引渡し・指図による占有移転は可。345条により占有改定は不可。
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質権者は、質権設定者に、自己に代わって質物の占有をさせることができない。
設定者代理占有の禁止
質権者は質権設定者にその目的物の占有をさせることができない。
趣旨
344条の引渡し要件と公示原則を実質的に維持するため。占有改定による質権設定を排除する効果。
違反の効果
質権は対抗力を失うか不成立(通説は不成立)。
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質権は、元本、利息、違約金、質権の実行の費用、質物の保存の費用及び債務の不履行又は質物の隠れた瑕疵によって生じた損害の賠償を担保する。
2ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。
被担保債権の範囲
質権は、元本、利息、違約金、質権実行の費用、質物保存の費用、および債務不履行・質物の隠れた瑕疵による損害賠償を担保する。ただし、設定行為に別段の定めがあるときはこの限りでない。
趣旨
抵当権375条が利息を最後の2年分に制限するのと異なり、質権は占有を通じて優先順位が明確であるため、利息制限がない。
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質権者は、前条に規定する債権の弁済を受けるまでは、質物を留置することができる。
2ただし、この権利は、自己に対して優先権を有する債権者に対抗することができない。
留置的効力(本文)
質権者は被担保債権の弁済を受けるまで質物を留置できる。
優先する権利への制限(但書)
自己に対して優先権を有する債権者には対抗できない。
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質権者は、その権利の存続期間内において、自己の責任で、質物について、転質をすることができる。
2この場合において、転質をしたことによって生じた損失については、不可抗力によるものであっても、その責任を負う。
責任転質
質権者は質権の存続期間内において自己の責任で質物について転質をすることができる。
責任の加重
転質に際し不可抗力により生じた損害についても責任を負う。
承諾転質との区別
設定者の承諾を得てする「承諾転質」は責任加重なし(解釈)。
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質権設定者は、設定行為又は債務の弁済期前の契約において、質権者に弁済として質物の所有権を取得させ、その他法律に定める方法によらないで質物を処分させることを約することができない。
流質契約の禁止
質権設定者は設定行為または債務の弁済期前の契約において、質権者に弁済として質物の所有権を取得させることや法律に定める方法以外で処分させることを約することができない。
趣旨
債務者保護。窮迫した債務者が不当に低廉な価格で担保物を失うのを防ぐ。
例外
商行為による債権担保は流質契約有効(商法515条)。弁済期後の契約も有効。
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第二百九十六条から第三百条まで及び第三百四条の規定は、質権について準用する。
留置権・先取特権規定の準用
296条から300条までおよび304条の規定は質権について準用する。
準用される主な効果
不可分性(296)・果実収取権(297)・善管注意義務(298)・費用償還(299)・行使と時効進行(300)・物上代位(304)。
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他人の債務を担保するため質権を設定した者は、その債務を弁済し、又は質権の実行によって質物の所有権を失ったときは、保証債務に関する規定に従い、債務者に対して求償権を有する。
求償権
他人の債務を担保するため質権を設定した者(物上保証人)が債務を弁済し、または質権の実行により質物の所有権を失ったときは、保証債務に関する規定に従い債務者に対して求償権を有する。
趣旨
物上保証人と保証人は経済的機能が類似するため、求償関係を保証人と同様に処理(459条以下準用)。
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動産質権者は、継続して質物を占有しなければ、その質権をもって第三者に対抗することができない。
動産質の対抗要件
動産質権者は継続して質物を占有しなければ第三者に対抗できない。
占有喪失の効果
対抗力喪失。ただし占有回収の訴え(200条)により占有を回復すれば対抗力も回復する(判例)。
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動産質権者は、質物の占有を奪われたときは、占有回収の訴えによってのみ、その質物を回復することができる。
質権の追及効
動産質権者は、質物を奪われたときは、占有回収の訴え(200条)によってのみ質物を回復することができる。
趣旨
動産質は占有を効力存続要件(352条)とするため、占有を失うと優先弁済権を主張できなくなる。回収手段を占有訴権に限定し、即時取得(192条)による第三者保護とのバランスを取る。
対象
「奪われた」とは盗難・横領等の意思に基づかない占有喪失を指し、任意の交付や遺失は含まれない(200条の準用)。
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動産質権者は、その債権の弁済を受けないときは、正当な理由がある場合に限り、鑑定人の評価に従い質物をもって直ちに弁済に充てることを裁判所に請求することができる。
2この場合において、動産質権者は、あらかじめ、その請求をする旨を債務者に通知しなければならない。
弁済期到来後の処分権限
動産質権者は、被担保債権の弁済を受けない場合、正当な理由があるときは、鑑定人の評価に従って質物の所有権を取得し、または法令の定める方法により質物を換価して優先弁済に充てることを、裁判所に請求できる。
趣旨
競売手続を経ない簡易迅速な換価手段。担保価額の客観性確保のため鑑定人評価・裁判所許可を要件化。
流質契約との関係
事前の流質契約は禁止(349条)だが、弁済期到来後の処分許可は本条で認められる。
この条文の練習問題を解く
同一の動産について数個の質権が設定されたときは、その質権の順位は、設定の前後による。
順位
同一の動産につき数個の質権が設定されたときは、その質権の順位は設定の前後による。
趣旨
動産質は占有移転を要するため、後順位質権者が質物の占有を取得することは稀(占有改定型は対抗要件不備)。順位ルールは観念的整理に止まる。
この条文の練習問題を解く
不動産質権者は、質権の目的である不動産の用法に従い、その使用及び収益をすることができる。
使用収益権限
不動産質権者は、質権の目的である不動産の用法に従い、その使用および収益をすることができる。
趣旨
不動産質では占有が質権者に移転するため、使用収益権を質権者に与えることが合理的。代わりに357・358条で利息請求権を制限。
この条文の練習問題を解く
不動産質権者は、管理の費用を支払い、その他不動産に関する負担を負う。
管理費用等の負担
不動産質権者は、管理の費用を支払い、その他不動産に関する負担を負う。
趣旨
使用収益権(356条)を享受する以上、それに対応する税金・修繕費等の負担も質権者が引き受けるのが対価関係上妥当。
この条文の練習問題を解く
不動産質権者は、その債権の利息を請求することができない。
利息請求権の排除
不動産質権者は、被担保債権の利息を請求することができない。
趣旨
使用収益による果実取得が利息に相当するため、二重取りを防止。356-358条は不動産質の経済構造(収益質型)を体系的に設計。
別段の定め
359条により設定行為で別段の定めをすれば利息請求も可能。
この条文の練習問題を解く
前三条の規定は、設定行為に別段の定めがあるとき、又は担保不動産収益執行(民事執行法第百八十条第二号に規定する担保不動産収益執行をいう。以下同じ。)の開始があったときは、適用しない。
規律
356条から358条までの規定は、設定行為に別段の定めがある場合、または被担保債権について不履行があり担保不動産収益執行が開始された場合には適用しない。
趣旨
356-358条はあくまでデフォルトルール。当事者は使用収益型/利息型を自由に選択でき、また執行開始後は通常の抵当権類似の処理に切り替わる。
この条文の練習問題を解く
不動産質権の存続期間は、十年を超えることができない。
2設定行為でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、十年とする。
3不動産質権の設定は、更新することができる。
4ただし、その存続期間は、更新の時から十年を超えることができない。
存続期間(1項)
不動産質権の存続期間は10年を超えることができない。これを超える期間を定めた場合は10年に短縮される。
更新(2項)
存続期間は更新できるが、更新の時から10年を超えることができない。
趣旨
不動産の利用権を質権者に長期間集中させることは経済的・社会的に不合理であり、最長10年で区切る。
この条文の練習問題を解く
不動産質権については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、次章(抵当権)の規定を準用する。
規律
不動産質権については、本節(355-360条)に特別の定めがあるもののほか、抵当権の規定(369-398条の22)が準用される。
趣旨
不動産質と抵当権はいずれも不動産担保物権であり、優先弁済・物上代位・第三取得者保護等の規律を共通化することで体系的整合性を確保。
この条文の練習問題を解く
質権は、財産権をその目的とすることができる。
2前項の質権については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、前三節(総則、動産質及び不動産質)の規定を準用する。
権利質(1項)
質権は財産権をその目的とすることができる。債権・株式・知的財産権等。
規定の準用(2項)
本節の規定(債権質)の適用に当たり、その性質に反しない限り363条から366条までおよび動産質・不動産質の規定を準用する。
この条文の練習問題を解く
削除
削除
本条は2003年(平成15年)改正により削除。改正前は債権質の対抗要件として証書交付を要求していたが、現行法は364条の通知・承諾方式に統一。
この条文の練習問題を解く
債権を目的とする質権の設定(現に発生していない債権を目的とするものを含む。)は、第四百六十七条の規定に従い、第三債務者にその質権の設定を通知し、又は第三債務者がこれを承諾しなければ、これをもって第三債務者その他の第三者に対抗することができない。
債権質の対抗要件
債権を目的とする質権の設定は第三債務者に通知し、または第三債務者が承諾しなければ第三債務者その他の第三者に対抗できない。
通知・承諾の方式
467条が準用され、第三者対抗には確定日付ある証書による通知または承諾が必要。
この条文の練習問題を解く
削除
削除
本条は2003年改正により削除(旧規定は債権質の証書交付関連)。
この条文の練習問題を解く
質権者は、質権の目的である債権を直接に取り立てることができる。
2債権の目的物が金銭であるときは、質権者は、自己の債権額に対応する部分に限り、これを取り立てることができる。
3前項の債権の弁済期が質権者の債権の弁済期前に到来したときは、質権者は、第三債務者にその弁済をすべき金額を供託させることができる。
4この場合において、質権は、その供託金について存在する。
5債権の目的物が金銭でないときは、質権者は、弁済として受けた物について質権を有する。
債権者直接取立て(1項)
質権者は、質権の目的である債権を直接に取り立てることができる。
金銭債権の取立て(2項)
金銭債権の場合、自己の債権額に対応する部分に限り取立てが可能。
弁済期未到来の場合(3項)
被担保債権の弁済期前に質権目的債権の弁済期が到来したときは、質権者は第三債務者に金銭を供託させることができる。
趣旨
債権質の換価を競売によらず簡便に行える直接取立てが原則。被担保債権との弁済期前後関係に応じて取立てと供託を使い分け。
この条文の練習問題を解く
削除
削除条文(367-368条)
民法367条・368条は債権譲渡関係の旧規定で削除。現行466条以下の債権譲渡制度に再編。
この条文の練習問題を解く
抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
2地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。
3この場合においては、この章の規定を準用する。
抵当権の意義(1項)
債務者または第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利。
目的物(2項)
不動産のほか地上権・永小作権を目的とすることができる。これらの権利は登記により公示される。
性質
約定担保物権。非占有担保(質権との対比)。優先弁済的効力のみで留置的効力なし。
この条文の練習問題を解く
抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。
2ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び債務者の行為について第四百二十四条第三項に規定する詐害行為取消請求をすることができる場合は、この限りでない。
付加一体物への効力(本文)
抵当権は抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産に付加して一体となっている物に及ぶ。
別段の定めの例外(但書)
設定行為に別段の定めがあり、かつ424条3項に規定する詐害行為取消請求をすることができるべき場合を除き、抵当権者を害するため設定者がした処分による分離物は除外できる。
従物への適用(判例)
抵当権設定当時に存在した従物には抵当権の効力が及ぶ(最判昭44・3・28)。設定後付加された従物にも87条2項により及ぶ(多数説)。
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抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。
原則
抵当権の効力は抵当不動産の果実には及ばない。抵当権設定者は抵当目的物を使用収益できるのが原則。
例外(被担保債権不履行後)
被担保債権について不履行があったときは、その後に生じた果実(天然果実・法定果実=賃料)に抵当権の効力が及ぶ。賃料への物上代位(304条)の根拠としても機能。
趣旨
債務者の信用を維持しつつ、債務不履行後は債権者保護を優先するバランス規定。
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第二百九十六条、第三百四条及び第三百五十一条の規定は、抵当権について準用する。
物上代位準用
304条・350条・351条の規定は抵当権について準用する。
対象
売買代金・賃料・保険金・損害賠償請求権等。賃料への物上代位は最判平元・10・27で肯定。
差押要件の意義(判例)
最判平10・1・30—物上代位における差押えは第三債務者の保護のため。債権譲渡が先行しても差押え可能で、抵当権者の差押えと譲受人の地位の優劣は差押えの先後で決まる。
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同一の不動産について数個の抵当権が設定されたときは、その抵当権の順位は、登記の前後による。
抵当権の順位
同一の不動産について数個の抵当権が設定されたときは、その順位は登記の前後による。
趣旨
公示の原則を順位決定に貫徹し、後順位抵当権者の保護と取引安全を確保。
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抵当権の順位は、各抵当権者の合意によって変更することができる。
2ただし、利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければならない。
3前項の規定による順位の変更は、その登記をしなければ、その効力を生じない。
抵当権の順位の譲渡・放棄(1項)
抵当権者は、同一不動産上の後順位抵当権者の利益のため、その順位を譲渡し、または放棄することができる。順位の譲渡は譲受人と譲渡人の優先関係が入れ替わる効果、放棄は両者が按分配当となる効果を生じる。
対抗要件(2項)
順位の譲渡・放棄を第三者(債務者・保証人等)に対抗するには、主たる債務者への通知または主たる債務者の承諾が必要(467条準用)。
差
「順位の譲渡」(特定後順位者へ)と「抵当権の譲渡」(376条、無担保債権者へ)は区別。
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抵当権者は、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の二年分についてのみ、その抵当権を行使することができる。
2ただし、それ以前の定期金についても、満期後に特別の登記をしたときは、その登記の時からその抵当権を行使することを妨げない。
3前項の規定は、抵当権者が債務の不履行によって生じた損害の賠償を請求する権利を有する場合におけるその最後の二年分についても適用する。
4ただし、利息その他の定期金と通算して二年分を超えることができない。
利息等への優先弁済の制限(1項本文)
抵当権者は利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、満期となった最後の2年分についてのみ抵当権を行使できる。
趣旨
後順位抵当権者・第三取得者の利益保護。無制限に利息債権が累積すると後順位者の弁済可能性を害するため。
他の債権者がいない場合
375条の制限は後順位抵当権者等の利害調整規定であり、他に競合する債権者がいない場合は2年分に限定されない。
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抵当権者は、その抵当権を他の債権の担保とし、又は同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権若しくはその順位を譲渡し、若しくは放棄することができる。
2前項の場合において、抵当権者が数人のためにその抵当権の処分をしたときは、その処分の利益を受ける者の権利の順位は、抵当権の登記にした付記の前後による。
抵当権の処分(1項)
抵当権者は同一の債務者に対する他の債権者の利益のため、その抵当権または順位を譲渡または放棄することができる。
処分の類型
①転抵当(他の債権者への譲渡)、②抵当権の譲渡・放棄、③順位の譲渡・放棄。それぞれ法律効果が異なる。
順位譲渡と順位放棄の違い
順位譲渡は当事者間で順位を完全に交換、順位放棄は両者を同順位として配当割合で按分。
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前条の場合には、第四百六十七条の規定に従い、主たる債務者に抵当権の処分を通知し、又は主たる債務者がこれを承諾しなければ、これをもって主たる債務者、保証人、抵当権設定者及びこれらの者の承継人に対抗することができない。
2主たる債務者が前項の規定により通知を受け、又は承諾をしたときは、抵当権の処分の利益を受ける者の承諾を得ないでした弁済は、その受益者に対抗することができない。
対抗要件(1項)
抵当権の処分(順位譲渡・順位放棄・抵当権譲渡・抵当権放棄)を主たる債務者・保証人・抵当権設定者・これらの承継人に対抗するには、主たる債務者への通知または主たる債務者の承諾が必要。
通知承諾の方式(2項)
通知・承諾は確定日付ある証書によらなければ、第三者対抗力を持たない(467条2項準用)。
趣旨
債権譲渡類似の処分であるため、二重弁済の危険を防ぐ467条の枠組みをそのまま適用。
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抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する。
代価弁済
抵当不動産の第三取得者が抵当権者の請求に応じ代価を弁済したときは、抵当権はその者のために消滅する。
性質
抵当権者の請求が起点。第三取得者が任意に弁済する形式で抵当権消滅を実現する制度。
効果
代価が被担保債権額に満たなくても、第三取得者の関係では抵当権消滅。残債権は無担保債権として存続。
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