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第二百六十九条の規定は、永小作権について準用する。
地上権269条の永小作権への準用
269条(地上権者の収去権・土地所有者の買取請求権)の規定は永小作権について準用する。永小作権消滅時の処理を地上権と同型化する規定。
準用の効果
永小作人は永小作権消滅時に土地を原状回復して工作物・竹木を収去できる。一方、土地所有者は時価相当額を提供して買い取る旨通知すれば、永小作人は正当理由なく拒めない。
適用場面
存続期間満了(278条)・放棄(275条)・消滅請求(276条)のいずれの場合にも適用。永小作権消滅の全類型で共通の処理。
慣習との関係
269条2項の慣習優先規定も準用される結果、地域固有の収去・買取慣行があれば優先される。277条の慣習優先と整合。
この条文の練習問題を解く
地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。
2ただし、第三章第一節(所有権の限界)の規定(公の秩序に関するものに限る。)に違反しないものでなければならない。
規律
地役権者は設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。ただし第三章第一節(所有権の限界)の公の秩序に関する規定に違反してはならない。
地役権の本質
要役地(自己の土地)の便益のため、承役地(他人の土地)を利用する物権。通行・引水・眺望・日照等多様な目的が可能で、目的の自由設定が特徴。
他の利用権との区別
①地上権・賃借権との違い: 排他的占有を伴わない(承役地所有者の利用と併存)、②囲繞地通行権との違い: 法定でなく合意による任意設定、③共有との違い: 土地相互間の関係である点。
公の秩序違反の禁止
相隣関係規定の公序部分(209-238等)に反する地役権設定は無効。例えば隣地への雨水流入を地役権化することは認められない。
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地役権は、要役地(地役権者の土地であって、他人の土地から便益を受けるものをいう。以下同じ。)の所有権に従たるものとして、その所有権とともに移転し、又は要役地について存する他の権利の目的となるものとする。
2ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。
3地役権は、要役地から分離して譲り渡し、又は他の権利の目的とすることができない。
規律
地役権は要役地所有権に従たるものとして、所有権とともに移転し、又は要役地について存する他の権利の目的となる(1項本文)。ただし設定行為に別段の定めがあれば従たらない(但書)。地役権は要役地から分離して譲渡又は他の権利の目的にできない(2項)。
付従性の意義
地役権は要役地の便益のために存在する権利のため、要役地の運命に従う。要役地譲渡で地役権も自動移転、要役地への抵当権設定でも地役権が及ぶ。
分離処分の禁止(2項)
地役権のみを切り離して譲渡・抵当権設定等することはできない。要役地の便益から独立した存在意義がないため、絶対的禁止規定。
別段の定め(1項但書)
設定行為で「移転しない」と定めれば付従性を排除可能。例: 一身専属的な地役権、要役地譲渡時に消滅する合意。任意法規。
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土地の共有者の一人は、その持分につき、その土地のために又はその土地について存する地役権を消滅させることができない。
2土地の分割又はその一部の譲渡の場合には、地役権は、その各部のために又はその各部について存する。
3ただし、地役権がその性質により土地の一部のみに関するときは、この限りでない。
規律
土地共有者の一人は自己の持分につき、その土地のため又はその土地について存する地役権を消滅させることができない(1項)。土地分割・一部譲渡の場合、地役権は各部のため又は各部について存する(2項本文)。性質上一部のみに関する地役権は除く(但書)。
不可分性の意義
地役権は土地全体に対する権利として一体性を持ち、共有持分や分筆による部分化を許さない。要役地共有者の一人が持分処分しても地役権全体には影響しない。
1項の効果
共有者一人が「自己持分について地役権を放棄」しても無効。要役地共有者全員の同意がなければ地役権消滅させられない。
2項の効果(分割時)
要役地が分筆されれば、各分筆地のため地役権が存続。承役地が分筆されれば、各分筆地について地役権が存続。但書: 通行路が特定部分のみを通る場合等、性質上当該部分のみに関する場合は当該部分のみ。
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地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。
規律
地役権は継続的に行使され、かつ外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。
趣旨
地役権は要件次第で時効取得可能だが、無形の権利が黙示的に発生することを防ぐため「継続性」と「表現性(外形認識可能性)」の二要件を課す。承役地所有者の防御機会を確保。
「継続的」の意味
地役権者の行為が要役地のための工作物等により継続的に効力を維持していること。例: 通行地役権は通路の物理的存在が必要(判例: 自己の費用で通路を開設)。単発・断続的行使では不可。
「外形上認識可能」の意味
承役地上に地役権行使を示す外形(通路・水路・引水工作物等)があり、承役地所有者が認識可能であること。たまの通行で道なき所を歩く程度では不可。
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土地の共有者の一人が時効によって地役権を取得したときは、他の共有者も、これを取得する。
2共有者に対する時効の更新は、地役権を行使する各共有者に対してしなければ、その効力を生じない。
3地役権を行使する共有者が数人ある場合には、その一人について時効の完成猶予の事由があっても、時効は、各共有者のために進行する。
規律
土地共有者の一人が時効で地役権を取得したとき、他の共有者もこれを取得する(1項)。共有者に対する時効の更新は地役権を行使する各共有者に対してしなければ効力を生じない(2項)。共有者一人について時効完成猶予事由があっても、時効は各共有者のため進行する(3項)。
1項・共有者全員の取得
地役権の不可分性(282条)の帰結。共有者一人が取得時効を完成させれば、地役権の不可分性により全員のために取得。
2項・更新要件の加重
承役地所有者が時効更新したい場合、地役権を行使するすべての共有者に対して更新事由を生じさせる必要がある。一人への更新では不十分。要役地共有者を保護する立法政策。
3項・完成猶予の個別性
完成猶予事由は共有者ごとに判断。一人について猶予事由があっても他共有者の時効進行は止まらない。要役地共有者の権利取得を促進する個別主義。
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用水地役権の承役地(地役権者以外の者の土地であって、要役地の便益に供されるものをいう。以下同じ。)において、水が要役地及び承役地の需要に比して不足するときは、その各土地の需要に応じて、まずこれを生活用に供し、その残余を他の用途に供するものとする。
2ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。
3同一の承役地について数個の用水地役権を設定したときは、後の地役権者は、前の地役権者の水の使用を妨げてはならない。
規律
用水地役権の承役地で水が要役地・承役地の需要に比して不足するとき、各土地の需要に応じてまず生活用に供し残余を他用途に供する(1項本文)。設定行為に別段の定めあれば従う(但書)。同一承役地に数個の用水地役権を設定したとき、後の地役権者は前の地役権者の水使用を妨げてはならない(2項)。
趣旨
水資源の限定性に対応する用水地役権特有の規律。生活用水優先・先設定優位の二原則を明文化。
用途優先順位(1項)
①生活用水が他用途(農業・工業等)に優先、②各土地の需要に応じた按分。設定行為で別段の合意が可能(任意規定)。
先設定優位(2項)
同一承役地に複数の用水地役権が設定された場合、後発の地役権者は先発の地役権者の水使用を尊重する義務。先発地役権の優先性を明確化。
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設定行為又は設定後の契約により、承役地の所有者が自己の費用で地役権の行使のために工作物を設け、又はその修繕をする義務を負担したときは、承役地の所有者の特定承継人も、その義務を負担する。
規律
設定行為又は設定後の契約により、承役地所有者が自己費用で地役権行使のため工作物を設置又は修繕する義務を負担したときは、承役地所有者の特定承継人もその義務を負担する。
趣旨
承役地所有者が引き受けた積極的負担を、承役地譲受人にも承継させる規律。地役権の物権的効力により、付随的義務も物権の内容として承継される。
義務の物権化
本来債務は相続以外で当然承継しないが、本条は積極義務を物権の付随的内容として位置付け、特定承継人にも当然承継させる。承役地譲受人は地役権の負担とともに工作物設置義務も引き受ける。
免脱方法
承役地所有者は本条の義務を負うが、287条により地役権に必要な部分の所有権を放棄して義務を免れる道がある(次条参照)。
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承役地の所有者は、いつでも、地役権に必要な土地の部分の所有権を放棄して地役権者に移転し、これにより前条の義務を免れることができる。
規律
承役地所有者はいつでも地役権に必要な土地部分の所有権を放棄して地役権者に移転し、前条の義務を免れることができる。
趣旨
286条の義務が過大となった場合の免脱手段。承役地所有者に一方的形成権としての権利放棄=地役権者への所有権移転を認める。
形成権の性質
承役地所有者の単独行為で効力を生じる。地役権者の同意不要。所有権が地役権者に移転することで、地役権は混同(179)により消滅し、新所有者が単純所有権者となる構造。
対象範囲
「地役権に必要な土地の部分」のみ。承役地全体ではなく、地役権行使に必要な範囲(通路部分・水路部分等)を特定して放棄。
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承役地の所有者は、地役権の行使を妨げない範囲内において、その行使のために承役地の上に設けられた工作物を使用することができる。
2前項の場合には、承役地の所有者は、その利益を受ける割合に応じて、工作物の設置及び保存の費用を分担しなければならない。
規律
承役地所有者は地役権行使を妨げない範囲内で、地役権行使のため承役地上に設けられた工作物を使用することができる(1項)。この場合、利益を受ける割合に応じて工作物の設置・保存費用を分担しなければならない(2項)。
趣旨
地役権者が設置した工作物(通路・水路等)を承役地所有者も併用できる利用調整規律。一方的利用の独占を避け、両者の利益調和を図る。
使用の限界
「地役権行使を妨げない範囲」のみ承役地所有者の使用が許される。地役権者の利用を阻害する使用は不可。
費用分担(2項)
承役地所有者が併用するなら、利益按分で設置・保存費用を分担する義務。便益を受ける者が応分負担という公平原則の具体化。
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承役地の占有者が取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、地役権は、これによって消滅する。
規律
承役地の占有者が取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、地役権はこれによって消滅する。
趣旨
承役地占有者が所有権を取得時効で得る場合、地役権の負担なき完全な所有権を取得するため地役権は消滅。占有による地役権消滅という特殊規律。
要件
①承役地の占有、②取得時効に必要な要件具備(162条の所有意思・平穏公然・継続・期間)、③地役権の行使を許さない態様の占有。地役権者が黙認していた場合の権利保護の不実施に対する制裁。
290条との関係
本条による地役権消滅の時効進行は、地役権者の権利行使(290条)で中断する。地役権者が承役地占有を排除・地役権を行使すれば消滅は阻止される。
この条文の練習問題を解く
前条の規定による地役権の消滅時効は、地役権者がその権利を行使することによって中断する。
規律
前条(289条)の規定による地役権の消滅時効は、地役権者がその権利を行使することによって中断する。
趣旨
承役地占有時効による地役権消滅(289)を、地役権者の権利行使で阻止する規律。地役権者の権利保護の積極的契機を明文化。
「権利行使」の意義
地役権の現実的行使(通行・引水等)又は承役地占有者への異議・排除請求等。承役地占有者の占有を排除し、地役権の存在を主張する一切の行為。
中断の効果
中断時点までの時効進行はリセット。中断後に再び承役地占有が継続すれば新たな時効進行が開始。
この条文の練習問題を解く
第百六十六条第二項に規定する消滅時効の期間は、継続的でなく行使される地役権については最後の行使の時から起算し、継続的に行使される地役権についてはその行使を妨げる事実が生じた時から起算する。
規律
166条2項に規定する消滅時効の期間は、継続的でなく行使される地役権については最後の行使の時から起算し、継続的に行使される地役権については行使を妨げる事実が生じた時から起算する。
趣旨
地役権の不行使による消滅時効の起算点を、行使態様に応じて区別する規律。地役権の特性に応じた起算点を設定。
非継続的地役権
通行地役権の通常使用等、行使に断続性があるもの。「最後の行使時」から起算。長期間使わなければ消滅。
継続的地役権
引水地役権で水が常時流れている等、行使が継続的なもの。「行使を妨げる事実が生じた時」から起算。水路の閉塞・占有者の阻害行為等が起算点。
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要役地が数人の共有に属する場合において、その一人のために時効の完成猶予又は更新があるときは、その完成猶予又は更新は、他の共有者のためにも、その効力を生ずる。
規律
要役地が数人の共有に属する場合、その一人のために時効完成猶予又は更新があるときは、その完成猶予又は更新は他の共有者のためにもその効力を生ずる。
趣旨
地役権消滅時効について、要役地共有者一人の中断行為が全共有者のため効力を持つ。要役地共有者間の不可分的保護。
284条との対比
284条(取得時効の場合)は完成猶予が「個別」に判断(時効が各共有者のため進行)。本条(消滅時効)は完成猶予・更新が「全員」に及ぶ。要役地共有者保護の方向で機能。
立法政策
地役権の不可分性(282)から、要役地共有者一人の積極的行為が全員に利益。消滅阻止行為への報酬として共有者全体を保護する仕組み。
この条文の練習問題を解く
地役権者がその権利の一部を行使しないときは、その部分のみが時効によって消滅する。
規律
地役権者がその権利の一部を行使しないときは、その部分のみが時効によって消滅する。
趣旨
地役権の一部不行使に対し、不行使部分のみの一部消滅を認める規律。全部消滅という極端な効果を避け、行使実態に応じた縮減を許す。
適用場面
例: 幅5mの通行地役権で常時2mしか使わなかった場合、不使用3m部分のみが時効消滅。引水地役権で毎時10ℓのうち3ℓしか取水しなかった場合、不使用7ℓ部分のみ消滅。
全部消滅との関係
291条の消滅時効が全部の不行使に対するものに対し、本条は一部不行使。全部不行使なら291で全部消滅、一部不行使なら本条で一部消滅という補完関係。
この条文の練習問題を解く
共有の性質を有しない入会権については、各地方の慣習に従うほか、この章の規定を準用する。
規律
共有の性質を有しない入会権については、各地方の慣習に従うほか、本章(地役権)の規定を準用する。
入会権の二類型
①共有の性質を有する入会権(263条): 共有準用、②共有の性質を有しない入会権(本条): 地役権準用。入会権は地域住民集団が山林原野等を利用する慣習的物権。
「共有の性質を有しない」の意味
入会団体が土地所有権を持たず、他人の土地(国有地・公有地・第三者私有地等)を利用する形態。共有的支配でなく、用益的支配のみ。
慣習優位の意義
入会権は地域慣習が一次的規律源。地役権規定は補充的適用。慣習法が制定法に優位する稀有な領域として、入会権の慣習的性質を尊重する立法政策。
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他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。
2ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。
3前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。
他人の物の占有
他人の物を占有していること。占有は適法に開始されたものでなければならず、不法行為により占有を始めた場合は留置権不成立(2項)。
物に関して生じた債権
債権が留置物自体から生じたか(費用償還等)、債権と物の引渡し義務が同一の法律関係・事実関係から生じたこと(牽連性)。
債権の弁済期到来
弁済期未到来の債権では留置権は成立しない(1項但書)。
効果
債権の弁済を受けるまで物の引渡しを拒絶できる。物権的・対世的効力(第三者にも対抗可)。
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留置権者は、債権の全部の弁済を受けるまでは、留置物の全部についてその権利を行使することができる。
留置権の不可分性
留置権者は債権の全部の弁済を受けるまで留置物の全部について留置権を行使できる。
趣旨
債権担保の実効性確保。一部弁済では引渡し義務は発生しない。
この条文の練習問題を解く
留置権者は、留置物から生ずる果実を収取し、他の債権者に先立って、これを自己の債権の弁済に充当することができる。
2前項の果実は、まず債権の利息に充当し、なお残余があるときは元本に充当しなければならない。
果実収取権(1項)
留置権者は留置物から生ずる果実を収取し他の債権者に先立ち自己の債権の弁済に充当できる。
充当順序(2項)
果実は利息に充当し、なお残余があれば元本に充当する(491条と同様の順序)。
この条文の練習問題を解く
留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有しなければならない。
2留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物を使用し、賃貸し、又は担保に供することができない。
3ただし、その物の保存に必要な使用をすることは、この限りでない。
4留置権者が前二項の規定に違反したときは、債務者は、留置権の消滅を請求することができる。
善管注意義務(1項)
留置権者は善良な管理者の注意をもって留置物を占有しなければならない。
使用・賃貸・担保供与の禁止(2項本文)
債務者の承諾なく留置物を使用・賃貸・担保供与することはできない。
保存に必要な使用(2項但書)
保存に必要な使用は債務者の承諾なくできる。
義務違反の効果(3項)
債務者は留置権の消滅を請求できる。形成権的請求。
この条文の練習問題を解く
留置権者は、留置物について必要費を支出したときは、所有者にその償還をさせることができる。
2留置権者は、留置物について有益費を支出したときは、これによる価格の増加が現存する場合に限り、所有者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。
3ただし、裁判所は、所有者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
必要費(1項)
留置権者が留置物について必要費を支出したときは所有者に対し償還を請求できる。
有益費(2項本文)
有益費を支出したときは価格の増加が現存する場合に限り、所有者の選択により支出額または増価額の償還を請求できる。
悪意債務者への期限許与(2項但書)
裁判所は所有者の請求により相当の期限を許与できる。
この条文の練習問題を解く
留置権の行使は、債権の消滅時効の進行を妨げない。
留置権行使と消滅時効
留置権の行使は債権の消滅時効の進行を妨げない。
趣旨
留置はあくまで物の引渡し拒絶であり、債権そのものの行使ではないため。被担保債権は別途請求等により時効更新する必要がある。
この条文の練習問題を解く
債務者は、相当の担保を供して、留置権の消滅を請求することができる。
代担保供与による消滅請求
債務者は相当の担保を供して留置権の消滅を請求できる。
趣旨
債権者保護を維持しつつ債務者の物の利用回復を可能にする。代担保は被担保債権の額・回収可能性を考慮して相当性を判断。
性質
形成権ではなく請求権(多数説)。債権者の承諾または裁判所の許可で消滅。
この条文の練習問題を解く
留置権は、留置権者が留置物の占有を失うことによって、消滅する。
2ただし、第二百九十八条第二項の規定により留置物を賃貸し、又は質権の目的としたときは、この限りでない。
占有喪失による消滅(本文)
留置権は占有を失うことにより消滅する。占有が留置権の本体的成立要件のため。
代理占有の例外(但書)
298条2項により留置物を賃貸または質入れした場合(債務者承諾あり)は占有喪失とはみなさない。
この条文の練習問題を解く
先取特権者は、この法律その他の法律の規定に従い、その債務者の財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
先取特権の効力
債権者は本法その他の法律に従い、債務者の財産から他の債権者に先立ち自己の債権の弁済を受ける権利を有する。法定担保物権。
種類
一般先取特権(306条)・動産先取特権(311条)・不動産先取特権(325条)の3類型。
この条文の練習問題を解く
先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。
2ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
3債務者が先取特権の目的物につき設定した物権の対価についても、前項と同様とする。
物上代位の対象(1項本文)
先取特権は目的物の売却・賃貸・滅失・損傷により債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても行使できる。
差押要件(1項但書)
先取特権者は払渡し前に差押えをしなければならない。趣旨は第三債務者の二重弁済の危険回避・優先権公示。
共有持分の代位(2項)
債務者が目的物について有する共有持分に対する分割または共有物分割の対価への代位を準用。
判例(最判平10・1・30)
抵当権の物上代位(372条)は債権譲渡・転付命令との競合では差押えの先後で優劣決まる。
この条文の練習問題を解く
第二百九十六条の規定は、先取特権について準用する。
規律
留置権の不可分性(296条)の規定を先取特権に準用する。被担保債権の一部弁済があっても、先取特権は目的物全部の上に存続する。
趣旨
担保物権共通の効力としての不可分性。債権の完全な満足を担保するため、目的物の一部について先取特権が消滅することを認めない。
適用範囲
一般先取特権・動産先取特権・不動産先取特権すべてに及ぶ。目的物が複数ある場合(一般先取特権)、被担保債権の残額がある限り全目的物に先取特権が存続。
この条文の練習問題を解く
次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について先取特権を有する。
2共益の費用
3雇用関係
4子の監護の費用
5葬式の費用
6日用品の供給
規律
次の原因による債権を有する者は、債務者の総財産について一般先取特権を有する。①共益費用、②雇用関係、③葬式費用、④日用品供給。子の監護費用も含む。
趣旨
社会政策的配慮から特定債権者を一般債権者に優先させる。総財産を対象とする点で動産・不動産先取特権と区別される(特別の先取特権との対比)。
5類型の特徴
①共益費用は他債権者の共同利益、②雇用関係は労働者保護、③子の監護費用は子の福祉、④葬式費用は人道的配慮、⑤日用品供給は生計維持。いずれも社会的弱者保護・公益的観点。
順位
条文掲載順が優先順位(329条1項)。共益費用>雇用>子の監護>葬式>日用品。共益費用は他債権者にも利益を与える性質から最優先(329条1項但書)。
この条文の練習問題を解く
共益の費用の先取特権は、各債権者の共同の利益のためにされた債務者の財産の保存、清算又は配当に関する費用について存在する。
2前項の費用のうちすべての債権者に有益でなかったものについては、先取特権は、その費用によって利益を受けた債権者に対してのみ存在する。
規律
共益費用の先取特権は、各債権者の共同利益のためにされた債務者財産の保存・清算・配当に関する費用について存在する(1項)。全債権者に有益でなかった費用は、利益を受けた債権者に対してのみ存在(2項)。
趣旨
債務者財産の維持・換価に貢献した費用支出者を優先弁済することで、他債権者の利益も保護。共同利益概念により他債権者に対する優先を正当化。
対象費用
①債務者財産の差押え・競売費用、②倒産手続の予納金、③強制執行費用、④財産管理人の報酬等。具体的に他債権者の配当原資を生み出した費用。
2項の限定(部分共益)
全債権者に共通利益がない場合は、現実に利益を受けた債権者の枠内でのみ先取特権が成立。一部債権者間の優先関係に限定される。
この条文の練習問題を解く
雇用関係の先取特権は、給料その他債務者と使用人との間の雇用関係に基づいて生じた債権について存在する。
規律
雇用関係の先取特権は、給料その他債務者と使用人との雇用関係に基づいて生じた債権について存在する。
趣旨
労働者保護の社会政策的配慮。賃金は労働者の生活の糧であり、債務者破綻時に他の一般債権と同列扱いすれば労働者の生存が脅かされる。
対象債権
未払賃金・退職金・賞与・有給休暇手当等、雇用関係から生ずる一切の使用人債権。期間制限なし(賃金請求権の時効5年は別問題)。
労働債権の優先化
破産法では財団債権化・優先的破産債権化(破産法149条等)。本条は実体法上の優先弁済根拠であり、倒産法上の処遇とあいまって労働債権保護を厚くする。
この条文の練習問題を解く
子の監護の費用の先取特権は、次に掲げる義務に係る確定期限の定めのある定期金債権の各期における定期金のうち子の監護に要する費用として相当な額(子の監護に要する標準的な費用その他の事情を勘案して当該定期金により扶養を受けるべき子の数に応じて法務省令で定めるところにより算定した額)について存在する。
2第七百五十二条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
3第七百六十条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
4第七百六十六条及び第七百六十六条の三(これらの規定を第七百四十九条、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
5第八百七十七条から第八百八十条までの規定による扶養の義務
子の監護費用先取特権(2020年改正で新設)
子の監護費用の先取特権は、確定期限のある定期金債権の各期における定期金のうち、子の監護に要する費用として相当な額について存在する。2020年の養育費徴収強化の一環として新設された一般先取特権。
対象となる義務(各号)
①752条夫婦間の協力扶助義務、②760条婚姻費用分担義務、③766条等の子の監護義務(離婚後養育費)、④877-880条の扶養義務。家族法上の扶養関係から生じる金銭債権を広く対象とする。
「相当な額」の算定
子の監護に要する標準的費用その他の事情を勘案し、扶養を受けるべき子の数に応じて法務省令で定める。算定基準を法務省令に委任することで実態に応じた柔軟な運用を確保。
立法趣旨と実務的意義
離婚後の養育費不払問題への対処として、養育費債権に先取特権を付与することで他の債権者より優先的に回収を可能にする。民事執行法151_2条の財産開示制度等と連動して養育費の実効的確保を図る。
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葬式の費用の先取特権は、債務者のためにされた葬式の費用のうち相当な額について存在する。
2前項の先取特権は、債務者がその扶養すべき親族のためにした葬式の費用のうち相当な額についても存在する。
規律
葬式費用の先取特権は、債務者のためにされた葬式費用のうち相当な額について存在する(1項)。債務者が扶養すべき親族のためにした葬式費用の相当額にも及ぶ(2項)。
趣旨
人道的配慮・公衆衛生上の要請から葬式費用支出者を保護。死者の尊厳を保つ社会的必要性に基づく。
相当性要件
「相当な額」とは死者の社会的地位・地域慣習に照らした標準的金額。過剰な葬儀費用は先取特権の対象とならない(不相当部分は一般債権扱い)。
2項の意義
債務者本人だけでなく扶養親族の葬儀費用も含む。配偶者・子・親等の扶養義務関係(877条)にある者の葬儀費用が対象。
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日用品の供給の先取特権は、債務者又はその扶養すべき同居の親族及びその家事使用人の生活に必要な最後の六箇月間の飲食料品、燃料及び電気の供給について存在する。
規律
日用品供給の先取特権は、債務者・扶養同居親族・家事使用人の生活に必要な最後の6か月間の飲食料品・燃料・電気の供給について存在する。
趣旨
生計維持に不可欠な日用品の供給者を保護することで、債務者・家族の生活基盤を確保。供給者側の取引安全も担保。
対象範囲の限定
①生活に必要なもの、②最後の6か月分、③飲食料品・燃料・電気に限定。期間・品目とも厳格に絞り込まれている。
2020改正の電気追加
従来「飲食料品及び燃料」のみだったが、現代生活では電気が不可欠の生活インフラとして追加された。ガスは「燃料」に含まれる解釈。水道は明文化されていない(争いあり)。
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次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の動産について先取特権を有する。
2不動産の賃貸借
3旅館の宿泊
4旅客又は荷物の運輸
5動産の保存
6動産の売買
7種苗又は肥料(蚕種又は蚕の飼養に供した桑葉を含む。以下同じ。)の供給
8農業の労務
9工業の労務
規律
次の原因による債権を有する者は、債務者の特定動産について先取特権を有する。①不動産賃貸借、②旅館宿泊、③旅客荷物運輸、④動産保存、⑤動産売買、⑥種苗肥料供給、⑦農業労務、⑧工業労務。
趣旨
債権発生原因と密接な関係を有する特定動産に対する優先弁済権を認める。当事者間の事実上の信頼関係と動産の特定可能性を根拠とする。
8類型の分類
①〜③: 当事者間の場所的・時間的関係(場所的牽連性)、④⑤: 動産自体への寄与(物的牽連性)、⑥〜⑧: 労務・原材料の費用回収(労務的牽連性)。
順位
330条で詳細規律。①不動産賃貸・旅館宿泊・運輸>②動産保存>③動産売買・種苗肥料・農業労務・工業労務。
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不動産の賃貸の先取特権は、その不動産の賃料その他の賃貸借関係から生じた賃借人の債務に関し、賃借人の動産について存在する。
規律
不動産賃貸の先取特権は、不動産の賃料その他賃貸借関係から生じた賃借人の債務に関し、賃借人の動産について存在する。
趣旨
賃借人の動産は賃貸目的物に持ち込まれ事実上賃貸人の支配下にある点を捉えて、賃貸人を優先弁済者とする。賃借人の信用力を補強し賃貸借取引の円滑化を図る。
被担保債権の範囲
賃料、共益費、修繕負担金、損害賠償等、賃貸借関係から生ずる全債務。315条で清算時の範囲制限あり。
目的物の範囲
313条で詳細。土地賃貸は備付動産・利用動産・果実、建物賃貸は備付動産。第三者所有物への及び方は判例で限定(即時取得類似法理=319条準用)。
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土地の賃貸人の先取特権は、その土地又はその利用のための建物に備え付けられた動産、その土地の利用に供された動産及び賃借人が占有するその土地の果実について存在する。
2建物の賃貸人の先取特権は、賃借人がその建物に備え付けた動産について存在する。
規律
土地賃貸人の先取特権は、その土地・利用建物に備え付けられた動産、土地利用に供された動産、賃借人占有の果実に存在する(1項)。建物賃貸人の先取特権は、賃借人が建物に備え付けた動産に存在する(2項)。
趣旨
賃貸目的物の用法と密接に関連する動産に先取特権を限定。賃貸人の事実的支配が及ぶ範囲を明確化する。
「備え付けた動産」の解釈
通説・判例: ある程度の継続性をもって建物の常用に供される動産(机・椅子・棚・家電等)。一時的に持ち込まれた動産(旅行鞄等)は含まない。
土地と建物の対比
土地賃貸は果実・利用動産まで含み広範。建物賃貸は備付動産に限定され狭い。土地の方が経済的価値の波及範囲が広いことを反映。
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賃借権の譲渡又は転貸の場合には、賃貸人の先取特権は、譲受人又は転借人の動産にも及ぶ。
2譲渡人又は転貸人が受けるべき金銭についても、同様とする。
規律
賃借権の譲渡・転貸の場合、賃貸人の先取特権は譲受人・転借人の動産にも及ぶ(1項)。譲渡人・転貸人が受けるべき金銭にも同様(2項)。
趣旨
賃借権譲渡・転貸により目的物使用者が変動しても、賃貸人の担保利益を維持する。譲受人・転借人の動産も賃貸目的物との関連性があれば対象となる。
2項の物上代位的性格
譲渡人・転貸人が譲受人・転借人から受ける譲渡対価・転貸料に対しても先取特権が及ぶ。物上代位(304条)と同様の構造。
適用要件
①賃貸人の承諾ある譲渡・転貸(612条参照)、②譲受人・転借人による動産の備付。無断譲渡・転貸の場合は賃貸借が解除されうるため別問題。
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賃借人の財産のすべてを清算する場合には、賃貸人の先取特権は、前期、当期及び次期の賃料その他の債務並びに前期及び当期に生じた損害の賠償債務についてのみ存在する。
規律
賃借人の全財産を清算する場合、賃貸人の先取特権は前期・当期・次期の賃料その他債務、および前期・当期に生じた損害賠償債務についてのみ存在する。
趣旨
清算手続(破産・特別清算等)で全債権者が衝突する場面では、賃貸人の優先範囲を期間で限定し、他債権者との公平を図る。
対象期間
賃料: 前期・当期・次期(3期分)。損害賠償: 前期・当期(2期分)。「期」は賃料支払期を指し、通常は月額・年額の支払単位。
適用場面
破産・特別清算・民事再生・会社更生等の集団的債務処理手続。通常の強制執行では適用されず、312条の本則が及ぶ。
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賃貸人は、第六百二十二条の二第一項に規定する敷金を受け取っている場合には、その敷金で弁済を受けない債権の部分についてのみ先取特権を有する。
規律
賃貸人は622_2第1項の敷金を受け取っている場合、その敷金で弁済を受けない債権部分についてのみ先取特権を有する。
趣旨
敷金は賃貸借から生ずる債務の担保(622_2)。敷金で塡補される範囲を先取特権の対象外とすることで、二重担保となるのを避け、他債権者との利害調整を図る。
2017年改正
改正前は敷金規定が明文化されていなかったが、2017年改正で622_2が新設され敷金概念が明確化。本条もこれに合わせて改正。
効果
未払賃料総額から敷金額を控除した残額のみが先取特権の被担保債権となる。敷金額を超える未払額についてのみ動産に対する優先弁済権を行使可能。
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旅館の宿泊の先取特権は、宿泊客が負担すべき宿泊料及び飲食料に関し、その旅館に在るその宿泊客の手荷物について存在する。
規律
旅館宿泊の先取特権は、宿泊客が負担すべき宿泊料・飲食料に関し、その旅館にあるその宿泊客の手荷物について存在する。
趣旨
旅館経営者は不特定多数の宿泊客を相手にし、宿泊後の代金回収困難を回避する必要がある。宿泊客の旅館内手荷物に着目した特別な担保制度。
対象動産
「旅館にある」現実的支配下の手荷物のみ。宿泊客が外出時に持ち出している荷物には及ばない。旅館側の事実的支配を要件化。
順位
330条1項1号で不動産賃貸・運輸とともに第1順位。事実的支配を基礎とする3類型が共通の最優先順位を持つ。
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運輸の先取特権は、旅客又は荷物の運送賃及び付随の費用に関し、運送人の占有する荷物について存在する。
規律
運輸の先取特権は、旅客・荷物の運送賃および付随費用に関し、運送人の占有する荷物について存在する。
趣旨
運送人は荷物の占有を引き渡せば代金回収手段を失うため、占有中の荷物に先取特権を認めて運賃確保を図る。商法上の運送人留置権・先取特権と並行する規律。
占有要件
「運送人の占有する」荷物に限定。引渡し後は先取特権の追及効が問題となる(333条の追及効遮断)。
順位
330条1項1号で第1順位。不動産賃貸・旅館宿泊と並ぶ事実的支配型担保。
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第百九十二条から第百九十五条までの規定は、第三百十二条から前条までの規定による先取特権について準用する。
規律
192条〜195条(即時取得・盗品遺失物の特則)を312条〜318条の動産先取特権(不動産賃貸・旅館宿泊・運輸)について準用する。
趣旨
賃借人・宿泊客等が他人所有の動産を持ち込んだ場合、賃貸人・旅館経営者の善意無過失の信頼を即時取得類似に保護。動的安全と取引安全の調整。
適用効果
①平穏公然取引、②善意無過失、③占有取得を満たす先取特権者は、第三者所有の動産にも先取特権を取得できる。盗品・遺失物には193条の2年特則が適用。
限定
本条は312〜318条の場所的牽連性に基づく動産先取特権のみに準用。320〜324条(動産保存・売買・種苗肥料・労務)にはこの保護が及ばない(自己の物権関与であり第三者所有物への即時取得発想と馴染まない)。
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動産の保存の先取特権は、動産の保存のために要した費用又は動産に関する権利の保存、承認若しくは実行のために要した費用に関し、その動産について存在する。
規律
動産保存の先取特権は、動産の保存のために要した費用、または動産に関する権利の保存・承認・実行のために要した費用に関し、その動産について存在する。
趣旨
動産の物的・法的価値を維持した者を優先弁済することで、他債権者の配当原資を確保した功労に報いる。共益費用と類似の構造を特定動産レベルで実現。
対象費用
①物理的保存費用(修繕・保管料)、②権利保存費用(時効中断・登記費用)、③権利実行費用(執行費用)。動産価値の維持に直接寄与した支出。
順位
330条1項2号で第2順位。事実的支配型(1号)には劣るが、売買・労務型(3号)には優先する。複数保存者がいる場合、後の保存者が前の保存者に優先(330条1項2文)。
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動産の売買の先取特権は、動産の代価及びその利息に関し、その動産について存在する。
規律
動産売買の先取特権は、動産の代価およびその利息に関し、その動産について存在する。
趣旨
売主が引き渡した動産自体に代金回収のための優先権を認める。同時履行抗弁を放棄して引き渡した売主の信用補完。
実務上の重要性
商取引で売主が買主に動産を信用販売した場合、買主の倒産時に他債権者に優先して回収可能。物上代位(304条)により転売代金債権にも及ぶ(最判昭60年7月19日等)。
追及効と即時取得
買主が動産を第三取得者に引き渡した場合、333条で追及効が遮断される(占有改定でも遮断)。物上代位による回収が実務上重要。
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種苗又は肥料の供給の先取特権は、種苗又は肥料の代価及びその利息に関し、その種苗又は肥料を用いた後一年以内にこれを用いた土地から生じた果実(蚕種又は蚕の飼養に供した桑葉の使用によって生じた物を含む。)について存在する。
規律
種苗・肥料供給の先取特権は、代価・利息に関し、その種苗・肥料を用いた後1年以内にこれを用いた土地から生じた果実について存在する。
趣旨
農業生産の基盤である種苗・肥料の供給者を保護することで、農業生産の継続を担保。生産物としての果実に直接担保権を及ぼす。
対象物の特徴
目的物は供給した種苗・肥料そのものではなく、それを用いて生じた「果実」。物上代位的発想を条文化したもの。1年間の期間制限あり。
順位
330条1項3号で第3順位。330条3項で果実に関しては別途順位規定あり(第1=農業労務、第2=種苗肥料供給、第3=土地賃貸人)。
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農業の労務の先取特権は、その労務に従事する者の最後の一年間の賃金に関し、その労務によって生じた果実について存在する。
規律
農業労務の先取特権は、その労務に従事する者の最後の1年間の賃金に関し、その労務によって生じた果実について存在する。
趣旨
農業労働者の賃金確保を社会政策的に保護。労務の対象たる果実に直接担保権を及ぼし、生産物との関連性で優先弁済を正当化。
雇用関係先取特権(308条)との関係
雇用関係(308条)は一般先取特権で総財産対象。本条は動産先取特権で特定果実対象。同一賃金債権について両者が競合する場合、債権者は有利な方を選択。
果実における最優先順位
330条3項で果実に関しては第1順位。種苗肥料(第2)・土地賃貸(第3)に優先。労働者保護の徹底。
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工業の労務の先取特権は、その労務に従事する者の最後の三箇月間の賃金に関し、その労務によって生じた製作物について存在する。
規律
工業労務の先取特権は、その労務に従事する者の最後の3か月間の賃金に関し、その労務によって生じた製作物について存在する。
趣旨
工業労働者の賃金確保。製作物との関連性で優先弁済を正当化。農業労務(1年)より短い3か月の期間制限は工業生産の短サイクル性を反映。
農業労務(323)との対比
①期間: 工業3か月 vs 農業1年、②対象: 製作物 vs 果実。生産サイクルと生産物の性質の違いを反映した類型分け。
順位
330条1項3号で第3順位。動産売買・種苗肥料・農業労務と同順位。
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次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の不動産について先取特権を有する。
2不動産の保存
3不動産の工事
4不動産の売買
規律
次の原因による債権を有する者は、債務者の特定不動産について先取特権を有する。①不動産保存、②不動産工事、③不動産売買。
趣旨
動産先取特権に対応する不動産担保の類型化。物的牽連性のある3類型に限定し、登記制度との整合性を確保。
3類型の特徴
①保存: 不動産価値の維持(修繕費・固定資産税立替等)、②工事: 価値増加(建設・改修費)、③売買: 売主の代金確保。
順位
331条で条文掲載順が優先順位。保存>工事>売買。同一不動産が順次転売された場合の売主間順位は売買の前後(331条2項)。
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不動産の保存の先取特権は、不動産の保存のために要した費用又は不動産に関する権利の保存、承認若しくは実行のために要した費用に関し、その不動産について存在する。
規律
不動産保存の先取特権は、不動産の保存に要した費用、または不動産に関する権利の保存・承認・実行に要した費用に関し、その不動産について存在する。
趣旨
不動産の物的・法的価値を維持した者を最優先で保護。共益費用と類似の構造を特定不動産レベルで実現。
対象費用
①物理的保存(修繕・補修工事費)、②権利保存(時効中断・所有権登記費用)、③権利承認・実行費用。価値減少を防いだ全費用。
対抗要件
337条で保存行為完了後直ちに登記が必要。これを欠くと先取特権の効力が保存されない(権利保存要件)。
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不動産の工事の先取特権は、工事の設計、施工又は監理をする者が債務者の不動産に関してした工事の費用に関し、その不動産について存在する。
2前項の先取特権は、工事によって生じた不動産の価格の増加が現存する場合に限り、その増価額についてのみ存在する。
規律
不動産工事の先取特権は、工事の設計・施工・監理をする者が債務者の不動産に関してした工事費用に関し、その不動産について存在する(1項)。工事によって生じた価格増加が現存する場合の増価額についてのみ存在(2項)。
趣旨
建設業者等の工事代金確保。ただし他債権者を害さないよう、工事による現存増価額に限定。価値増加分のみを担保とすることで利害調整。
現存増価額の意義
工事完了時の不動産価値増加分が、配当時にも現存している額。減耗・市場価値低下があれば縮小する。鑑定人評価による(338条3項)。
対抗要件
338条で工事着工前にその費用の予算額を登記。超過分は先取特権の対象外。事前登記主義により他債権者の予測可能性を確保。
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