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占有者がその占有を妨害されるおそれがあるときは、占有保全の訴えにより、その妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができる。
占有保全の訴え
占有者がその占有を妨害されるおそれがあるとき、妨害の予防または損害賠償の担保を請求できる。
出訴期間
妨害の危険が存する間に限る(201条2項)。
趣旨
妨害現実化前の予防的救済。所有権に基づく妨害予防請求の占有版。
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占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。
2占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。
3ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。
占有回収の訴え(1項)
占有者がその占有を奪われたとき、占有回収の訴えにより物の返還および損害賠償を請求できる。
侵奪者の特定承継人への請求制限(2項本文)
占有を侵奪した者の特定承継人に対しては提起できない。取引安全の保護。
悪意の特定承継人への提起(2項但書)
特定承継人が侵奪の事実を知っていた場合は提起できる。
出訴期間
占有侵奪から1年以内(201条3項)。
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占有保持の訴えは、妨害の存する間又はその消滅した後一年以内に提起しなければならない。
2ただし、工事により占有物に損害を生じた場合において、その工事に着手した時から一年を経過し、又はその工事が完成したときは、これを提起することができない。
3占有保全の訴えは、妨害の危険の存する間は、提起することができる。
4この場合において、工事により占有物に損害を生ずるおそれがあるときは、前項ただし書の規定を準用する。
5占有回収の訴えは、占有を奪われた時から一年以内に提起しなければならない。
占有保持の訴え(1項)
妨害の存する間または妨害消滅後1年以内に提起しなければならない。工事による妨害は工事着手から1年または工事完成で出訴不可。
占有保全の訴え(2項)
妨害の危険の存する間に提起する。工事による危険の場合は1項後段準用。
占有回収の訴え(3項)
占有侵奪の時から1年以内に提起しなければならない。除斥期間。
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占有の訴えは本権の訴えを妨げず、また、本権の訴えは占有の訴えを妨げない。
2占有の訴えについては、本権に関する理由に基づいて裁判をすることができない。
占有の訴えと本権の訴えの併存(1項)
占有の訴えと本権の訴えは相互に妨げない。同一物について両訴え提起可能。
占有訴訟での本権抗弁禁止(2項)
占有の訴えに対して本権に関する理由で裁判することができない。占有訴権の独立性。
趣旨
事実的支配状態の保護を本権の存否から切り離し、私力救済の禁止を実効化する。
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占有権は、占有者が占有の意思を放棄し、又は占有物の所持を失うことによって消滅する。
2ただし、占有者が占有回収の訴えを提起したときは、この限りでない。
占有権の消滅事由(本文)
占有者が占有の意思を放棄し、または占有物の所持を失うことによって消滅する。
占有回収の訴えとの関係(但書)
占有を奪われた場合でも、200条の占有回収の訴えを提起して勝訴し現実に占有を回復すれば、占有は失われなかったものとみなされる。
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代理人によって占有をする場合には、占有権は、次に掲げる事由によって消滅する。
2本人が代理人に占有をさせる意思を放棄したこと。
3代理人が本人に対して以後自己又は第三者のために占有物を所持する意思を表示したこと。
4代理人が占有物の所持を失ったこと。
5占有権は、代理権の消滅のみによっては、消滅しない。
代理占有の消滅事由(1項)
①本人が代理人に占有させる意思を放棄したとき、②代理人が本人に対して以後自己または第三者のために占有する意思を表示したとき、③代理人が占有物の所持を失ったとき。
占有代理関係の消滅では消滅しない(2項)
代理占有は本人と占有代理人の法律関係(賃貸借等)の消滅のみによっては消滅しない。
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この章の規定は、自己のためにする意思をもって財産権の行使をする場合について準用する。
準占有
物の占有ではないが財産権の行使を伴う事実状態に占有規定を準用する。債権・著作権・特許権等の財産権について成立する。
準用の効果
取得時効(163条)・占有訴権・善意占有者の果実取得(189条)等が準用される。
債権の準占有者への弁済(478条との関係)
478条は債権の準占有者への弁済を有効とする特則であり、本条と密接に関連する。
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所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
所有の対象
目的物(動産・不動産)。
使用・収益・処分の権能
所有権の内容を構成する三権能。完全物権性を表す。
法令の制限内
公共の福祉・他の法令による制限を受ける。建築基準法・都市計画法等。
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土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ。
規律
土地所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ。
趣旨
土地所有権の客体を上下空間まで及ぼすことを原則化。ただし「法令の制限内」とすることで、航空・地下空間利用・鉱業権等との調整を可能とする弾力的構造。
上下範囲の判例理論
通説・判例: 所有権の利益が現実に及ぶ範囲(社会通念上の利用可能高度・深度)に限定する社会通念説が有力。無限に及ぶとする伝統説からの修正。
制限法令の例
航空法(航行高度)・大深度地下使用法(地下40m超)・鉱業法(鉱物資源)・電波法・道路法・建築基準法等。土地所有者の権利は他の公的・私的権利との調整で実質的に限定される。
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削除
削除条文(208条)
民法208条は2021年改正(相隣関係改正)で削除。旧208条は囲繞地通行権の細則だったが、現行210-213条の再編に伴い廃止。
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土地の所有者は、次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。
2ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない。
3境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕
4境界標の調査又は境界に関する測量
5第二百三十三条第三項の規定による枝の切取り
6前項の場合には、使用の日時、場所及び方法は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者(以下この条において「隣地使用者」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
7第一項の規定により隣地を使用する者は、あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければならない。
8ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる。
9第一項の場合において、隣地の所有者又は隣地使用者が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。
規律
土地所有者は①障壁・建物等の築造・収去・修繕、②境界標調査・測量、③233条3項による枝の切取りのため、必要な範囲内で隣地を使用できる。住家は居住者承諾必要(1項)。損害最小選択義務(2項)、事前通知義務(3項)、損害賠償責任(4項)。
2021年改正
改正前は「隣地の使用を請求できる」と訴訟による解決を強いていたが、改正で自力使用を許容する権利として強化。所有者不明土地問題への対応。
要件
①目的の限定(1項列挙3類型)、②必要範囲内、③損害最小方法、④事前通知(困難なら事後速やかに)。住家立入は居住者承諾必須。
効果
隣地所有者は使用を受忍する義務を負う代わりに、損害があれば償金請求可(4項)。承諾拒否されても自力使用可能だが、損害賠償リスクを負担。
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他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
2池沼、河川、水路若しくは海を通らなければ公道に至ることができないとき、又は崖がけがあって土地と公道とに著しい高低差があるときも、前項と同様とする。
規律
他の土地に囲まれて公道に通じない土地(袋地)の所有者は、公道に至るため囲繞地を通行できる(1項)。池沼・河川・水路・海を通らねば公道に至れない場合、崖で著しい高低差がある場合(準袋地)も同様(2項)。
趣旨
袋地は単独利用が事実上不可能なため、囲繞地通行権を法定の物権的権利として認める。土地相互間の利用調整。
通行権の性質
法定の通行権。当事者の合意・通行地役権設定(280)と異なり、袋地状態であれば当然発生。袋地解消で消滅。
211-213の補完
211条で通行場所・方法(損害最小)、212条で原則として償金支払義務、213条で分割袋地・一部譲渡袋地は無償通行という特則。
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前条の場合には、通行の場所及び方法は、同条の規定による通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
2前条の規定による通行権を有する者は、必要があるときは、通路を開設することができる。
規律
通行場所・方法は、通行権者にとって必要かつ他の土地に最も損害が少ないものを選ばなければならない(1項)。通行権者は必要があれば通路を開設できる(2項)。
趣旨
袋地通行権の濫用防止。通行権者の利益と囲繞地所有者の損害を比較衡量し、最適化された通行方法を要求。
判例
最判平2年11月20日: 既存通路がある場合は原則それを利用。他の通路を新設する場合は損害最小性の厳格な審査。
2項の通路開設権
通行のため土地に物理的変更を加える権利。開設費用は通行権者負担。開設による損害は212条但書で別途償金。
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第二百十条の規定による通行権を有する者は、その通行する他の土地の損害に対して償金を支払わなければならない。
2ただし、通路の開設のために生じた損害に対するものを除き、一年ごとにその償金を支払うことができる。
規律
210条による通行権者は、通行する他の土地の損害に対し償金を支払わなければならない。ただし通路開設のために生じた損害分を除き、1年ごとに支払うことができる。
趣旨
通行権は法定の物権的利用権だが、他人の土地を継続的に利用する以上、対価としての償金を支払う原則。但書で支払方法の便宜を図る。
償金の性質
①通路開設による一時的損害分(一括払)、②通行による継続的損害分(年払可)。継続損害は土地利用の長期性を反映。
213条との対比
分割袋地・一部譲渡袋地は無償通行(213条2項)。当事者が自ら作り出した袋地状況には償金不要として、外形的当事者責任を反映。
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分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。
2この場合においては、償金を支払うことを要しない。
3前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。
規律
分割により公道に通じない土地が生じたとき、その土地所有者は他の分割者所有地のみを通行できる。この場合償金を支払うことを要しない(1項)。土地の一部譲渡で袋地が生じた場合に準用(2項)。
趣旨
袋地状況を当事者自身が作り出した場合(分割・一部譲渡)、第三者の囲繞地所有者を巻き込むのは不当。当事者間で完結する通行権・無償通行とする。
1項の効果
①通行範囲は分割前一筆地内の他分割者所有地のみ、②償金不要。分割当事者間の内部関係的解決。
判例
最判平2年11月20日: 213条は分割当事者間でのみ適用。譲受人が更に第三者に売却しても213条の無償通行権は承継される(判例)。
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土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付(以下この項及び次条第一項において「継続的給付」という。)を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。
2前項の場合には、設備の設置又は使用の場所及び方法は、他の土地又は他人が所有する設備(次項において「他の土地等」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
3第一項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用する者は、あらかじめ、その目的、場所及び方法を他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に通知しなければならない。
4第一項の規定による権利を有する者は、同項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用するために当該他の土地又は当該他人が所有する設備がある土地を使用することができる。
5この場合においては、第二百九条第一項ただし書及び第二項から第四項までの規定を準用する。
6第一項の規定により他の土地に設備を設置する者は、その土地の損害(前項において準用する第二百九条第四項に規定する損害を除く。)に対して償金を支払わなければならない。
ただし、一年ごとにその償金を支払うことができる。
分割によって他の土地に設備を設置しなければ継続的給付を受けることができない土地が生じたときは、その土地の所有者は、継続的給付を受けるため、他の分割者の所有地のみに設備を設置することができる。
2この場合においては、前条第五項の規定は、適用しない。
3前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。
分割によるライフライン設備設置の特則
分割によって他の土地に設備を設置しなければ継続的給付を受けられない土地が生じた場合、他の分割者の所有地のみに設備を設置できる。213条の2の一般則を分割起因の場合に変容させた特則。
損害金の不適用
前条5項(償金支払義務)は適用されない。分割という自己起因の事由により設備設置の必要が生じた以上、分割者間で償金支払を求めることは衡平に反するという趣旨。210条囲繞地通行権における213条の無償通行と同じ思想。
一部譲渡への準用(2項)
土地の一部譲渡の場合にも準用される。分割と経済実質が同じであるため。
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土地の所有者は、隣地から水が自然に流れて来るのを妨げてはならない。
自然排水の受忍義務
土地所有者は隣地から水が自然に流れて来るのを妨げてはならない。低地は高地からの自然な流水を受け入れる義務を負う相隣関係の基本則。
自然流水に限定
「自然に流れて来る」水に限定されるため、人工的に水路を変更し導水された水は含まれない。人工流水については215条以下や220条が別途規律する。
妨害禁止の効果
違反した場合、高地所有者は妨害排除請求(物権的請求権)及び損害賠償請求が可能。判例は流水の通常性を超えた異常な事態についてはこの限りでないと解する。
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水流が天災その他避けることのできない事変により低地において閉塞そくしたときは、高地の所有者は、自己の費用で、水流の障害を除去するため必要な工事をすることができる。
閉塞時の障害除去工事権
水流が天災等避けられない事変により低地で閉塞した場合、高地所有者は自己の費用で水流障害を除去するための工事をすることができる。214条の自然流水原則を実効化する権利。
費用負担
高地所有者の自己費用負担が原則。低地所有者に費用を請求できない。217条により別段の慣習があれば慣習に従う。
工事の限界
工事は障害除去に必要な範囲に限定される。これを超えて低地の利用を不当に妨げる工事は権利濫用となり認められない。
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他の土地に貯水、排水又は引水のために設けられた工作物の破壊又は閉塞により、自己の土地に損害が及び、又は及ぶおそれがある場合には、その土地の所有者は、当該他の土地の所有者に、工作物の修繕若しくは障害の除去をさせ、又は必要があるときは予防工事をさせることができる。
工作物障害による損害防止請求権
他の土地の工作物の破壊・閉塞により自己の土地に損害が及び、又は及ぶおそれがある場合、当該他の土地所有者に修繕・障害除去・予防工事をさせることができる。
対象は人工的工作物
貯水・排水・引水のための工作物が対象。214条の自然流水とは区別され、人工的設備の管理責任に基づく。717条工作物責任とは別個の物権的請求権。
予防工事請求
現実の損害発生前でも「及ぶおそれ」があれば予防工事を請求できる点が特徴。物権的妨害予防請求権の特別規定として機能する。
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前二条の場合において、費用の負担について別段の慣習があるときは、その慣習に従う。
慣習優先の原則
前二条(215条・216条)の費用負担について別段の慣習があれば慣習に従う。相隣関係規定における慣習尊重の表れ。
慣習の意義
事実たる慣習(92条)と異なり、本条は法令の規定により定まる慣習法ないし任意規定に対する優先慣習として作用する。地域固有の水利秩序を尊重する趣旨。
立証責任
慣習の存在を主張する者が立証責任を負う。慣習が認定されない場合は215条・216条の原則ルールに戻る。
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土地の所有者は、直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根その他の工作物を設けてはならない。
規律
土地所有者は、直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根その他の工作物を設けてはならない。
趣旨
相隣関係の社会通念上の限界を明文化。雨水を隣地に流す構造は隣地への直接的侵害として禁止。
「直接」の意義
雨樋・排水溝等を介さず、屋根から直接隣地に雨水が落下する構造。間接的な流水(自然流下)は隣地の自然受忍範囲。
違反の効果
差止請求(工作物の改造・除去請求)。209条以下の相隣関係規定全体と整合する隣地配慮義務の一環。
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溝、堀その他の水流地の所有者は、対岸の土地が他人の所有に属するときは、その水路又は幅員を変更してはならない。
2両岸の土地が水流地の所有者に属するときは、その所有者は、水路及び幅員を変更することができる。
3ただし、水流が隣地と交わる地点において、自然の水路に戻さなければならない。
4前二項の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。
水路変更の禁止(1項)
対岸土地が他人所有のときは水流地所有者は水路・幅員を変更してはならない。下流の対岸所有者の利益を保護する。
両岸単独所有時の例外(2項)
両岸が水流地所有者に属する場合は変更可能。ただし水流が隣地と交わる地点では自然水路に戻さなければならない。下流側の隣地所有者の利益保護のため。
慣習優先(3項)
前二項と異なる慣習があるときは慣習に従う。
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高地の所有者は、その高地が浸水した場合にこれを乾かすため、又は自家用若しくは農工業用の余水を排出するため、公の水流又は下水道に至るまで、低地に水を通過させることができる。
2この場合においては、低地のために損害が最も少ない場所及び方法を選ばなければならない。
排水のための低地通水権
高地所有者は、高地の浸水を乾かすため又は自家用・農工業用余水排出のため、公の水流・下水道に至るまで低地に水を通過させることができる。物権的相隣権の典型例。
用途の限定
浸水排除・自家用排水・農工業用排水に限定。商業排水や工場汚水等は当然には含まれない(水質・量によっては不法行為になり得る)。
損害最小の原則
低地のために損害が最も少ない場所及び方法を選ばなければならない。210条囲繞地通行権と同じ衡平の原則。違反すれば差止・損害賠償。
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土地の所有者は、その所有地の水を通過させるため、高地又は低地の所有者が設けた工作物を使用することができる。
2前項の場合には、他人の工作物を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、工作物の設置及び保存の費用を分担しなければならない。
他人工作物の使用権
土地所有者は所有地の水通過のため、高地又は低地所有者が設けた工作物を使用できる。220条排水権を実効化する補完規定。
費用分担義務
他人工作物を使用する者は利益を受ける割合に応じて、工作物の設置及び保存の費用を分担しなければならない。利益受領者負担原則。
利益割合の判定
排水量・流域面積・使用頻度等を勘案して合理的に分担割合を決する。協議不調なら裁判所が衡平に判断する。
この条文の練習問題を解く
水流地の所有者は、堰せきを設ける必要がある場合には、対岸の土地が他人の所有に属するときであっても、その堰を対岸に付着させて設けることができる。
2ただし、これによって生じた損害に対して償金を支払わなければならない。
3対岸の土地の所有者は、水流地の一部がその所有に属するときは、前項の堰を使用することができる。
4前条第二項の規定は、前項の場合について準用する。
堰の対岸付着権
水流地所有者は堰を設ける必要がある場合、対岸が他人所有でも堰を対岸に付着させて設けることができる。水利秩序のための物権的相隣権。
償金支払義務
対岸付着により生じた損害には償金を支払わなければならない。権利行使には損害填補が条件。
対岸所有者の堰使用権(2項)
対岸土地所有者は水流地の一部が自己所有なら、当該堰を使用できる。費用分担は221条2項を準用(3項)。
この条文の練習問題を解く
土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で、境界標を設けることができる。
境界標設置請求権
土地所有者は隣地所有者と共同の費用で境界標を設けることができる。境界の物理的確認という公益的要請に応える共同行為請求権。
請求の法的性質
形成権ないし共同行為請求権と解される。隣地所有者は協力義務を負い、応じない場合は判決による意思表示の擬制(民執法177条)で執行可能。
境界確定訴訟との違い
境界標設置は事実上の標識を設けるにすぎず、境界自体を確定するものではない。境界が争われる場合は別途境界確定訴訟(公法上の形式形成訴訟)による。
この条文の練習問題を解く
境界標の設置及び保存の費用は、相隣者が等しい割合で負担する。
2ただし、測量の費用は、その土地の広狭に応じて分担する。
境界標設置・保存費用の等分原則
境界標の設置及び保存費用は相隣者が等しい割合で負担。境界線が両当事者の共通利益となるため均等負担とする趣旨。
測量費用の特則(ただし書)
測量費用は土地の広狭に応じて分担する。広い土地ほど測量範囲が広くなる物理的実態に対応した個別ルール。
慣習との関係
228条により別段の慣習があれば慣習に従う。任意規定としての性格。
この条文の練習問題を解く
二棟の建物がその所有者を異にし、かつ、その間に空地があるときは、各所有者は、他の所有者と共同の費用で、その境界に囲障を設けることができる。
2当事者間に協議が調わないときは、前項の囲障は、板塀又は竹垣その他これらに類する材料のものであって、かつ、高さ二メートルのものでなければならない。
囲障設置請求権
所有者を異にする二棟建物の間に空地がある場合、各所有者は他の所有者と共同費用で境界に囲障を設置できる。プライバシー・防犯のための物権的相隣権。
標準的囲障の内容(2項)
協議不調時は板塀・竹垣その他類似材料で高さ2メートルが標準。地域慣行や用途に関係なく一律のミニマム基準。228条により別段の慣習があれば優先。
請求の効果
隣地所有者は協力義務を負う。費用は226条により等分。より良質な材料・高い囲障を望む者は227条により単独負担で増額可能。
この条文の練習問題を解く
前条の囲障の設置及び保存の費用は、相隣者が等しい割合で負担する。
囲障費用の等分負担
囲障の設置及び保存費用は相隣者が等しい割合で負担する。境界の共通利益から導かれる均等負担原則。
224条との対比
224条が境界標について測量費用は広狭按分とするのに対し、囲障は等分一律。囲障は均しく境界全長に及ぶため広狭による差を設けない。
慣習による修正
228条により別段の慣習があれば慣習が優先する。
この条文の練習問題を解く
相隣者の一人は、第二百二十五条第二項に規定する材料より良好なものを用い、又は同項に規定する高さを増して囲障を設けることができる。
2ただし、これによって生ずる費用の増加額を負担しなければならない。
囲障の改良権
相隣者の一人は225条2項の標準材料より良好な材料を用い、又は標準高さを増した囲障を設けることができる。個別利益による増強を認める単独形成権。
増加費用の単独負担
増加費用は改良を希望した者の単独負担。他方の隣人に強制的に費用負担を求められないことで、相隣者の利益均衡を保つ。
改良部分の所有関係
本条には明文なく、判例・通説は標準を超える部分について改良者の単独所有とする231条2項を類推する見解が有力。
この条文の練習問題を解く
前三条の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。
囲障・境界標規定の慣習優先
225条から227条と異なる慣習があるときは慣習に従う。境界・囲障に関する各規定は任意規定としての性格を持つ。
適用対象
囲障の標準的内容、設置費用負担、改良費用負担等の各規定が対象。慣習が認定されれば各規定の適用は排除される。
立証責任
慣習の存在を主張する者が立証責任を負う。地域固有の慣行を主張する側の負担。
この条文の練習問題を解く
境界線上に設けた境界標、囲障、障壁、溝及び堀は、相隣者の共有に属するものと推定する。
境界標等の共有推定
境界線上に設けた境界標・囲障・障壁・溝・堀は相隣者の共有に属するものと推定する。境界線上に物理的に存在することによる共通利益の擬制。
推定規定の性質
「推定する」であって「みなす」ではないため、反証により単独所有等を立証することは可能。設置経緯・費用負担を一方のみが行ったこと等が反証材料となる。
共有の効果
管理・処分について249条以下の共有規定が適用される。一方が単独で除去・変更することはできず、共有物の管理として持分価格の過半数(252条1項)等が必要。
この条文の練習問題を解く
一棟の建物の一部を構成する境界線上の障壁については、前条の規定は、適用しない。
2高さの異なる二棟の隣接する建物を隔てる障壁の高さが、低い建物の高さを超えるときは、その障壁のうち低い建物を超える部分についても、前項と同様とする。
3ただし、防火障壁については、この限りでない。
建物一部障壁への適用除外
一棟建物の一部を構成する境界線上の障壁には229条の共有推定は適用されない。一棟の建物の構造の一体性を尊重する趣旨。
高低差建物の障壁(2項)
高さの異なる2棟隣接建物を隔てる障壁が低い建物の高さを超える場合、超える部分には229条が適用されない(=共有推定されない)。事実上、高い建物所有者の単独所有部分。
防火障壁の例外(ただし書)
防火障壁については2項ただし書により229条が適用される(共有推定される)。防火という公益的機能から共同負担を維持する趣旨。
この条文の練習問題を解く
相隣者の一人は、共有の障壁の高さを増すことができる。
2ただし、その障壁がその工事に耐えないときは、自己の費用で、必要な工作を加え、又はその障壁を改築しなければならない。
3前項の規定により障壁の高さを増したときは、その高さを増した部分は、その工事をした者の単独の所有に属する。
共有障壁の高さ増加権
相隣者の一人は共有障壁の高さを増すことができる単独形成権。共有物の変更(251条)の特則として、特に高さ増加についてのみ単独行為を許容。
障壁が耐えない場合の改築義務(ただし書)
障壁が増築工事に耐えないときは自己費用で必要な工作を加え又は障壁を改築する義務。共有物保全と単独利益享受の調整。
増築部分の単独所有(2項)
高さを増した部分は工事をした者の単独所有。共有推定(229条)の適用排除であり、費用と所有を一致させる利益均衡。
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前条の場合において、隣人が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。
障壁改修による損害賠償
231条による障壁高さ増加に伴い隣人が損害を受けた場合、隣人は償金を請求できる。単独形成権の行使による不利益への補償。
対象となる損害
日照妨害・通風阻害・景観阻害等が典型例。社会通念上受忍すべき程度を超える損害が対象となり、軽微な損害は権利行使の付随的不利益として受忍が要求される。
賠償か償金か
本条は不法行為に基づく損害賠償ではなく、適法な権利行使に伴う公平の見地からの償金請求権。709条不法行為とは構造が異なる。
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土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。
2前項の場合において、竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる。
3第一項の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。
4竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。
5竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
6急迫の事情があるとき。
7隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。
規律
境界線越えの枝は竹木所有者に切除させることができる(1項)。共有竹木の場合各共有者が枝を切れる(2項)。①催告後相当期間内不切除、②所有者不明・所在不明、③急迫事情のいずれかで土地所有者が自ら枝を切れる(3項)。境界越えの根は自ら切り取れる(4項)。
2021年改正
改正前は枝は切除請求のみ(自力切除不可)、根は自力切取可と非対称だった。改正で枝も3類型で自力切取可とし、現代的需要に対応。所有者不明土地問題への対応。
枝と根の区別
根は当然に自力切取可(4項)、枝は3類型に限定された条件下で自力切取可(3項)。枝は植物本体への影響が大きいため慎重。
3項3号「急迫事情」
枝の落下による損害発生の差し迫った危険、突風による倒木のおそれ等。緊急避難類似の例外。
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建物を築造するには、境界線から五十センチメートル以上の距離を保たなければならない。
2前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。
3ただし、建築に着手した時から一年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。
建物築造の境界距離(1項)
建物築造には境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければならない。日照・通風・防火等の確保のための物的限界。
違反時の中止・変更請求(2項本文)
違反建築には隣地所有者が中止・変更を請求できる。物権的妨害排除請求権の特則として作用する形成権ないし請求権。
1年経過・完成後の損害賠償への限定(2項ただし書)
建築着手から1年経過又は完成後は、損害賠償請求のみ可能となる。社会経済的損失を回避するための除斥期間。判例(最判平元・9・19)は建築基準法65条による特則の存在を認める。
建築基準法65条との関係
防火地域・準防火地域内で耐火建築物等を境界線に接して建築できる旨の建築基準法65条と本条との関係につき、判例は同法65条優先説。
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境界線から一メートル未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側(ベランダを含む。次項において同じ。)を設ける者は、目隠しを付けなければならない。
2前項の距離は、窓又は縁側の最も隣地に近い点から垂直線によって境界線に至るまでを測定して算出する。
目隠し設置義務
境界線から1メートル未満の距離で他人の宅地を見通せる窓・縁側(ベランダ含む)を設ける者は目隠しを付けなければならない。プライバシー保護のための物的義務。
対象
「他人の宅地を見通すことのできる」窓・縁側に限定。空地・道路・自己土地のみが見える窓は対象外。隣地が宅地であることが要件。
距離の計算方法(2項)
窓・縁側の最も隣地に近い点から垂直線を引いて境界線までの距離を測る。実質的にプライバシー侵害が生じうる位置関係を画する。
違反時の救済
隣地所有者は目隠し設置を請求できる。判例(最判昭35・7・29)は本条違反建築につき差止請求まで認めず、目隠し設置請求のみ可能と解する。
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前二条の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。
境界距離規定の慣習優先
234条(建物築造距離)・235条(目隠し)と異なる慣習があるときは慣習に従う。地域固有の建築慣行を尊重する趣旨。
代表的慣習例
京都の町家のように軒を接して建てる建築慣行が認定された判例がある(大判昭5・4・3等)。市街地密集地での経済的合理性を反映。
立証責任
慣習を主張する側に立証責任。確立した慣行であることの証明が必要。
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井戸、用水だめ、下水だめ又は肥料だめを掘るには境界線から二メートル以上、池、穴蔵又はし尿だめを掘るには境界線から一メートル以上の距離を保たなければならない。
2導水管を埋め、又は溝若しくは堀を掘るには、境界線からその深さの二分の一以上の距離を保たなければならない。
3ただし、一メートルを超えることを要しない。
井戸・水溜・汚物溜の境界距離(1項)
井戸・用水だめ・下水だめ・肥料だめは境界線から2メートル以上、池・穴蔵・し尿だめは境界線から1メートル以上の距離が必要。地盤・衛生面の影響に応じた差別化。
導水管・溝・堀の特則(2項)
導水管埋設・溝堀設置は境界線からその深さの2分の1以上の距離。深さに比例した土砂崩落リスクへの対応。
ただし書による上限
ただし1メートルを超えることを要しない。深さに比例させつつも過大な負担を避ける限界設定。
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境界線の付近において前条の工事をするときは、土砂の崩壊又は水若しくは汚液の漏出を防ぐため必要な注意をしなければならない。
土砂崩壊・漏出防止の注意義務
境界線付近で237条の工事をするときは土砂崩壊又は水・汚液漏出を防ぐため必要な注意をしなければならない。距離規制を超えた具体的な工事方法に関する作為義務。
違反の効果
違反により隣地に損害が生じれば709条不法行為又は717条工作物責任により損害賠償義務。物権的妨害排除・予防請求権も可能。
予防工事への接続
現実の損害発生前でも崩壊・漏出のおそれがある場合は216条類推により予防工事を請求しうると解する説が有力。
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所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。
2所有者のない不動産は、国庫に帰属する。
規律
所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって所有権を取得する(無主物先占・1項)。所有者のない不動産は国庫に帰属する(2項)。
趣旨
無主物の帰属を整理。動産は先占主義(占有者帰属)、不動産は国庫帰属で区別。不動産の国家管理を担保。
無主物先占の要件
①無主物(誰にも所有されていない)、②所有意思をもって占有開始、③法令禁止のないこと(鳥獣保護法・文化財保護法等)。野生動物は捕獲した者の所有。
2項の意義
相続人不存在等で無主不動産が生じた場合、国庫帰属(959条の最終帰属とも連動)。土地は社会基盤として無主状態を許さない政策判断。
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遺失物は、遺失物法(平成十八年法律第七十三号)の定めるところに従い公告をした後三箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを拾得した者がその所有権を取得する。
規律
遺失物は遺失物法に従い公告した後3か月以内に所有者が判明しないとき、拾得者が所有権を取得する。
趣旨
遺失物(所有者が判明しているが占有を失った物)と無主物(所有者不在)を区別。遺失物は所有権存続を前提とし、一定期間経過後の所有権取得を例外的に認める。
要件
①遺失物法に基づく拾得・届出・公告、②3か月の期間経過、③所有者不明状態の継続。期間内に所有者が判明すれば原所有者に返還。
効果
拾得者の原始取得(承継取得ではない)。所有権の負担(抵当権・質権等)は消滅する。
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埋蔵物は、遺失物法の定めるところに従い公告をした後六箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを発見した者がその所有権を取得する。
2ただし、他人の所有する物の中から発見された埋蔵物については、これを発見した者及びその他人が等しい割合でその所有権を取得する。
埋蔵物発見による所有権取得
埋蔵物は遺失物法の公告後6か月以内に所有者が判明しないとき、発見者がその所有権を取得する。先占(239条)とは別の所有権取得原因。
公告手続
遺失物法に基づく公告が要件。警察署長への提出と公告がなされた上で6か月の所有者出現がないことが取得要件となる。
他人所有物中の埋蔵物(ただし書)
他人の所有する物の中から発見された場合は、発見者とその他人が等しい割合で所有権を取得する。土地所有者等の協力者の利益保護。
文化財保護法との関係
埋蔵文化財については文化財保護法105条以下の特則が優先し、国庫帰属となる。最判昭40・3・25は本条の対象外であることを示す。
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不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。
2ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。
規律
不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし権原によって附属させた他人の権利を妨げない。
趣旨
不動産と付合動産を分離することが社会経済的に不合理な場合、不動産所有権に吸収させる。一物一権主義の実現。
「従として」の意義
判例: 取引観念上独立性を失い、不動産の構成部分となった状態。容易に分離できず分離すれば毀損するか経済的価値を著しく減じる場合。
但書の意義
賃借権・地上権等の権原を有する者が附属させた物(建前・植栽等)は付合せず権原者所有のまま。借家人が建てた増築部分が独立性を持つ場合等。
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所有者を異にする数個の動産が、付合により、損傷しなければ分離することができなくなったときは、その合成物の所有権は、主たる動産の所有者に帰属する。
2分離するのに過分の費用を要するときも、同様とする。
規律
所有者を異にする数個の動産が付合により損傷せず分離できなくなったとき、合成物の所有権は主たる動産の所有者に帰属する。分離に過分の費用を要する場合も同様。
趣旨
動産付合の所有権帰属を主従関係で決定。経済的合理性(分離コスト)と物の社会経済機能を重視。
主従の判断基準
①経済的価値、②機能的主従関係、③社会通念上の本質的部分性。価値が顕著に大きい方が主、機能の中核を担う方が主。
244との関係
主従の区別ができないとき各動産所有者の共有(244条)。243条適用不可の場合の補充規定。
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付合した動産について主従の区別をすることができないときは、各動産の所有者は、その付合の時における価格の割合に応じてその合成物を共有する。
規律
付合した動産について主従の区別ができないとき、各動産所有者は付合時の価格割合に応じて合成物を共有する。
趣旨
243条の主従判別が困難な場合の補充。経済的価値の按分による共有関係で公平を図る。
適用場面
同種・同質の動産同士の混合(金属の溶融等)、複数素材の対等な結合(複合素材製品等)。
効果
共有関係(249-264)が適用される。共有者は分割請求(256)・持分処分(249等)が可能。
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前二条の規定は、所有者を異にする物が混和して識別することができなくなった場合について準用する。
混和への準用
前二条(243条・244条)の規定(動産の付合)は、所有者を異にする物が混和して識別できなくなった場合に準用される。固体の付合と液体・粉体の混和を同一規律に統合。
準用の対象
識別不能となる場面が中心:穀物・酒類・液体燃料等の混合。識別可能な場合は混和ではなく単に物の併存にとどまり本条の対象外。
効果
243条が準用される結果、主従の区別ある場合は主たる物の所有者が単独所有を取得、なき場合は244条が準用され混和時の価格割合で共有関係となる。
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他人の動産に工作を加えた者(以下この条において「加工者」という。)があるときは、その加工物の所有権は、材料の所有者に帰属する。
2ただし、工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときは、加工者がその加工物の所有権を取得する。
3前項に規定する場合において、加工者が材料の一部を供したときは、その価格に工作によって生じた価格を加えたものが他人の材料の価格を超えるときに限り、加工者がその加工物の所有権を取得する。
規律
他人動産に工作を加えた加工者があるとき、加工物所有権は材料所有者に帰属(1項本文)。ただし工作価格が材料価格を著しく超えるときは加工者取得(1項但書)。加工者が材料の一部を供したとき、その価格+工作価格が他人材料価格を超えるときに加工者取得(2項)。
趣旨
加工物の所有権帰属を経済価値で決定。原則として材料所有者(資本側)を保護し、例外的に労務価値の優越を認める。
「著しく超える」の基準
通説・判例: 工作価値が材料価値の2倍程度以上。芸術品制作・特殊技術加工等で適用。通常の機械加工では原則どおり材料所有者帰属。
2項の混合事例
加工者が一部材料も提供した場合の特則。労務+自己材料の合計が他人材料を超えれば加工者取得。実務上多い事例(受託加工等)。
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8第一項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その設備の使用を開始するために生じた損害に対して償金を支払わなければならない。
9第一項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、その設置、改築、修繕及び維持に要する費用を負担しなければならない。
ライフライン設備設置使用権(2021改正で新設)
電気・ガス・水道等の継続的給付を受けるため必要なときに限り、他の土地に設備を設置し、又は他人所有の設備を使用できる権利。旧法下では明文規定がなく解釈に委ねられていたが、空き家・所有者不明土地問題への対処として2021年改正(2023年4月施行)で新設された相隣関係規定の中核。
損害最小の原則(2項)
設置場所及び使用方法は他の土地等のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。209条隣地使用権と同じ思想で、権利行使の限界を定める。違反すれば差止め・損害賠償の対象。
事前通知義務(3項)
あらかじめ他の土地等の所有者及び使用者に通知が必要。急迫事情があるときは事後でもよい(4項類推適用論あり)。通知を欠いた設置使用は不法行為となる余地がある。
償金支払義務(5項・6項)
設備設置による土地使用の損害には償金を支払う(一時金可)。他人設備の使用については利益を受ける割合に応じた費用分担(継続的償金)。設置と使用で償金方法を区別する点が特徴。
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