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意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
2意思表示に対応する意思を欠く錯誤
3表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
4前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。
5錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。
6相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。
7相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。
8第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
錯誤類型(1項1号・2号)
①意思表示に対応する意思を欠く錯誤(表示錯誤)②表意者が法律行為の基礎とした事情についての認識が真実に反する錯誤(基礎事情錯誤)。
重要性(1項柱書)
その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要であること。
基礎事情錯誤の表示要件(2項)
基礎事情錯誤は、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り取消可能。
重過失の効果と例外(3項)
表意者に重過失があるときは取消不可。ただし①相手方の悪意・重過失②共通錯誤の場合は取消可能。
善意無過失の第三者保護(4項)
錯誤取消しは善意無過失の第三者に対抗不可。
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詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
詐欺・強迫による取消し(1項)
詐欺または強迫による意思表示は取り消すことができる。
第三者詐欺(2項)
相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合、相手方がその事実を知り、または知ることができたときに限り取り消せる。強迫の第三者は無条件に取り消し可(2項反対解釈)。
詐欺取消しと第三者保護(3項)
詐欺による取消しは、善意かつ無過失の第三者に対抗できない(2017改正で無過失要件追加)。強迫取消しは善意第三者にも対抗可能。
詐欺の要件
①欺罔行為、②欺罔の故意(二段の故意:表意者を錯誤に陥らせる故意+それにより意思表示させる故意)、③錯誤、④意思表示、⑤違法性。沈黙でも信義則上告知義務あれば詐欺成立。
民法
詐欺取消しと善意第三者(96条3項)の保護
民法
強迫による取消しと第三者保護の範囲の比較
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意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。
2相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす。
3意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。
到達主義(1項)
意思表示は相手方に到達した時からその効力を生ずる。
到達妨害(2項)
相手方が正当な理由なく通知の到達を妨げたときは、通常到達すべきであった時に到達したとみなされる(2017改正明文化)。
発信後の事情変更(3項)
意思表示の発信後に表意者が死亡し、意思能力を喪失し、または行為能力の制限を受けたときも意思表示の効力に影響しない。
到達の意義
判例は了知可能な状態に置かれた時(受領権限ある者が支配領域に入った時)(最判昭43・12・17)。現実の了知までは不要。
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意思表示は、表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、公示の方法によってすることができる。
2前項の公示は、公示送達に関する民事訴訟法(平成八年法律第百九号)の規定に従い、裁判所の掲示場に掲示し、かつ、その掲示があったことを官報に少なくとも一回掲載して行う。
3ただし、裁判所は、相当と認めるときは、官報への掲載に代えて、市役所、区役所、町村役場又はこれらに準ずる施設の掲示場に掲示すべきことを命ずることができる。
4公示による意思表示は、最後に官報に掲載した日又はその掲載に代わる掲示を始めた日から二週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなす。
5ただし、表意者が相手方を知らないこと又はその所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力を生じない。
6公示に関する手続は、相手方を知ることができない場合には表意者の住所地の、相手方の所在を知ることができない場合には相手方の最後の住所地の簡易裁判所の管轄に属する。
7裁判所は、表意者に、公示に関する費用を予納させなければならない。
公示による意思表示
意思表示は、表意者が相手方を知ることができず、又は所在を知ることができないときは、公示の方法によってすることができる。意思表示が相手方に到達しない場合の救済手続。
公示の方法(2項)
民訴法の公示送達規定に従い、裁判所掲示場掲示と官報1回以上掲載で行う。裁判所が相当と認めるときは官報掲載に代えて市役所等の掲示で代替可能。
到達のみなし(3項)
最後の官報掲載日又は掲示開始日から2週間経過時に相手方に到達したものとみなす。意思表示の効力発生時期を確定。
過失ある表意者の例外(3項ただし書)
表意者が相手方の所在不明等を知らないことに過失があったときは到達効力を生じない。公示制度の濫用防止のための制限。
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意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に意思能力を有しなかったとき又は未成年者若しくは成年被後見人であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。
2ただし、次に掲げる者がその意思表示を知った後は、この限りでない。
3相手方の法定代理人
4意思能力を回復し、又は行為能力者となった相手方
受領能力の不在による効力制限
意思表示の相手方が①意思能力を欠く状態または②未成年者・成年被後見人であったときは、その意思表示をもって相手方に対抗できない。
例外(1号・2号)
①法定代理人がその意思表示を知った後、または②意思能力回復・行為能力者となった相手方が意思表示を知った後は対抗可能。
趣旨
受領能力のない者を保護する。被保佐人・被補助人は受領能力あり(保佐・補助は受領一般を制限しない)。
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代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
2前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。
代理行為の要件・効果(1項)
代理人が代理権の範囲内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接に効力を生ずる。三要素:①代理権、②顕名、③代理権限内の意思表示。
受働代理(2項)
相手方が代理人に対してした意思表示についても1項を準用。受働代理にも顕名(代理人としての地位明示)が必要。
顕名の機能
本人帰属を明らかにし相手方の判断材料を与える。顕名なき場合は100条で代理人本人に効果帰属が原則。
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代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。
2ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第一項の規定を準用する。
顕名主義(本文)
代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、代理人自身のためにしたものとみなされる。代理意思の表示(顕名)を効力要件とする趣旨。
相手方の悪意・有過失(ただし書)
相手方が、代理人が本人のためにすることを知りまたは知ることができたときは、99条1項(顕名のある代理)の規定を準用し、本人に効果が帰属する。
趣旨
顕名は相手方が代理関係を認識するための形式要件にすぎず、代理関係を相手方が認識可能であれば形式不備でも本人帰属を認める。
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代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。
2相手方が代理人に対してした意思表示の効力が意思表示を受けた者がある事情を知っていたこと又は知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。
3特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。
4本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。
代理人による意思表示の瑕疵(1項)
代理人が相手方にした意思表示の効力が、意思の不存在・錯誤・詐欺・強迫または或事情の知不知によって影響を受ける場合、その事実の有無は代理人について決する。本人ではない。
代理人が受けた意思表示(2項)
相手方が代理人に対してした意思表示の効力が或事情の知不知によって影響を受ける場合も代理人について決する。
本人の指図による事情(3項)
特定の法律行為を委託された代理人が本人の指図に従ってした行為について、本人は自ら知っていた事情・知らなかったことに過失がある事情について代理人の不知を主張できない。
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制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。
2ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない。
代理人の行為能力
制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限を理由として取り消すことができない。代理人は意思表示の効果帰属を受けないため本人保護不要。
但書(法定代理人の場合)
ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については取消し可能(2017改正で明示)。例:未成年者の親権者が成年被後見人の場合の親権者の代理行為。
実務上の意義
任意代理では本人が代理人を選任するため本人自己責任。法定代理は本人選任の機会がないため例外的に取消し可能としてバランス。
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権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。
2保存行為
3代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為
権限の定めのない代理人の権限
権限の定めのない代理人は次の行為のみができる。①保存行為、②代理の目的物の性質を変えない範囲内における利用・改良行為。
保存行為の例
家屋修繕、消滅時効中断、腐敗物の処分、未登記不動産の登記、期限到来債権の取立て等。
利用・改良行為の例
預金、賃貸(短期賃貸借602条範囲内)、家屋への造作等。性質変更(更地→建物建築等)は処分行為に当たり権限外。
処分行為の排除
売却・贈与・抵当権設定等の処分行為は本条の権限外。本人の特別授権がなければできない。
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委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。
任意代理人の復代理人選任要件
委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、またはやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。
趣旨
任意代理は本人の信任に基づくため、復任は原則として禁止し、本人意思または不可抗力的事由に限定する。
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法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。
2この場合において、やむを得ない事由があるときは、本人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。
法定代理人の自由な復代理人選任
法定代理人は自己の責任で復代理人を選任することができる。任意代理と異なり本人許諾不要。
責任軽減(やむを得ない事由)
やむを得ない事由により選任した場合は、本人に対しその選任および監督についての責任のみを負う(全責任から選任監督過失責任に軽減)。
趣旨
法定代理は本人の信任ではなく法律により発生するため、代理人個人で処理しきれない事務処理を可能にする必要から復任を自由に認める。
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復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表する。
2復代理人は、本人及び第三者に対して、その権限の範囲内において、代理人と同一の権利を有し、義務を負う。
本人代表(1項)
復代理人は、その権限内の行為について本人を代表する。代理人ではなく本人の代理人として行動し、効果は本人に直接帰属する。
本人・第三者に対する権利義務(2項)
復代理人は本人および第三者に対し、その権限の範囲内で代理人と同一の権利を有し義務を負う。代理人を介さず直接本人と権利義務関係に立つ。
代理人の地位
復代理人の選任後も代理人の地位は失われない(代理人と復代理人が併存)。
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代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。
代理権の濫用(2017改正)
代理人が自己または第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合、相手方がその目的を知りまたは知ることができたときは、その行為は代理権を有しない者がした行為とみなされる(無権代理擬制)。
効果
本人は追認しない限り本人に効果帰属しない。相手方は表見代理(110条等)の主張・無権代理人責任(117条)の追及が可能。
改正前判例(93条但書類推適用)からの変更
改正前は93条但書類推で無効としていたが、改正で無権代理構成に明文化。相手方保護のため表見代理規定との接続を明確化。
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同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。
2ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。
3前項本文に規定するもののほか、代理人と本人との利益が相反する行為については、代理権を有しない者がした行為とみなす。
4ただし、本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。
自己契約・双方代理(1項)
同一の法律行為について、相手方の代理人としてし、または当事者双方の代理人としてした行為は無権代理とみなされる。本人・代理人間の利益相反防止。
例外(1項但書)
①債務の履行、②本人があらかじめ許諾した行為は許される。利益相反のおそれがないため。
利益相反行為(2項・2017改正で追加)
1項本文の他、代理人と本人との利益が相反する行為については、本人のあらかじめ許諾した行為を除き無権代理とみなされる。
効果
本人は追認可能。追認なき場合は本人に効果不帰属。
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第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。
2ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
3第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。
代理権授与表示による表見代理(1項)
第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内において当該他人が第三者との間でした行為について責任を負う。第三者は代理権がないことを知りまたは知ることができた場合を除く(善意無過失要件)。
適用例
白紙委任状交付、名義貸与、社員証や肩書付名刺の交付等。
代理権授与表示後の権限外行為(2項・2017改正)
代理権授与表示があり、表示された代理権の範囲外の行為についても、相手方が当該代理権があると信ずべき正当な理由があるときは責任を負う(109条と110条の重畳適用を明文化)。
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前条第一項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。
基本代理権の存在
代理人に何らかの代理権が現に存在すること。判例は私法上の行為に関する代理権を要求(公法上の代理権は原則含まれないが、登記申請等は含むとされる場合あり)。
権限外の行為
代理人が与えられた代理権の範囲を超えて行為したこと。
正当な理由(相手方の善意無過失)
相手方が代理人に権限ありと信ずべき正当な理由を有すること。判例は善意無過失と解する。
民法
権限外行為の表見代理と基本代理権の要件
民法
109条・110条・112条の表見代理の競合
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代理権は、次に掲げる事由によって消滅する。
2本人の死亡
3代理人の死亡又は代理人が破産手続開始の決定若しくは後見開始の審判を受けたこと。
4委任による代理権は、前項各号に掲げる事由のほか、委任の終了によって消滅する。
代理権の一般的消滅事由(1項)
代理権は次の事由により消滅する。①本人の死亡、②代理人の死亡または代理人が破産手続開始決定もしくは後見開始審判を受けたこと。本人の破産は1項列挙にない(委任の終了を介して消滅する)。
委任による代理権の追加消滅事由(2項)
委任による代理権は1項各号のほか、委任の終了(651条解除・653条委任終了事由)によっても消滅する。
本人破産による任意代理権消滅
本人の破産は1項では消滅事由とされないが、653条2号により委任が終了することで委任による代理権が消滅する。
この条文の練習問題を解く
他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後にその代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、代理権の消滅の事実を知らなかった第三者に対してその責任を負う。
2ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。
3他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後に、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。
代理権消滅後の表見代理(1項)
他人に代理権を与えた者は、代理権消滅後にその代理人が代理権範囲内でした行為について、相手方が代理権消滅の事実を知らず、かつ知らないことに過失がないときに限り責任を負う。
代理権消滅後の権限外行為(2項・2017改正)
代理権消滅後の権限外の行為について、相手方が代理権があると信ずべき正当な理由があるときは責任を負う。112条と110条の重畳適用を明文化。
判例の例
支配人を解任した後の旧支配人の行為、解任登記前の取引等で適用。
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代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
2追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。
3ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。
無権代理行為の効果(1項)
代理権を有しない者が他人の代理人としてした行為は、本人がその追認をしなければ本人に対して効力を生じない。
追認・追認拒絶の通知(2項)
追認または追認拒絶は相手方に対してしなければ相手方に対抗できない。ただし相手方がその事実を知ったときは対抗可。
未確定状態
本人の追認・追認拒絶までは効果未確定。相手方は114条催告権、115条取消権、117条無権代理人責任追及が可能。
この条文の練習問題を解く
前条の場合において、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。
2この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす。
催告権
相手方は本人に対して相当の期間を定めて追認するかを確答すべき旨を催告できる。
確答なきときの効果
期間内に本人が確答を発しないときは追認を拒絶したものとみなされる(取消し擬制ではなく拒絶擬制:制限行為能力者の場合と逆)。
催告権の主体
悪意の相手方も催告権を行使可能(取消権115条と異なり善意要件なし)。法律関係安定の必要性から。
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代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる。
2ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない。
取消権
代理権を有しない者がした契約は、本人が追認しない間、相手方が取り消すことができる。
善意要件
ただし契約時に代理権を有しないことを相手方が知っていたときは取り消すことができない。善意であれば過失あっても可(過失要件なし)。
効果
取消しにより無権代理行為は確定的に無効となる。本人の追認権・相手方の117条責任追及権も消滅。
この条文の練習問題を解く
追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。
2ただし、第三者の権利を害することはできない。
追認の遡及効
追認は別段の意思表示がないときは契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。
第三者の権利を害さない(但書)
ただし第三者の権利を害することはできない。例:無権代理人がAに売却→本人がBに売却→無権代理の追認、の場合Bの権利優先。
追認の意思表示
追認は相手方または無権代理人いずれに対しても可能。ただし無権代理人にした場合は相手方が知るまで対抗不可(113条2項)。
この条文の練習問題を解く
他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
2前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
3他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき。
4他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。
5ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない。
6他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたとき。
無権代理人の責任(1項)
他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明できず、かつ本人の追認も得られなかったときは、相手方の選択に従い履行または損害賠償の責任を負う。
免責事由(2項各号・2017改正で整理)
①相手方が代理権なきことを知っていた場合(悪意)、②相手方が過失により代理権なきことを知らなかった場合(ただし無権代理人自身が悪意なら相手方過失あっても責任あり)、③無権代理人が制限行為能力者である場合は責任を負わない。
責任の性質
無過失責任。代理権ありと信じて取引した相手方を保護するため。表見代理成立時は相手方の選択で表見代理主張も可能(重畳的)。
この条文の練習問題を解く
単独行為については、その行為の時において、相手方が、代理人と称する者が代理権を有しないで行為をすることに同意し、又はその代理権を争わなかったときに限り、第百十三条から前条までの規定を準用する。
2代理権を有しない者に対しその同意を得て単独行為をしたときも、同様とする。
単独行為の無権代理の原則
契約と異なり単独行為(解除・取消・債務免除等)は相手方への一方的意思表示で効果を生じるため、無権代理人による単独行為は原則として無効。相手方が一方的に拘束される事態を避ける趣旨。
例外的に追認可能な場合(前段)
相手方が①代理権を有しないで行為することに同意し、又は②代理権を争わなかった場合に限り、113条以下(追認・追認拒絶・無権代理人責任)の規定を準用する。相手方の保護を要しない場合に限定して契約の規律を適用する。
無権代理人に対する単独行為(後段)
代理権を有しない者に対して、その同意を得て単独行為をしたときも同様。相手方(無権代理人本人)が同意していれば、本人の追認等の余地を認める。
この条文の練習問題を解く
無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない。
2ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。
無効行為の追認
無効な行為は追認によってもその効力を生じない。
新たな行為としての追認(但書)
ただし当事者がその行為の無効であることを知って追認したときは、新たな行為をしたものとみなす(遡及効なし)。
趣旨
無効は当然無効・絶対無効が原則。当事者の意思で過去にさかのぼって有効化することはできない。ただし新たに同内容の意思表示と評価可能なら将来効として認める。
この条文の練習問題を解く
行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
2錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵かしある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。
制限行為能力者の取消権(1項)
行為能力の制限によって取消しできる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為では当該他の制限行為能力者を含む)またはその代理人・承継人・同意権者に限り取り消すことができる。
錯誤・詐欺・強迫の取消権(2項)
錯誤・詐欺・強迫によって取消しできる行為は、瑕疵ある意思表示をした者またはその代理人・承継人に限り取り消すことができる。
取消権者の限定理由
取消権は本人保護のための私権であり、表意者側のみに帰属させる。相手方は催告権等で対応。
この条文の練習問題を解く
取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。
取消しの遡及効
取り消された行為は初めから無効であったものとみなされる。
遡及効の限界
第三者保護規定(96条3項・192条等)により実質的に遡及効が制限される場合がある。
実務上の効果
原状回復義務(121条の2)が生じる。既履行給付は不当利得返還となるが121条の2の特則が適用。
この条文の練習問題を解く
無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う。
2前項の規定にかかわらず、無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、給付を受けた当時その行為が無効であること(給付を受けた後に前条の規定により初めから無効であったものとみなされた行為にあっては、給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであること)を知らなかったときは、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。
3第一項の規定にかかわらず、行為の時に意思能力を有しなかった者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。
4行為の時に制限行為能力者であった者についても、同様とする。
原状回復義務(1項・2017改正)
無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う。
現存利益限度の返還(2項)
無効な無償行為に基づく履行で給付時に無効を知らなかった者は、現に利益を受けている限度で返還義務を負う。
意思無能力者・制限行為能力者の特則(3項)
行為時に意思能力を有しなかった者・制限行為能力者であった者は、現に利益を受けている限度で返還義務を負う。本人保護のため返還範囲を限定。
趣旨
改正前は703条の不当利得規定に依拠していたが、給付不当利得の特殊性を考慮し独立規定として整理。
この条文の練習問題を解く
取り消すことができる行為は、第百二十条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない。
追認の効果
取り消すことができる行為は120条所定の取消権者が追認したときは以後取り消すことができない。
追認の効果範囲
確定的に有効となる。取消し可能な状態(浮動的有効)から確定的有効へ。
追認の方法
意思表示のほか追認とみなされる事実行為(125条の法定追認)でも可能。
この条文の練習問題を解く
取り消すことができる行為の相手方が確定している場合には、その取消し又は追認は、相手方に対する意思表示によってする。
取消・追認の方法
取り消すことができる行為の相手方が確定している場合は、相手方に対する意思表示によって行う。単独行為であり、相手方の同意を要しない。
意思表示の到達
97条1項により、相手方に到達した時に効力発生(到達主義)。発信主義は適用されない。
相手方不確定の場合
本条は相手方が「確定している場合」の規定であり、相手方が確定していない法律行為(遺言・寄付行為等)については別の方法(裁判所への申立・公告等)による。実務上は契約取消が中心。
取消の効果
取消は遡及的無効(121条)。原状回復義務(121条の2)が発生する。追認は確定的有効化(122条)。
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取り消すことができる行為の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ、その効力を生じない。
2次に掲げる場合には、前項の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にすることを要しない。
3法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは補助人が追認をするとき。
4制限行為能力者(成年被後見人を除く。)が法定代理人、保佐人又は補助人の同意を得て追認をするとき。
追認の要件(1項)
取消し可能な行為の追認は、取消し原因となっていた状況が消滅し、かつ取消権を有することを知った後にしなければ効力を生じない。
例外(2項各号)
①法定代理人または制限行為能力者の保佐人・補助人が追認するとき、②制限行為能力者(成年被後見人除く)が法定代理人・保佐人・補助人の同意を得て追認するとき、は取消し原因状況消滅前でも有効。
趣旨
取消し原因状況下での追認は本人の自由意思を欠くため無効。能力回復・状況解消後の意思表示を要求。
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追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について次に掲げる事実があったときは、追認をしたものとみなす。
2ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。
3全部又は一部の履行
4履行の請求
5更改
6担保の供与
7取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡
8強制執行
法定追認
追認できる時以後に次の事実があったときは追認したものとみなす。①全部または一部の履行、②履行の請求、③更改、④担保供与、⑤取り消すことができる行為で取得した権利の全部または一部の譲渡、⑥強制執行。
異議留保の例外(但書)
ただし異議をとどめたときはこの限りでない。
趣旨
取消権を有することを知らない場合でも、これらの行為は追認意思の発露と評価できる。法的安定のための擬制。
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取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。
2行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
取消権の期間制限
取消権は追認することができる時から5年間行使しないときは時効によって消滅する。行為の時から20年を経過したときも同様。
二段階の期間
短期5年(追認可能時起算)と長期20年(行為時起算)の二重制限。いずれか早い方の到来で消滅。
期間の性質
判例は除斥期間説と消滅時効説の対立があるが、条文文言「時効によって」から消滅時効と解する説が有力。援用・中断(完成猶予・更新)の可否で差異。
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停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる。
2解除条件付法律行為は、解除条件が成就した時からその効力を失う。
3当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思に従う。
停止条件の効力発生時期(1項)
停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生じる。条件成就まで効力は生じない。
解除条件の効力消滅時期(2項)
解除条件付法律行為は、解除条件が成就した時にその効力を失う。成就までは有効。
遡及効の特約(3項)
当事者が条件成就の効果を成就時以前に遡らせる意思を表示したときは、その意思に従う。原則は不遡及・例外で遡及可。
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条件付法律行為の各当事者は、条件の成否が未定である間は、条件が成就した場合にその法律行為から生ずべき相手方の利益を害することができない。
条件成就期待権の保護
条件付法律行為の各当事者は、条件の成否未定の間は、条件成就により相手方が得るべき利益を害することができない。
趣旨
条件付権利を期待権として保護し、未定期間中の他方当事者による侵害(目的物の毀損・処分等)を禁じる。
違反の効果
侵害行為があれば不法行為による損害賠償請求(709条)の対象となる。
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条件の成否が未定である間における当事者の権利義務は、一般の規定に従い、処分し、相続し、若しくは保存し、又はそのために担保を供することができる。
条件付権利の処分性
条件成否未定の間でも、当事者の権利義務は一般規定に従い、処分・相続・保存・担保供与が可能。
趣旨
条件付権利は期待権として完全な権利同様に取引対象となることを明文化。
具体例
停止条件付債権の譲渡、解除条件付所有権の譲渡、条件付権利への抵当権設定、条件付権利の相続承継。
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条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる。
2条件が成就することによって利益を受ける当事者が不正にその条件を成就させたときは、相手方は、その条件が成就しなかったものとみなすことができる。
条件成就の不正妨害(1項)
条件成就により不利益を受ける当事者が故意に条件成就を妨げたときは、相手方は条件が成就したものとみなすことができる(成就擬制)。
条件成就の不正実現(2項)
条件成就により利益を受ける当事者が不正に条件を成就させたときは、相手方は条件が成就しなかったものとみなすことができる(不成就擬制)。
趣旨
信義則の発現として、不当な条件操作から相手方を保護する。1項は故意要件、2項は不正要件(より広く判断)。
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条件が法律行為の時に既に成就していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無条件とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無効とする。
2条件が成就しないことが法律行為の時に既に確定していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無効とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無条件とする。
3前二項に規定する場合において、当事者が条件が成就したこと又は成就しなかったことを知らない間は、第百二十八条及び第百二十九条の規定を準用する。
既成就の場合(1項)
条件が法律行為時に既に成就していた場合、停止条件ならば無条件(有効確定)、解除条件ならば無効。
既不成就の場合(2項)
条件不成就が法律行為時に既に確定していた場合、停止条件ならば無効、解除条件ならば無条件(有効確定)。
当事者不知の場合(3項)
前二項の場合でも当事者が成就・不成就の事実を知らない間は、128条・129条(期待権保護・処分性)の規定を準用する。
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不法な条件を付した法律行為は、無効とする。
2不法な行為をしないことを条件とするものも、同様とする。
不法条件付法律行為の無効
不法な条件を付した法律行為は無効。
不法行為不作為条件
不法な行為をしないことを条件とする法律行為も同様に無効。「人を殺さなければ100万円贈与」は本来当然の不作為に対価を付すもので公序良俗違反。
90条との関係
公序良俗違反の特則として位置付けられ、不法目的が条件に表れている類型を一律無効とする。
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不能の停止条件を付した法律行為は、無効とする。
2不能の解除条件を付した法律行為は、無条件とする。
不能停止条件(1項)
不能の停止条件を付した法律行為は無効。条件成就があり得ない以上、効力発生の余地がないため。
不能解除条件(2項)
不能の解除条件を付した法律行為は無条件(有効確定)。解除条件成就があり得ない以上、効力消滅の余地がないため。
不能の判断時点
法律行為時を基準に客観的不能を判断する(既成条件としての一種の処理)。
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停止条件付法律行為は、その条件が単に債務者の意思のみに係るときは、無効とする。
純粋随意条件付停止条件付法律行為の無効
停止条件付法律行為で、その条件が単に債務者の意思のみに係るとき(純粋随意条件)は無効。
趣旨
債務者が「自分が欲したら払う」と約束しただけでは法的拘束力を認めるに値する意思表示ではないため。
適用範囲の限定
債権者の意思のみによる場合や、解除条件の場合、混合随意条件(意思+客観的事実)の場合は本条の適用外で有効。
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法律行為に始期を付したときは、その法律行為の履行は、期限が到来するまで、これを請求することができない。
2法律行為に終期を付したときは、その法律行為の効力は、期限が到来した時に消滅する。
法律行為の存在
本条が適用されるためには、契約その他の法律行為が有効に成立していることが前提となる。法律行為が無効であれば、始期・終期の付加も意味を失う。通説・判例は、法律行為の成立要件(申込と承諾の合致など)が充足されることを要求する。
始期の付加(第1項)
始期とは、将来の一定の事実の発生に法律行為の履行義務の発生を条件づけるものをいう。始期が付せられた場合、その事実が現実に発生するまで、相手方は履行を請求できない。通説・判例は、始期は期限(いつまでか)を示すもので、履行義務の発生を遅延させると解する。
終期の付加(第2項)
終期とは、将来の一定の事実の発生に法律行為の効力消滅を条件づけるものをいう。終期が到来すると、法律行為の効力そのものが消滅し、以後、その法律行為に基づく権利義務は生じない。通説・判例は、終期到来により遡及することなく当該時点で効力が消滅すると解する。
期限の到来(両項共通)
期限到来とは、付加された始期または終期に対応する一定の事実が現実に発生することをいう。期限到来の有無は客観的に判断され、当事者の主観的な意思は関係しない。誤解しやすい点として、始期・終期は確定期限と不確定期限に分類されるが、本条は両者を区別せず適用される。
履行請求権の制限(第1項)
始期付法律行為の場合、始期到来前は相手方に対して履行を請求することができない。これは履行義務の発生自体が遅延しているため、権利者は法的に請求権を行使できない状態にあることを意味する。通説・判例は、この請求権の制限は強行法で、当事者の合意でも変更できないと解する。
効力消滅(第2項)
終期付法律行為の場合、終期の到来により法律行為の効力が消滅する。これは期限到来までは法律行為が有効に存続し、当事者間の権利義務が生じることを前提としている。誤解しやすい点として、効力消滅と無効は異なり、消滅は過去に有効であった状態から将来に向けて効力が失われることを意味する。
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期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する。
2期限の利益は、放棄することができる。
3ただし、これによって相手方の利益を害することはできない。
期限の利益の帰属推定(1項)
期限は債務者の利益のために定めたものと推定される。期限到来までは履行を拒める者は債務者。
期限の利益の放棄(2項本文)
期限の利益は放棄することができる。債務者は期限前の弁済が可能。
相手方利益の保護(2項ただし書)
放棄により相手方の利益を害することはできない。利息付債権で債権者にも期限の利益がある場合(双方の利益)は、期限までの利息を支払う等の措置が必要。
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次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。
2債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
3債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。
4債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。
期限の利益喪失事由
次の場合、債務者は期限の利益を主張できない(債権者は即時請求可能)。①債務者が破産手続開始決定を受けたとき、②債務者が担保を滅失・損傷・減少させたとき、③債務者が担保を供する義務を負う場合に供しないとき。
趣旨
債務者の信用悪化・担保価値毀損があった場合、期限まで待たせる前提が崩れるため債権者保護のため期限到来を擬制する。
失権約款(特約)
本条以外の事由(賦払金1回不払等)でも、契約で「期限の利益を失う」旨を定めることが可能(実務では金銭消費貸借で広く使用)。
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期間の計算方法は、法令若しくは裁判上の命令に特別の定めがある場合又は法律行為に別段の定めがある場合を除き、この章の規定に従う。
期間計算規定の通則性
本章(138-143条)の期間計算規定は、法令・裁判命令の特別の定め、または法律行為の別段の定めがない限り適用される補充規定。原則として民事・行政手続を問わず広く準用される。
特別法・別段定めの優先
民訴法・刑訴法・行政手続法等の個別法で異なる定めがあればそちらが優先。当事者間の契約で期間計算を別途定めた場合もそれが優先。
適用範囲
消滅時効・除斥期間・契約解除権の期間制限・行政処分の取消訴訟期間等、あらゆる期間計算で本条以下が基準となる。
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時間によって期間を定めたときは、その期間は、即時から起算する。
時間単位の起算
時間(時・分・秒)によって期間を定めたときは、即時から起算する。日数のような初日不算入の例外規定(140条ただし書)は適用されない。
実務例
「契約締結から24時間以内」「3時間後に開始」等の場合に適用。瞬時計算であるため、起算点ちょうどから時間カウントを開始する。
140条との対比
日以上の期間は140条で初日不算入が原則だが、時間単位は本条で即時起算となるため、計算結果に違いが生じる。
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日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。
2ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。
初日不算入の原則
日・週・月・年で期間を定めたときは、初日を算入しない(初日不算入の原則)。例:5月1日10時に「3日以内」と定めると、5月2日0時から起算し、5月4日24時に満了。
ただし書(午前零時開始)
期間が午前零時から始まる場合は初日を算入する。「5月1日0時から3日間」なら5月1日が起算日となり5月3日24時満了。
実務上の重要性
消滅時効期間・出訴期間(出訴期間は民訴法等の特別法で異なる場合あり)・契約期間の計算で頻出。初日を含めるか否かで満了日が1日ずれる。
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前条の場合には、期間は、その末日の終了をもって満了する。
満了時点
140条で起算した期間は、末日の終了(24時)をもって満了する。期間内であれば末日中いつでも履行・行使が可能。
実務例
5月10日が末日であれば5月10日24時に満了。10日中であれば履行・通知等が期間内とされる。郵便等の到達は到達主義(97条)に従い、末日中の到達が必要。
142条との関係
末日が休日にあたる場合は142条で翌日満了となる(取引慣習がある場合に限る)。
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期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間は、その翌日に満了する。
末日休日の翌日満了
末日が日曜日・祝日その他の休日にあたるときは、「その日に取引をしない慣習がある場合に限り」期間は翌日に満了する。慣習要件が付されている点に注意。
取引慣習要件の意味
金融機関の休日(土曜日も含む)など、現に取引をしない実態がある場合に適用。理論的にいつでも取引可能な場面では本条の延長は働かない。
判例の立場
土曜日は祝日法上の休日でないが、銀行取引等で休業慣習があれば本条による延長が認められる(実務通説)。
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