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債権が弁済期にある場合において、相手方から相当の期間を定めて催告をしても、選択権を有する当事者がその期間内に選択をしないときは、その選択権は、相手方に移転する。
選択権の移転
債権が弁済期にあり、相手方から相当期間を定めた催告にもかかわらず選択権者が期間内に選択しないときは、選択権は相手方に移転する。
要件
①弁済期到来、②相手方からの相当期間催告、③催告期間経過、④選択未行使の四要件。
趣旨
選択権者の選択遅滞により相手方が履行を受けられない事態を防ぐ。実質的に選択権を相手方に与え履行確保する制度。
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第三者が選択をすべき場合には、その選択は、債権者又は債務者に対する意思表示によってする。
2前項に規定する場合において、第三者が選択をすることができず、又は選択をする意思を有しないときは、選択権は、債務者に移転する。
第三者選択権の行使(1項)
第三者が選択をすべき場合、その選択は債権者または債務者に対する意思表示によってする。
第三者不能の場合の選択権移転(2項)
第三者が選択することができない、または選択意思を有しないときは、選択権は債務者に移転する(406条原則回帰)。
趣旨
第三者選択の場合の意思表示先を明確化し、第三者選択不能時の補充規定を設ける。
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債権の目的である給付の中に不能のものがある場合において、その不能が選択権を有する者の過失によるものであるときは、債権は、その残存するものについて存在する。
不能による選択債権の特定
債権の目的給付の中に不能のものがある場合、その不能が選択権者の過失によるものであるときは、債権は残存するものについて存在する。
選択権者過失要件
選択権者の過失による不能であることが要件。過失なき不能(不可抗力等)の場合は選択権者は引き続き不能給付も含めて選択できる(裏読み)。
趣旨
選択権者が自己の過失で給付を不能にした場合、不能給付を選択して債権から逃れることを禁じ、残存給付に債権が特定される。
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選択は、債権の発生の時にさかのぼってその効力を生ずる。
2ただし、第三者の権利を害することはできない。
選択の遡及効(本文)
選択は債権発生時に遡ってその効力を生じる(遡及効)。選択時点ではなく、債権発生時から選択された給付が債権の目的だったことになる。
第三者保護(ただし書)
ただし、第三者の権利を害することはできない。遡及効により既存第三者の権利を覆すことは不可。
趣旨
選択により債権の目的が確定的に定まり当初から1個の債権であったと扱うことで、利息・果実等の処理を簡明化する。
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債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。
2債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う。
3債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
確定期限付債務(1項)
債務の履行について確定期限があるときは、債務者はその期限到来の時から遅滞の責任を負う。
不確定期限付債務(2項)
債務者が期限到来後に履行請求を受けた時、または期限到来を知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う。
期限の定めなき債務(3項)
債務者は履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
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債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者は、その債務の履行を請求することができない。
2契約に基づく債務の履行がその契約の成立の時に不能であったことは、第四百十五条の規定によりその履行の不能によって生じた損害の賠償を請求することを妨げない。
履行不能の判断基準(2017改正で明文化)
債務の履行が契約その他の債務発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者は履行請求できない。旧法下で判例・学説により形成されていた履行不能ルールを明文化。物理的不能のみならず社会通念上の不能も含む(最判平8・5・31)。
原始的不能の効果(2項)
契約成立時に既に履行不能であっても、415条の損害賠償請求は妨げない。旧法解釈の通説(原始的不能の契約は無効)を改め、契約自体は有効としつつ債務不履行責任を認める構成に転換。受験必出論点。
履行請求権の限界
強制履行(414条)・追完請求(562条)も本条による限界に服する。代替的不能・経済的不能の判断は契約類型・取引慣行を踏まえる。
債務不履行責任との関係
履行請求権が認められなくても415条1項ただし書に該当しなければ損害賠償責任は別途成立する。請求権の構造を二元化した点が改正の眼目。
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債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、その債務の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、履行の提供をした時からその引渡しをするまで、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、その物を保存すれば足りる。
2債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができないことによって、その履行の費用が増加したときは、その増加額は、債権者の負担とする。
受領遅滞の意義
債権者が債務の履行を受けることを拒みまたは受けることができない場合に、債務者の責任が軽減される効果。
善管注意の軽減(1項)
債務の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は履行提供時から引渡し時まで自己の財産同一の注意で足りる。
増加費用の債権者負担(2項)
債権者の受領遅滞による履行費用の増加分は債権者の負担となる。
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債務者がその債務について遅滞の責任を負っている間に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。
2債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。
遅滞中の履行不能のみなし規定(2017改正で新設)
債務者が遅滞責任を負っている間に双方無責の事由で履行不能となったとき、その不能は債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。遅滞中のリスクは債務者が負う旧来の判例ルール(最判昭48・4・5)を明文化。
受領遅滞中の不能(2項)
債権者が受領を拒み・できない場合の履行提供後に双方無責で不能となったとき、債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。受領遅滞のリスクは債権者が負う。
「みなす」の効果
推定ではなく擬制。当事者の反証によっても覆らない。415条1項ただし書(帰責事由)の判断において結論が固定される。
536条との連動
本条によりみなされた帰責は536条危険負担と連動。1項該当の場合は債権者は反対給付の履行を拒めず(536条2項類推)、2項該当の場合は危険負担が債権者に移転。
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債務者が任意に債務の履行をしないときは、債権者は、民事執行法その他強制執行の手続に関する法令の規定に従い、直接強制、代替執行、間接強制その他の方法による履行の強制を裁判所に請求することができる。
2ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
3前項の規定は、損害賠償の請求を妨げない。
履行強制の手段(1項)
債務者が任意に履行をしないときは、債権者は民事執行法その他の法令に従い、直接強制・代替執行・間接強制その他の方法による履行強制を裁判所に請求できる。
性質による制限(1項ただし書)
債務の性質が許さないときは強制できない。芸術上の創作・夫婦同居義務等の自由意思に係る行為は強制不能。
損害賠償との併存(2項)
強制履行請求は損害賠償請求を妨げない。両方併用可能。
改正による明確化
2020年改正で「直接強制・代替執行・間接強制」を例示として明記し、選択は民事執行法に委ねる構造を明確化。
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債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。
2ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
3前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
4債務の履行が不能であるとき。
5債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
6債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。
債務不履行(1項本文)
履行遅滞・履行不能・不完全履行を包括。
債務者に帰責事由(1項但書)
契約その他の債務発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものでないこと。証明責任は債務者。
損害の発生
通常損害・特別損害(416条参照)。
因果関係
債務不履行と損害の間の相当因果関係。
履行に代わる損害賠償(2項)
①履行不能②債務者の履行拒絶意思の明確表示③契約解除又は債務不履行による解除権発生のいずれかが必要。
民法
債務不履行(不完全履行)と損害賠償の範囲・帰責事由
民法
履行補助者の過失と債務者の責任(415条・416条)
民法
契約不適合責任と415条の損害賠償の競合
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債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
2特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。
通常損害(1項)
債務不履行から通常生ずべき損害。賠償範囲に当然含まれる。
特別損害(2項)
特別の事情によって生じた損害は、当事者が予見すべきであったときに限り賠償範囲に含む。予見の主体は債務者、時点は履行期(判例)。
相当因果関係説
判例(大連判大正15・5・22)。賠償範囲は相当因果関係に立つ損害に限るとする。
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損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める。
金銭賠償の原則
損害賠償は別段の意思表示がないときは金銭をもってその額を定める(金銭賠償原則)。
原状回復との関係
民法は原状回復ではなく金銭評価による賠償を原則とする。不法行為(722条1項)でも本条が準用される。
例外(別段の合意)
当事者の特約により現物賠償・原状回復等を定めることは可能(特約優先)。
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将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする。
2将来において負担すべき費用についての損害賠償の額を定める場合において、その費用を負担すべき時までの利息相当額を控除するときも、前項と同様とする。
中間利息控除の法定利率(2017改正で新設)
将来取得すべき利益についての損害賠償額算定時、利息相当額を控除する場合は損害賠償請求権発生時点における法定利率による。旧法下で判例・実務に委ねられていた中間利息控除を明文化。
変動法定利率との連動
404条が3年ごとに変動する法定利率制(2020年4月施行時年3%)を採用したことに伴い、中間利息控除の基準時点を明確化する必要から本条が新設された。逸失利益・将来費用の算定の予測可能性を高める。
費用負担の場合(2項)
将来負担すべき費用についても同様に発生時点の法定利率で控除。介護費用・将来治療費等が典型例。
実務上の意義
交通事故・医療過誤等の人身損害賠償実務に直接影響。年5%固定だった旧法時代の判例実務(最判平17・6・14のライプニッツ係数)が法定利率変動制と接続される。
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債務の不履行又はこれによる損害の発生若しくは拡大に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。
債権者の過失
債務不履行又はこれによる損害の発生・拡大に関し債権者に過失があること。
裁判所による斟酌
賠償の責任及びその額の定めにつき必ず斟酌しなければならない(必要的考慮)。
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金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。
2ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
3前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
4第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。
金銭債務の不履行
金銭の支払を目的とする債務の不履行。
損害賠償額の特則(1項)
法定利率により定める。ただし約定利率が法定利率を超えるときは約定利率による。
立証の免除(2項)
債権者は損害の証明を要しない。
免責事由の排除(3項)
債務者は不可抗力をもって抗弁とすることができない(無過失責任)。
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当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。
2賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。
3違約金は、賠償額の予定と推定する。
賠償額の予定の合意(1項)
当事者は損害賠償額を予定することができる。違約金は損害賠償額の予定と推定(3項)。
履行請求・解除との関係(2項)
賠償額予定があっても履行請求及び解除権行使を妨げない。
公序良俗・消費者契約法10条等による減額
暴利・過大な額は90条で無効。消費者契約では同法9条1号で平均的損害額を超える部分は無効。
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前条の規定は、当事者が金銭でないものを損害の賠償に充てるべき旨を予定した場合について準用する。
非金銭賠償予定への準用
前条(420条賠償額の予定)の規定は、当事者が金銭でないものを損害賠償に充てるべき旨を予定した場合について準用される。
準用の効果
①予定通りの賠償額が裁判所による増減対象外(420条1項)、②履行請求・解除権との両立(420条2項)、③違約金の損害賠償予定推定(420条3項)が、現物賠償予定にも適用される。
趣旨
金銭以外の賠償(物の引渡し・役務提供等)を予定した場合も、賠償額予定と同様の安定的処理を確保する。
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債権者が、損害賠償として、その債権の目的である物又は権利の価額の全部の支払を受けたときは、債務者は、その物又は権利について当然に債権者に代位する。
損害の全部の賠償を受けたこと
物又は権利の価額の全部について賠償がされた場合。
賠償者の代位
債権者が有していた目的物又は権利は当然に賠償者に移転する。第三者対抗要件は別途必要(判例)。
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債務者が、その債務の履行が不能となったのと同一の原因により債務の目的物の代償である権利又は利益を取得したときは、債権者は、その受けた損害の額の限度において、債務者に対し、その権利の移転又はその利益の償還を請求することができる。
代償請求権の明文化(2017改正で新設)
債務者が履行不能と同一原因により目的物の代償である権利又は利益を取得したときは、債権者は受けた損害額の限度で権利移転又は利益償還を請求できる。旧法下で判例(最判昭41・12・23)が認めた代償請求権を明文化。
典型例
目的建物の焼失と火災保険金請求権、目的物滅失と第三者への損害賠償請求権、目的物収用と収用補償金請求権等。代位物的請求権ではなく独自の請求権として整理。
「同一原因」要件
履行不能の原因と代償取得の原因が同一であることが必要。例:火災で建物焼失と保険金請求権取得。別個の原因によるものは対象外。
債権者の選択
代償請求権の行使は債権者の選択。415条損害賠償と二者択一ではなく、損害額の限度で重畳的に行使可能と解される(補充的損害填補の枠組み)。
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債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利(以下「被代位権利」という。)を行使することができる。
2ただし、債務者の一身に専属する権利及び差押えを禁じられた権利は、この限りでない。
3債権者は、その債権の期限が到来しない間は、被代位権利を行使することができない。
4ただし、保存行為は、この限りでない。
5債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、被代位権利を行使することができない。
被保全債権の存在(1項本文)
債権者は自己の債権を保全するため必要があるときに代位権を行使できる。被保全債権は弁済期到来が原則(2項)。
保全の必要性(無資力要件)
債務者が無資力であること(金銭債権の場合)。特定債権保全のための「転用型」では無資力不要(判例)。
被代位権利
債務者に属する権利。一身専属権・差押禁止債権は除外(1項但書)。
債務者の権利不行使
債務者が自ら権利行使しないこと。行使中なら代位権なし。
効果
債権者は自己の名で行使。423条の3により金銭・動産は直接自己への引渡しを請求できる。423条の5で債務者の処分は妨げられない。
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債権者は、被代位権利を行使する場合において、被代位権利の目的が可分であるときは、自己の債権の額の限度においてのみ、被代位権利を行使することができる。
代位行使の範囲制限(2017改正で新設)
債権者が被代位権利を行使する場合、被代位権利の目的が可分のときは自己の債権額の限度においてのみ行使できる。判例(大判昭6・5・15等)の確立した範囲制限を明文化。
可分・不可分の区別
金銭債権・代替物債権は可分、登記請求権・不動産明渡請求権は不可分。可分なら債権者は自己の被保全債権額までしか代位できず、不可分なら全部について代位可能。
強制執行との関係
債権者代位は本来責任財産保全のための制度であり、代位範囲は債権者の被保全債権額に限定される。範囲制限は債務者の財産管理権との調整。
423_3(直接交付請求)との連動
代位範囲を超える部分は債務者にしか請求できない。423_3により金銭・動産は債権者へ直接交付請求可能だが、この直接交付も自己債権額が限度。
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債権者は、被代位権利を行使する場合において、被代位権利が金銭の支払又は動産の引渡しを目的とするものであるときは、相手方に対し、その支払又は引渡しを自己に対してすることを求めることができる。
2この場合において、相手方が債権者に対してその支払又は引渡しをしたときは、被代位権利は、これによって消滅する。
金銭・動産の直接引渡し請求
代位権の目的が金銭の支払または動産の引渡しであるときは、債権者は相手方に対し直接自己への支払・引渡しを請求できる。
事実上の優先弁済効
債権者は受領した金銭を自己の債権と相殺することで事実上優先弁済を受けられる。本来の責任財産保全の目的を超える効果として批判もある。
債務者への引渡し義務
債権者は受領金銭を債務者に引き渡す義務を負うが、相殺により消滅させて優先弁済とできる。
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債権者が被代位権利を行使したときは、相手方は、債務者に対して主張することができる抗弁をもって、債権者に対抗することができる。
相手方の抗弁主張権(2017改正で新設)
債権者が被代位権利を行使した場合、相手方は債務者に主張できる抗弁をもって債権者に対抗できる。代位行使は債務者の権利を行使するにすぎず、相手方の地位を悪化させない原則を明文化。
対象となる抗弁
同時履行の抗弁・期限の抗弁・相殺の抗弁・消滅時効の抗弁等、債務者本人に対して主張できる全ての抗弁。判例(大判昭9・5・22)の枠組み。
対抗できない抗弁
債権者個人に対する抗弁(例:債権者と相手方間の相殺)は対抗不可。あくまで「債務者に主張できる」抗弁が対象。
代位の本質
代位は他人の権利を行使する制度であり、相手方の権利関係はあくまで債務者との間で完結する。本条はこの本質を確認する規定。
この条文の練習問題を解く
債権者が被代位権利を行使した場合であっても、債務者は、被代位権利について、自ら取立てその他の処分をすることを妨げられない。
2この場合においては、相手方も、被代位権利について、債務者に対して履行をすることを妨げられない。
債務者の処分権限維持(2017改正で新設)
債権者が被代位権利を行使した場合でも、債務者は被代位権利について自ら取立て等の処分を妨げられない。旧法下の判例(大判昭14・5・16)を改め、代位行使の効果として債務者の処分権限を制限しない構造に転換。
改正の眼目
旧法下では代位行使開始により債務者の処分権限が制限される(管理処分権の取得)と解されていた。本条はこれを否定し、債務者の処分自由を確保しつつ債権者の権利保全を実現する新構成。
相手方の履行(2項)
相手方も被代位権利について債務者に履行することを妨げられない。債務者への履行は有効な弁済として相手方を免責する。
債権者の対応
債務者の取立てや相手方からの債務者への弁済により被代位権利が消滅すれば、債権者の代位行使は意味を失う。実効性確保のため423_7(先取権)等の補完規定が必要。
この条文の練習問題を解く
債権者は、被代位権利の行使に係る訴えを提起したときは、遅滞なく、債務者に対し、訴訟告知をしなければならない。
訴訟告知の義務(2017改正で新設)
債権者が被代位権利の行使に係る訴えを提起したときは、遅滞なく債務者に訴訟告知をしなければならない。旧法下では判例(大判昭15・3・15)が訴訟参加の機会を与えるべきとしていたものを明文化。
訴訟告知の効果
民訴法53条以下の訴訟告知と同様、訴訟参加の機会保障と判決効の拡張(民訴53条4項により参加的効力が及ぶ)。代位訴訟の既判力が債務者にも及ぶ根拠となる。
債務者の訴訟参加
債務者は補助参加(民訴42条)又は独立当事者参加(民訴47条)が可能。423_5により処分権限を維持する債務者の訴訟参加の機会を実質化する。
違反の効果
訴訟告知を怠った場合の効果について判例蓄積を待つが、債務者への既判力拡張が制限される可能性が指摘される。
この条文の練習問題を解く
登記又は登録をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗することができない財産を譲り受けた者は、その譲渡人が第三者に対して有する登記手続又は登録手続をすべきことを請求する権利を行使しないときは、その権利を行使することができる。
2この場合においては、前三条の規定を準用する。
登記・登録請求権の代位(2017改正で新設)
登記・登録を要する財産を譲り受けた者は、譲渡人が第三者に対して有する登記・登録手続請求権を行使しないとき、これを代位行使できる。旧法下の判例(最判昭54・9・25)の確立したルールを明文化。
本来型代位との違い
本来型代位(423条)は責任財産保全(無資力要件)が必要だが、本条は転用型代位として無資力要件不要。被保全債権が金銭債権でなく特定債権(登記請求権)であることが特徴。
典型例
AからBへ、BからCへ順次譲渡された不動産につき、登記がAのまま放置されている場合、CはBがAに対して有する登記移転請求権を代位行使してA→Bへの登記を実現できる。
前三条の準用
423_4(抗弁)・423_5(処分権限)・423_6(訴訟告知)が準用される。一般的代位ルールと共通の枠組みで運用される。
この条文の練習問題を解く
債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。
2ただし、その行為によって利益を受けた者(以下この款において「受益者」という。)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。
3前項の規定は、財産権を目的としない行為については、適用しない。
4債権者は、その債権が第一項に規定する行為の前の原因に基づいて生じたものである場合に限り、同項の規定による請求(以下「詐害行為取消請求」という。)をすることができる。
5債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、詐害行為取消請求をすることができない。
被保全債権の詐害行為前成立(3項)
被保全債権が詐害行為前の原因に基づいて生じたものであることが必要。
詐害行為(1項本文)
債務者が債権者を害することを知ってした行為。財産権を目的としない行為は対象外(2項)。
債務者の無資力(詐害性)
債務者の財産処分により債権者の弁済を不可能・困難にすること。行為時と取消時の両時点で必要。
受益者の悪意(1項但書)
受益者が詐害事実を知らなかった場合は取消し不可。受益者の善意立証は被告(受益者)が負う。
効果
取消しは詐害行為の効力を遡及的に失わせる。425条により債務者にも効力が及び、責任財産に復帰する。
この条文の練習問題を解く
債務者が、その有する財産を処分する行為をした場合において、受益者から相当の対価を取得しているときは、債権者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、その行為について、詐害行為取消請求をすることができる。
2その行為が、不動産の金銭への換価その他の当該処分による財産の種類の変更により、債務者において隠匿、無償の供与その他の債権者を害することとなる処分(以下この条において「隠匿等の処分」という。)をするおそれを現に生じさせるものであること。
3債務者が、その行為の当時、対価として取得した金銭その他の財産について、隠匿等の処分をする意思を有していたこと。
4受益者が、その行為の当時、債務者が隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたこと。
相当対価処分行為の特則(2017改正で新設)
債務者が財産処分行為により受益者から相当対価を取得した場合、3要件すべてに該当するときに限り詐害行為取消可能。判例(大判明44・10・3、最判昭39・10・13等)の不動産売却ルールを精緻化して明文化。
3要件
①処分による財産種類変更(不動産→金銭等)により隠匿等処分のおそれが現に生じること、②債務者が処分時に隠匿等処分の意思を有していたこと、③受益者が処分時に債務者の隠匿意思を知っていたこと。3要件すべて充足が必要。
改正の意義
旧法下では「相当対価による不動産売却」は原則として詐害行為に当たらないが、隠匿意思がある場合は取消可能とする判例実務が形成されていた。本条はこれを成文化しつつ要件を厳格化し、債務者の正当な経済活動と債権者保護のバランスを再構成。
立証責任
債権者が3要件のいずれも主張立証する。受益者の悪意は通常型詐害行為取消より厳格な立証が要求される(隠匿意思の認識)。
この条文の練習問題を解く
債務者がした既存の債務についての担保の供与又は債務の消滅に関する行為について、債権者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、詐害行為取消請求をすることができる。
2その行為が、債務者が支払不能(債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう。次項第一号において同じ。)の時に行われたものであること。
3その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。
4前項に規定する行為が、債務者の義務に属せず、又はその時期が債務者の義務に属しないものである場合において、次に掲げる要件のいずれにも該当するときは、債権者は、同項の規定にかかわらず、その行為について、詐害行為取消請求をすることができる。
5その行為が、債務者が支払不能になる前三十日以内に行われたものであること。
6その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。
偏頗行為の取消し(1項)
債務者が既存の債務についてした担保供与・債務消滅行為は、①支払不能の時に行われ、かつ②債務者と受益者の通謀により他の債権者を害する意図があった場合に限り取消可能。
非義務的行為(2項)
支払不能前30日以内の行為で、本来義務でない弁済・担保供与は、債務者と受益者の通謀的意図があれば取消可能。
趣旨
倒産法の否認権に類似する制度。倒産直前期の不公平な弁済を制限する。
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債務者がした債務の消滅に関する行為であって、受益者の受けた給付の価額がその行為によって消滅した債務の額より過大であるものについて、第四百二十四条に規定する要件に該当するときは、債権者は、前条第一項の規定にかかわらず、その消滅した債務の額に相当する部分以外の部分については、詐害行為取消請求をすることができる。
過大代物弁済の特則(2017改正で新設)
債務者がした債務消滅行為で、受益者の受けた給付価額がその行為により消滅した債務額より過大なものは、424条要件該当時、消滅債務額を超える部分について詐害行為取消請求が可能。
対象
代物弁済(482条)が典型例。100万円の債務に対し200万円相当の不動産で代物弁済した場合、超過分100万円について詐害行為取消ができる。判例(最判昭48・11・30)の枠組みを明文化。
424_3との関係
424_3は偏頗行為(既存債権者への通謀した弁済等)の特則だが、本条は過大給付部分のみを取消対象とする部分取消型。前条1項にかかわらず適用される。
取消範囲
「消滅した債務額に相当する部分以外の部分」のみ取消可能。代物弁済全体ではなく超過給付分の価額償還を求める構造。425_3との連動で受益者の債権は復活しない(取消対象外部分は別扱い)。
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債権者は、受益者に対して詐害行為取消請求をすることができる場合において、受益者に移転した財産を転得した者があるときは、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める場合に限り、その転得者に対しても、詐害行為取消請求をすることができる。
2その転得者が受益者から転得した者である場合
3その転得者が、転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていたとき。
4その転得者が他の転得者から転得した者である場合
5その転得者及びその前に転得した全ての転得者が、それぞれの転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていたとき。
転得者への取消請求の要件
受益者から転得者に対する転得行為が①転得時に詐害事実を知っていた場合(1号)、②転得者が複数あるときは中間の全転得者および現転得者すべてが各転得時に詐害事実を知っていた場合(2号)に取消可能。
趣旨
転得者の取引安全に配慮し、悪意連鎖の場合のみ取消を認める。改正前の判例規律の修正。
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債権者は、受益者に対する詐害行為取消請求において、債務者がした行為の取消しとともに、その行為によって受益者に移転した財産の返還を請求することができる。
2受益者がその財産の返還をすることが困難であるときは、債権者は、その価額の償還を請求することができる。
3債権者は、転得者に対する詐害行為取消請求において、債務者がした行為の取消しとともに、転得者が転得した財産の返還を請求することができる。
4転得者がその財産の返還をすることが困難であるときは、債権者は、その価額の償還を請求することができる。
財産返還請求権(2017改正で新設・明文化)
受益者・転得者に対する詐害行為取消請求において、債務者がした行為の取消しとともに、受益者・転得者に移転した財産の返還を請求できる。詐害行為取消請求の請求の趣旨を整理した規定。
価額償還請求権(1項後段・2項後段)
財産返還が困難な場合は価額償還を請求できる。返還困難の典型例は受益者が目的物を消費・第三者に転売した場合等。判例(最判平成16・7・6)の現物返還原則と価額償還補充の構造を明文化。
受益者と転得者の区別(1項・2項)
1項は受益者に対する請求、2項は転得者に対する請求と整理。転得者に対する取消請求は424_5の悪意要件と連動する。
従来の絶対的取消説からの転換
旧法下の判例(大判明治44・3・24)は詐害行為取消の効果を相対的取消とし、債務者・受益者間で取消の効果が及ばないとしていたが、改正により425条で取消効果は全関係人に及ぶ絶対的取消説的構成に転換した。
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詐害行為取消請求に係る訴えについては、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める者を被告とする。
2受益者に対する詐害行為取消請求に係る訴え
3受益者
4転得者に対する詐害行為取消請求に係る訴え
5その詐害行為取消請求の相手方である転得者
6債権者は、詐害行為取消請求に係る訴えを提起したときは、遅滞なく、債務者に対し、訴訟告知をしなければならない。
詐害行為取消訴訟の被告(2017改正で明文化)
受益者に対する取消請求は受益者を、転得者に対する取消請求はその転得者を被告とする。旧法下の判例(最判昭43・5・31)の構造を明文化。債務者は被告とならない。
債務者を被告としない理由
詐害行為取消は受益者・転得者の権利取得を否定する制度であり、債務者ではなく当該権利取得者を被告とすべき。債務者の関与は訴訟告知(2項)で確保。
訴訟告知の義務(2項)
債権者は訴え提起後遅滞なく債務者に訴訟告知しなければならない。423_6代位訴訟と同型。425条による取消効果の絶対化に対応する手続的保障。
違反の効果
訴訟告知を怠った場合、425条による既判力的効果が債務者に及ぶか議論があるが、訴訟告知は判決効拡張の根拠として機能するため、怠ると債務者保護が問題化する。
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債権者は、詐害行為取消請求をする場合において、債務者がした行為の目的が可分であるときは、自己の債権の額の限度においてのみ、その行為の取消しを請求することができる。
2債権者が第四百二十四条の六第一項後段又は第二項後段の規定により価額の償還を請求する場合についても、前項と同様とする。
詐害行為取消の範囲制限(2017改正で新設)
債権者は、債務者がした行為の目的が可分であるときは、自己の債権額の限度においてのみ取消請求できる。判例(最判昭30・10・11)の確立したルールを明文化。423_2代位権の範囲制限と同型。
目的の可分性
金銭給付・代替物給付は可分、不動産・登記請求は不可分。可分なら被保全債権額が限度、不可分なら全部について取消可能(判例:最判昭43・3・21の不動産事案)。
価額償還にも適用(2項)
424_6第1項後段・2項後段の価額償還請求にも準用。金銭償還は本質的に可分なので、債権者の被保全債権額が限度となる。
他の債権者との関係
範囲制限を超える部分は他の債権者が別途取消請求可能。複数債権者による取消請求の調整は実体法上は債務者の責任財産に対する平等競合(民執法各規定)に委ねられる。
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債権者は、第四百二十四条の六第一項前段又は第二項前段の規定により受益者又は転得者に対して財産の返還を請求する場合において、その返還の請求が金銭の支払又は動産の引渡しを求めるものであるときは、受益者に対してその支払又は引渡しを、転得者に対してその引渡しを、自己に対してすることを求めることができる。
2この場合において、受益者又は転得者は、債権者に対してその支払又は引渡しをしたときは、債務者に対してその支払又は引渡しをすることを要しない。
3債権者が第四百二十四条の六第一項後段又は第二項後段の規定により受益者又は転得者に対して価額の償還を請求する場合についても、前項と同様とする。
債権者への直接交付請求権(2017改正で新設)
債権者が金銭支払・動産引渡しを求める場合、受益者・転得者に対し自己への支払・引渡しを求められる。判例(大判大8・7・11、最判昭39・1・23)の認めた直接交付権を明文化。
事実上の優先弁済
他の債権者を巻き込まずに金銭・動産を自己に取得することで、事実上の優先弁済を実現できる。詐害行為取消が責任財産保全制度でありながら事実上の優先回収手段として機能する根拠。
受益者・転得者の免責(1項後段)
受益者・転得者が債権者に支払・引渡しをすれば、債務者への支払・引渡しは不要となる。二重弁済の危険を回避する規定。
価額償還にも適用(2項)
424_6の価額償還請求にも準用される。価額償還も金銭給付として直接交付請求が可能。
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詐害行為取消請求を認容する確定判決は、債務者及びその全ての債権者に対してもその効力を有する。
認容判決の効力
詐害行為取消請求を認容する確定判決は、債務者およびその全ての債権者に対しても効力を有する。
改正のポイント(2017年改正)
改正前は受益者との関係でのみ相対的取消だったが、改正後は債務者にも効力が及ぶことを明示。返還された財産は責任財産に復帰する。
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債務者がした財産の処分に関する行為(債務の消滅に関する行為を除く。)が取り消されたときは、受益者は、債務者に対し、その財産を取得するためにした反対給付の返還を請求することができる。
2債務者がその反対給付の返還をすることが困難であるときは、受益者は、その価額の償還を請求することができる。
受益者の反対給付返還請求権(2017改正で新設)
債務者がした財産処分行為(債務消滅行為を除く)が取り消されたとき、受益者は債務者に対し財産取得のためにした反対給付の返還を請求できる。取消の効果として失う財産権の対価を取り戻す権利。
従来説からの転換
旧法下では絶対的取消説・相対的取消説・折衷説等が対立し受益者の救済が不明確だったが、425条が取消の絶対効を採用したことに合わせ、本条で受益者の権利を明示。受益者保護の見地から重要。
返還困難時の価額償還
債務者が反対給付の返還を困難とするときは価額償還請求が可能。原物返還原則と価額償還補充の構造は424_6と同型。
債務消滅行為を除外する理由
債務消滅行為(偏頗弁済等)の取消は425_3で別途規律される(受益者の債権が復活する構造)。本条は財産処分の取消に特化する。
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債務者がした債務の消滅に関する行為が取り消された場合(第四百二十四条の四の規定により取り消された場合を除く。)において、受益者が債務者から受けた給付を返還し、又はその価額を償還したときは、受益者の債務者に対する債権は、これによって原状に復する。
債務消滅行為取消時の債権復活(2017改正で新設)
債務者の債務消滅行為が取り消され(424_4の過大代物弁済による取消を除く)、受益者が給付返還・価額償還をした場合、受益者の債務者に対する債権はこれにより原状に復する。
立法趣旨
債務消滅行為が取り消されると本来弁済済みのはずの債務が復活するが、受益者が返還を完了した場合には、受益者の債権者としての地位を再度認めることで衡平を確保する。受益者保護の中核規定。
424_4過大代物弁済の除外
424_4により取り消された場合は債権復活しない。過大代物弁済は超過部分のみの取消であり、消滅した債務額相当部分は適法な弁済として扱われるため、債権復活させる必要がないため。
実務的意義
偏頗弁済として取り消された後、受益者は復活した債権について他の債権者と平等に配当を受ける地位に立つ。優先弁済を失う点が偏頗弁済への制裁的効果となる。
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債務者がした行為が転得者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたときは、その転得者は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める権利を行使することができる。
2ただし、その転得者がその前者から財産を取得するためにした反対給付又はその前者から財産を取得することによって消滅した債権の価額を限度とする。
3第四百二十五条の二に規定する行為が取り消された場合
4その行為が受益者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたとすれば同条の規定により生ずべき受益者の債務者に対する反対給付の返還請求権又はその価額の償還請求権
5前条に規定する行為が取り消された場合(第四百二十四条の四の規定により取り消された場合を除く。)
6その行為が受益者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたとすれば前条の規定により回復すべき受益者の債務者に対する債権
転得者の権利(2017改正で新設)
債務者の行為が転得者に対する詐害行為取消請求により取り消されたとき、転得者は前者から財産取得のためにした反対給付・消滅債権の価額を限度として、425_2又は425_3に基づき受益者が有したであろう権利を行使できる。
限度額の意義
「前者から財産を取得するためにした反対給付又は消滅債権の価額」が限度。転得者が二重に保護されるのを防ぎつつ、実際の出捐額の範囲で取消による損失を回復させる。
1号(425_2型)
財産処分行為が取り消された場合、転得者は受益者の有したであろう反対給付返還請求権・価額償還請求権を行使できる。
2号(425_3型)
債務消滅行為が取り消された場合(424_4による取消除く)、転得者は受益者の有したであろう復活債権を行使できる。
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詐害行為取消請求に係る訴えは、債務者が債権者を害することを知って行為をしたことを債権者が知った時から二年を経過したときは、提起することができない。
2行為の時から十年を経過したときも、同様とする。
短期出訴期間(2年)
詐害行為取消請求の訴えは、債務者が債権者を害することを知って行為をしたことを債権者が知った時から2年経過したときは提起できない。
長期出訴期間(10年)
行為時から10年経過したときも訴え提起できない(除斥期間)。
改正前後比較
改正前2年/20年から、2020年改正で10年に短縮。法律関係の早期安定化を図る。
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数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。
分割債権・分割債務の原則
数人の債権者または債務者がある場合、別段の意思表示がないときは各債権者・債務者は等しい割合で権利を有し義務を負う。
意義
多数当事者の債権債務関係の原則型。明示・黙示の特約や法律上の特則(連帯・不可分・保証等)がない限り適用される。
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次款(連帯債権)の規定(第四百三十三条及び第四百三十五条の規定を除く。)は、債権の目的がその性質上不可分である場合において、数人の債権者があるときについて準用する。
不可分債権への連帯債権規定準用
債権の目的が性質上不可分で数人の債権者があるときは、連帯債権規定(432条以下)を準用する。
準用除外(433条・435条)
更改・免除(433条)と混同(435条)は準用除外。これらは不可分の性質と相容れないため、別途429条で規律。
趣旨
改正前の不可分債権独自規定を廃し、連帯債権規定を準用する形で簡素化(2020年改正)。
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不可分債権者の一人と債務者との間に更改又は免除があった場合においても、他の不可分債権者は、債務の全部の履行を請求することができる。
2この場合においては、その一人の不可分債権者がその権利を失わなければ分与されるべき利益を債務者に償還しなければならない。
不可分債権の更改・免除
不可分債権者の一人と債務者間に更改・免除があっても、他の不可分債権者は全部の履行を請求できる。
求償的調整
他の不可分債権者は、更改・免除をした債権者がその権利を失わなければ分与されるべき利益を債務者に償還しなければならない。
趣旨
不可分性ゆえに更改・免除を絶対的効力とできないため、一旦全部請求を認めた上で内部的調整で処理する。
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第四款(連帯債務)の規定(第四百四十条の規定を除く。)は、債務の目的がその性質上不可分である場合において、数人の債務者があるときについて準用する。
不可分債務への連帯債務規定準用
債務の目的が性質上不可分で数人の債務者があるときは、連帯債務規定(436条以下)を準用する。
準用除外(440条混同)
混同(440条)は準用除外。不可分債務の場合、混同があっても他債務者は依然債務を負う。
趣旨
改正前の独自規定を廃止し、連帯債務との一体的処理を実現(2020年改正)。
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不可分債権が可分債権となったときは、各債権者は自己が権利を有する部分についてのみ履行を請求することができ、不可分債務が可分債務となったときは、各債務者はその負担部分についてのみ履行の責任を負う。
不可分から可分への変化
不可分債権が可分債権となったときは、各債権者は自己の権利部分のみ履行請求できる。不可分債務が可分債務となったときは、各債務者は負担部分のみ責任を負う。
効果
性質変化により分割債権・分割債務の原則(427条)に戻り、各債権者・債務者は自己分のみ権利義務を有する。
具体例
土地引渡債務が損害賠償債務(金銭化)に変化した場合、可分債務として各債務者は負担部分のみ負う。
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債権の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債権を有するときは、各債権者は、全ての債権者のために全部又は一部の履行を請求することができ、債務者は、全ての債権者のために各債権者に対して履行をすることができる。
不可分債権
債権の目的がその性質上不可分である場合に、数人の債権者がある場合の規律。各債権者は単独で全部の履行請求でき、債務者は債権者の一人に対し全部の履行ができる。
効果
1人の債権者が受領した場合、他の債権者との内部関係は分割債権関係に従い分配する。
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連帯債権者の一人と債務者との間に更改又は免除があったときは、その連帯債権者がその権利を失わなければ分与されるべき利益に係る部分については、他の連帯債権者は、履行を請求することができない。
連帯債権の更改・免除の効力
連帯債権者の一人と債務者間に更改・免除があったときは、その連帯債権者がその権利を失わなければ分与されるべき利益部分について、他の連帯債権者は履行請求できない。
改正前後の変化
改正前は更改・免除は絶対的効力だったが、改正後は「分与されるべき利益部分」のみに限定。他債権者は残部分について履行請求可能。
趣旨
一人の連帯債権者の処分により全体の権利を消滅させる絶対効を縮減し、相対効に近づける。
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債務者が連帯債権者の一人に対して債権を有する場合において、その債務者が相殺を援用したときは、その相殺は、他の連帯債権者に対しても、その効力を生ずる。
連帯債権者に対する相殺の絶対効
債務者が連帯債権者の一人に対し債権を有する場合に相殺を援用したときは、その相殺は他の連帯債権者に対しても効力を生じる。
絶対効の趣旨
相殺は実質的弁済と同視できるため、一人に対する相殺で全体的に債権が消滅する絶対効を認める。
改正による位置付け
改正前の連帯債務における相殺絶対効(旧436条)は廃止されたが、連帯債権の相殺絶対効は維持。
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連帯債権者の一人と債務者との間に混同があったときは、債務者は、弁済をしたものとみなす。
連帯債権における混同の絶対効
連帯債権者の一人と債務者間に混同があったときは、債務者は弁済をしたものとみなされる。
効果
混同により当該連帯債権者は債務者の地位を兼ねるため、弁済と擬制し他の連帯債権者の債権も消滅する。求償権の処理は内部関係で行う。
趣旨
混同は弁済と同様の経済的効果を持つため、絶対効を認めて法律関係を簡明化する。
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第四百三十二条から前条までに規定する場合を除き、連帯債権者の一人の行為又は一人について生じた事由は、他の連帯債権者に対してその効力を生じない。
2ただし、他の連帯債権者の一人及び債務者が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債権者に対する効力は、その意思に従う。
連帯債権の相対的効力原則(2017改正で新設)
432条から前条に規定する場合を除き、連帯債権者の一人の行為又は一人について生じた事由は、他の連帯債権者に対して効力を生じない。連帯債権の絶対的効力事由を限定列挙し、それ以外は相対的効力にとどめる原則規定。
絶対的効力事由(432-435条)
432条(履行請求・履行)・433条(更改・免除)・434条(相殺)・435条(混同)が絶対的効力。これら以外の事由(時効中断・承認等)は相対的効力にとどまる。
連帯債務の相対的効力(441条)との対応
連帯債務側の441条と対応する構造。連帯債務でも絶対的効力事由を限定列挙する形に2017改正で整理され、債務と債権の連帯の構造が対称化された。
別段の意思表示の例外(ただし書)
他の連帯債権者の一人及び債務者が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債権者にその意思に従った効力が生じる。当事者意思による調整を許容。
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