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全 1372 条— 12 / 28 ページ
債権者の交替による更改は、更改前の債権者、更改後に債権者となる者及び債務者の契約によってすることができる。
2債権者の交替による更改は、確定日付のある証書によってしなければ、第三者に対抗することができない。
規律
債権者の交替による更改は、更改前の債権者・新債権者・債務者の三者契約でできる(1項)。確定日付ある証書によらなければ第三者に対抗できない(2項)。
趣旨
債権者交替による更改は債務者にとって弁済相手の変更を伴うため、債務者の同意(三者契約)を必要とする。確定日付要件は債権譲渡(467条2項)と並行的な対抗要件規律。
債権譲渡との比較
債権譲渡は債権の同一性が保たれるが、債権者交替更改は新債権の発生(旧債権消滅)で同一性が断絶。担保・抗弁の承継等で実質的効果が異なるため当事者の選択で利用される。
対抗要件(2項)
467条と並行的に確定日付ある証書による対抗要件を要求。二重更改や債権譲渡との優劣関係を一義的に処理する構造。
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削除
削除条文(516-517条)
民法516条・517条は2020年改正で削除。旧516条(更改による前債務担保移転制限)・旧517条(条件・期限到来時の更改不成立)は513条以下の更改制度再編で吸収。
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債権者(債権者の交替による更改にあっては、更改前の債権者)は、更改前の債務の目的の限度において、その債務の担保として設定された質権又は抵当権を更改後の債務に移すことができる。
2ただし、第三者がこれを設定した場合には、その承諾を得なければならない。
3前項の質権又は抵当権の移転は、あらかじめ又は同時に更改の相手方(債権者の交替による更改にあっては、債務者)に対してする意思表示によってしなければならない。
規律
債権者(債権者交替更改の場合は旧債権者)は、更改前債務の目的限度内で、その債務の担保として設定された質権・抵当権を更改後債務に移転できる(1項本文)。第三者が設定した場合は承諾必要(1項ただし書)。担保移転は、あらかじめ又は同時に更改相手方(債権者交替更改では債務者)への意思表示でする(2項)。
趣旨
更改で旧債務は消滅し原則として担保も消滅するが、当事者の合意により担保を新債務へ移転させる例外を認める規律。担保価値の維持と更改の柔軟運用を両立。
目的限度内の意義
新債務が旧債務より高額となっても、担保が承継されるのは旧債務の額(目的)の限度。第三者設定者・後順位担保権者の利益を保護。
第三者承諾要件
物上保証人や第三取得者が設定した担保は、これらの者の意思に反する新債務への移転を認めない。承諾なき移転は無効。
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債権者が債務者に対して債務を免除する意思を表示したときは、その債権は、消滅する。
免除による債権消滅
債権者が債務者に対して債務を免除する意思表示をしたときは、その債権は消滅する。免除は債権者の単独行為(債務者の承諾不要)として債権を消滅させる。
単独行為性
免除は債権者の一方的意思表示による形成権の行使。債務者の同意・承諾は不要。これに対して放棄・契約による消滅とは構造が異なる。判例(大判明治40・5・20)は単独行為性を確立。
条件・期限の付与
免除に条件・期限を付すことは可能。停止条件付免除や期限付免除も認められる。
第三者の利害との関係
免除により利害関係を持つ第三者(保証人・質権者等)への効果は、保証・物権規定が個別に規律する。連帯債務における免除の絶対効は441条により否定された(2017改正)。
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債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する。
2ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。
規律
債権及び債務が同一人に帰属したときは債権は消滅する(本文)。ただしその債権が第三者の権利の目的であるときは消滅しない(ただし書)。
趣旨
混同による債権消滅。同一人に債権者地位と債務者地位が帰属すれば、自己が自己に履行する意味がないため法的に消滅させる。第三者の権利(質権・差押え等)が及んでいる場合は例外的に存続させ第三者保護。
典型場面
①債権者の死亡で債務者が相続、②債務者が債権者に債権を譲渡、③合併で債権者・債務者双方の法人格が一つに統合。これらで自動的に債権が消滅する。
ただし書の意義
債権に質権が設定されている場合、混同で債権消滅させると質権者の権利が害される。同様に差押債権者の権利も保護される必要があるため、第三者権利存続中は混同による消滅を排除。
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指図証券の譲渡は、その証券に譲渡の裏書をして譲受人に交付しなければ、その効力を生じない。
指図証券の譲渡方法(2017改正で新設)
指図証券の譲渡は、証券に譲渡の裏書をして譲受人に交付しなければ効力を生じない。指図証券の譲渡を裏書+交付の二要件で構成する譲渡方式。
改正による有価証券規定の集約
改正前は商法に分散していた指図証券・記名式所持人払証券・無記名証券の規定を民法に集約。商人間取引のみならず非商取引でも適用される一般則として整理。
「裏書」の意義
証券裏面に譲渡者が譲受人を指名する記載と署名を行う形式行為。手形法所定の方式(520_3で準用)に従う厳格な要式行為。
「交付」要件
証券の物理的引渡し。譲渡意思の表示として裏書のみでは不十分で、占有移転を要する。これにより譲受人が証券を保持し権利行使できる状態が確保される。
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指図証券の譲渡については、その指図証券の性質に応じ、手形法(昭和七年法律第二十号)中裏書の方式に関する規定を準用する。
手形法の裏書方式準用
指図証券の譲渡については、指図証券の性質に応じ、手形法中裏書の方式に関する規定を準用する。
準用される手形法規定
手形法11条〜20条(白地式裏書・指名式裏書・取立委任裏書等の方式)が中心。指図証券に手形法の精緻な裏書制度を借用することで、流通取引の安定性を確保。
「性質に応じ」の限定
手形固有の規定(為替手形特有の制度等)は準用されない。指図証券の性質と整合する範囲で借用する。例:白地式裏書は指図証券にも準用可能。
実務的意義
倉庫証券・運送証券(船荷証券)・米券等の指図証券が手形法の裏書ルールに従って流通可能となる。商取引の標準化と流動性確保。
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指図証券の所持人が裏書の連続によりその権利を証明するときは、その所持人は、証券上の権利を適法に有するものと推定する。
裏書連続による権利推定
指図証券の所持人が裏書の連続によりその権利を証明するときは、所持人は証券上の権利を適法に有するものと推定する。
「裏書の連続」の意義
最初の受取人から所持人まで、各裏書において前者の被裏書人と後者の裏書人が一致して連鎖していること。手形における同名概念と同じ枠組み。
推定の効果
所持人は権利者であることを別途立証する必要がなく、裏書連続のみで権利者性が推定される。立証責任を相手方(債務者・原権利者)に転換し、証券の流通性を支える。
推定の覆滅
推定は反証で覆る。例えば中間裏書の偽造・無権限裏書が立証されれば推定は破られる。証券の真正性と裏書の有効性が問題となる場合の調整。
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何らかの事由により指図証券の占有を失った者がある場合において、その所持人が前条の規定によりその権利を証明するときは、その所持人は、その証券を返還する義務を負わない。
2ただし、その所持人が悪意又は重大な過失によりその証券を取得したときは、この限りでない。
指図証券の善意取得(本文)
指図証券の占有を失った者がある場合、所持人が520_4により権利証明するときは、所持人は証券返還義務を負わない。動産の即時取得(192条)に類する善意取得制度。
悪意・重過失の例外(ただし書)
所持人が悪意又は重大な過失により証券を取得したときは、所持人は返還義務を負う。証券取引における善意取得者の要件として、悪意・重過失なき取得を要求。
192条との比較
192条の動産即時取得は平穏・公然・善意・無過失を要求するが、本条は悪意・重過失なき取得で足り、要件が緩やかな点が証券流通性の確保に資する。
立法趣旨
指図証券は流通を前提とする有価証券であり、流通の安全のため善意取得の保護を強化。所持人の権利の絶対性を確保することで証券市場の機能を維持。
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指図証券の債務者は、その証券に記載した事項及びその証券の性質から当然に生ずる結果を除き、その証券の譲渡前の債権者に対抗することができた事由をもって善意の譲受人に対抗することができない。
指図証券債務者の抗弁制限
指図証券の債務者は、証券記載事項および証券性質から当然生ずる結果を除き、譲渡前債権者に対抗できた事由を善意譲受人に対抗できない。手形の抗弁切断(手形法17条)と同趣旨。2017年改正で民法典編入。
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第五百二十条の二から前条までの規定は、指図証券を目的とする質権の設定について準用する。
指図証券質権への準用
520_2〜520_6の規定は、指図証券を目的とする質権設定について準用する。指図証券の譲渡規定を質権設定にも適用する規定。
質権設定の方式
指図証券に質権を設定するには、裏書(質入裏書)と証券交付が必要。譲渡と同様の二要件構造で、質権設定の有効性を確保する。
質入裏書の特徴
通常の譲渡裏書ではなく、質入のための裏書(手形法19条参照)。質権者は被担保債権の範囲で証券上の権利を行使可能。
質権者の権利推定
520_4が準用される結果、質入裏書の連続により質権者の権利が推定される。質権の有効性が証券面から判定可能となり取引安全に資する。
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指図証券の弁済は、債務者の現在の住所においてしなければならない。
指図証券の弁済場所(持参債務化)
指図証券の弁済は、債務者の現在の住所においてしなければならない。484条の一般則と異なる弁済場所の特則。
484条との対比
484条の一般則は、特定物引渡しは債権発生時の物の所在地、その他は債権者の現在住所(持参債務原則)。本条は指図証券について債務者の住所地で弁済する取立債務に修正。
立法趣旨
指図証券は所持人が転々と変動するため、所持人の住所地への持参は債務者にとって負担過大。証券の取立て性質と適合的に、所持人が債務者住所で弁済を受ける構造とする。
実務的意義
債務者は自己の住所で証券持参の所持人に弁済する。所持人が証券提示しても、証券債務者が遠方の場合は所持人が出向く必要がある。証券の取立債務性を反映。
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指図証券の債務者は、その債務の履行について期限の定めがあるときであっても、その期限が到来した後に所持人がその証券を提示してその履行の請求をした時から遅滞の責任を負う。
指図証券の履行遅滞の起算点
指図証券の債務者は、債務の履行期限の定めがあるときでも、期限到来後に所持人が証券提示して履行請求した時から遅滞責任を負う。一般則と異なる遅滞起算の特則。
412条1項との対比
412条1項は期限到来時から当然遅滞だが、本条は所持人による証券提示と履行請求があって初めて遅滞となる。証券債務者の予測可能性を高める。
立法趣旨
指図証券は所持人が変動するため、債務者は弁済すべき相手を確定できない。所持人が証券提示・履行請求するまで弁済の機会がないため、遅滞責任の起算を提示時に後ろ倒し。
実務的意義
債務者は所持人の証券提示を待って弁済する。提示なき期限経過は遅滞にならず、遅延損害金も発生しない。証券債務の取立債務性の結果。
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指図証券の債務者は、その証券の所持人並びにその署名及び押印の真偽を調査する権利を有するが、その義務を負わない。
2ただし、債務者に悪意又は重大な過失があるときは、その弁済は、無効とする。
債務者の調査権限(本文)
指図証券の債務者は、証券の所持人並びにその署名・押印の真偽を調査する権利を有するが、その義務を負わない。形式的審査権限のみで実質的審査義務はない。
立法趣旨
証券の流通性確保のため、債務者に過度な実質審査義務を課さない。所持人として裏書連続を備えていれば、債務者は実質的権利者であるかを調査せずに弁済できる。
免責の効果
形式的調査(裏書連続)のみで弁済すれば、後に所持人が真の権利者でなかったとしても債務者は免責される。証券取引の安全のための債務者保護。
悪意・重過失の例外(ただし書)
債務者に悪意又は重大な過失があるときは、その弁済は無効。形式的調査の信頼利益は悪意・重過失者には付与されない。478条受領権者外観の枠組みと整合。
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指図証券は、非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号)第百条に規定する公示催告手続によって無効とすることができる。
公示催告手続による無効化
指図証券は、非訟事件手続法100条に規定する公示催告手続によって無効とすることができる。証券喪失時の救済制度。
公示催告の意義
証券を喪失した権利者が裁判所に申立て、一定期間内に権利を主張する者がなければ証券を無効とする手続。証券を物理的に保持しない権利者の権利を実体権として保護する制度。
効果
公示催告手続による除権決定で証券は無効となる。失った権利者は除権決定を根拠に債務者に対し権利行使可能。第三者の善意取得(520_5)は除権決定前に確定する。
他証券類型への準用
520_18・520_20により記名式所持人払証券・無記名証券にも準用される。指図証券の無効化制度を有価証券一般に拡張する基盤規定。
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金銭その他の物又は有価証券の給付を目的とする指図証券の所持人がその指図証券を喪失した場合において、非訟事件手続法第百十四条に規定する公示催告の申立てをしたときは、その債務者に、その債務の目的物を供託させ、又は相当の担保を供してその指図証券の趣旨に従い履行をさせることができる。
公示催告中の弁済・担保提供
指図証券の所持人が証券を喪失し公示催告申立てをしたときは、債務者に債務目的物を供託させ、又は相当の担保を供して証券の趣旨に従い履行させることができる。
立法趣旨
公示催告手続は除権決定まで時間を要し、その間に履行期が到来する場合がある。喪失者の権利を保護しつつ、債務者の二重弁済リスクを回避する中間的救済として供託・担保提供を許容。
供託の場合
債務者は弁済目的物を供託所に供託することで債務を免れる。後日、除権決定により喪失者が権利者として確定したとき、供託金から弁済を受ける。
担保提供の場合
喪失者が相当の担保を提供すれば債務者は喪失者に直接履行可能。担保により債務者の二重弁済リスクが填補される。
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記名式所持人払証券(債権者を指名する記載がされている証券であって、その所持人に弁済をすべき旨が付記されているものをいう。以下同じ。)の譲渡は、その証券を交付しなければ、その効力を生じない。
記名式所持人払証券の譲渡方法
記名式所持人払証券(債権者を指名する記載のある証券で、所持人に弁済すべき旨が付記されているもの)の譲渡は、証券を交付しなければ効力を生じない。
「記名式所持人払証券」の意義
債権者名が記載されているが、実際の弁済は所持人にする旨が付記された証券。譲渡時は裏書不要で、単に証券交付のみで譲渡が成立する流通性の高い証券類型。
指図証券との差異
指図証券は裏書+交付の二要件(520_2)。記名式所持人払証券は交付のみで譲渡可能。裏書を要しない点で流通性がさらに高い。
実例
銀行発行の自己宛小切手、商品券(記名のあるもの)等。証券記載の名義人と実際の所持人が異なっても、所持人への弁済が予定された証券類型。
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記名式所持人払証券の所持人は、証券上の権利を適法に有するものと推定する。
記名式所持人払証券の所持人の権利推定
記名式所持人払証券の所持人は、証券上の権利を適法に有するものと推定する。所持自体から権利者性が推定される強い保護。
指図証券520_4との対比
指図証券は裏書連続が推定要件だが、記名式所持人払証券は所持のみで推定。流通性確保のための要件緩和。
立法趣旨
記名式所持人払証券は「所持人に弁済」の性質を持つため、所持自体が権利者性の最も強い徴表となる。所持人を権利者として処遇することで証券の取引機能を最大化。
推定の覆滅
反証により推定は覆る。盗品・遺失物による所持等の事情が立証されれば推定は破られる。ただし善意取得(520_15)の要件を満たす所持人は別途保護される。
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何らかの事由により記名式所持人払証券の占有を失った者がある場合において、その所持人が前条の規定によりその権利を証明するときは、その所持人は、その証券を返還する義務を負わない。
2ただし、その所持人が悪意又は重大な過失によりその証券を取得したときは、この限りでない。
記名式所持人払証券の善意取得(本文)
記名式所持人払証券の占有を失った者がある場合、所持人が520_14により権利を証明するときは、所持人は証券返還義務を負わない。指図証券(520_5)と同型の善意取得。
悪意・重過失の例外(ただし書)
所持人が悪意又は重大な過失により証券を取得したときは返還義務を負う。証券取引における善意取得者の要件として、悪意・重過失なき取得を要求。
520_5との対称構造
指図証券の善意取得(520_5)と全く同型の構造。証券類型ごとに同様の保護を設けることで、有価証券一般について統一的な所持人保護のルールを確立。
立法趣旨
記名式所持人払証券は所持人弁済性の高さから流通保護のニーズが最も強い。所持人の絶対的保護に近い構造で証券の流動性を確保。
この条文の練習問題を解く
記名式所持人払証券の債務者は、その証券に記載した事項及びその証券の性質から当然に生ずる結果を除き、その証券の譲渡前の債権者に対抗することができた事由をもって善意の譲受人に対抗することができない。
記名式所持人払証券債務者の抗弁制限
記名式所持人払証券の債務者は、証券記載事項・性質から当然生ずる結果を除き、譲渡前債権者に対抗できた事由を善意譲受人に対抗できない。520_6条と並列の抗弁切断規定。
この条文の練習問題を解く
第五百二十条の十三から前条までの規定は、記名式所持人払証券を目的とする質権の設定について準用する。
記名式所持人払証券質権への準用
520_13〜520_16の規定は、記名式所持人払証券を目的とする質権設定について準用する。
質権設定の方式
記名式所持人払証券への質権設定は、証券の交付により行う(裏書不要)。質権者は質入のための交付を受けることで質権の対抗力を取得する。
指図証券520_7との対比
指図証券の質権は裏書(質入裏書)+交付が必要だが、本条は交付のみで質権設定可能。譲渡と同様、要件が緩やかである点が記名式所持人払証券の特徴を反映する。
実務的意義
記名式所持人払証券を担保とする金融取引(小切手担保融資等)の根拠規定。証券引渡しによる質権設定の簡便さが商取引で活用される。
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第五百二十条の八から第五百二十条の十二までの規定は、記名式所持人払証券について準用する。
指図証券規定の準用
520_8(弁済場所)〜520_12(公示催告・供託)の規定は、記名式所持人払証券について準用する。指図証券の弁済・債務者保護・喪失時救済の規定を借用。
準用される具体規定
①520_8弁済場所、②520_9履行遅滞起算、③520_10債務者の調査権限、④520_11公示催告による無効化、⑤520_12供託・担保提供による履行。証券債務者の地位を統一的に規律。
立法趣旨
指図証券と記名式所持人払証券は譲渡方式に差異があるが、弁済関係・喪失時救済の局面では共通の規律が望ましい。準用構造で条文を簡素化しつつ統一的処理を実現。
無記名証券への波及
本条で準用される規定は、520_20により無記名証券にも準用される。三類型の有価証券の弁済関係を統一的に処理する基盤として機能。
この条文の練習問題を解く
債権者を指名する記載がされている証券であって指図証券及び記名式所持人払証券以外のものは、債権の譲渡又はこれを目的とする質権の設定に関する方式に従い、かつ、その効力をもってのみ、譲渡し、又は質権の目的とすることができる。
2第五百二十条の十一及び第五百二十条の十二の規定は、前項の証券について準用する。
記名証券(指図・所持人払以外)の譲渡方法(1項)
債権者を指名する記載があり、指図証券・記名式所持人払証券以外の証券は、債権譲渡又は質権設定の方式に従い、その効力をもってのみ譲渡・質入できる。
「記名証券」の意義
債権者名が記載され、指図文言・所持人払文言なき証券。一般指名債権を表章する証券だが、流通性は低く、譲渡は債権譲渡の一般則(467条等)による。
譲渡方式の特徴
467条の対抗要件(債務者への通知又は承諾)が必要。指図証券・記名式所持人払証券のような裏書・交付では対抗力を生じない。流通性が最も低い証券類型。
公示催告・供託の準用(2項)
520_11・520_12の規定が準用される。記名証券の喪失時にも公示催告手続による無効化と供託・担保提供による履行が可能となる。
この条文の練習問題を解く
第二款(記名式所持人払証券)の規定は、無記名証券について準用する。
記名式所持人払証券規定の無記名証券への準用
第二款(記名式所持人払証券)の規定は、無記名証券について準用する。無記名証券を記名式所持人払証券と同等に扱う構造。
「無記名証券」の意義
債権者名の記載がない証券で、所持人を権利者とする証券類型。商品券(無記名)・無記名社債券・無記名株券(廃止済)・各種金券等が典型例。
準用の効果
①交付による譲渡(520_13)、②所持人の権利推定(520_14)、③善意取得(520_15)、④質権設定(520_17)、⑤弁済・公示催告等(520_18)が全て準用される。記名式所持人払証券と同型の規律。
立法的整理の意義
改正前は無記名証券について商法等に断片的に規定されていたが、改正で民法に統合し記名式所持人払証券への一括準用で簡素化。有価証券法制の体系化。
この条文の練習問題を解く
何人も、法令に特別の定めがある場合を除き、契約をするかどうかを自由に決定することができる。
2契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に決定することができる。
契約締結の自由(1項)
何人も法令に特別の定めがある場合を除き、契約をするかどうかを自由に決定できる。
契約内容決定の自由(2項)
契約の当事者は法令の制限内において契約の内容を自由に決定できる。
私的自治の原則
契約自由の原則を明文化した規定(2017年改正で追加)。締結・相手方選択・内容・方式の各自由を包含する。
この条文の練習問題を解く
契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
2契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
契約の成立(1項)
契約は契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(申込み)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。申込みと承諾の合致が原則。
方式自由の原則(2項)
契約の成立には法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
例外
保証契約(446条2項)・定期借地権設定契約(借地借家22条)・遺言(967条以下)等は要式行為。
この条文の練習問題を解く
承諾の期間を定めてした申込みは、撤回することができない。
2ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。
3申込者が前項の申込みに対して同項の期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。
規律
承諾の期間を定めてした申込みは、その期間内は撤回できない(1項本文)。期間内に承諾の通知を受けなかったときは、申込みは効力を失う(2項)。
趣旨
申込みの拘束力を期間内に固定し、相手方が承諾準備に投じた信頼を保護する。期間経過で当然失効とすることで法律関係を明確化。
例外
申込者が撤回権を留保したときは1項本文の適用なし(1項ただし書)。
この条文の練習問題を解く
申込者は、遅延した承諾を新たな申込みとみなすことができる。
規律
申込者は、遅延した承諾を新たな申込みとみなすことができる。
趣旨
承諾期間経過後の承諾は本来は契約不成立(523条2項により申込み失効)だが、申込者の側でなお契約に応じる意思があるなら、これを新申込みと評価して柔軟に取引成立を許す。
効果
申込者が「新申込みとみなす」意思表示をし、元の承諾者がさらに承諾することで契約成立。
この条文の練習問題を解く
承諾の期間を定めないでした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない。
2ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。
3対話者に対してした前項の申込みは、同項の規定にかかわらず、その対話が継続している間は、いつでも撤回することができる。
4対話者に対してした第一項の申込みに対して対話が継続している間に申込者が承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。
5ただし、申込者が対話の終了後もその申込みが効力を失わない旨を表示したときは、この限りでない。
規律
承諾期間を定めない申込みは、申込者が承諾通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは撤回できない(1項本文)。対話者間の場合は、対話が継続している間はいつでも撤回でき、対話終了までに承諾を受けなければ申込みは効力を失う(2項3項)。
趣旨
期間を定めない場合でも、申込み直後の急な撤回は相手方の準備行動を裏切るため、客観的「相当期間」内は拘束する。対話者間は意思表示が即時に伝わるため、即決方式を採用。
例外
申込者が撤回権を留保したとき(1項ただし書)。対話者間は2項により別ルール。
この条文の練習問題を解く
申込者が申込みの通知を発した後に死亡し、意思能力を有しない常況にある者となり、又は行為能力の制限を受けた場合において、申込者がその事実が生じたとすればその申込みは効力を有しない旨の意思を表示していたとき、又はその相手方が承諾の通知を発するまでにその事実が生じたことを知ったときは、その申込みは、その効力を有しない。
規律
申込者が申込み発信後に死亡・意思能力喪失・行為能力制限を受けた場合、(1)申込者がその事実が生じたとすれば申込みは効力を有しない旨の意思表示をしていたとき、または(2)相手方が承諾通知を発するまでにその事実を知ったときは、申込みは効力を有しない。
趣旨
原則(97条3項)として意思表示は表意者の死亡等で効力を失わないが、契約申込みは相手方の信頼保護と意思表示者の事情の調整が必要。申込者の留保意思または相手方の悪意(要件1・2)を効力消滅の要件とした。
対比
97条3項一般則:意思表示の効力は表意者の死亡等で影響を受けない。本条は契約申込みに関する特則で、限定された要件下でのみ失効を認める。
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申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には、契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する。
規律
申込者の意思表示または取引上の慣習により承諾通知を必要としない場合、契約は承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する(意思実現による契約成立)。
趣旨
通常は承諾通知の到達で契約成立(97条1項)だが、商慣習や申込者の意思表示で通知不要とされた場合、承諾意思を推認できる客観的行為(商品の発送・代金の振込み等)の時点で成立を認め、取引実態に対応。
成立時期
承諾の意思表示と認めるべき事実が発生した時。これは到達主義ではなく、表示行為主義の特則。
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承諾者が、申込みに条件を付し、その他変更を加えてこれを承諾したときは、その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなす。
規律
承諾者が申込みに条件を付し、その他変更を加えてこれを承諾したときは、その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなす。
趣旨
申込みと承諾の完全一致(鏡像原則)を要求する。変更を加えた承諾は元の申込みを成立させず、立場を逆転させて承諾者が新たな申込者となる構造を法定。
効果
元の申込みは消滅。元申込者が変更承諾を承諾すれば契約成立。沈黙では成立しない。
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ある行為をした者に一定の報酬を与える旨を広告した者(以下「懸賞広告者」という。)は、その行為をした者がその広告を知っていたかどうかにかかわらず、その者に対してその報酬を与える義務を負う。
規律
ある行為をした者に一定の報酬を与える旨を広告した者(懸賞広告者)は、その行為をした者が広告を知っていたかどうかにかかわらず、その者に対して報酬を与える義務を負う。
趣旨
懸賞広告の法的性質について、通説は単独行為説(広告者の単独行為で報酬支払義務発生)を採用。広告の不知者にも報酬請求権を認め、行為の客観性を重視する。
学説対立
契約説(広告は申込み、行為は承諾)と単独行為説の対立。改正民法は条文上「知っていたかどうかにかかわらず」と規定し、契約説では説明困難な不知者保護を実現=単独行為説を実質採用。
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懸賞広告者は、その指定した行為をする期間を定めてした広告を撤回することができない。
2ただし、その広告において撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。
3前項の広告は、その期間内に指定した行為を完了する者がないときは、その効力を失う。
規律
懸賞広告者は、指定行為をする期間を定めて広告したときは、その広告を撤回することができない(1項本文)。前項の広告で行為期間内に指定行為を完了する者がいなかった場合は、広告は効力を失う(2項)。
趣旨
期間設定がある以上、応募者は期間内の応募準備に投資する。撤回禁止により広告への信頼を保護。523条(期間定め申込み)と同様の構造。
例外
広告で撤回権を留保したときは1項ただし書により撤回可。
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懸賞広告者は、その指定した行為を完了する者がない間は、その指定した行為をする期間を定めないでした広告を撤回することができる。
2ただし、その広告中に撤回をしない旨を表示したときは、この限りでない。
規律
懸賞広告者は、指定行為を完了する者がない間は、期間を定めずにした広告を撤回することができる。
趣旨
期間定めなき場合は応募側の信頼保護要請が弱く、広告者の自由を優先。ただし既に指定行為を完了した者が出れば、その者の報酬請求権は確定し撤回不可。
例外
広告で撤回しない旨を表示したときは撤回不可(本条ただし書)。
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前の広告と同一の方法による広告の撤回は、これを知らない者に対しても、その効力を有する。
2広告の撤回は、前の広告と異なる方法によっても、することができる。
3ただし、その撤回は、これを知った者に対してのみ、その効力を有する。
規律
前の広告と同一の方法による撤回広告は、これを知らない者に対しても効力を有する(1項)。異なる方法による撤回は、撤回を知った者に対してのみ効力を有する(2項)。
趣旨
懸賞広告の撤回方法を規律。同一手段(例:同じ新聞)での撤回はその広告を見た者全体に効果を及ぼし、異種手段では現実認知者にのみ効果。広告の公示効果と個別認知を区別。
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広告に定めた行為をした者が数人あるときは、最初にその行為をした者のみが報酬を受ける権利を有する。
2数人が同時に前項の行為をした場合には、各自が等しい割合で報酬を受ける権利を有する。
3ただし、報酬がその性質上分割に適しないとき、又は広告において一人のみがこれを受けるものとしたときは、抽選でこれを受ける者を定める。
4前二項の規定は、広告中にこれと異なる意思を表示したときは、適用しない。
規律
広告に定めた行為をした者が数人あるときは、最初にその行為をした者のみが報酬を受ける権利を有する(1項)。数人が同時に行為した場合は各自が等しい割合で報酬を受け、性質上分割できない場合は抽選で定める(2項)。
趣旨
懸賞広告報酬の唯一性(複数支払いの回避)と公平性(同時行為者間の平等)を両立。
例外
広告で別段の意思表示をした場合は3項により上記原則は適用されない。
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広告に定めた行為をした者が数人ある場合において、その優等者のみに報酬を与えるべきときは、その広告は、応募の期間を定めたときに限り、その効力を有する。
2前項の場合において、応募者中いずれの者の行為が優等であるかは、広告中に定めた者が判定し、広告中に判定をする者を定めなかったときは懸賞広告者が判定する。
3応募者は、前項の判定に対して異議を述べることができない。
4前条第二項の規定は、数人の行為が同等と判定された場合について準用する。
規律
広告に定めた行為をした者が数人ある場合に優等者のみに報酬を与えるべきときは、その広告は応募期間を定めたときに限り効力を有する(1項)。優等の判定は広告中に定めた者が行い、定めがないときは広告者がする(2項)。判定に対しては応募者は異議を述べることができない(3項)。
趣旨
優等懸賞広告は応募者の集合と比較判定が前提となるため、応募期間設定を効力要件として制度化。判定への異議不可は迅速処理と恣意防止のバランス。
数人同時優等の場合
数人の行為が同時に優等とされた場合は4項により531条2項を準用(等分または抽選)。
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双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。
2ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
同時履行の抗弁権
双務契約当事者は、相手方が債務の履行(履行に代わる損害賠償の履行を含む)を提供するまで、自己の債務の履行を拒める。双務契約の対価性を背景に履行を相互に担保する制度。
2017改正で明文化された損害賠償の包含
改正で「債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む」と明文化。判例(最判昭33・6・14)の解釈を成文化し、債務不履行で損害賠償債務に転換した場合も同時履行関係を維持する。
弁済期未到来時の例外(ただし書)
相手方の債務が弁済期にないときは同時履行の抗弁を主張できない。先履行義務を負う者は同時履行抗弁権なし。
効果
履行拒絶権(双方の履行が膠着)、遅滞責任の発生否定(533条主張時は履行遅滞にあたらない)、判決の引換給付主文(民訴上の効果)等。判例(最判昭29・7・27)は同時履行関係を広く解する。
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削除
削除条文(534-535条)
民法534条・535条は2020年改正で削除。旧534条(債権者主義の危険負担)・旧535条は強い批判を受け廃止、現行536条の債務者主義に統一・567条の引渡し基準の危険移転に整理された。
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当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。
2債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。
3この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。
双方無責の履行不能(1項)
双方の責めに帰せない事由で履行不能となったとき、債権者は反対給付の履行を拒める。危険負担の債務者主義(履行不能のリスクは債務者が負う)の明文化。
2017改正の意義
改正前は危険負担を契約消滅(旧534-536)として処理していたが、改正で履行拒絶権(債権者の反対給付拒絶権)に整理。解除制度(542条1号)との並行運用を可能にする構造に転換。
債権者責めの履行不能(2項)
債権者の責めに帰すべき事由で履行不能となったときは、債権者は反対給付の履行を拒めない(債権者主義)。債務者は免れた利益を償還する義務。受領遅滞中の不能(413_2第2項)と連動。
履行不能の解除との関係
本条は反対給付拒絶権(双務契約の凍結)、542条は解除権(双務契約の解消)。債権者は両者を選択可能で、回復不能なら解除、一時的なら拒絶という使い分け。
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契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。
2前項の契約は、その成立の時に第三者が現に存しない場合又は第三者が特定していない場合であっても、そのためにその効力を妨げられない。
3第一項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。
第三者のためにする契約
契約により当事者の一方が第三者に給付することを約したときは、第三者は債務者に直接給付請求権を有する。第三者を契約上の権利者とする特殊類型。
未存在・未特定の第三者(2項)(2017改正)
契約成立時に第三者が現存しない場合・特定されていない場合でも、効力は妨げられない。胎児・将来法人等への利益契約を許容する。改正で従来の解釈を明文化。
第三者の受益意思表示(3項)
第三者の権利は、第三者が債務者に対し契約利益を享受する意思表示をした時に発生する。受益意思表示が権利発生要件。
典型例
生命保険契約(受取人が第三者)・送金契約・運送契約・年金契約等。受取人や受益者の権利を契約当事者の合意で創設する商取引の基礎制度。
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前条の規定により第三者の権利が発生した後は、当事者は、これを変更し、又は消滅させることができない。
2前条の規定により第三者の権利が発生した後に、債務者がその第三者に対する債務を履行しない場合には、同条第一項の契約の相手方は、その第三者の承諾を得なければ、契約を解除することができない。
規律
537条により第三者の権利が発生した後は、当事者は、これを変更し、または消滅させることができない(1項)。第三者の権利発生後、債務者がその第三者に対する債務を履行しない場合、契約相手方(要約者)は債務者に対し、相当の期間を定めて履行の催告をし、期間内に履行がないときは契約解除ができる(2項)。
趣旨
第三者のためにする契約で第三者の受益意思表示後は、第三者の権利が独立して保護される。当事者間合意による撤回は信頼破壊として禁止。ただし債務不履行時の解除権は要約者に残し、契約構造の実効性を確保。
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債務者は、第五百三十七条第一項の契約に基づく抗弁をもって、その契約の利益を受ける第三者に対抗することができる。
規律
債務者は、第537条1項の契約に基づく抗弁をもって、その契約の利益を受ける第三者に対抗することができる。
趣旨
第三者のためにする契約では、第三者は契約から派生する権利を取得するだけであり、契約自体の瑕疵・抗弁事由(同時履行・契約無効・要約者の債務不履行による解除等)からは免れない。第三者の地位を要約者の地位より強固にしない。
対比
債権譲渡(468条):譲渡通知時の抗弁を譲受人に対抗可。本条は契約全体に基づく抗弁を第三者に対抗できる点で範囲が広い。
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契約の当事者の一方が第三者との間で契約上の地位を譲渡する旨の合意をした場合において、その契約の相手方がその譲渡を承諾したときは、契約上の地位は、その第三者に移転する。
規律
契約の当事者の一方が第三者との間で契約上の地位を譲渡する旨の合意をした場合、契約の相手方がその譲渡を承諾したときは、契約上の地位はその第三者に移転する。
趣旨
従来判例(最判昭和30.9.29等)が認めてきた契約上の地位の移転を明文化。譲渡人・譲受人の合意+相手方承諾を要件とし、契約の同一性を維持しつつ当事者を入替える。
効果
契約から生じる権利義務(既発生債権・債務・解除権・取消権等)が一括して譲受人に移転。相手方の承諾を要件としたのは、契約の人的性質を保護するため。
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契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。
2前項の意思表示は、撤回することができない。
解除権の行使(1項)
契約またはその性質によって解除の権利が当事者の一方または双方に属するときは、その解除は相手方に対する意思表示によってする。
解除の不可分性(2項)
解除の意思表示は撤回することができない。
性質
形成権。意思表示の到達により効果発生。
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当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。
2ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
催告解除(本文)
当事者の一方が債務不履行のとき、相手方は相当期間を定めて履行催告し、期間内に履行がないときは契約解除できる。債務不履行解除の原則型。
2017改正で帰責性不要
改正前は債務者の帰責性が解除要件とされていたが、改正で解除は債権者を契約から解放する制度と整理し、帰責性不要に転換。判例(最判昭40・6・30)の方向性を立法化。
軽微不履行の例外(ただし書)(2017改正で新設)
期間経過時の不履行が契約・取引上の社会通念に照らして軽微なときは解除不可。微細な不履行による解除権濫用を防ぐ。判例(最判昭36・11・21)の信義則限定論を成文化。
催告の有効性
「相当の期間」は事案により判断。期間が不相当に短くても、客観的に相当な期間経過後の解除は有効(判例:最判昭31・12・6)。期間明示なき催告も相当期間経過後に解除可能。
民法
催告解除の要件と軽微な不履行の解除制限
民法
解除の遡及効と第三者保護(545条)
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次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
2債務の全部の履行が不能であるとき。
3債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
4債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
5契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
6前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。
7次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の一部の解除をすることができる。
8債務の一部の履行が不能であるとき。
9債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
催告なし解除の事由(1項)(2017改正で整理)
①全部履行不能、②全部履行拒絶、③一部不能・拒絶で残部だけでは契約目的達成不可、④定期行為の時期経過、⑤前各号以外で催告しても履行見込みなき場合。催告が無意味な場合を類型化。
改正の意義
改正前の解除は催告解除(541)と無催告解除(旧543履行不能等)の二本立てだったが、改正で本条に無催告解除を体系化。事由を明確化し催告解除との使い分けを明示。
5号の一般条項
「前各号のほか催告しても契約目的を達するに足る履行見込みがないことが明らかなとき」と一般条項化。具体類型に該当しない場合でも、契約目的達成不可が明らかなら無催告解除可能。
一部解除(2項)
一部履行不能・履行拒絶の場合は、催告なしで「その部分について」解除可能。契約の一部解消による柔軟な解決。
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債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、前二条の規定による契約の解除をすることができない。
債権者の責めに帰すべき事由
債務不履行が債権者の帰責事由による場合。
効果:解除権の発生否定
債権者は541条・542条の解除権を有しない。危険負担(536条2項)との区別が問題となる。
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当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から又はその全員に対してのみ、することができる。
2前項の場合において、解除権が当事者のうちの一人について消滅したときは、他の者についても消滅する。
規律
当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から、またはその全員に対してのみ、することができる(1項:解除権の不可分性)。前項の場合に解除権が当事者のうちの一人について消滅したときは、他の者についても消滅する(2項)。
趣旨
多数当事者契約での解除の混乱を避けるため、解除権の行使と消滅を全員一律にする。一部の者だけが契約に拘束され続ける状況を防ぐ。
対比
可分債権原則(427条):原則として各別に行使可。解除権は契約全体を消滅させる権利のため、不可分性を特則として規定。
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