条文を読み込み中...
条文を読み込み中...
全 1372 条— 11 / 28 ページ
債務者は、対抗要件具備時より前に取得した譲渡人に対する債権による相殺をもって譲受人に対抗することができる。
2債務者が対抗要件具備時より後に取得した譲渡人に対する債権であっても、その債権が次に掲げるものであるときは、前項と同様とする。
3ただし、債務者が対抗要件具備時より後に他人の債権を取得したときは、この限りでない。
4対抗要件具備時より前の原因に基づいて生じた債権
5前号に掲げるもののほか、譲受人の取得した債権の発生原因である契約に基づいて生じた債権
6第四百六十六条第四項の場合における前二項の規定の適用については、これらの規定中「対抗要件具備時」とあるのは、「第四百六十六条第四項の相当の期間を経過した時」とし、第四百六十六条の三の場合におけるこれらの規定の適用については、これらの規定中「対抗要件具備時」とあるのは、「第四百六十六条の三の規定により同条の譲受人から供託の請求を受けた時」とする。
規律
債務者は、対抗要件具備時より前に取得した譲渡人に対する債権による相殺をもって譲受人に対抗できる(1項)。対抗要件具備時より後取得債権でも、①対抗要件具備時より前の原因に基づき生じた債権、②譲受人取得債権の発生原因契約に基づき生じた債権なら同様(2項本文)。ただし対抗要件具備時より後に他人から取得した債権は除く(2項但書)。譲渡制限特約付債権の供託請求等の場合、起算点を読み替え(3項)。
2020年改正・趣旨
債権譲渡における債務者の相殺権を保護する規律。判例(無制限説 vs 制限説)の対立を解消し、対抗要件具備時を基準に相殺可能範囲を明文化。
1項・基本ルール
対抗要件具備時前に取得した反対債権は相殺可。対抗要件具備により債務者は譲受人を新債権者として認識すべきだが、既存反対債権による相殺期待を保護。
2項・拡張ルール
対抗要件具備時後取得でも、①前の原因(既存原因から発生した将来債権等)、②同一契約から生じた債権なら相殺可。継続的取引等の合理的期待を保護。但書で他人から取得した債権を除外し、相殺権の濫用的取得を防止。
この条文の練習問題を解く
併存的債務引受の引受人は、債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担する。
2併存的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。
3併存的債務引受は、債務者と引受人となる者との契約によってもすることができる。
4この場合において、併存的債務引受は、債権者が引受人となる者に対して承諾をした時に、その効力を生ずる。
5前項の規定によってする併存的債務引受は、第三者のためにする契約に関する規定に従う。
規律
併存的債務引受の引受人は、債務者と連帯して、債務者が債権者に対し負担する債務と同一内容の債務を負担する(1項)。債権者と引受人となる者の契約で可能(2項)。債務者と引受人となる者の契約でも可能だが、債権者が引受人に対し承諾した時に効力発生(3項)。後者は第三者のためにする契約に関する規定に従う(4項)。
2020年改正・趣旨
従来判例法理で認められてきた併存的債務引受を明文化。引受人と原債務者が連帯債務者となる構造を確認し、契約類型・効力発生時期を整備。
効果(1項)
引受人と原債務者は連帯債務関係。債権者は両者いずれにも全額請求可。引受人は原債務者と連帯規律(438・440等)の適用を受ける。
契約類型
①債権者-引受人契約(2項・効力即時)、②債務者-引受人契約(3項・債権者承諾で効力発生、4項で第三者のためにする契約の規律準用)。債権者の利益保護のため承諾要件を設定。
この条文の練習問題を解く
引受人は、併存的債務引受により負担した自己の債務について、その効力が生じた時に債務者が主張することができた抗弁をもって債権者に対抗することができる。
2債務者が債権者に対して取消権又は解除権を有するときは、引受人は、これらの権利の行使によって債務者がその債務を免れるべき限度において、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。
併存的債務引受人の抗弁援用権(1項)(2017改正で新設)
併存的債務引受により負担した自己の債務について、引受人は効力発生時に債務者が主張できた抗弁をもって債権者に対抗できる。引受時点で固定された債務者の抗弁を引受人も援用可能。
対象となる抗弁
同時履行の抗弁、消滅時効の援用、契約無効・取消事由等、債務者が引受時点で有していた抗弁全て。引受後に新たに生じた抗弁は対象外(引受債務の独立性を保つため)。
取消権・解除権の特則(2項)
債務者が債権者に対して取消権・解除権を有するときは、引受人はこれらの権利行使により債務者が免れるべき限度で履行を拒める。引受人自身は取消権・解除権を行使できないが、履行拒絶権により実質的に保護される。
改正前との比較
旧法には併存的債務引受の明文がなく、判例・学説に委ねられていた。改正により470条〜472_4で体系的に整備され、本条で抗弁関係を明確化。
この条文の練習問題を解く
免責的債務引受の引受人は債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担し、債務者は自己の債務を免れる。
2免責的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。
3この場合において、免責的債務引受は、債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生ずる。
4免責的債務引受は、債務者と引受人となる者が契約をし、債権者が引受人となる者に対して承諾をすることによってもすることができる。
規律
免責的債務引受の引受人は債務者が債権者に対し負担する債務と同一内容の債務を負担し、債務者は自己の債務を免れる(1項)。債権者と引受人となる者の契約で可能で、債権者が債務者に契約をした旨を通知した時に効力発生(2項)。債務者と引受人となる者の契約と債権者の引受人への承諾でも可能(3項)。
2020年改正・趣旨
判例法理で認められてきた免責的債務引受を明文化。原債務者を免責する強力な効果のため、契約類型と効力発生要件を厳格化。
効果(1項)
引受人が単独で債務を負担し、原債務者は免責。債務移転の効果を持つ点で更改類似だが、債務同一性は保持される(債務消滅でなく承継)。
契約類型と効力発生
①債権者-引受人契約(2項・債務者への通知時に効力)、②債務者-引受人契約+債権者承諾(3項・承諾時に効力)。原債務者免責のため債権者関与が必須。通知・承諾要件で第三者の利益を保護。
この条文の練習問題を解く
引受人は、免責的債務引受により負担した自己の債務について、その効力が生じた時に債務者が主張することができた抗弁をもって債権者に対抗することができる。
2債務者が債権者に対して取消権又は解除権を有するときは、引受人は、免責的債務引受がなければこれらの権利の行使によって債務者がその債務を免れることができた限度において、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。
規律
引受人は、免責的債務引受により負担した自己の債務について、効力発生時に債務者が主張できた抗弁を債権者に対抗できる(1項)。債務者が債権者に取消権又は解除権を有するとき、引受人は免責的債務引受がなければ債務者がこれらの権利行使により債務を免れることができた限度で履行拒絶できる(2項)。
趣旨
免責的債務引受で引き受けた債務の内容は原債務と同一性があるため、原債務者が持っていた抗弁・反対権を引受人にも保障。債務同一性の論理的帰結。
1項・抗弁の援用
効力発生時の抗弁(弁済・消滅時効・同時履行・相殺等)を引受人が援用可。引受後に原債務者が新たに取得した抗弁は対象外(時的限界)。
2項・履行拒絶権
原債務者の取消権・解除権そのものは引受人に移転しないが、それらが行使されれば消滅すべき限度で引受人は履行拒絶可。457条3項(保証人の履行拒絶権)と同型の規律。
この条文の練習問題を解く
免責的債務引受の引受人は、債務者に対して求償権を取得しない。
規律
免責的債務引受の引受人は、債務者に対して求償権を取得しない。
趣旨
免責的債務引受は引受人が原債務者の債務を「引き受ける」関係であり、求償権は当然には発生しない。求償権を欲するなら別途合意(求償契約)を要する。
保証との対比
保証人は債務者のために弁済する立場で当然求償権を持つ(459条等)。免責的債務引受は当事者の合意による引受であり、自己債務の弁済として処理される構造。
実務的処理
求償権を欲する引受人は契約時に求償権成立合意を明示するか、別途求償契約を締結。当事者意思に従う任意法規的位置付け。
この条文の練習問題を解く
債権者は、第四百七十二条第一項の規定により債務者が免れる債務の担保として設定された担保権を引受人が負担する債務に移すことができる。
2ただし、引受人以外の者がこれを設定した場合には、その承諾を得なければならない。
3前項の規定による担保権の移転は、あらかじめ又は同時に引受人に対してする意思表示によってしなければならない。
4前二項の規定は、第四百七十二条第一項の規定により債務者が免れる債務の保証をした者があるときについて準用する。
5前項の場合において、同項において準用する第一項の承諾は、書面でしなければ、その効力を生じない。
6前項の承諾がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その承諾は、書面によってされたものとみなして、同項の規定を適用する。
規律
債権者は472_1により債務者が免れる債務の担保として設定された担保権を引受人債務に移すことができる(1項本文)。引受人以外の設定者なら承諾必要(但書)。事前又は同時の引受人への意思表示で行う(2項)。保証についても準用(3項)。承諾は書面要件、電磁的記録も書面とみなす(4・5項)。
趣旨
免責的債務引受により担保が当然消滅すると債権者の地位が悪化するため、担保移転を可能とする規律。第三者設定の担保権・保証は権利者保護のため承諾を要件化。
担保移転手続
①事前・同時の引受人への意思表示が必要(事後では不可)、②第三者設定担保なら設定者の承諾、③保証への準用と承諾の書面要件。要式行為性で第三者保護を確保。
4・5項の書面要件
保証移転承諾は書面(446条2項の保証要式性に準じる)。電磁的記録も書面とみなす(同条3項)。保証人保護のための要式性。
この条文の練習問題を解く
債務者が債権者に対して債務の弁済をしたときは、その債権は、消滅する。
弁済による債権消滅(2017改正で新設)
債務者が債権者に対して債務の弁済をしたときは、その債権は消滅する。弁済の効果として債権消滅を明文化した条文。
立法趣旨
旧法には弁済の効果を直接定める条文がなく、解釈に委ねられていた。改正で弁済による債権消滅を冒頭に明示することで、第三編第一章第六節(債権の消滅)の基本原則を確認する規定。
弁済の意義
弁済は債務の本旨に従った給付の実現。代物弁済(482条)・供託(494条)等とは区別される本来型の債権消滅原因。第三者弁済(474条)も含む広い概念。
「本旨に従った給付」要件
本条は単に「弁済」と規定するが、債務の本旨に従った給付(493条参照)が前提。本旨に反する給付は弁済の効力を生じない(不完全履行となる)。
この条文の練習問題を解く
債務の弁済は、第三者もすることができる。
2弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。
3ただし、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは、この限りでない。
4前項に規定する第三者は、債権者の意思に反して弁済をすることができない。
5ただし、その第三者が債務者の委託を受けて弁済をする場合において、そのことを債権者が知っていたときは、この限りでない。
6前三項の規定は、その債務の性質が第三者の弁済を許さないとき、又は当事者が第三者の弁済を禁止し、若しくは制限する旨の意思表示をしたときは、適用しない。
第三者弁済(1項)
債務の弁済は第三者もすることができる。
弁済をするについて正当な利益を有しない第三者
①債務の性質が許さない場合、②債務者の意思に反する場合は弁済不可(2項)。さらに債権者の意思に反する場合も不可(3項)。
正当な利益を有する第三者
物上保証人・連帯保証人・抵当不動産の第三取得者等。これらは債務者・債権者の意思に反しても弁済可能。
この条文の練習問題を解く
弁済をした者が弁済として他人の物を引き渡したときは、その弁済をした者は、更に有効な弁済をしなければ、その物を取り戻すことができない。
規律
弁済として他人の物を引き渡した者は、更に有効な弁済をしなければその物を取り戻すことができない。
趣旨
他人物弁済の効力否認と取戻し制限。無権利者の引渡しは原則として債権者に所有権を移転しないため弁済は無効だが、債権者保護のため二重弁済を要件として取戻請求を制限する。
他人物弁済の効力
原則として弁済は無効。ただし債権者が即時取得(192条)すれば確定的に所有権を取得し、債務消滅と取戻不能が両立する。
取戻しの実体的根拠
弁済者は真の所有者ではないため、所有者が取り戻すのが原則。本条は弁済者自身による取戻しを「有効な再弁済」を条件として認める特則。476条と一体で機能。
この条文の練習問題を解く
前条の場合において、債権者が弁済として受領した物を善意で消費し、又は譲り渡したときは、その弁済は、有効とする。
2この場合において、債権者が第三者から賠償の請求を受けたときは、弁済をした者に対して求償をすることを妨げない。
規律
475条の場合に債権者が善意で目的物を消費・譲渡したときは弁済は有効となる(1項)。債権者が真の所有者から賠償請求を受けたときは、債権者は弁済者に求償できる(2項)。
趣旨
善意債権者保護と利益調整。消費・譲渡で原状回復不能となった善意債権者の弁済受領利益を確定的に保護し、弁済の有効化を擬制。賠償リスクは無権利弁済をした弁済者に最終帰属させる。
1項の要件
①弁済として他人物が引き渡された、②債権者が善意(他人物と知らない)、③消費又は譲渡(取戻不能化)。
2項の求償権
債権者は真の所有者へ価格賠償した後、弁済者へ全額求償可。弁済者が結局負担する経済構造により475条の趣旨(取戻しの利害調整)と整合。
この条文の練習問題を解く
債権者の預金又は貯金の口座に対する払込みによってする弁済は、債権者がその預金又は貯金に係る債権の債務者に対してその払込みに係る金額の払戻しを請求する権利を取得した時に、その効力を生ずる。
規律
債権者の預金又は貯金の口座への払込みによる弁済は、債権者が払込み金額の払戻請求権を取得した時に効力を生ずる。
趣旨
2020年改正で新設。振込決済が実務の中心となった現状に応じ、口座入金弁済の効力発生時期を明文化。預金債権成立時を基準とすることで弁済時期と債権者の支配可能性を一致させる。
効力発生時期の意義
払込み指示時ではなく、預金債権が成立する時点(口座記帳・払戻請求権取得)が弁済時期。遅延損害金算定・履行期該当性・債権譲渡通知到達時等で重要。
実務上の意義
銀行システム遅延・組戻し・受取人口座凍結等の場合、払込指示があっても本条要件未充足なら弁済不成立。債務者は単なる払込指示では履行不完全のリスクを負う。
この条文の練習問題を解く
受領権者(債権者及び法令の規定又は当事者の意思表示によって弁済を受領する権限を付与された第三者をいう。以下同じ。)以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するものに対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する。
受領権者としての外観を有する者への弁済
受領権者以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するものに対してした弁済は、その弁済をした者が善意かつ無過失であるときに限り効力を有する。
「受領権者の外観」の具体例
債権の準占有者、表見相続人、無権代理人を名乗る者、預金通帳と印鑑の所持者など。
善意・無過失の要件
弁済者の善意は推定されるが、無過失は推定されない(判例)。弁済者が立証責任を負う。
この条文の練習問題を解く
前条の場合を除き、受領権者以外の者に対してした弁済は、債権者がこれによって利益を受けた限度においてのみ、その効力を有する。
規律
478条の場合を除き、受領権者以外の者に対してした弁済は、債権者が利益を受けた限度においてのみ効力を有する。
趣旨
受領権限なき者への弁済は本来無効(債権消滅効なし)だが、債権者が事実上利益を受けた限度で例外的に弁済効力を認める。利益帰属の不当性を排除しつつ、債務者の二重弁済リスクを利得移転の範囲で限定。
478条との振り分け
478条は受領権者としての外観を有する者への善意無過失弁済を全面的に有効化する強い保護。本条は外観要件を満たさない場面の最後の救済で、保護範囲が「利益限度」に限定される。
「利益を受けた」の意義
債権者への金銭等の現実到達、債権者の債務消滅、債権者への財産的価値の移転等。立証責任は弁済者側にある。利益を受けた立証ができなければ弁済者は再度弁済の義務を負う。
この条文の練習問題を解く
削除
削除条文(480条)
民法480条は2020年改正で削除。旧480条(受取証書持参人の弁済受領権限)は478条(受領権者としての外観を有する者への弁済)に統合された。
この条文の練習問題を解く
差押えを受けた債権の第三債務者が自己の債権者に弁済をしたときは、差押債権者は、その受けた損害の限度において更に弁済をすべき旨を第三債務者に請求することができる。
2前項の規定は、第三債務者からその債権者に対する求償権の行使を妨げない。
規律
差押えを受けた債権の第三債務者が自己の債権者(被差押債権の債権者)に弁済したとき、差押債権者は損害の限度で更に弁済を請求できる(1項)。第三債務者の求償権行使は妨げない(2項)。
趣旨
差押え後の弁済禁止違反への制裁規律。第三債務者が差押えを無視して債務者へ弁済しても差押債権者には対抗できず、差押債権者には再度弁済する必要がある(民執145条と一体機能)。
二重弁済のリスク
第三債務者は差押債権者と自己債権者の双方への弁済義務を負う構造(実質的二重払い)。差押え受領後の弁済は自己責任。
求償権
2項により第三債務者は自己債権者(不当に弁済を受けた者)に対し求償可。経済的最終帰属は不当受領者となる構造。
この条文の練習問題を解く
弁済をすることができる者(以下「弁済者」という。)が、債権者との間で、債務者の負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をした場合において、その弁済者が当該他の給付をしたときは、その給付は、弁済と同一の効力を有する。
代物弁済の要件
弁済者と債権者の合意に基づき、本来の給付に代えて他の給付をすることで、弁済と同一の効力を生ずる。
性質(要物契約から諾成契約へ)
改正により諾成契約化。当事者の合意のみで成立し、現実の給付は履行行為。
効果
現実の給付完了により債権は消滅。所有権移転が目的のときは登記等の対抗要件具備も必要(判例)。
この条文の練習問題を解く
債権の目的が特定物の引渡しである場合において、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らしてその引渡しをすべき時の品質を定めることができないときは、弁済をする者は、その引渡しをすべき時の現状でその物を引き渡さなければならない。
規律
債権の目的が特定物の引渡しである場合に、契約・債権発生原因・社会通念から引渡時の品質を定められないときは、引渡時の現状で引き渡せば足りる。
趣旨
2020改正で旧法「引渡時の現状」の限界を明確化。原則は当事者の意思・契約解釈から品質を導き、それでも定まらない補充的場合にのみ現状引渡しで足りる構造に変更。
旧法との差異
旧法は「特定物は現状引渡し」が原則だったが、改正で品質基準は契約解釈で決まるのが原則となり、本条は補充規律に降格。実質的には債務者の品質確保義務が強化されている。
中古品売買等の適用
中古車・中古建物等の取引で品質特約がない場合に本条が機能。ただし契約適合性判断(562条以下)で実質的に契約解釈による品質基準が優先される。
この条文の練習問題を解く
弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない。
2法令又は慣習により取引時間の定めがあるときは、その取引時間内に限り、弁済をし、又は弁済の請求をすることができる。
規律
弁済すべき場所について別段の意思表示がないとき、特定物引渡しは債権発生時にその物が存在した場所、その他の弁済は債権者の現在の住所においてしなければならない(1項)。法令又は慣習で取引時間の定めがあるとき、その取引時間内に限り弁済し又は弁済請求できる(2項)。
趣旨
弁済場所・時間の法定。①特定物は物の所在地(持参の負担排除)、②種類物・金銭は債権者住所(持参債務原則)、③取引時間遵守による合理的取引秩序の確保。
1項・場所
特定物は「物の存在した場所」(取立債務)。その他(種類物・金銭・労務)は「債権者の現在住所」(持参債務)。日本民法は持参債務原則を採用。
2項・時間
法令(商法501条等)・慣習による取引時間内のみ弁済・請求が有効。時間外の弁済提供は受領拒絶可能で債務不履行扱いとなる構造。
この条文の練習問題を解く
弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。
2ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。
規律
弁済の費用は別段の意思表示がなければ債務者の負担とする(本文)。ただし債権者の住所移転その他の行為により増加した分は債権者負担(ただし書)。
趣旨
弁済義務は債務者の責任で完遂すべきという原則。費用は履行の一部として債務者が負担。ただし債権者の事情で増加した分は債権者負担とし、公平を保つ。
費用の範囲
送付費用、登記費用、両替手数料、運送費等。代金支払のための振込手数料も原則債務者負担(債権者の住所変更等で増えた分は債権者負担)。
別段の意思表示
契約で「○○費用は○○負担」と合意可。慣習による配分も意思表示と同等に扱われる(92条)。
この条文の練習問題を解く
弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる。
2弁済をする者は、前項の受取証書の交付に代えて、その内容を記録した電磁的記録の提供を請求することができる。
3ただし、弁済を受領する者に不相当な負担を課するものであるときは、この限りでない。
規律
弁済者は弁済と引換えに受取証書の交付を請求できる(1項)。電磁的記録の提供でも代替可だが受領者に不相当な負担を課す場合は不可(2項)。
趣旨
弁済の証拠確保。受取証書なしで弁済すれば後の紛争で立証困難となるため、引換給付の関係(同時履行類似)で受取証書交付請求権を保障。2項は2020改正でデジタル化に対応。
同時履行関係
弁済と受取証書交付は引換給付関係。受取証書交付なき場合、弁済者は弁済提供を拒否できる(弁済不履行責任を免れる)。
電磁的記録の限界
高齢者・電子機器を保有しない受領者等への一方的な電子記録提供は「不相当な負担」に該当し許されない。受領者の状況に応じた合理性判断が必要。
この条文の練習問題を解く
債権に関する証書がある場合において、弁済をした者が全部の弁済をしたときは、その証書の返還を請求することができる。
受取証書交付請求権
弁済者は弁済と引換えに弁済を受領した者に対し受取証書の交付を請求できる。
性質
同時履行関係。受取証書の交付なくして弁済を強制されない(最判昭16・3・1)。
電磁的記録による交付(2項)
弁済者は弁済を受領した者に対し電磁的記録の提供を請求できる場合もある(2017年改正で追加)。
この条文の練習問題を解く
債務者が同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担する場合において、弁済として提供した給付が全ての債務を消滅させるのに足りないとき(次条第一項に規定する場合を除く。)は、弁済をする者は、給付の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。
2弁済をする者が前項の規定による指定をしないときは、弁済を受領する者は、その受領の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。
3ただし、弁済をする者がその充当に対して直ちに異議を述べたときは、この限りでない。
4前二項の場合における弁済の充当の指定は、相手方に対する意思表示によってする。
5弁済をする者及び弁済を受領する者がいずれも第一項又は第二項の規定による指定をしないときは、次の各号の定めるところに従い、その弁済を充当する。
6債務の中に弁済期にあるものと弁済期にないものとがあるときは、弁済期にあるものに先に充当する。
7全ての債務が弁済期にあるとき、又は弁済期にないときは、債務者のために弁済の利益が多いものに先に充当する。
8債務者のために弁済の利益が相等しいときは、弁済期が先に到来したもの又は先に到来すべきものに先に充当する。
前二号に掲げる事項が相等しい債務の弁済は、各債務の額に応じて充当する。
債務者が一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合(債務者が数個の債務を負担する場合にあっては、同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担するときに限る。)において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、これを順次に費用、利息及び元本に充当しなければならない。
2前条の規定は、前項の場合において、費用、利息又は元本のいずれかの全てを消滅させるのに足りない給付をしたときについて準用する。
規律
元本のほか利息・費用を支払うべき場合に弁済が全部消滅に足りないとき、費用→利息→元本の順で充当する(1項)。費用・利息・元本のいずれかの内部充当には488条を準用(2項)。
趣旨
費用優先・利息次・元本最後の充当順序を法定。この順序は債権者の利益保護(元本を残し利息・費用を回収)と公平の要請に基づく強行規定的扱い。
順序の理由
費用は債権者が立替えた経費の早期回収。利息は元本に対する果実で本体(元本)より先に処理。元本最後は債権存続期間を伸ばし利息発生を継続させない配慮。
490条との関係
本条は法定充当。当事者間に合意があれば490条により合意充当が優先。実務では一括返済合意・繰上返済合意で本条と異なる順序が選ばれることが多い。
この条文の練習問題を解く
前二条の規定にかかわらず、弁済をする者と弁済を受領する者との間に弁済の充当の順序に関する合意があるときは、その順序に従い、その弁済を充当する。
規律
488条・489条の規定にかかわらず、弁済者と受領者の間に弁済充当順序の合意があるときは、その順序に従う。
趣旨
合意充当の優位性を明示。当事者意思尊重と契約自由の原則を法定充当規範に貫徹。実務取引(金消契約・銀行取引約定書等)で標準条項として機能。
合意の時期
弁済前・弁済時のいずれでも可。包括的事前合意(金消契約の充当条項)も特定弁済時の合意もいずれも本条で許容。
合意の限界
公序良俗(90条)・優越的地位濫用・消費者契約法10条等で過度に債務者不利な充当合意は無効化される余地あり。
この条文の練習問題を解く
一個の債務の弁済として数個の給付をすべき場合において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、前三条の規定を準用する。
規律
一個の債務の弁済として数個の給付をすべき場合に全部消滅に足りない給付がされたときは、488条〜490条の規定を準用する。
趣旨
分割給付債務における不足弁済への充当ルール。同一債務内の複数給付(分割払い金消等)でも法定/合意充当ルールが妥当することを明示。
適用場面
分割払い消費貸借、定期金債務、家賃複数月分等。各回給付分に対する一部弁済をどの回分に充当するかを488条〜490条で処理。
実務
金融実務では「先発生の元本→先発生の利息」の合意充当が一般的。本条は合意なき場面の補充規律。
この条文の練習問題を解く
債務者は、弁済の提供の時から、債務を履行しないことによって生ずべき責任を免れる。
規律
債務者は、弁済の提供の時から、債務を履行しないことによって生ずべき責任を免れる。
趣旨
弁済提供の効果規定。債務者が弁済提供をすれば、債権者の受領拒否・受領不能による履行遅滞責任を免れる。受領遅滞(413条)・債務不履行責任(415条)の阻却根拠。
免責の範囲
①遅延損害金発生停止、②契約解除(541条)阻却、③同時履行抗弁の阻却、④違約金等のペナルティ阻却。ただし債務自体は消滅しない(493条の提供方法を踏むだけでは弁済ではない)。
受領遅滞との関係
弁済提供→債権者受領拒否で受領遅滞(413条)成立。本条は債務者側免責、413条は債権者側不利益拡大(保管義務軽減・履行費用増加分の債権者負担)として相互補完。
この条文の練習問題を解く
弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなければならない。
2ただし、債権者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる。
現実の提供(本文)
弁済の提供は債務の本旨に従って現実にしなければならない。
口頭の提供(但書)
債権者があらかじめその受領を拒み、または債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる。
効果
履行遅滞責任を免れる(492条)。受領遅滞の効果も生ずる(413条)。
この条文の練習問題を解く
弁済者は、次に掲げる場合には、債権者のために弁済の目的物を供託することができる。
2この場合においては、弁済者が供託をした時に、その債権は、消滅する。
3弁済の提供をした場合において、債権者がその受領を拒んだとき。
4債権者が弁済を受領することができないとき。
5弁済者が債権者を確知することができないときも、前項と同様とする。
6ただし、弁済者に過失があるときは、この限りでない。
供託原因(1項)
①債権者が弁済の受領を拒んだとき、②債権者が弁済を受領できないときは、弁済者は債権者のため弁済の目的物を供託することができる。
債権者不確知(2項)
弁済者が過失なく債権者を確知できないときも供託可能。
効果
供託により債務は消滅する。債権者は供託物還付請求権を取得。供託費用は債権者負担(495条3項)。
この条文の練習問題を解く
前条の規定による供託は、債務の履行地の供託所にしなければならない。
2供託所について法令に特別の定めがない場合には、裁判所は、弁済者の請求により、供託所の指定及び供託物の保管者の選任をしなければならない。
3前条の規定により供託をした者は、遅滞なく、債権者に供託の通知をしなければならない。
規律
494条の供託は債務の履行地の供託所にする(1項)。供託所の法令の定めがない場合は裁判所が弁済者の請求で供託所指定・供託物保管者選任を行う(2項)。供託をした者は遅滞なく債権者に通知する(3項)。
趣旨
供託(弁済供託)の手続的要件。場所・指定・通知の三要件を整備し、供託の有効性を担保。供託所制度を経て債務消滅効を発生させる手続的厳格性が494条と一体で機能。
履行地の供託所
金銭・有価証券は法務局の供託所(供託法)。動産は履行地の供託所、それがなければ裁判所指定の場所。不動産は供託になじまないため494条適用がそもそも限定的。
通知義務(3項)
通知懈怠でも供託自体は有効だが、通知遅延による損害は弁済者が賠償責任を負う可能性あり。債権者の還付請求権行使を可能とするための実効性確保規定。
この条文の練習問題を解く
債権者が供託を受諾せず、又は供託を有効と宣告した判決が確定しない間は、弁済者は、供託物を取り戻すことができる。
2この場合においては、供託をしなかったものとみなす。
3前項の規定は、供託によって質権又は抵当権が消滅した場合には、適用しない。
規律
債権者が供託を受諾せず、又は供託を有効と宣告する判決が確定しない間は、弁済者は供託物を取り戻せる。取戻しがあれば供託はなかったものとみなされる(1項)。質権・抵当権が供託で消滅した場合は取戻不可(2項)。
趣旨
供託の暫定性。供託は債権者の確定的受領まで弁済者の最終的処分権を奪わない構造(事前的不確定状態)。担保消滅後は取戻不可として担保関係安定を優先。
取戻しの要件
①債権者の受諾なし、②有効判決確定なし。取戻し後は供託前の状態に復帰し、弁済者は債務者として遅延損害金等を再度負担する。
2項の趣旨
供託で質権・抵当権が消滅した(被担保債権の消滅と連動)後の取戻しを認めると担保関係の不安定化を招くため、担保消滅後は取戻不可とし、被担保債権者・第三者の利益を保護。
この条文の練習問題を解く
弁済者は、次に掲げる場合には、裁判所の許可を得て、弁済の目的物を競売に付し、その代金を供託することができる。
2その物が供託に適しないとき。
3その物について滅失、損傷その他の事由による価格の低落のおそれがあるとき。
4その物の保存について過分の費用を要するとき。
5前三号に掲げる場合のほか、その物を供託することが困難な事情があるとき。
規律
弁済者は次の場合に裁判所の許可を得て弁済目的物を競売に付し、代金を供託できる。①供託に適しないとき、②滅失・損傷等で価格低落のおそれあるとき、③保存に過分の費用を要するとき、④その他供託困難な事情あるとき。
趣旨
自助売却権。供託になじまない動産(生鮮品・大型機械等)について、競売(金銭化)により供託を可能とする手段を提供。494条の供託原則の補完規定。
裁判所の許可
競売手続の濫用防止と価格適正化のため裁判所の関与を要求。許可審理では本条各号該当性と競売の必要性が判断される。
代金供託の効果
競売代金を494条と同様に供託することで債務消滅効発生。物自体の供託ではなく金銭化後の供託となるが、効果は通常供託と同等。
この条文の練習問題を解く
弁済の目的物又は前条の代金が供託された場合には、債権者は、供託物の還付を請求することができる。
2債務者が債権者の給付に対して弁済をすべき場合には、債権者は、その給付をしなければ、供託物を受け取ることができない。
規律
弁済目的物又は497条の代金が供託されたときは債権者は還付請求できる(1項)。債務者が債権者の給付に対して弁済すべき場合(双務契約)には、債権者は反対給付しなければ供託物を受け取れない(2項)。
趣旨
供託物の還付手続と双務契約上の同時履行関係を維持。供託で債務者は弁済から解放されるが、双務契約では債権者も反対給付義務を負うため、引換給付の関係を供託物還付段階で再現。
2項の意義
売買契約の代金を供託した買主は、売主が目的物引渡し・登記移転等の反対給付をしなければ供託金を取得できない。同時履行関係の供託版。
供託所での手続
供託法に基づき供託書・払渡請求書・反対給付提供証明書類等を提出。実体法上の還付要件(2項)の充足が供託所での払渡請求の前提となる。
この条文の練習問題を解く
債務者のために弁済をした者は、債権者に代位する。
弁済による代位の発生
債務者のために弁済をした者は債権者に代位する。
改正のポイント
改正前は任意代位(債権者の承諾要)と法定代位(弁済正当利益者)に分かれていたが、改正後は弁済者は当然に代位する(任意代位の承諾要件廃止)。
対抗要件
「弁済をするについて正当な利益」を有しない者の代位は、467条の債権譲渡対抗要件を要する(500条)。
この条文の練習問題を解く
第四百六十七条の規定は、前条の場合(弁済をするについて正当な利益を有する者が債権者に代位する場合を除く。)について準用する。
規律
467条(債権譲渡の対抗要件)の規定は前条の場合(任意代位)に準用する。ただし、弁済をするについて正当な利益を有する者が代位する場合は除く。
趣旨
任意代位における第三者対抗要件の整備。任意代位は実質的には法定の債権譲渡効果を持つため、467条の通知・承諾要件を準用して二重譲渡的状況での対抗関係を処理。
適用場面
①債務者の承諾を得て弁済した第三者の代位(任意代位)、②正当な利益を有しない者が承諾を得て弁済した場合。467条の通知・承諾を経なければ債務者・第三者に対抗不可。
適用除外
「弁済について正当な利益を有する者」(保証人・連帯債務者・物上保証人・第三取得者等)は法定代位として当然に対抗力を持ち、467条要件不要。本条はこの場合を明示的に除く。
この条文の練習問題を解く
前二条の規定により債権者に代位した者は、債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる。
2前項の規定による権利の行使は、債権者に代位した者が自己の権利に基づいて債務者に対して求償をすることができる範囲内(保証人の一人が他の保証人に対して債権者に代位する場合には、自己の権利に基づいて当該他の保証人に対して求償をすることができる範囲内)に限り、することができる。
3第一項の場合には、前項の規定によるほか、次に掲げるところによる。
4第三取得者(債務者から担保の目的となっている財産を譲り受けた者をいう。以下この項において同じ。)は、保証人及び物上保証人に対して債権者に代位しない。
5第三取得者の一人は、各財産の価格に応じて、他の第三取得者に対して債権者に代位する。
6前号の規定は、物上保証人の一人が他の物上保証人に対して債権者に代位する場合について準用する。
7保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて、債権者に代位する。
8ただし、物上保証人が数人あるときは、保証人の負担部分を除いた残額について、各財産の価格に応じて、債権者に代位する。
第三取得者から担保の目的となっている財産を譲り受けた者は、第三取得者とみなして第一号及び第二号の規定を適用し、物上保証人から担保の目的となっている財産を譲り受けた者は、物上保証人とみなして第一号、第三号及び前号の規定を適用する。
債権の一部について代位弁済があったときは、代位者は、債権者の同意を得て、その弁済をした価額に応じて、債権者とともにその権利を行使することができる。
2前項の場合であっても、債権者は、単独でその権利を行使することができる。
3前二項の場合に債権者が行使する権利は、その債権の担保の目的となっている財産の売却代金その他の当該権利の行使によって得られる金銭について、代位者が行使する権利に優先する。
4第一項の場合において、債務の不履行による契約の解除は、債権者のみがすることができる。
5この場合においては、代位者に対し、その弁済をした価額及びその利息を償還しなければならない。
規律
債権の一部について代位弁済があったとき、代位者は債権者の同意を得て弁済価額に応じて債権者とともに権利行使できる(1項)。債権者は単独で権利行使できる(2項)。担保目的財産から得られる金銭については債権者の権利が代位者に優先する(3項)。契約解除は債権者のみ、解除時は代位者へ弁済価額及び利息を償還(4項)。
趣旨
一部弁済代位における債権者保護優先の構造。代位者の権利取得は認めるが、債権者の残額回収を阻害しないよう①同意要件、②債権者単独行使、③配当時の債権者優先、④解除権の債権者専属を法定。2020改正で明確化。
3項・債権者優先の意義
担保不動産競売等で配当が按分されると債権者の残債回収を害するため、代位者の取分は債権者の満額回収後に限定。一部弁済代位の最重要論点。
4項・解除権専属
代位者が解除権行使すれば債権者の残債が消えるため解除権を債権者専属とし、解除時は債権者から代位者への原状回復(弁済価額+利息償還)で利害調整。
この条文の練習問題を解く
代位弁済によって全部の弁済を受けた債権者は、債権に関する証書及び自己の占有する担保物を代位者に交付しなければならない。
2債権の一部について代位弁済があった場合には、債権者は、債権に関する証書にその代位を記入し、かつ、自己の占有する担保物の保存を代位者に監督させなければならない。
規律
代位弁済で全部弁済を受けた債権者は債権証書・自己占有の担保物を代位者に交付しなければならない(1項)。一部弁済代位の場合、債権者は債権証書に代位記入し、自己占有の担保物保存を代位者に監督させる(2項)。
趣旨
代位者の権利行使を実体面で可能とする付随義務。証書・担保物が債権者の手元にあれば代位者は権利行使困難となるため、全部代位では交付、一部代位では監督関与を保障。
1項・全部代位の効果
債権者は債権を完全に失うため証書・担保を保有する利益なし。代位者へ全面引継ぎで代位者の権利行使を実効化。
2項・一部代位の構造
債権者と代位者の共同行使(502条1項)が前提のため、担保物は債権者占有のまま、代位者には保存状況の監督権限を付与。実務では担保物の評価・換価時期等で双方が協議する場面が多い。
この条文の練習問題を解く
弁済をするについて正当な利益を有する者(以下この項において「代位権者」という。)がある場合において、債権者が故意又は過失によってその担保を喪失し、又は減少させたときは、その代位権者は、代位をするに当たって担保の喪失又は減少によって償還を受けることができなくなる限度において、その責任を免れる。
2その代位権者が物上保証人である場合において、その代位権者から担保の目的となっている財産を譲り受けた第三者及びその特定承継人についても、同様とする。
3前項の規定は、債権者が担保を喪失し、又は減少させたことについて取引上の社会通念に照らして合理的な理由があると認められるときは、適用しない。
規律
弁済について正当な利益を有する者(代位権者)がある場合に債権者が故意・過失で担保を喪失・減少させたとき、代位権者は喪失・減少により償還不能となった限度で責任を免れる(1項本文)。物上保証人の代位権者から担保財産を譲受けた第三者・特定承継人も同様(1項後段)。担保喪失について取引上の社会通念上合理的理由があるときは免責不発生(2項)。
趣旨
債権者の担保保存義務。代位権者は将来の代位により債権者の担保から回収する期待利益を持つため、債権者の担保管理懈怠で代位権者を不利にしないよう、責任免脱(保証債務・物上保証責任の縮減)で利益保護。
1項後段(2020改正)
物上保証人から担保不動産を譲受けた第三者(第三取得者)も代位権者と同視。後段で第三取得者の地位安定化と債権者の保存義務範囲を明確化。
2項・社会通念合理性
債権者が担保解除・劣後化に合理性ある経済判断(再生計画への協力等)をした場合は免責不発生。2020改正で例外を整備し、債権者の柔軟な担保管理を許容しつつ、不合理な放棄は引き続き本条で制裁。
この条文の練習問題を解く
二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。
2ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
3前項の規定にかかわらず、当事者が相殺を禁止し、又は制限する旨の意思表示をした場合には、その意思表示は、第三者がこれを知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限り、その第三者に対抗することができる。
相殺要件(1項本文)
①2人が互いに同種の目的を有する債務を負担すること(対立債権)、②双方の債務が弁済期にあること(自働債権の弁済期到来+受働債権は期限の利益放棄可)、③性質上相殺可能なこと。
相殺禁止特約(1項但書)
債務の性質が相殺を許さないとき、または当事者が相殺禁止・制限の意思表示をしたときは不可。ただし2項により悪意・重過失の第三者にしか対抗できない。
効果
相殺は意思表示により対当額で双方の債務を消滅させる(506条)。効力は相殺適状時に遡及(506条2項)。
この条文の練習問題を解く
相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によってする。
2この場合において、その意思表示には、条件又は期限を付することができない。
3前項の意思表示は、双方の債務が互いに相殺に適するようになった時にさかのぼってその効力を生ずる。
規律
相殺は当事者一方から相手方への意思表示でする(1項前段)。意思表示には条件・期限を付せない(1項後段)。意思表示は双方の債務が相殺適状になった時に遡及して効力を生ずる(2項)。
趣旨
相殺の形成権としての性質と遡及効。当事者の単独意思表示で対当額消滅という強い効果が生ずるため、条件・期限を排除し権利関係の不安定化を防止。遡及効により相殺適状以降の遅延損害金・利息が清算される。
条件・期限の禁止
相手方の地位を不安定にすることを防止。条件付相殺意思表示は無効。停止条件・解除条件のいずれも認められない。
2項・遡及効
相殺適状時に遡って双方債務が対当額で消滅。意思表示自体は形成権行使だが効果は遡及。これにより相殺適状以降の遅延利息は不発生となり、当事者の合理的期待が保護される。
この条文の練習問題を解く
相殺は、双方の債務の履行地が異なるときであっても、することができる。
2この場合において、相殺をする当事者は、相手方に対し、これによって生じた損害を賠償しなければならない。
規律
相殺は双方債務の履行地が異なるときでもできる。この場合、相殺をする当事者は相手方に生じた損害を賠償しなければならない。
趣旨
履行地の相違を相殺の妨害事由としない政策。本来は履行地ごとに弁済すべきだが、相殺による簡易決済の実益を優先。相手方が他の履行地で受領を期待していた利益は損害賠償で塡補。
損害賠償の範囲
履行地で受領できたら得られた利益(為替差益・運送費節減等)、他履行地での代替受領のための追加費用等。立証は相手方が負う。
実務上の意義
国際取引での外貨建債権の相殺で本条が機能。一方が為替変動利益を狙って相殺を行った場合の損害賠償実例がある。
この条文の練習問題を解く
時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができる。
規律
時効により消滅した債権が消滅以前に相殺適状にあった場合には、債権者は相殺できる。
趣旨
相殺適状になった時点での清算期待を保護。当事者は相殺適状で双方債務が消滅したと信頼するのが通常であり、時効完成後でも遡及的に相殺を認めて期待利益を保護。相殺の遡及効(506条2項)と整合。
要件
①自働債権が時効消滅、②時効消滅以前に相殺適状(双方弁済期到来・対立)にあったこと。時効消滅後に初めて受働債権が成立・弁済期到来した場合は本条対象外。
判例の重要論点
最判平25.2.28は他人から譲り受けた債権について本条の適用を否定。譲受時に既に時効消滅していた債権は本条の保護対象外(自己が相殺期待していたとは言えない)。
この条文の練習問題を解く
次に掲げる債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。
2ただし、その債権者がその債務に係る債権を他人から譲り受けたときは、この限りでない。
3悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務
4人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務(前号に掲げるものを除く。)
受働債権が不法行為等による損害賠償債権の場合(1号・2号)
①悪意による不法行為に基づく損害賠償債権、②人の生命または身体の侵害による損害賠償債権を受働債権とする相殺は禁止される。
趣旨
①不法行為誘発防止(債務者が相殺目当てに加害行為に及ぶことを防ぐ)、②現実給付による被害者救済の確保。
譲受債権の例外(但書)
他人から債権を譲り受けた場合の損害賠償債権は相殺可能。
この条文の練習問題を解く
債権が差押えを禁じたものであるときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。
規律
債権が差押えを禁じたものであるときは、その債務者は相殺をもって債権者に対抗できない。
趣旨
差押禁止債権(給料・年金・扶養料等)の社会政策的保護を相殺局面でも貫徹。差押えを許さない以上、相殺による強制的回収も許さない構造。受働債権が差押禁止であれば債務者からの相殺が一律禁止される。
差押禁止債権の例
民執152条の給料債権の4分の3部分、年金・恩給請求権、生活保護費受給権、児童扶養手当等。これらを受働債権とする相殺は禁止。
511条との関係
511条(差押後に取得した債権による相殺)は受働債権が差押えを受けた場合の相殺制限。本条は受働債権が差押え禁止である場合の制限で、保護対象と論点が異なる。
この条文の練習問題を解く
差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできないが、差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができる。
2前項の規定にかかわらず、差押え後に取得した債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであるときは、その第三債務者は、その債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができる。
3ただし、第三債務者が差押え後に他人の債権を取得したときは、この限りでない。
差押え後取得債権による相殺禁止(1項本文)
差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押え債権者に対抗できない。
差押え前取得債権の相殺可(1項但書)
差押え前に取得した債権による相殺は、差押え債権者に対抗できる。
前の原因に基づく債権(2項)
差押え後に取得した債権でも、差押え前の原因に基づいて生じたものは相殺できる(最判昭45・6・24・無制限説の判例規律を明文化)。
この条文の練習問題を解く
債権者が債務者に対して有する一個又は数個の債権と、債権者が債務者に対して負担する一個又は数個の債務について、債権者が相殺の意思表示をした場合において、当事者が別段の合意をしなかったときは、債権者の有する債権とその負担する債務は、相殺に適するようになった時期の順序に従って、その対当額について相殺によって消滅する。
2前項の場合において、相殺をする債権者の有する債権がその負担する債務の全部を消滅させるのに足りないときであって、当事者が別段の合意をしなかったときは、次に掲げるところによる。
3債権者が数個の債務を負担するとき(次号に規定する場合を除く。)は、第四百八十八条第四項第二号から第四号までの規定を準用する。
4債権者が負担する一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべきときは、第四百八十九条の規定を準用する。
5この場合において、同条第二項中「前条」とあるのは、「前条第四項第二号から第四号まで」と読み替えるものとする。
6第一項の場合において、相殺をする債権者の負担する債務がその有する債権の全部を消滅させるのに足りないときは、前項の規定を準用する。
規律
相殺の充当規律。①対当額相殺は相殺適状時期の順序に従う(1項)。②相殺額が債務全部を消滅させない場合、合意なきときは488条4項2号〜4号又は489条を準用(2項)。③相殺債権者の負担債務が有する債権を全部消滅させない場合も同様に処理(3項)。
趣旨
数個の対立債権について相殺意思表示があった場合の充当ルール。法定充当(489条等)の体系と相殺の遡及効(506条2項)を統合し、当事者の合理的期待に沿う形で消滅効果を確定。2020改正で新設・明確化。
1項・適状順
複数債権が相殺適状になる時期が異なる場合、早く適状になった組合せから順次相殺。遡及効と整合し公平な清算を実現。
2項・準用関係
489条準用により費用→利息→元本の順、488条4項2号〜4号で履行期到来・担保有無・債務者の利益等の順で充当。法定充当を相殺場面に組み込む構造。
この条文の練習問題を解く
債権者が債務者に対して有する債権に、一個の債権の弁済として数個の給付をすべきものがある場合における相殺については、前条の規定を準用する。
2債権者が債務者に対して負担する債務に、一個の債務の弁済として数個の給付をすべきものがある場合における相殺についても、同様とする。
規律
一個の債権の弁済として数個の給付をすべきものがある場合の相殺については512条を準用する(前段)。一個の債務の弁済として数個の給付をすべきものがある場合の相殺も同様(後段)。
趣旨
分割給付債務(分割金消・定期金等)における相殺の充当ルール。一個の債権/債務でも数個の給付に分かれる場合の充当を512条と同様に処理し、相殺の処理を統一。2020改正で新設。
適用場面
分割払い金消、定期金、家賃複数月分等を自働債権/受働債権とする相殺。各回の給付分への相殺充当を512条のルールで処理。
491条との対比
491条は弁済における数個給付の充当規律、本条は相殺における同様の規律。弁済と相殺で並行的な充当規範を整備し、債権消滅の場面横断的な統一性を確保。
この条文の練習問題を解く
当事者が従前の債務に代えて、新たな債務であって次に掲げるものを発生させる契約をしたときは、従前の債務は、更改によって消滅する。
2従前の給付の内容について重要な変更をするもの
3従前の債務者が第三者と交替するもの
4従前の債権者が第三者と交替するもの
更改の意義
当事者の合意により従前の債務に代えて新たな債務を成立させる契約。新債務の成立により従前の債務は消滅する。
更改の類型
①給付内容の重要な変更(1号)、②債務者の交替(2号、514条)、③債権者の交替(3号、515条)。
効果
従前の債務に付着していた担保・保証は原則として消滅。518条により担保の移転には合意を要する。
この条文の練習問題を解く
債務者の交替による更改は、債権者と更改後に債務者となる者との契約によってすることができる。
2この場合において、更改は、債権者が更改前の債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生ずる。
3債務者の交替による更改後の債務者は、更改前の債務者に対して求償権を取得しない。
規律
債務者の交替による更改は債権者と新債務者の契約でできる(1項前段)。更改は債権者が更改前の債務者に契約をした旨を通知した時に効力発生(1項後段)。新債務者は前債務者に対して求償権を取得しない(2項)。
趣旨
2020改正で旧法から大きく変更された規律。旧法では債務者の同意要件があったが、改正で債権者と新債務者の合意のみで成立する構造に変更。旧債務者への通知を効力発生要件とすることで旧債務者の認知を保障。
旧法との比較
旧法は債務者・新債務者・債権者の三者契約必要だったが、改正法は債権者と新債務者の二者契約で足り、旧債務者は通知受領のみ。実務簡易化が目的。
2項・求償権否定
新債務者は自己の意思で旧債務を引受けた以上、旧債務者へ求償する利益を主張できない。免責的債務引受(472条以下)との対比で、更改は完全に新債務に置換されるため求償構造を持たない。
この条文の練習問題を解く
弁済充当の合意(1項)
数個の同種債務について弁済として提供した給付が全債務を消滅させるに足りないときは、弁済者と弁済受領者の合意により充当順序を決定できる。
指定充当(2項)
合意がないときは、まず弁済者が、その後弁済受領者が充当指定できる。
法定充当(4項)
指定がないときは、①弁済期到来債務優先、②弁済利益多い債務優先、③弁済期早い債務優先、④債務額比例の順で充当する。
この条文の練習問題を解く
代位の範囲(1項)
代位者は自己の権利に基づいて求償できる範囲内において、債権者が有していた一切の権利(担保権・抗弁等含む)を行使できる。
第三取得者の代位制限(3項1号)
第三取得者は保証人・物上保証人に対して代位できない。
保証人・物上保証人間の代位(3項4号)
保証人と物上保証人相互間では、その数に応じて債権者の権利を行使。物上保証人が数人あるときは各財産の価格に応じて按分。
求償権との関係
代位行使は求償権を確保するための手段。求償権なしには代位行使できない。
この条文の練習問題を解く