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当事者が返還の時期を定めなかったときは、貸主は、相当の期間を定めて返還の催告をすることができる。
2借主は、返還の時期の定めの有無にかかわらず、いつでも返還をすることができる。
3当事者が返還の時期を定めた場合において、貸主は、借主がその時期の前に返還をしたことによって損害を受けたときは、借主に対し、その賠償を請求することができる。
規律
返還時期の定めがないときは、貸主は相当の期間を定めて返還の催告ができる(1項)。借主は返還時期の定めの有無にかかわらず、いつでも返還できる(2項)。返還時期を定めた場合、貸主は借主の期限前返還によって損害を受けたときは賠償請求できる(3項)。
趣旨
消費貸借は借主の使用権確保が中心。期限の利益は原則として借主のために存在する(136条1項)ため、借主はいつでも返還できる(2項)。ただし利息付貸付で期限前返還により貸主が運用機会を失う場合は損害賠償の対象(3項)。
相当期間の催告(1項)
期限の定めがない場合でも即時返還請求はできない。借主が物を消費・流用しているのが通常のため、相当期間(資金調達期間)を与える。
3項の損害賠償
通常は約定利息相当の逸失利益。再運用までの合理的期間を限度として認められる(東京地判等)。
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借主が貸主から受け取った物と種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることができなくなったときは、その時における物の価額を償還しなければならない。
2ただし、第四百二条第二項に規定する場合は、この限りでない。
規律
借主が貸主から受け取った物と種類・品質・数量の同じ物で返還できなくなったときは、その時における物の価額を償還しなければならない。ただし、402条2項に規定する場合(特定の通貨が強制通用力を失った場合)はこの限りでない。
趣旨
消費貸借の借主は同等物返還義務を負うが、市場から消滅する等で同等物返還が不可能になった場合の救済規定。価額償還により客観的等価値を実現。
「その時」の解釈
返還不能となった時点の価額。判例・通説は返還不能が確定した時点を基準とする。
402条2項のただし書
特定の通貨の強制通用力喪失の場合は402条2項により他の通貨で返還する(金銭債権の特則)。
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使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。
規律
使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用および収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。
趣旨
使用貸借を諾成契約として定義(2017年改正で要物性を廃止)。無償性と返還義務が本質要素。賃貸借(601条以下)との対比軸。
対比
賃貸借601条:有償・諾成。使用貸借593条:無償・諾成。賃借人保護規定(605条以下・借地借家法)は使用貸借には適用されない。
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貸主は、借主が借用物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。
2ただし、書面による使用貸借については、この限りでない。
使用貸借の貸主の解除権(2017改正で新設)
貸主は借主が借用物を受け取るまで契約解除できる。ただし、書面による使用貸借についてはこの限りでない。使用貸借の要物性緩和に対応する解除権規定。
2017改正による諾成化
改正前593条は使用貸借を要物契約としていたが、改正で諾成契約に変更。これに伴い書面によらない使用貸借では貸主の翻意を許容するため、本条で物の受領前解除権を明文化。
書面使用貸借の特則
書面による使用貸借は本条による解除不可。書面化された約束は当事者意思の慎重性が確保されているため、軽率な意思変更による解除を許さない。587_2消費貸借の書面化要件と同じ思想。
賃貸借・贈与との比較
550条贈与(書面によらない贈与の解除)・587_2消費貸借(書面なき場合の効力否定)と類似する構造。無償契約類型では書面の有無で当事者拘束力が変動する。
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借主は、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなければならない。
2借主は、貸主の承諾を得なければ、第三者に借用物の使用又は収益をさせることができない。
3借主が前二項の規定に違反して使用又は収益をしたときは、貸主は、契約の解除をすることができる。
規律
借主は、契約またはその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用および収益をしなければならない(1項)。借主は、貸主の承諾を得なければ、第三者に借用物の使用または収益をさせることができない(2項)。借主が前2項の規定に違反して使用または収益をしたときは、貸主は、契約の解除をすることができる(3項)。
趣旨
用法遵守義務・無断転貸禁止・違反時解除権の三段構造。無償ゆえに借主に厳格な義務を課し、貸主の任意解除権を確保。
対比
賃貸借612条:無断転貸の解除は信頼関係破壊が必要(判例)。使用貸借594条3項は無償ゆえに信頼関係要件不要との見解が有力。
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借主は、借用物の通常の必要費を負担する。
2第五百八十三条第二項の規定は、前項の通常の必要費以外の費用について準用する。
規律
借主は、借用物の通常の必要費を負担する(1項)。583条2項の規定は、前項の通常の必要費以外の費用について準用する(2項)。
趣旨
無償の使用貸借では通常必要費(修繕費等の維持費用)を借主負担とし、貸主の負担を軽減。特別必要費・有益費は583条2項準用で貸主が償還。
対比
賃貸借608条:賃借人が支出した必要費は貸主が直ちに償還義務。有償・無償で費用負担構造が逆転。
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第五百五十一条の規定は、使用貸借について準用する。
規律
551条の規定は、使用貸借について準用する。
趣旨
贈与者の限定的担保責任(551条)を使用貸借にも準用。無償契約共通の責任モデルを採用し、貸主は特定時の状態で引き渡せば足りる。
効果
借用物に契約適合性欠如があっても、貸主は原則として担保責任を負わない。負担付使用貸借では負担の限度で売主同様の責任を負う。
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当事者が使用貸借の期間を定めたときは、使用貸借は、その期間が満了することによって終了する。
2当事者が使用貸借の期間を定めなかった場合において、使用及び収益の目的を定めたときは、使用貸借は、借主がその目的に従い使用及び収益を終えることによって終了する。
3使用貸借は、借主の死亡によって終了する。
規律
当事者が使用貸借の期間を定めたときは、使用貸借は、その期間が満了することによって終了する(1項)。当事者が使用貸借の期間を定めなかった場合において、使用および収益の目的を定めたときは、使用貸借は、借主がその目的に従い使用および収益を終えることによって終了する(2項)。使用貸借は、借主の死亡によって終了する(3項)。
趣旨
使用貸借の終了原因を三類型で法定。借主死亡で当然終了するのは、無償性が借主個人の信頼関係に基づくため(人的契約性)。
対比
賃貸借はある人の死亡で当然終了しない(賃借権の相続性)。使用貸借の借主死亡終了は人的信頼関係の表れ。
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貸主は、前条第二項に規定する場合において、同項の目的に従い借主が使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、契約の解除をすることができる。
2当事者が使用貸借の期間並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも契約の解除をすることができる。
3借主は、いつでも契約の解除をすることができる。
規律
貸主は、597条2項に規定する場合において、同項の目的に従い借主が使用および収益をするのに足りる期間を経過したときは、契約の解除をすることができる(1項)。当事者が使用貸借の期間ならびに使用および収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも契約の解除をすることができる(2項)。借主は、いつでも契約の解除をすることができる(3項)。
趣旨
使用貸借の解除権を貸主・借主それぞれに整備。借主はいつでも解除可(無償なのに義務だけ負う立場の解放)。貸主は目的達成相当期間経過時または期間・目的いずれもない場合に解除可。
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借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物がある場合において、使用貸借が終了したときは、その附属させた物を収去する義務を負う。
2ただし、借用物から分離することができない物又は分離するのに過分の費用を要する物については、この限りでない。
3借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物を収去することができる。
4借主は、借用物を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合において、使用貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。
5ただし、その損傷が借主の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
規律
借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物がある場合において、使用貸借が終了したときは、その附属させた物を収去する義務を負う。ただし、借用物から分離することができない物または分離するのに過分の費用を要する物については、この限りでない(1項)。借主は、附属物を収去することができる(2項)。借主は、借用物を受け取った後に生じた損傷がある場合において、使用貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が借主の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない(3項)。
趣旨
終了時の収去義務・収去権・原状回復義務を整備。原状回復は借主の帰責事由要件付きで、賃貸借621条と平仄を合わせる。
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契約の本旨に反する使用又は収益によって生じた損害の賠償及び借主が支出した費用の償還は、貸主が返還を受けた時から一年以内に請求しなければならない。
2前項の損害賠償の請求権については、貸主が返還を受けた時から一年を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
規律
契約の本旨に反する使用または収益によって生じた損害の賠償および借主が支出した費用の償還は、貸主が返還を受けた時から1年以内に請求しなければならない(1項)。前項の損害賠償の請求権については、貸主が返還を受けた時から1年を経過するまでの間は、時効は完成しない(2項)。
趣旨
終了後の権利関係を早期に確定するため、損害賠償・費用償還の権利行使期間を1年に制限。2項で時効完成猶予を規定し、客観的起算点(166条)との調整を図る。
対比
賃貸借622条が600条を準用するため、賃貸借終了後も同じ1年制限が適用される。
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賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
賃貸借契約の本質要件
賃貸借は、当事者の一方が物の使用収益を相手方にさせ、相手方が賃料を支払い、契約終了時に物を返還することを約することにより効力を生じる諾成契約。
2017改正による要件整理
改正で「賃料の支払」と「契約終了時の返還」を明示。改正前から解釈上認められていた賃借人の返還義務を明文化することで、契約終了後の法律関係を明確化。
使用貸借・寄託との区別
賃貸借は有償(賃料の支払)。無償なら使用貸借(593条)。賃借人は使用収益を目的(賃借人の利益)とするが、寄託(657条)は寄託者の利益のための保管。
債権としての賃借権
賃借権は債権だが、不動産賃借権は605条(賃貸借登記)・借地借家法10条等により対抗力を付与され、事実上物権類似の保護を受ける。「債権の物権化」と呼ばれる。
この条文の練習問題を解く
処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合には、次の各号に掲げる賃貸借は、それぞれ当該各号に定める期間を超えることができない。
2契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、当該各号に定める期間とする。
3樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃貸借
4十年
5前号に掲げる賃貸借以外の土地の賃貸借
6五年
7建物の賃貸借
8三年
9動産の賃貸借
10六箇月
規律
処分権限のない者がする賃貸借(短期賃貸借)は、樹木栽植・伐採目的の山林10年、その他の土地5年、建物3年、動産6ヶ月を超えることができない。契約で長い期間を定めても、その期間は法定上限となる。
趣旨
管理権はあるが処分権はない者(不在者財産管理人28条・権限の定めなき代理人103条等)が長期賃貸借をすると、所有者の処分利益を害する。短期に限定して管理行為の範囲内に収める。
処分権限のない者の例
不在者財産管理人(28条)、権限の定めなき代理人(103条)、後見監督人の同意なき後見人の一部行為等。所有権者本人は含まれない。
借地借家法との関係
建物所有目的の借地は借地借家法3条で30年以上が強制されるが、本条は処分権限のない者の場合の上限規定。借地借家法とは適用場面が異なる。
この条文の練習問題を解く
前条に定める期間は、更新することができる。
2ただし、その期間満了前、土地については一年以内、建物については三箇月以内、動産については一箇月以内に、その更新をしなければならない。
規律
短期賃貸借の期間は更新できる。ただし、期間満了前、土地は1年以内、建物は3ヶ月以内、動産は1ヶ月以内に更新しなければならない。
趣旨
処分権限のない者の管理行為としての賃貸借も更新を認め、利用継続性を確保しつつ、満了直前に短期間内に更新意思を確認することで漫然たる継続を防止する。
期間内更新の意味
期間満了の直前一定期間内に更新合意することを要求。早すぎる更新(管理権者交代の可能性を無視した先取り)を防ぐ。
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賃貸借の存続期間は、五十年を超えることができない。
2契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、五十年とする。
3賃貸借の存続期間は、更新することができる。
4ただし、その期間は、更新の時から五十年を超えることができない。
規律
賃貸借の存続期間は50年を超えることができない。契約で長い期間を定めても50年とする(1項)。更新できるが、更新時から50年を超えることはできない(2項)。
趣旨
2017年改正で20年から50年に伸長。山林・大規模商業施設・ゴルフ場等の長期利用ニーズに対応。所有権との均衡から永久賃貸借は認めない。
借地借家法との関係
建物所有目的の借地は借地借家法3条で30年以上(合意により延長可・上限なし)。建物賃貸借も借地借家法29条で1年未満は期間定めなしとみなす特則がある。本条は借地借家法の適用がない一般賃貸借(駐車場・資材置場・ゴルフ場用地等)に適用される。
改正前後の差
改正前は20年。長期事業用借地のニーズに応えるため50年に伸長。施行(2020/4/1)前の契約は旧20年規定が適用。
この条文の練習問題を解く
不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる。
不動産賃貸借の対抗要件
不動産賃貸借は、これを登記したときは、その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗できる。賃借権の対抗力を登記により付与する規定。
賃貸人協力義務(判例)
判例(最判昭33・5・9)は賃借人に登記請求権を否定し、賃貸人の任意協力に委ねる。本条の実効性は低く、借地借家法10条(建物所有目的)・借家31条(建物賃借権)の特別法が実務上の対抗要件となる。
借地借家法の特別規定
借地権は土地上建物の登記、借家権は建物の引渡しが対抗要件。本条よりはるかに緩やかで、実務はほぼ特別法による対抗を利用する。
新所有者への引継ぎ(605_2)
2017改正で新設の605_2により、賃貸不動産の譲渡があった場合、新所有者が賃貸人の地位を承継するルールが明文化された。本条と連動して賃借人保護を強化。
この条文の練習問題を解く
前条、借地借家法(平成三年法律第九十号)第十条又は第三十一条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。
2前項の規定にかかわらず、不動産の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転しない。
3この場合において、譲渡人と譲受人又はその承継人との間の賃貸借が終了したときは、譲渡人に留保されていた賃貸人たる地位は、譲受人又はその承継人に移転する。
4第一項又は前項後段の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。
5第一項又は第二項後段の規定により賃貸人たる地位が譲受人又はその承継人に移転したときは、第六百八条の規定による費用の償還に係る債務及び第六百二十二条の二第一項の規定による同項に規定する敷金の返還に係る債務は、譲受人又はその承継人が承継する。
賃貸不動産の譲渡による地位移転(1項)
前条等の対抗要件を備えた賃貸借の目的である不動産が譲渡されたときは、賃貸人たる地位は譲受人に移転する。賃借人の承諾は不要。
留保の合意(2項)
譲渡人と譲受人が賃貸人たる地位を譲渡人に留保し、かつその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は譲受人に移転しない。
賃貸人の対抗要件(3項)
賃貸人たる地位の移転を賃借人に対抗するには、賃貸物について所有権移転登記が必要。
敷金・費用償還の承継(4項)
賃貸人たる地位の移転に伴い敷金返還債務・必要費償還債務は譲受人に承継される。
この条文の練習問題を解く
不動産の譲渡人が賃貸人であるときは、その賃貸人たる地位は、賃借人の承諾を要しないで、譲渡人と譲受人との合意により、譲受人に移転させることができる。
2この場合においては、前条第三項及び第四項の規定を準用する。
規律
不動産の譲渡人が賃貸人である場合、賃貸人たる地位は賃借人の承諾を要せずに、譲渡人と譲受人の合意により譲受人に移転させることができる。この場合、605条の2第3項(所有権登記具備で対抗)・4項(敷金・費用償還承継)を準用する。
趣旨
対抗要件を具備しない賃借人がいる場合でも、譲渡人・譲受人の合意により賃貸人たる地位を移転できる規定。賃借人の承諾を不要とすることで取引の円滑を図り、賃借人にとっては賃貸人交代だけで実質的不利益はない。
605条の2との対比
605条の2は対抗要件具備の賃借人がいる場合に当然移転(合意不要)。本条は対抗要件未具備の場合に合意で移転を可能にする規定。
賃借人保護
譲受人は所有権移転登記を経て初めて賃借人に賃貸人たる地位を主張できる(605条の2第3項準用)。敷金返還義務・費用償還義務は譲受人に承継(4項準用)。
この条文の練習問題を解く
不動産の賃借人は、第六百五条の二第一項に規定する対抗要件を備えた場合において、次の各号に掲げるときは、それぞれ当該各号に定める請求をすることができる。
2その不動産の占有を第三者が妨害しているとき
3その第三者に対する妨害の停止の請求
4その不動産を第三者が占有しているとき
5その第三者に対する返還の請求
規律
対抗要件(605条の2第1項)を備えた不動産賃借人は、①第三者が占有を妨害しているとき妨害停止請求、②第三者が占有しているとき返還請求ができる。
趣旨
対抗要件を備えた不動産賃借権に物権類似の効力(妨害排除・返還請求権)を法定。改正前は判例(大判昭和28年など)で認められていた賃借権に基づく妨害排除請求を明文化。
要件
①605条の2第1項の対抗要件具備(登記・借地借家法10条の借地権登記・借地借家法31条の建物賃貸借引渡し等)、②第三者の妨害または占有。賃貸人への請求は不要。
賃貸人の修繕義務との関係
本条で賃借人自身が直接第三者に請求できるため、賃貸人への606条1項修繕請求や妨害排除請求の依頼を待たずに対応可能。
この条文の練習問題を解く
賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。
2ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。
3賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。
賃貸人の修繕義務(1項本文)
賃貸人は、賃貸物の使用収益に必要な修繕をする義務を負う。賃貸物の使用価値を維持するための賃貸人の中核義務。
賃借人責の場合の例外(1項ただし書)(2017改正で新設)
賃借人の責めに帰すべき事由で修繕が必要となったときは、賃貸人は修繕義務を負わない。賃借人による故意・過失の損傷を賃貸人負担とすることの不当を回避する。
保存行為の受忍義務(2項)
賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人はこれを拒めない。賃借人の使用収益と賃貸人の保存行為の衝突を保存優先で調整。
賃借人の修繕権(607_2)
2017改正で新設の607_2により、賃貸人の修繕通知・急迫の場合は賃借人自ら修繕可能。賃貸人の不作為時の救済として実務上重要。
この条文の練習問題を解く
賃貸人が賃借人の意思に反して保存行為をしようとする場合において、そのために賃借人が賃借をした目的を達することができなくなるときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。
規律
賃貸人が賃借人の意思に反して保存行為をしようとする場合に、そのために賃借人が賃借をした目的を達することができなくなるときは、賃借人は契約を解除できる。
趣旨
賃貸人には606条1項により修繕義務(≒保存行為義務)があり、賃借人は606条2項により受忍義務を負う。しかし保存行為が著しく賃借目的の達成を阻害する場合は、賃借人に解除権を与えて利益衡量を図る。
要件
①賃貸人の保存行為、②賃借人の意思に反する、③その結果として賃借目的が達成不能。例: 大規模リフォームで長期間使用不能、住居としての利用が不可能化等。
606条との対比
606条2項は通常の保存行為の受忍義務。本条はその例外として、目的達成不能の場合に解除権を認める安全弁。
この条文の練習問題を解く
賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。
2賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。
3急迫の事情があるとき。
規律
賃借物の修繕が必要な場合、①賃借人が賃貸人に修繕必要を通知し、または賃貸人が知ったにもかかわらず相当期間内に修繕しないとき、②急迫の事情があるときは、賃借人が修繕をすることができる。
趣旨
2017年改正で新設。改正前は判例で認められていた賃借人の自己修繕権を明文化。賃貸人が修繕義務(606条1項)を履行しない場合に賃借人が自力救済できる範囲を明確化した。
1号の要件
通知(または賃貸人の認識)+相当期間内不履行。通知方法は問わないが、書面が証拠保全上望ましい。相当期間は修繕の規模・緊急性により判断。
2号の急迫の事情
通知を待つ余裕がない場合(漏水・破損で生活困難・第三者損害発生のおそれ等)。通知なしに直ちに修繕可。
費用償還
修繕費用は608条1項の必要費として賃借人が賃貸人に償還請求できる(直ちに)。
この条文の練習問題を解く
賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。
2賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第百九十六条第二項の規定に従い、その償還をしなければならない。
3ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
必要費(1項)
賃借人は賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し直ちにその償還を請求できる。
有益費(2項)
賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸借終了時に196条2項の規定に従い、賃貸人の選択により支出額または増価額の償還を請求できる。
有益費の期限許与
裁判所は賃貸人の請求により有益費償還について相当の期限を許与できる(2項後段→196条2項但書)。
この条文の練習問題を解く
耕作又は牧畜を目的とする土地の賃借人は、不可抗力によって賃料より少ない収益を得たときは、その収益の額に至るまで、賃料の減額を請求することができる。
規律
耕作または牧畜を目的とする土地の賃借人は、不可抗力により賃料より少ない収益しか得られなかったときは、その収益額に至るまで賃料の減額を請求できる。
趣旨
農地・牧場の賃借では、自然災害等の不可抗力で収益が激減した場合、固定額の賃料を負担するのは賃借人に酷。収益額まで賃料を減額する形成権を与え、農業経営の継続を支える。
要件
①耕作・牧畜目的の土地、②不可抗力(賃借人の責めに帰せない自然災害・気象不順等)、③賃料より少ない収益。賃借人の経営判断ミス・怠慢による減収は含まない。
減額の範囲
賃料額から実際の収益額までの差額。下限は収益額(収益額を下回る減額はできない)。
この条文の練習問題を解く
前条の場合において、同条の賃借人は、不可抗力によって引き続き二年以上賃料より少ない収益を得たときは、契約の解除をすることができる。
規律
609条の場合(耕作・牧畜目的土地賃借)において、賃借人は不可抗力により引き続き2年以上賃料より少ない収益を得たときは、契約の解除ができる。
趣旨
減額請求(609条)だけでは経営継続が困難な事態が連続するとき、賃借人に脱出口を与える規定。2年連続の不可抗力減収は事業継続意義を失わせる客観的基準。
要件
①609条の要件充足(耕作・牧畜・不可抗力・減収)、②引き続き2年以上の連続。中断があれば再起算となる。
この条文の練習問題を解く
賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。
2賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。
賃料減額(1項)
賃借物の一部が滅失その他の事由により使用および収益をすることができなくなった場合に、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料はその使用および収益をすることができなくなった部分の割合に応じて減額される。
解除権(2項)
残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は契約の解除をできる。
改正のポイント
改正前は賃借人の請求による減額だったが、改正後は「当然減額」となった(請求不要)。
この条文の練習問題を解く
賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
賃借権の譲渡又は転貸(1項)
賃借人による賃借権の処分。
賃貸人の承諾(1項)
賃貸人の承諾なしの譲渡・転貸は無効ではないが対抗不可。
無断譲渡・転貸の解除(2項)
賃借人が無断で第三者に使用又は収益をさせたときは賃貸人は契約を解除可能。
信頼関係破壊の法理
判例は無断譲渡・転貸でも背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるときは解除権発生せず(最判昭和28・9・25)。
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賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負う。
2この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。
3前項の規定は、賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することを妨げない。
4賃借人が適法に賃借物を転貸した場合には、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができない。
5ただし、その解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときは、この限りでない。
適法な転貸(1項)
賃貸人の承諾を得た転貸。
転借人の直接義務(1項)
転借人は賃貸人に対し直接義務を負う。賃料は原賃料額と転借料額の低い方が限度。
賃貸人の請求方法(2項)
賃貸人は転借人に直接賃料請求可。
原賃貸借合意解除と転貸借(3項)
賃貸人と賃借人の合意解除は転借人に対抗不可。ただし債務不履行による解除権発生時は除外。
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賃料は、動産、建物及び宅地については毎月末に、その他の土地については毎年末に、支払わなければならない。
2ただし、収穫の季節があるものについては、その季節の後に遅滞なく支払わなければならない。
規律
賃料は動産・建物・宅地については毎月末に、その他の土地については毎年末に支払わなければならない。ただし、収穫の季節があるものについては、その季節の後に遅滞なく支払わなければならない。
趣旨
賃料支払時期の法定。任意規定であり、契約で別段の定めができる(実務では前払い特約が一般的)。賃借物の性質・使用形態に応じた合理的支払時期を提示。
後払いの原則
本条は後払いを原則とする。一方、実務では特約により毎月末日までに翌月分前払い等が広く行われ、判例も特約の有効性を認める。
収穫期特則
農地等で収穫物の現金化を待つ必要があるものは、収穫後に支払えばよい。農家保護の趣旨。
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賃借物が修繕を要し、又は賃借物について権利を主張する者があるときは、賃借人は、遅滞なくその旨を賃貸人に通知しなければならない。
2ただし、賃貸人が既にこれを知っているときは、この限りでない。
規律
賃借物に修繕の必要があるとき、または賃借物について権利を主張する者があるときは、賃借人は遅滞なくその旨を賃貸人に通知しなければならない。ただし、賃貸人が既にこれを知っているときはこの限りでない。
趣旨
賃貸人は賃借物を直接占有していないため、修繕の必要や第三者の権利主張を把握しづらい。直接占有する賃借人に通知義務を課し、賃貸人の保存・防御行為を可能にする。
通知義務違反の効果
賃貸人が通知遅滞により被った損害(修繕拡大・時効完成等)について、賃借人は損害賠償義務を負う(一般原則)。賃料の減額請求権が失われる可能性もある。
「権利を主張する者」
第三者の所有権主張・地役権主張・抵当権の実行・賃借権を妨害する者等。賃貸人の防御行為(占有訴権・所有権に基づく請求等)の前提となる情報。
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第五百九十四条第一項の規定は、賃貸借について準用する。
使用貸借規定の準用
594条1項(用法遵守義務)の規定は、賃貸借について準用する。賃借人の用法に関する義務を使用貸借から借用する規定。
594条1項の内容
借主は、契約又は目的物の性質によって定まった用法に従い、物の使用・収益をしなければならない。賃借人にも同様の用法遵守義務が課される。
用法違反の効果
用法違反は債務不履行となり、賃貸人は損害賠償・解除(541条)が可能。賃貸借における信頼関係破壊の典型例として、用法違反は解除事由となる。
「用法」の判断
契約上の用法(住居用・店舗用・倉庫用等)及び物の性質上の用法(住宅地と知って借りたら居住用と推定等)から判断。判例(最判昭49・12・17)は用法を具体的事情に応じて判定。
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賃借物の全部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合には、賃貸借は、これによって終了する。
賃借物の全部滅失等による終了
賃借物の全部が滅失その他の事由により使用および収益をすることができなくなった場合には賃貸借はこれによって終了する。
趣旨
賃貸借の目的物が消滅した以上、契約は当然に終了する。解除や意思表示不要の絶対的終了事由。
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当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。
2この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
3土地の賃貸借
4一年
5建物の賃貸借
6三箇月
7動産及び貸席の賃貸借
8一日
9収穫の季節がある土地の賃貸借については、その季節の後次の耕作に着手する前に、解約の申入れをしなければならない。
期間定めなき賃貸借の解約申入れ(1項)
期間を定めなかったとき、各当事者はいつでも解約申入れができる。期間経過により賃貸借は終了。①土地:1年、②建物:3か月、③動産・貸席:1日。
立法趣旨
期間定めなき継続的契約からの離脱手段を保障する。各賃貸借類型ごとに準備期間を設定し、賃借人の利益(移転準備)と賃貸人の利益(次の賃借人確保)を調整。
収穫季節がある土地(2項)
収穫の季節がある土地(農地等)の賃貸借は、その季節の後、次の耕作着手前に解約申入れしなければならない。耕作リズムへの配慮。
借地借家法による強化
本条の建物賃貸借3か月は借地借家法27条により「正当事由」を要し6か月前申入れに変更される等、特別法による賃借人保護が及ぶ。本条が単独適用される場面は限定的。
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当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する。
規律
当事者が賃貸借の期間を定めた場合でも、一方または双方が期間内に解約権を留保したときは、617条(期間定めなき賃貸借の解約申入れ)の規定を準用する。
趣旨
期間を定めても、解約権を留保すれば期間定めなき場合と同様の解約申入れができる。当事者の合理的意思を尊重し、長期賃貸借の硬直性を緩和する。
解約申入れ後の期間
617条準用により、土地1年・建物3ヶ月・動産1日・収益目的土地は収穫期後の最初の解約。借地借家法27条・28条の正当事由制限とは別系統。
借地借家法との関係
建物賃貸借では借地借家法27条で解約申入れに正当事由必要かつ6ヶ月経過で終了。本条準用の617条よりも借家人保護が厚い特則として機能。
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賃貸借の期間が満了した後賃借人が賃借物の使用又は収益を継続する場合において、賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定する。
2この場合において、各当事者は、第六百十七条の規定により解約の申入れをすることができる。
3従前の賃貸借について当事者が担保を供していたときは、その担保は、期間の満了によって消滅する。
4ただし、第六百二十二条の二第一項に規定する敷金については、この限りでない。
黙示の更新の推定(1項)
賃貸借期間満了後も賃借人が使用収益を継続し、賃貸人が知りながら異議を述べないときは、従前と同条件で更に賃貸借をしたものと推定。「法定更新」とも呼ばれる。
更新後の解約申入れ
更新後の賃貸借は期間定めなしとして扱われ、各当事者は617条により解約申入れ可能。期間定めの再設定はない点に注意。
従前の担保の消滅(2項本文)
従前の賃貸借について当事者が担保を供していたときは、その担保は期間満了によって消滅する。連帯保証・物的担保等は更新後の賃貸借には及ばない。
敷金の例外(2項ただし書)(2017改正で明示)
622_2第1項の敷金は本条による消滅から除外。敷金は更新後の賃貸借にも引き続き機能する。判例実務を改正で明文化。
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賃貸借の解除をした場合には、その解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。
2この場合においては、損害賠償の請求を妨げない。
規律
賃貸借の解除は、将来に向かってのみ効力を生ずる(不遡及)。この場合、損害賠償の請求を妨げない。
趣旨
賃貸借は継続的契約(既に使用収益が進行している)であり、遡及的解除(545条1項)を適用すると既履行部分の原状回復が複雑化(賃借人は使用利益返還、賃貸人は受領賃料返還)。将来効に限定して関係を清算しやすくする。
545条1項本則との対比
545条1項本則は遡及効。本条は継続的契約の特則として将来効。雇用626条・委任652条・組合684条・寄託657条等にも同様の規定。
損害賠償
解除事由(債務不履行等)による損害は別途請求可。賃料相当損害金・原状回復費用等。
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賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。
2ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
賃借人の原状回復義務(本文)
賃借人は賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用および収益によって生じた賃借物の損耗ならびに賃借物の経年変化を除く)がある場合に、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。
通常損耗・経年変化の除外
通常損耗(家具設置による床のへこみ等)・経年変化(壁紙の変色等)は賃料に含まれるため原状回復義務の対象外。判例(最判平17・12・16)を明文化。
賃借人帰責事由なき場合(但書)
その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは原状回復義務を負わない。
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第五百九十七条第一項、第五百九十九条第一項及び第二項並びに第六百条の規定は、賃貸借について準用する。
使用貸借規定の準用
597条1項(借主による返還)・599条1項(収去義務)・599条2項(収去権)並びに600条(損害賠償と費用償還の時効)の規定は、賃貸借について準用する。
597条1項準用
賃借人は、契約終了時に賃借物を返還しなければならない。賃貸借契約の本質的義務として、終了時の返還義務を使用貸借から借用。
599条1項・2項準用
賃借人による物への附属物の収去義務・収去権。賃借人が附属させた物を収去できる権利と、賃貸物の原状回復のため収去する義務。
600条準用
賃貸人の損害賠償請求権と賃借人の費用償還請求権は、貸主が賃借物の返還を受けた時から1年以内に行使しなければならない時的制限。
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賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
2賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
3賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
4賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。
5この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。
敷金の意義(1項柱書)
賃貸借契約に基づき生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭。
返還時期(1項各号)
①賃貸借終了し、かつ賃貸物の返還を受けたとき、または②賃借人が適法に賃借権を譲渡したときに、賃貸人は受け取った敷金額から賃借人の債務額を控除した残額を返還しなければならない。
賃料未払いとの相殺(2項)
賃貸人は賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭債務を履行しないときは敷金をその債務の弁済に充てることができる。賃借人からは敷金充当を請求できない。
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雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。
雇用契約の本質要件
雇用は、当事者の一方が労働に従事することを約し、相手方がその報酬を与えることを約することにより効力を生じる諾成契約。労働契約の民法上の基礎類型。
労働基準法等との関係
民法雇用規定は私人間の労務契約の一般則だが、労働者保護のため労働基準法・労働契約法・労働組合法等の特別法が大幅に修正する。実務はほぼ労働法分野の規律による。
請負・委任との区別
雇用は労働そのものへの対価、請負(632条)は仕事の完成への対価、委任(643条)は事務処理への対価。労働者の指揮命令下での労働が雇用の特徴。
「労働」の意義
労務の提供。労務の質・量は契約により定まる。専門的労働も非専門労働も区別なく雇用の対象となる。
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労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない。
2期間によって定めた報酬は、その期間を経過した後に、請求することができる。
規律
労働者は約した労働を終わった後でなければ報酬を請求できない(1項)。期間によって定めた報酬は、その期間を経過した後に請求できる(2項)。
趣旨
雇用契約における報酬の後払原則。労働の提供と報酬は対価関係にあり、労働完了が報酬請求の前提となることを明示。
労働基準法との関係
労働基準法24条は賃金の毎月1回以上・一定期日払を強制。労基法が適用される労働契約では本条より労基法が優先。本条は労基法非適用の雇用(家事使用人・同居の親族のみを使用する事業等)で機能。
624条の2との接続
624条の2(履行割合に応じた報酬請求)は本条の例外として、労働者の責めに帰しえない事由で労務提供できなくなった場合等に既履行部分の報酬請求を認める。
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労働者は、次に掲げる場合には、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
2使用者の責めに帰することができない事由によって労働に従事することができなくなったとき。
3雇用が履行の中途で終了したとき。
規律
労働者は次の場合に既履行割合に応じた報酬請求可。①使用者の責めに帰せない事由で労働従事不能、②雇用が履行中途で終了。
趣旨
2020改正で新設。旧法では完全履行主義で部分労務の報酬請求権が不明確だったが、危険負担(536条)と請負割合報酬(634条)に並行する規律を雇用にも導入し、労働者の既履行労務の対価を保護。
1号・使用者帰責不能
労働者の傷病・天災等で就労不能となった場合、それまでの労働対価を割合請求可。536条1項危険負担で報酬請求権消滅とせず、既履行部分は実額補償する。
2号・中途終了
解約・解除等で雇用関係が中途終了した場合の既履行部分の報酬保護。月給制で月途中解約時の日割計算等で実務上重要。
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使用者は、労働者の承諾を得なければ、その権利を第三者に譲り渡すことができない。
2労働者は、使用者の承諾を得なければ、自己に代わって第三者を労働に従事させることができない。
3労働者が前項の規定に違反して第三者を労働に従事させたときは、使用者は、契約の解除をすることができる。
使用者の権利譲渡制限(1項)
使用者は、労働者の承諾を得なければ、その権利を第三者に譲渡できない。雇用関係は人的信頼に基づくため、使用者側の交代を労働者の意思に委ねる。
労働者の代替使用制限(2項)
労働者は、使用者の承諾を得なければ、自己に代わって第三者を労働に従事させられない。労務提供の一身専属的性質を反映。
違反時の解除権(3項)
労働者が2項に違反して第三者を労働に従事させたときは、使用者は契約解除できる。労務の代替不可性の保護。
出向・派遣との関係
本条1項は出向・転籍・配転の問題と関連。労働者の同意なき出向は本条違反となりうる。労働者派遣法は本条の例外として労働者派遣を許容する特別法。
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雇用の期間が五年を超え、又はその終期が不確定であるときは、当事者の一方は、五年を経過した後、いつでも契約の解除をすることができる。
2前項の規定により契約の解除をしようとする者は、それが使用者であるときは三箇月前、労働者であるときは二週間前に、その予告をしなければならない。
規律
雇用期間が5年超又は終期不確定のとき、当事者は5年経過後いつでも解除できる(1項)。解除の予告は使用者は3か月前、労働者は2週間前(2項)。
趣旨
長期雇用拘束の禁止と人身拘束防止。労働者の自由を不当に長期間制限することを防ぐ。労働基準法14条(期間上限3年・特例5年)と並行的に機能。
5年上限の意義
民法の任意規定だが労基法では原則3年・特例5年の強行規定がある。本条は労基法適用外の雇用(家事使用人等)でも5年で解除可能性を担保。
予告期間の差
使用者3か月・労働者2週間という非対称は、使用者側の業務継続性確保と労働者保護の調整。労基法20条(30日前解雇予告)とは別の規律。
この条文の練習問題を解く
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。
2この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
3期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは、次期以後についてすることができる。
4ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。
5六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない。
期間定めなき雇用の解約申入れ(1項)
期間を定めなかったときは、各当事者はいつでも解約申入れができ、申入れ日から2週間経過で雇用は終了。原則型の終了ルール。
期間給与の使用者解約(2項)
期間によって報酬を定めた場合、使用者からの解約申入れは次期以後についてのみ。当期の前半に申入れをしなければならない。
長期間給与の特則(3項)
6か月以上の期間によって報酬を定めた場合、解約申入れは3か月前にしなければならない。期間が長い報酬体系では解約予告期間も長く設定。
労働基準法の特則
労働基準法20条により、使用者の解雇は30日前の予告又は30日分の予告手当が必要。労働契約法16条で解雇権濫用法理。本条より労働者保護が強化される。
この条文の練習問題を解く
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。
2この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
規律
期間定めある雇用でも、やむを得ない事由があれば各当事者は直ちに解除できる。事由が一方当事者の過失によるときは相手方に損害賠償責任。
趣旨
期間拘束の絶対化を緩和。長期雇用契約を一方的に解約できない原則の例外として、継続困難な事由がある場合の即時解除を許容。労働者の長期拘束を回避し、使用者の事業継続性も保護。
「やむを得ない事由」の意義
労働者側:重病・家族事情・遠隔地転居等。使用者側:事業継続困難・倒産・労働者の重大な債務不履行等。判例は経済情勢悪化のみでは認めず、解雇権濫用法理(労契法16条)とも整合する厳格基準。
損害賠償責任
事由を生じさせた者に過失あるとき、相手方の解除後の損害(賃金・代替労務確保費用等)を賠償。労働者側過失なら使用者が損害賠償請求可、その逆も同様。
この条文の練習問題を解く
雇用の期間が満了した後労働者が引き続きその労働に従事する場合において、使用者がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の雇用と同一の条件で更に雇用をしたものと推定する。
2この場合において、各当事者は、第六百二十七条の規定により解約の申入れをすることができる。
3従前の雇用について当事者が担保を供していたときは、その担保は、期間の満了によって消滅する。
4ただし、身元保証金については、この限りでない。
規律
期間満了後労働者が引続き労働し使用者が知って異議を述べないときは、従前と同条件で雇用更新と推定(1項前段)。各当事者は627条で解約申入れ可(1項後段)。従前雇用の担保は期間満了で消滅、ただし身元保証金は除く(2項)。
趣旨
黙示の雇用更新規律。期間満了後の事実上継続を更新意思推定で処理し、当事者の合理的期待を保護。労働基準法・労働契約法とは別の民法上の更新ルール。
推定の要件
①期間満了、②労働者の継続労働、③使用者の認識+異議申立てなし。3要件で同条件更新の推定。反証は使用者・労働者いずれも可。
担保消滅(2項)
保証契約等の担保は期間満了で消滅し更新後の責任を負わない。身元保証金は本人帰責性が継続する性質のため例外的に存続。身元保証法との関係でも論点。
この条文の練習問題を解く
第六百二十条の規定は、雇用について準用する。
規律
620条の規定(賃貸借解除の将来効)は雇用について準用する。
趣旨
雇用解除の将来効。継続的契約として遡及効を否定し、既履行労務(解除前の労働)に対する報酬は維持される構造。労働者の既得利益と使用者の事業上の信頼の両方を保護。
将来効の意義
解除前の労務提供は有効、解除前の報酬請求権は維持。解除後の労働義務・報酬支払義務のみ消滅。原状回復不要で清算が簡明化。
他の継続的契約との並行
賃貸借620、委任652、組合解散等とも並行的に将来効を規律。継続的契約の解除は将来効が法定原則として確立。
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使用者が破産手続開始の決定を受けた場合には、雇用に期間の定めがあるときであっても、労働者又は破産管財人は、第六百二十七条の規定により解約の申入れをすることができる。
2この場合において、各当事者は、相手方に対し、解約によって生じた損害の賠償を請求することができない。
規律
使用者が破産手続開始決定を受けた場合、期間定めある雇用でも労働者又は破産管財人は627条による解約申入れ可。各当事者は解約による損害賠償請求不可。
趣旨
使用者破産時の特殊規律。期間拘束を解除して当事者の解放を可能にし、破産管財人の事業終了処理と労働者の早期再就職を促進。損害賠償排除で清算の単純化を実現。
解約申入権の主体
労働者(残務継続を望まない場合)と破産管財人(事業継続不要の場合)の双方が解約権を持つ。労働者は通常の627条の予告期間に従う。
損害賠償の排除
通常の中途解約なら628条で損害賠償の余地があるが、破産は不可抗力的事由として双方とも賠償請求不可。破産債権としての清算簡明化が政策。
この条文の練習問題を解く
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
請負契約の本質要件
請負は、当事者の一方が仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対し報酬を支払うことを約することにより効力を生じる諾成契約。
「仕事の完成」要件
請負の核心は仕事の完成(成果の実現)。請負人は完成義務を負い、注文者は完成した成果に対し報酬を支払う。労務提供(雇用)・事務処理(委任)と区別される成果型契約。
建設工事・製造・運送・修理等
実務的応用は広く、建設工事・製品製造・修理・運送・コンサルティング成果物作成等。建設業法・宅建業法等の特別法が多数。
請負人の責任
完成義務不履行は債務不履行(415条)、完成物の契約不適合は559条準用で売買の契約不適合責任の規定が準用される。注文者は追完・減額・損害賠償・解除を選択可能。
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