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被相続人の配偶者(以下この章において単に「配偶者」という。)は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の全部について無償で使用及び収益をする権利(以下この章において「配偶者居住権」という。)を取得する。
2ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。
3遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。
4配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。
5居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合であっても、他の者がその共有持分を有するときは、配偶者居住権は、消滅しない。
6第九百三条第四項の規定は、配偶者居住権の遺贈について準用する。
配偶者居住権の発生(1項)
被相続人の配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始時に居住していた場合に、①遺産分割によって取得するものとされたとき、または②配偶者居住権が遺贈の目的とされたときに、その居住建物の全部について無償で使用および収益をする権利(配偶者居住権)を取得する。
存続期間(1030条)
原則として配偶者の終身。遺産分割協議・遺言・家庭裁判所の審判で別段の定めも可能。
趣旨
高齢配偶者の住居確保。所有権を取得すると居住建物の評価額が高く生活資金確保が困難になる問題への対応(2018年改正)。
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遺産の分割の請求を受けた家庭裁判所は、次に掲げる場合に限り、配偶者が配偶者居住権を取得する旨を定めることができる。
2共同相続人間に配偶者が配偶者居住権を取得することについて合意が成立しているとき。
3配偶者が家庭裁判所に対して配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出た場合において、居住建物の所有者の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために特に必要があると認めるとき(前号に掲げる場合を除く。)。
規律
遺産分割請求を受けた家庭裁判所は、①共同相続人間に配偶者居住権取得の合意があるとき、または②配偶者が取得希望を申し出た場合に居住建物所有者の不利益を考慮してもなお配偶者の生活維持に特に必要と認めるときに限り、配偶者居住権を取得する旨を定めることができる。
趣旨
2018改正(2020.4.1施行)で新設された配偶者居住権(1028条)の家庭裁判所による設定。遺産分割協議が整わない場合でも、生存配偶者の住居確保と他の相続人の所有権との調整を可能にする審判メカニズム。
1号・合意成立
共同相続人全員の合意があれば家庭裁判所はそれを尊重して審判する。協議が成立しているなら本来1028条1号で取得できるが、遺産分割審判の中で確認的に行う場面で機能する。
2号・特に必要
他の相続人の合意がなくても、配偶者の生活維持の必要性が所有者の不利益を上回ると認められれば審判で取得できる。配偶者の高齢・収入・代替住居の有無等が考慮事情となる。
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配偶者居住権の存続期間は、配偶者の終身の間とする。
2ただし、遺産の分割の協議若しくは遺言に別段の定めがあるとき、又は家庭裁判所が遺産の分割の審判において別段の定めをしたときは、その定めるところによる。
規律
配偶者居住権の存続期間は原則として配偶者の終身(生涯)。ただし遺産分割協議・遺言・家庭裁判所の遺産分割審判で別段の定めをしたときはそれによる。
趣旨
配偶者の生涯にわたる住居確保を保障するのが原則だが、所有者の負担軽減や配偶者自身の事情(再婚予定・介護施設入所予定等)に応じて期間設定の柔軟性を認める。
終身原則の意義
配偶者居住権が終身存続することで、配偶者は住居を失う不安なく生活でき、財産分与でも住居用建物以外の財産を多く取得しやすい。
期間設定の効果
期間を定めた場合は期間満了で消滅し、定めの延長・更新は不可(通説)。期間設定により評価額が低くなり、配偶者は他の財産をより多く分割で得られる調整機能を持つ。
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居住建物の所有者は、配偶者(配偶者居住権を取得した配偶者に限る。以下この節において同じ。)に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負う。
2第六百五条の規定は配偶者居住権について、第六百五条の四の規定は配偶者居住権の設定の登記を備えた場合について準用する。
規律
居住建物の所有者は、配偶者居住権を取得した配偶者に対し、配偶者居住権の設定登記を備えさせる義務を負う(1項)。605条(賃借権の対抗)の規定を配偶者居住権に、605条の4(賃借権者の妨害排除)を登記を備えた配偶者に準用する(2項)。
趣旨
配偶者居住権を第三者に対抗するための登記制度を整備し、所有者の協力義務を法定する。これにより建物が第三者に譲渡されても配偶者の居住権が維持される。
登記協力義務
所有者は登記申請に協力する義務を負う。協力しない場合は配偶者が登記引取請求訴訟を提起して判決により登記可能。賃貸借の対抗要件(605条)と異なり、配偶者居住権は登記しか対抗要件がない(建物賃借権の引渡対抗(借地借家法31条)類似の規定はない)。
妨害排除
登記を備えた配偶者は605条の4準用により、第三者の占有妨害に対し妨害停止請求・返還請求が可能。物権類似の保護を受ける。
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配偶者は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用及び収益をしなければならない。
2ただし、従前居住の用に供していなかった部分について、これを居住の用に供することを妨げない。
3配偶者居住権は、譲渡することができない。
4配偶者は、居住建物の所有者の承諾を得なければ、居住建物の改築若しくは増築をし、又は第三者に居住建物の使用若しくは収益をさせることができない。
5配偶者が第一項又は前項の規定に違反した場合において、居住建物の所有者が相当の期間を定めてその是正の催告をし、その期間内に是正がされないときは、居住建物の所有者は、当該配偶者に対する意思表示によって配偶者居住権を消滅させることができる。
規律
配偶者は従前の用法に従い善管注意義務で居住建物を使用収益(1項本文)。従前居住の用に供していなかった部分の居住転用は妨げない(同項ただし書)。配偶者居住権の譲渡は不可(2項)。所有者の承諾なき改築・増築・第三者使用収益は不可(3項)。違反時は所有者は相当期間を定めて是正催告し、期間内是正なきときは意思表示により配偶者居住権を消滅させることができる(4項)。
趣旨
配偶者居住権は配偶者個人の生活保障のための一身専属的権利。譲渡禁止・無断改築禁止・是正催告後消滅という規律で所有者の利益と配偶者の生活保障を調整する。
善管注意義務
賃借人(400条・616条準用)と同レベルの善管注意。限定承認者(926条)の自己同一注意より重い。配偶者居住権が長期に及ぶ性質と所有者の利益確保の要請から重い注意義務が課される。
消滅請求の特殊性
賃貸借の解除と異なり、所有者の意思表示のみで消滅する形成権。ただし催告と相当期間の経過が要件であり、信頼関係破壊が必要かどうかは解釈問題。通説は催告手続を尽くせば足りるとする。
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配偶者は、居住建物の使用及び収益に必要な修繕をすることができる。
2居住建物の修繕が必要である場合において、配偶者が相当の期間内に必要な修繕をしないときは、居住建物の所有者は、その修繕をすることができる。
3居住建物が修繕を要するとき(第一項の規定により配偶者が自らその修繕をするときを除く。)、又は居住建物について権利を主張する者があるときは、配偶者は、居住建物の所有者に対し、遅滞なくその旨を通知しなければならない。
4ただし、居住建物の所有者が既にこれを知っているときは、この限りでない。
規律
配偶者は居住建物の使用収益に必要な修繕をすることができる(1項)。配偶者が相当期間内に必要修繕をしないときは所有者がこれをできる(2項)。建物が修繕を要するとき(1項に該当する場合除く)、または建物について権利主張者があるときは、配偶者は所有者に遅滞なく通知しなければならない。ただし所有者が既に知っているときはこの限りでない(3項)。
趣旨
建物の物理的維持について、賃貸借(606条)と異なり配偶者を一次的修繕主体と位置づけつつ、所有者にも補完的修繕権を認める。長期居住の保全を実効的に図る規律。
賃貸借との対比
606条では賃貸人が修繕義務を負うのに対し、本条では配偶者居住権者が一次的修繕主体。これは無償の居住権という性質(賃料に対応する義務がない)から、修繕も居住者側の負担とする政策判断。
通知義務
所有者は登記された担保権侵害・第三者占有等に対応する必要があるため、配偶者は権利主張者の存在等を通知する義務を負う。これは賃借人の通知義務(615条)と並行。
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配偶者は、居住建物の通常の必要費を負担する。
2第五百八十三条第二項の規定は、前項の通常の必要費以外の費用について準用する。
規律
配偶者は居住建物の通常の必要費を負担する(1項)。買戻特約の費用償還規定(583条2項)を通常必要費以外の費用について準用する(2項)。
趣旨
通常必要費(固定資産税・小修繕費等)は受益者である配偶者が負担し、特別必要費・有益費は所有者が最終的に負担する原則を明確化。賃貸借に類似する費用分担の規律。
通常必要費の範囲
通説は固定資産税、建物保険料、日常的小修繕費、水道光熱費等を通常必要費と解する。賃貸借の必要費(608条)が賃貸人負担なのに対し、配偶者居住権は受益者負担で正反対。
583条2項準用の意味
特別の必要費・有益費は所有者が償還義務を負うが、有益費は価額の増加が現存する場合に限り所有者の選択で支出額または増価額を償還、必要費は全額償還という583条2項の構造を準用する。
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配偶者は、配偶者居住権が消滅したときは、居住建物の返還をしなければならない。
2ただし、配偶者が居住建物について共有持分を有する場合は、居住建物の所有者は、配偶者居住権が消滅したことを理由としては、居住建物の返還を求めることができない。
3第五百九十九条第一項及び第二項並びに第六百二十一条の規定は、前項本文の規定により配偶者が相続の開始後に附属させた物がある居住建物又は相続の開始後に生じた損傷がある居住建物の返還をする場合について準用する。
配偶者居住権消滅後の返還義務(2018相続法改正)
配偶者居住権が消滅したときは配偶者は居住建物を所有者に返還する。配偶者居住権(1028条)の終了時の処理。
共有持分ある場合の例外
配偶者が共有持分を有する場合、所有者は配偶者居住権消滅を理由に返還請求できない。共有者としての占有権原は別途存続する。
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第五百九十七条第一項及び第三項、第六百条、第六百十三条並びに第六百十六条の二の規定は、配偶者居住権について準用する。
使用貸借・賃貸借規定の準用(2018相続法改正)
597条1項3項(期間満了・終了)、600条(損害賠償・費用償還期間制限)、613条(転貸の効果)、616条の2(賃借物の滅失)を準用。使用貸借+一部賃貸借の混合的規律。
規律の混合的性質
配偶者居住権は無償使用権だが第三者対抗・転貸禁止など賃貸借的規律も持つ。新設の物権類似の特別の権利として独自の規律。
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配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合には、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める日までの間、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の所有権を相続又は遺贈により取得した者(以下この節において「居住建物取得者」という。)に対し、居住建物について無償で使用する権利(居住建物の一部のみを無償で使用していた場合にあっては、その部分について無償で使用する権利。以下この節において「配偶者短期居住権」という。)を有する。
2ただし、配偶者が、相続開始の時において居住建物に係る配偶者居住権を取得したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し若しくは廃除によってその相続権を失ったときは、この限りでない。
3居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合
4遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から六箇月を経過する日のいずれか遅い日
5前号に掲げる場合以外の場合
6第三項の申入れの日から六箇月を経過する日
7前項本文の場合においては、居住建物取得者は、第三者に対する居住建物の譲渡その他の方法により配偶者の居住建物の使用を妨げてはならない。
8居住建物取得者は、第一項第一号に掲げる場合を除くほか、いつでも配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができる。
配偶者(配偶者短期居住権を有する配偶者に限る。以下この節において同じ。)は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用をしなければならない。
2配偶者は、居住建物取得者の承諾を得なければ、第三者に居住建物の使用をさせることができない。
3配偶者が前二項の規定に違反したときは、居住建物取得者は、当該配偶者に対する意思表示によって配偶者短期居住権を消滅させることができる。
善管注意義務・用法遵守義務
配偶者は従前用法に従い善管注意義務をもって居住建物を使用する。配偶者居住権(1032条)と同様の規律。
第三者使用の禁止
居住建物取得者の承諾なく第三者に使用させることはできない。配偶者個人の居住保障の趣旨に即した制限。
違反時の消滅請求
違反時は居住建物取得者の意思表示により短期居住権を消滅させることができる。配偶者居住権の1032条4項類似だが、本条は催告不要で直接消滅可能。
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配偶者が居住建物に係る配偶者居住権を取得したときは、配偶者短期居住権は、消滅する。
配偶者居住権取得による短期居住権消滅(2018相続法改正)
配偶者が配偶者居住権を取得すれば、短期居住権は当然に消滅。両権利併存は無意味であり配偶者居住権が短期居住権を吸収する関係。
1037条1項但書との関係
1037条但書は相続開始時に既に配偶者居住権を取得していた場合の短期居住権不発生規定。本条は相続開始後の取得による消滅規定で、両者で時間軸的に区別される。
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配偶者は、前条に規定する場合を除き、配偶者短期居住権が消滅したときは、居住建物の返還をしなければならない。
2ただし、配偶者が居住建物について共有持分を有する場合は、居住建物取得者は、配偶者短期居住権が消滅したことを理由としては、居住建物の返還を求めることができない。
3第五百九十九条第一項及び第二項並びに第六百二十一条の規定は、前項本文の規定により配偶者が相続の開始後に附属させた物がある居住建物又は相続の開始後に生じた損傷がある居住建物の返還をする場合について準用する。
短期居住権消滅後の返還義務(2018相続法改正)
短期居住権消滅時は居住建物取得者へ返還義務。配偶者居住権の1035条と並行する規律。
共有持分による例外
配偶者が共有持分を有する場合は返還義務を負わない(共有者としての占有権原で居住継続可能)。1035条但書と同旨。
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第五百九十七条第三項、第六百条、第六百十六条の二、第千三十二条第二項、第千三十三条及び第千三十四条の規定は、配偶者短期居住権について準用する。
配偶者居住権規定の準用(2018相続法改正)
597条3項(借主死亡による終了)、600条(費用償還期間)、616条の2(滅失終了)、1032条2項(無断増改築禁止)、1033条(修繕)、1034条(費用負担)を準用。配偶者居住権規定群との重複規律を回避する技術的条文。
短期居住権の準物権的性格
配偶者居住権類似の規律が準用されることで、短期居住権も単純な使用借権を超える独自の権利として位置づけられている。
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兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
2直系尊属のみが相続人である場合
3三分の一
4前号に掲げる場合以外の場合
5二分の一
6相続人が数人ある場合には、前項各号に定める割合は、これらに第九百条及び第九百一条の規定により算定したその各自の相続分を乗じた割合とする。
遺留分割合(1項)
兄弟姉妹以外の相続人は遺留分として①直系尊属のみが相続人である場合は被相続人の財産の3分の1、②それ以外の場合は2分の1の額を受ける。
個別遺留分(2項)
相続人が数人ある場合の各人の遺留分は1項の額に法定相続分を乗じたもの。
兄弟姉妹は除外
兄弟姉妹(および甥姪の代襲)は遺留分権利者ではない。
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遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とする。
2条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、その価格を定める。
遺留分算定基礎財産(2018相続法改正)
遺留分算定基礎財産=相続開始時の積極財産+贈与財産-債務全額。改正前は遺贈と贈与を併せた減殺請求だったが、改正後は遺留分侵害額の金銭請求権に変更された(1046条)。
条件付権利等の評価
条件付権利・存続期間不確定の権利は家裁選任の鑑定人の評価による。基礎財産価額算定の客観性確保。
贈与の算入範囲
1044条により、相続人への贈与は原則10年前まで、第三者贈与は1年前までが算入される(2018改正で第三者・相続人贈与に期間制限導入)。
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贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。
2当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。
3第九百四条の規定は、前項に規定する贈与の価額について準用する。
4相続人に対する贈与についての第一項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする。
遺留分算定対象贈与の1年原則(1項本文)
贈与は相続開始前の1年間にしたものに限り、1043条により価額算入される。被相続人の贈与により遺留分が減少する範囲を時的に限定。
悪意贈与の例外(1項後段)
当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、1年前より前のものも算入。遺留分潜脱を狙った悪意贈与には時的制限の保護を与えない。
904条の準用(2項)
贈与価額について904条(特別受益の評価)を準用。贈与財産の評価時点は相続開始時を基準とする。
相続人への贈与の特則(3項)(2018改正で新設)
相続人に対する贈与は1項中「1年」を「10年」、「価額」を「価額(婚姻・養子縁組・生計の資本としての贈与に限る)」と読み替え。相続人への特別受益と遺留分算定の整合化。
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負担付贈与がされた場合における第千四十三条第一項に規定する贈与した財産の価額は、その目的の価額から負担の価額を控除した額とする。
2不相当な対価をもってした有償行為は、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたものに限り、当該対価を負担の価額とする負担付贈与とみなす。
負担付贈与の価額(1項)
負担付贈与の場合、1043条1項の贈与財産価額は、目的価額から負担価額を控除した額とする。被相続人の経済的実質を反映した算入方法。
立法趣旨
負担付贈与(受贈者が一定の義務を負う贈与)では、被相続人の財産流出は目的価額から負担価額を引いた差額。遺留分算定でも同様に純粋な財産流出額を基準とすることで実質的公平を確保。
不相当対価有償行為のみなし規定(2項)
不相当対価による有償行為は、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたものに限り、対価を負担価額とする負担付贈与とみなす。安価売買・高価買取等を悪意要件下で本条に取り込む。
2項の趣旨
形式上は有償行為だが実質的に贈与的な財産流出を生む取引(例:時価1000万の不動産を100万で売却)は、悪意要件の下で負担付贈与と同視。悪意の脱法的取引を遺留分制度に取り込む。
この条文の練習問題を解く
遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
2遺留分侵害額は、第千四十二条の規定による遺留分から第一号及び第二号に掲げる額を控除し、これに第三号に掲げる額を加算して算定する。
3遺留分権利者が受けた遺贈又は第九百三条第一項に規定する贈与の価額
4第九百条から第九百二条まで、第九百三条及び第九百四条の規定により算定した相続分に応じて遺留分権利者が取得すべき遺産の価額
5被相続人が相続開始の時において有した債務のうち、第八百九十九条の規定により遺留分権利者が承継する債務(次条第三項において「遺留分権利者承継債務」という。)の額
遺留分侵害額請求権(1項)
遺留分権利者およびその承継人は、受遺者または受贈者に対し遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができる。
改正のポイント(2018年)
改正前は遺留分減殺請求として目的物の物権的取戻し効を持つ形成権だったが、改正後は金銭債権化された。共有関係の発生を回避し中小企業の事業承継を容易にする趣旨。
性質
形成権ではなく金銭請求権の発生要件たる意思表示。請求権の行使により受遺者・受贈者は遺留分侵害額の支払義務を負う。
この条文の練習問題を解く
受遺者又は受贈者は、次の各号の定めるところに従い、遺贈(特定財産承継遺言による財産の承継又は相続分の指定による遺産の取得を含む。以下この章において同じ。)又は贈与(遺留分を算定するための財産の価額に算入されるものに限る。以下この章において同じ。)の目的の価額(受遺者又は受贈者が相続人である場合にあっては、当該価額から第千四十二条の規定による遺留分として当該相続人が受けるべき額を控除した額)を限度として、遺留分侵害額を負担する。
2受遺者と受贈者とがあるときは、受遺者が先に負担する。
3受遺者が複数あるとき、又は受贈者が複数ある場合においてその贈与が同時にされたものであるときは、受遺者又は受贈者がその目的の価額の割合に応じて負担する。
4ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
5受贈者が複数あるとき(前号に規定する場合を除く。)は、後の贈与に係る受贈者から順次前の贈与に係る受贈者が負担する。
6第九百四条、第千四十三条第二項及び第千四十五条の規定は、前項に規定する遺贈又は贈与の目的の価額について準用する。
7前条第一項の請求を受けた受遺者又は受贈者は、遺留分権利者承継債務について弁済その他の債務を消滅させる行為をしたときは、消滅した債務の額の限度において、遺留分権利者に対する意思表示によって第一項の規定により負担する債務を消滅させることができる。
遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。
2相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。
短期消滅時効(本文)
遺留分侵害額の請求権は遺留分権利者が相続の開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは時効によって消滅する。
除斥期間(但書)
相続開始の時から10年を経過したときも同様。これは除斥期間(判例)。
性質変更後の取扱い
遺留分侵害額請求の意思表示自体は1年以内に行えば足り、その後の金銭請求権は10年の消滅時効に服する。
この条文の練習問題を解く
相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。
2共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。
相続開始前の遺留分放棄に家裁許可
相続開始前の遺留分放棄は家裁許可によってのみ効力を生じる。被相続人や他相続人からの圧力で軽率に放棄することを防ぐための家裁チェック。
他相続人の遺留分への不影響
共同相続人の一人の放棄は他相続人の遺留分に影響しない。放棄分が他相続人に転加せず、結果として被相続人の処分自由が拡大するのみ。
相続放棄との対比
相続放棄(938条)は相続開始後のみ、家裁申述が効力要件。遺留分放棄は相続開始前可・家裁許可必要、開始後は自由(一方的意思表示で足りる)。
この条文の練習問題を解く
被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。
2前項の規定による特別寄与料の支払について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。
3ただし、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から六箇月を経過したとき、又は相続開始の時から一年を経過したときは、この限りでない。
4前項本文の場合には、家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定める。
5特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
6相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料の額に第九百条から第九百二条までの規定により算定した当該相続人の相続分を乗じた額を負担する。
特別寄与料制度(2018相続法改正で新設)
相続人以外の親族(典型は被相続人の子の配偶者)が無償の療養看護等で財産維持・増加に特別寄与した場合、相続人に対し特別寄与料を請求できる。改正前は寄与分(904条の2)が相続人限定で「介護する嫁」が報われない問題への対応。
家裁への処分請求と除斥期間
協議不調・不能なら家裁に処分請求可。ただし相続開始・相続人を知ったときから6か月、相続開始から1年の除斥期間。短期の除斥期間で法律関係の早期安定。
上限と相続人の負担
上限=相続開始時財産価額-遺贈価額。相続人が複数なら各相続人は法定相続分(900-902条)の割合で分担負担。請求権者は親族に限られ、内縁配偶者は対象外。
この条文の練習問題を解く
この法律は、日本国憲法施行の日から、これを施行する。
公共の福祉適合性(1項)
私権は公共の福祉に適合しなければならない。私権行使の最外延の制限であり、個別の制限規定の解釈指針となる。
信義誠実の原則(2項)
権利の行使及び義務の履行は信義に従い誠実に行わなければならない。具体的妥当性を確保する一般条項であり、矛盾挙動禁止・事情変更の法理等の根拠となる。
権利濫用の禁止(3項)
権利の行使がその社会的目的を逸脱する場合は許されない。判例は客観的態様と主観的態様を総合考慮(最判昭和10・10・5宇奈月温泉事件)。
民法
信義則・権利濫用と権利行使の限界
民法
信義則による契約解釈と付随的義務の導出
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この法律は、昭和二十三年一月一日から、これを施行する。
公共の福祉適合性(1項)
私権は公共の福祉に適合しなければならない。私権行使の最外延の制限であり、個別の制限規定の解釈指針となる。
信義誠実の原則(2項)
権利の行使及び義務の履行は信義に従い誠実に行わなければならない。具体的妥当性を確保する一般条項であり、矛盾挙動禁止・事情変更の法理等の根拠となる。
権利濫用の禁止(3項)
権利の行使がその社会的目的を逸脱する場合は許されない。判例は客観的態様と主観的態様を総合考慮(最判昭和10・10・5宇奈月温泉事件)。
民法
信義則・権利濫用と権利行使の限界
民法
信義則による契約解釈と付随的義務の導出
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明治三十五年法律第三十七号は、これを廃止する。
個人の尊厳
解釈の指導理念。家族関係・人格的利益の解釈で特に機能する。
両性の本質的平等
家族法解釈の指導理念。最大判平成27・12・16夫婦同氏訴訟等の根拠規定。
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この附則で、新法とは、この法律による改正後の民法をいい、旧法とは、従前の民法をいい、応急措置法とは、昭和二十二年法律第七十四号をいう。
権利能力の始期は出生(1項)
全部露出説が通説・判例。私法上の権利義務の主体性を取得する。
外国人の権利能力(2項)
法令又は条約により禁止される場合を除き、原則として日本人と同様の権利能力を享有する。
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新法は、別段の規定のある場合を除いては、新法施行前に生じた事項にもこれを適用する。
2但し、旧法及び応急措置法によつて生じた効力を妨げない。
成年年齢は18歳
令和4年4月施行。単独で完全な法律行為能力を取得する基準年齢。
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応急措置法施行前に妻が旧法第十四条第一項の規定に違反してした行為は、これを取り消すことができない。
法律行為に法定代理人の同意(1項)
未成年者が法律行為をするには法定代理人の同意を要する。単に権利を得るか義務を免れる行為は同意不要。
同意なき行為の取消し(2項)
同意を欠く法律行為は取り消せる。取消権者は本人・法定代理人(120条)。
処分許諾財産・営業許諾の例外(3項)
目的を定めて処分を許された財産・許された営業に関しては行為能力者と同一。
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応急措置法施行前にした隠居が旧法によつて取り消すことができる場合には、なお、旧法によつてこれを取り消すことができる。
2この場合には、旧法第七百六十条の規定を適用する。
営業許可を受けた未成年者の能力
1種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては成年者と同一の行為能力を有する。法定代理人の許可により未成年者の制限行為能力を部分的に解除する制度。
営業の特定性
「1種又は数種の営業」と限定されており、特定された営業に関する行為に限り成年者と同一の能力。営業外の法律行為(私的取引等)は依然として5条の制限行為能力に服する。包括的な能力付与は許されない。
営業の取消・制限(2項)
未成年者が営業に堪えられない事由があるときは、法定代理人は親族編の規定に従い許可の取消・制限が可能。事後的監督権を確保しつつ、取消・制限は将来効のみで遡及効はない。
営業許可の登記
商法5条により未成年者商人は登記を要する。登記により取引相手方は未成年者の営業能力を確認可能となり、取引安全が確保される。
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応急措置法施行前に隠居又は入夫婚姻による戸主権の喪失があつた場合には、なお、旧法第七百六十一条の規定を適用する。
精神上の障害
精神病、知的障害、認知症など、精神的機能の異常状態を意味する。単なる一時的な精神不安定では足りず、継続的・恒常的な状態であることが必要である。最判は医学的診断と法的評価を区別し、法的には事理弁識能力の喪失につながる障害であることを要求している。
事理を弁識する能力を欠く
事理を弁識する能力とは、自分の行為の性質・結果を認識し、それに基づいて判断・決定する能力をいう。通説・判例は、日常生活における簡単な事柄さえも理解できない程度の著しい精神的減退を要件とし、相応の高度な判断能力の欠如を要求する。
常況にある者
常況とは、一時的・間欠的ではなく、継続的・恒常的な状態が存在することを意味する。通説・判例は、その状態が相当期間継続し、改善の見込みが低いことを実質的に求める。後見の開始は原則として取り消し不可能な重大な措置であるため、一時的な状態では足りない。
請求権者の適格
後見開始の審判は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人または検察官のみが請求できる。これは本人の保護と濫用防止のバランスを図ったもので、検察官の請求は公益的観点から認められている。
家庭裁判所の審判
後見開始は家庭裁判所の審判により初めて効力を生じる。通説・判例は、家庭裁判所は医学的鑑定を含む慎重な調査を行い、事理弁識能力の喪失について確信を得る必要があるとする。単なる請求があるだけでは足りず、要件充足の立証責任は請求者にある。
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新法施行前にした婚姻が旧法によつて取り消すことができる場合でも、その取消の原因である事項が新法に定めてないときは、その婚姻は、これを取り消すことができない。
後見開始の審判
家庭裁判所による後見開始の審判が存在することが要件である。これは民法7条に基づき、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者について下されるもので、単なる申立てではなく確定した審判そのものが本要件の充足に必要とされる。最判は本審判の確定により法律上の地位が生じると解している。
成年被後見人としての身分取得
後見開始の審判を受けた者は当然に成年被後見人という法律上の身分を取得する。これは宣告的効果であり、その者の法的能力の制限を示す地位である。被後見人は民法9条に基づき、日常生活に関する行為を除き、自らなした法律行為の取消しを被後見人または成年後見人から主張されうる立場となる。
成年後見人の付与
後見開始の審判がされた場合、必ず成年後見人が付される。この付与は同時的・自動的なものであり、本条は成年後見人の選任が別個の手続きではなく後見開始審判と同時的効果であることを明示している。最判は後見人選任の要件・基準について、本人の利益を最優先とする立場を採用している。
この条文の練習問題を解く
新法第七百六十四条において準用する新法第七百四十七条第二項の期間は、当事者が、新法施行前に、詐欺を発見し、又は強迫を免かれた場合には、新法施行の日から、これを起算する。
成年被後見人であること
本要件は、家庭裁判所により後見開始の審判を受けた者を意味する。成年被後見人は精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあると認められた者であり、戸籍に記載される。単なる判断能力の低下では足りず、常に判断能力を欠く状態が要求される。
法律行為であること
法律行為とは、私人の意思表示によって直接に法律効果の発生を目的とする行為をいう。契約、遺言、贈与など意思表示を必須とする行為が該当する。事実行為(物の引渡しなど)は含まれない。
日用品の購入その他日常生活に関する行為ではないこと(取消可能性の消極要件)
ただし書きは取消権の制限であり、日用品購入など日常生活に密接に関連する行為は取り消すことができないとする。判例は『日用品』を衣食住の基本的需要に関連するもの、『日常生活に関する行為』を金額・性質において通常の生活範囲内のものと解釈している。誤解しやすい点として、この例外が認められると民法9条1項の保護が全く働かないわけではなく、後見人の同意があれば有効となる点に注意が必要である。
この条文の練習問題を解く
日本国憲法施行後新法施行前に離婚した者の一方は、新法第七百六十八条の規定に従い相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2前項の規定は、婚姻の取消についてこれを準用する。
第七条に規定する原因の消滅
成年後見開始の審判の基礎となった原因事実(精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況)が客観的に消滅したことを要する。単なる本人の主観的な改善ではなく、医学的・客観的な判断により原因が実際に消滅していることが必要であり、通説・判例も本人の現在の状態が原因消滅の有無を判断する基準としている。
請求権者の限定列挙
本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人または検察官の請求により初めて審判取消しが開始される。請求権者の列挙は限定的であり、利害関係人であっても請求権者に列挙されていない者(例えば五親等の親族)は直接請求できず、この点は成年後見制度における民主的統制と本人の地位安定性のバランスを示す規定である。
家庭裁判所の審判権
後見開始原因の消滅は家庭裁判所が後見開始決定と同様の手続を経て審判により確認される必要がある。本条は「取り消さなければならない」と規定し、原因消滅の事実が認定された場合には家庭裁判所に審判取消しの義務を課しており、行政庁の裁量を認めない強行規定である。
審判取消しの効果
後見開始の審判が取り消されると、遡及効を生じるか否かについて学説が対立しているが、判例は原則として将来効のみを認める立場をとっている。取消しの時点以降において本人は成年後見人の保護を受けなくなり、単独で法律行為をなしうる能力を回復する。
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新法施行前に生じた事実を原因とする離婚の請求については、なお、従前の例による。
2新法第七百七十条第二項の規定は、前項の場合にこれを準用する。
保佐開始の審判の要件
精神上の障害により事理弁識能力が「著しく不十分」な者を対象とする。後見の「常況として欠く」状態より程度が軽く、補助の「不十分」より重い中間類型。1999年改正で禁治産制度を廃止し、本人の残存能力を尊重する3類型(後見・保佐・補助)に整理された際に置かれた中核規定。
請求権者の範囲
本人・配偶者・四親等内の親族・後見人・後見監督人・補助人・補助監督人・検察官。本人申立てを認める点が旧禁治産制度との大きな違い(自己決定権の尊重)。市町村長も老人福祉法32条等の特別法により請求可能。
後見との関係(ただし書)
後見原因(7条「事理弁識能力を欠く常況」)がある者は保佐ではなく後見によるべきで、保佐開始を重ねてすることはできない。同一人に複数の類型を併行させない趣旨。
効果
12条により被保佐人となり、保佐人が付される。13条1項列挙行為について保佐人の同意権・取消権が発生する。代理権は当然には付されず、876条の4の付与審判が別途必要。
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応急措置法施行前に未成年の子が旧法第七百三十七条又は第七百三十八条の規定によつて父又は母の家に入つた場合には、その子は、成年に達した時から一年以内に従前の氏に復することができる。
2その子が新法施行前に成年に達した場合において、新法施行後一年以内も、同様である。
条文の機能
11条の保佐開始審判の効果を定める形式規定。審判を受けた者を「被保佐人」、付される者を「保佐人」と呼ぶ法律上の名称を確定する。
保佐人の選任
保佐人は家庭裁判所が職権で選任する(876条の2)。法人保佐人も可。複数の保佐人選任も可。被保佐人が自ら選ぶのではなく、家裁が本人保護の観点から適任者を選ぶ点が任意代理と異なる。
保佐人の地位
保佐人は同意権者(13条1項)であり、家裁の付与審判があれば代理権(876条の4)も持つ。後見人と異なり包括的代理権は当然には有しない点が制度の中間性を示す。
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第八条、第九条及び第十一条の規定は、養子縁組についてこれを準用する。
保佐人同意を要する行為の列挙
重要な財産行為を限定列挙(元本領収・利用、借財・保証、不動産等重要財産の得喪、訴訟行為、贈与・和解・仲裁合意、相続承認・放棄、贈与の申込拒絶、新築・改築・増築・大修繕、長期賃貸借等)。1項列挙の趣旨は、定型的に被保佐人を害するおそれの高い類型を明示化することで取引の安全と本人保護を両立させる点にある。
日用品購入と日常生活行為
9条ただし書を準用し、日用品の購入その他日常生活に関する行為は同意不要。本人の自己決定権を尊重する1999年改正の中核思想。
同意権の拡張(2項)
家裁は申立てにより1項列挙以外の行為についても同意を要する旨の審判ができる。ただし日常生活行為は除外。
同意に代わる許可(3項)
保佐人の同意を得るべき行為につき、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意しないときは、家裁が同意に代わる許可を与えられる。
取消権(4項)
同意又は許可を得ないでした行為は取消し可能(120条1項により本人・保佐人)。判例(最判昭52・3・25)は、同意なき訴訟行為は無効ではなく取消し可能と解する。
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新法施行の際、現に、婚姻中でない父母が、共同して未成年の子に対して親権を行つている場合には、新法施行後も、引き続き共同して親権を行う。
2但し、父母は、協議でその一方を親権者と定めることができる。
3前項但書の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家事審判所は、父又は母の請求によつて協議に代わる審判をすることができる。
4新法第八百十九条第六項の規定は、第一項但書又は前項の規定によつて親権者が定められた場合にこれを準用する。
保佐開始審判の取消(1項)
11条本文の原因(事理弁識能力の著しい不十分)が消滅したときに、家裁は請求により取消す。能力回復した者を長期間制限下に置かない趣旨。請求権者は11条と同範囲+未成年後見人・未成年後見監督人・保佐人・保佐監督人。
同意権拡張審判の取消(2項)
13条2項で拡張した同意権の対象行為について、家裁は請求により全部又は一部を取り消せる。能力の改善や生活状況の変化に応じた柔軟な調整を可能にする。
後見・補助への移行
本条の取消とともに、新たに後見開始(程度悪化)・補助開始(程度軽減)の審判をする運用も可能。家事事件手続法119条以下に手続が定められている。
この条文の練習問題を解く
応急措置法施行前に、親権を行う母が、旧法第八百八十六条の規定に違反してし、又は同意を与えた行為は、これを取り消すことができない。
補助開始の審判(1項)
精神上の障害により事理弁識能力が不十分な者について、本人・配偶者・四親等内親族・検察官等の請求により家裁は補助開始の審判ができる。後見・保佐相当の者は除く(補助は最も軽度の類型)。
本人請求以外の場合の本人同意(2項)
本人以外の者の請求による補助開始審判には本人の同意が必要。被補助人の自己決定権尊重の表れ(後見・保佐は本人同意不要)。
同意・代理付与の必要性(3項)
補助開始審判は、17条1項の同意権付与または876条の9第1項の代理権付与の審判とともにしなければ効力を生じない。単独では意味を持たない。
この条文の練習問題を解く
第二十一条の規定は、応急措置法施行前に親権を行つていた継父、継母又は嫡母についてこれを準用する。
条文の機能
15条の補助開始審判の効果を定める形式規定。審判を受けた者を「被補助人」、付される者を「補助人」と呼ぶ名称規定。
補助制度の特徴
1999年改正で新設された3類型中最も軽度の保護類型。本人の同意なくして補助開始審判はできず(15条2項)、自己決定権を最大限尊重する設計。同意権・代理権は申立てにより個別に付与される(17条・876条の9)。
補助人の権限の個別性
後見・保佐と異なり、補助は「補助開始」だけでは本人の行為能力を制限する効果がない。17条の同意権付与審判または876条の9の代理権付与審判が併せて必要となる点が、制度設計の核。
この条文の練習問題を解く
新法施行前に親族会員と親権に服した子との間に財産の管理について生じた債権については、なお、旧法第八百九十四条の規定を適用する。
同意権付与審判(1項)
家裁は申立てにより、被補助人が「特定の法律行為」をするには補助人の同意を要する旨の審判ができる。対象は13条1項列挙行為の「一部」に限定される(13条1項全部に及ばせると保佐との区別がなくなるため)。
本人同意の要件(2項)
本人以外の者の請求の場合、本人の同意が要件。15条2項と同様に自己決定権尊重の表れ。
同意に代わる許可(3項)
13条3項と同様の規定。補助人が正当な理由なく同意しないとき家裁が代わって許可を与えられる。
取消権(4項)
同意又は許可を得ない行為は取消可能。120条1項により本人・補助人が取消権者となる。
この条文の練習問題を解く
新法施行前に母が旧法の規定によつて子の財産の管理を辞した場合において、新法施行の際その子のためにまだ後見が開始していないときは、その辞任は、新法施行後は、その効力を有しない。
補助開始審判の取消(1項)
15条1項本文の原因(事理弁識能力の不十分)が消滅したときに、家裁は請求により取消す。請求権者は本人・配偶者・四親等内の親族・未成年後見人・未成年後見監督人・補助人・補助監督人・検察官。
同意権付与審判の取消(2項)
17条1項の同意権付与審判について、家裁は全部又は一部を取消し可能。
全部取消の効果(3項)
17条1項の同意権付与審判と876条の9第1項の代理権付与審判のいずれも全部取り消す場合は、家裁は補助開始審判自体も取り消さなければならない。補助制度は同意権か代理権の少なくとも一方を伴うことが前提となっており、両方なくなれば制度自体の意味を失うため。
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新法施行の際現に旧法第九百二条の規定によつて父母の一方が後見人であるとき、又は旧法第九百四条の規定によつて選任された後見人があるときは、その後見人は、新法施行のため、当然にはその地位を失うことはない。
2但し、新法施行によつて後見が終了し、又は新法による法定後見人があるときは、当然その地位を失う。
後見開始時の処理(1項)
後見開始審判をする際、本人がすでに被保佐人・被補助人であるときは、家裁は保佐開始・補助開始審判を取り消さなければならない。同一人に複数の保護類型を併存させない(重畳禁止)趣旨。
準用(2項)
保佐開始の場合は後見・補助開始審判を取消し、補助開始の場合は後見・保佐開始審判を取消す。能力の変動に応じた類型移行を円滑にするための調整規定。
実務上の処理
家事事件手続法上、新類型の開始審判と旧類型の取消審判は通常同時に行われる。これにより本人保護の連続性が確保される(後見・保佐・補助の間に空白期間が生じない)。
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前条の規定は、後見監督人及び保佐人についてこれを準用する。
制限行為能力者の相手方の催告権(1項)
相手方は1か月以上の期間を定めて、制限行為能力者(行為能力者になった者)に対し当該行為を追認するかを催告できる。期間内に確答を発しないと追認とみなされる。
法定代理人等への催告(2項)
行為能力者となる前の者の法定代理人・保佐人・補助人に対する催告も同様で、確答なしは追認擬制。
特別の方式を要する行為(3項)
後見監督人同意等の特別方式を要する行為の催告で確答なしのときは取消し擬制(追認擬制ではない)。受領者の保護より相手方安定の利益が劣後。
被保佐人・被補助人本人への催告(4項)
被保佐人・同意権付与された被補助人本人に対する催告で確答なしのときは取消し擬制。本人が同意を得る手間を負うのを軽くするため。
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新法施行前に、後見人が、旧法第九百二十九条の規定に違反してし、又は同意を与えた行為は、なお、旧法によつてこれを取り消すことができる。
制限行為能力者の詐術
制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。
詐術の意義
判例は単なる黙秘は詐術にあたらないが、他の言動と相まって相手方を誤信させまたは誤信を強めた場合は詐術にあたる(最判昭44・2・13)。
趣旨
取引相手方の信頼を保護し制限行為能力者の保護濫用を防ぐ。本人保護より相手方保護を優先する例外。
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第十七条の規定は、親族会員と被後見人又は準禁治産者との間にこれを準用する。
住所の定義
「各人の生活の本拠」をもって住所とする。客観説(生活の中心という客観的事実で決まる)が通説・判例(大判明29・12・21)。住民票記載地と必ずしも一致しない(住民票は行政上の便宜であって民法上の住所そのものではない)。
住所単一性
通説は1人1住所説を否定し複数住所を認める(複数本拠を持つ生活実態に対応)。判例も同様の立場で、税法・選挙法など個別法ごとの住所概念とのずれを認める。
住所の機能
債務履行地(484条)、相続開始地(883条)、不在者の認定基準(25条)、訴訟管轄(民訴法4条)、国際私法上の連結点など、民法のみならず多数の場面で住所が重要な意味を持つ基準規定。
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新法施行前にされた親族会の決議に対する不服については、なお、旧法を適用する。
2前項の規定によつて親族会の決議を取り消す判決が確定した場合でも、親族会であらたに決議をすることは、これを認めない。
居所の住所擬制(1項)
住所が知れない場合、居所をもって住所とみなす。住所が不明でも法律関係の連結点を確保するための補充規定。
外国人・在外日本人(2項)
日本に住所を有しない者は、国籍を問わず日本における居所を住所とみなす。日本法上の取引・訴訟関係の便宜のための擬制。
通則法による例外(2項ただし書)
法の適用に関する通則法に従い住所地法による場合は適用除外。国際私法上の連結点として外国の住所地法を選ぶべき場面では本条の擬制を働かせない趣旨。
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新法施行前に扶養に関してされた判決については、新法第八百八十条の規定を準用する。
仮住所の擬制
ある行為について仮住所を選定したときは、その行為に関しては仮住所を住所とみなす。当事者の合意により特定取引について履行地・送達先等を画一化する便宜的規定。
適用範囲
当該行為に「関しては」とあるため、選定した取引・契約等の範囲内でのみ住所として扱われ、それ以外の法律関係には及ばない。仮住所の効果は限定的。
実務
国際取引で履行地を当事者間で画一的に定める場面や、出張・出向中の連絡先指定などで活用される。住所地と異なる場所での弁済・通知の効力を生むための基礎規定。
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応急措置法施行前に開始した相続に関しては、第二項の場合を除いて、なお、旧法を適用する。
2応急措置法施行前に家督相続が開始し、新法施行後に旧法によれば家督相続人を選定しなければならない場合には、その相続に関しては、新法を適用する。
3但し、その相続の開始が入夫婚姻の取消、入夫の離婚又は養子縁組の取消によるときは、その相続は、財産の相続に関しては開始しなかつたものとみなし、第二十八条の規定を準用する。
不在者の定義
「従来の住所又は居所を去った者」を不在者と呼ぶ。生存・所在不明であることまでは要件ではなく、長期不在で財産管理人を置かない者を広く含む。
管理人不設置の場合(1項前段)
管理人を置かなかった場合、家裁は利害関係人(債権者・配偶者・推定相続人等)または検察官の請求により、財産管理の必要な処分を命じることができる。具体的には管理人の選任が中心。
管理権限消滅の場合(1項後段)
本人不在中に管理人の権限が消滅(死亡・辞任等)した場合も同様の処分が可能。財産管理の空白を生じさせない趣旨。
本人による選任後の取消(2項)
家裁が命令した後に本人自身が管理人を選任したときは、家裁は管理人等の請求により命令を取り消さなければならない。本人の自己決定が回復した場合に家裁関与を退かせる調整規定。
この条文の練習問題を解く
応急措置法施行の際における戸主が婚姻又は養子縁組によつて他家から入つた者である場合には、その家の家附の継子は、新法施行後に開始する相続に関しては、嫡出である子と同一の権利義務を有する。
2前項の戸主であつた者について応急措置法施行後新法施行前に相続が開始した場合には、前項の継子は、相続人に対して相続財産の一部の分配を請求することができる。
3この場合には、第二十七条第二項及び第三項の規定を準用する。
4前二項の規定は、第一項の戸主であつた者が応急措置法施行後に婚姻の取消若しくは離婚又は縁組の取消若しくは離縁によつて氏を改めた場合には、これを適用しない。
管理人改任の要件
不在者自身が選任した管理人がいる場合に、不在者の生死不明となったときは、家裁が利害関係人・検察官の請求により管理人を改任できる。本人選任管理人の権限濫用・能力不足等のリスクに対応する。
生死不明要件の意味
単に行方不明では足りず、生死そのものが不明であることが要件。生存が明らかであれば本人と管理人との委任関係を尊重し、家裁は介入しない。
改任後の管理人
改任された新管理人は、家裁選任の管理人として27条・28条・29条の適用を受け、本人選任管理人とは異なる扱いとなる。
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配偶者短期居住権の発生(2018相続法改正)
相続開始時に無償で居住していた配偶者は、最低6か月間、居住建物を無償使用できる権利を法律上当然に取得。判例(最判平成8.12.17)の使用貸借契約推定構成を法定化したもの。
存続期間
①遺産分割すべき場合:分割確定日と相続開始から6か月のいずれか遅い日。②それ以外:所有者からの消滅申入れから6か月。最低6か月の居住保障。
適用除外
配偶者居住権を取得した場合、相続欠格・廃除で相続権を失った場合は適用なし。1039条により配偶者居住権取得時は短期居住権が消滅する。
この条文の練習問題を解く
8この場合において、当該行為によって遺留分権利者に対して取得した求償権は、消滅した当該債務の額の限度において消滅する。
9受遺者又は受贈者の無資力によって生じた損失は、遺留分権利者の負担に帰する。
10裁判所は、受遺者又は受贈者の請求により、第一項の規定により負担する債務の全部又は一部の支払につき相当の期限を許与することができる。
受遺者・受贈者の遺留分侵害額負担(1項柱書)(2018改正で金銭債権化)
受遺者・受贈者は、遺贈(特定財産承継遺言・相続分指定による取得を含む)又は贈与の目的価額(受遺者・受贈者が相続人の場合は遺留分額を控除した額)を限度として、遺留分侵害額を負担する。
受遺者の先行負担(1号)
受遺者と受贈者があるときは、受遺者が先に負担する。遺贈は相続開始時の被相続人の意思に直接由来し、贈与より遺留分減殺の対象として優先される。
同種関係者間の按分(2号)
受遺者が複数のとき又は受贈者が複数で同時贈与のときは、各々その目的価額に応じて負担。受遺者・受贈者間の公平確保。
2018改正の意義
改正前は遺留分減殺請求の現物返還が原則だったが、改正で遺留分侵害額の金銭債権化(1046条)に転換。本条はその金銭債務の負担順序と分担方法を規律する受け皿規定。
受贈者順序(3号・準用)
本文中以下は受贈者複数で異時贈与の場合の後の贈与優先負担等を規律。改正前1033条以下の規律を整理して継承。
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