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被相続人の子は、相続人となる。
2被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。
3ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
4前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。
被相続人の子の相続権(1項)
嫡出子・非嫡出子・養子を含む第一順位の相続人。
代襲相続(2項)
相続開始以前の死亡・相続欠格・廃除により相続権を失った子の子(孫)が代襲。
再代襲(3項)
代襲者の子も代襲(直系卑属に限り無限)。
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削除
削除条文(888条)
民法888条は削除。旧888条は相続関係の旧規定(家督相続関連等)で、相続法の現代化に伴い廃止された。
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次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
2被相続人の直系尊属。
3ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
4被相続人の兄弟姉妹
5第八百八十七条第二項の規定は、前項第二号の場合について準用する。
第二順位(1項1号):直系尊属
子・代襲者がいない場合。親等近い者を優先。
第三順位(1項2号):兄弟姉妹
直系尊属もいない場合。
兄弟姉妹の代襲(2項)
兄弟姉妹の子(甥姪)まで。再代襲なし。
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被相続人の配偶者は、常に相続人となる。
2この場合において、第八百八十七条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。
配偶者の常時相続人性
他の順位の相続人と並存して常に相続人となる。
法律婚配偶者に限定
内縁配偶者は含まれない(判例)。
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次に掲げる者は、相続人となることができない。
2故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
3被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。
4ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
5詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
6詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
7相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
欠格事由(5類型)
①故意に被相続人または先順位・同順位の相続人を死亡させ刑に処せられた者、②被相続人の殺害を知りながら告発・告訴しなかった者、③詐欺・強迫で遺言の作成・撤回・取消・変更を妨げた者、④詐欺・強迫で遺言の作成・撤回・取消・変更をさせた者、⑤遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した者。
効果
当然に相続資格を喪失。家庭裁判所の手続不要。代襲相続は可能(887条2項)。
5号事例(判例)
遺言書隠匿等が相続に関し不当な利益を得る目的でない場合は欠格不該当(最判平9・1・28)。
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遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
廃除事由
遺留分を有する推定相続人(兄弟姉妹を除く)が被相続人に対して虐待・重大な侮辱を加えたとき、または推定相続人にその他の著しい非行があったとき。
廃除請求
被相続人は家庭裁判所に廃除の請求ができる。形成の訴え。
効果
家庭裁判所の審判確定により相続資格喪失。代襲相続は可能。被相続人はいつでも廃除取消可能(894条)。
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被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。
2この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。
遺言による推定相続人の廃除
被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思表示をしたときは、遺言執行者は遺言効力発生後遅滞なく家庭裁判所に廃除を請求しなければならない。生前廃除(892条)と並ぶ廃除の二類型の一つ。
廃除事由
892条が定める虐待・重大な侮辱・著しい非行が必要。遺言廃除も実体要件は生前廃除と同じだが、手続が遺言執行者により事後的に行われる点が異なる。
廃除の遡及効
遺言による廃除は被相続人の死亡時にさかのぼって効力を生じる。家庭裁判所の審判は確認的なものではなく、形成的効果を持つが効力時点は死亡時へ遡及。
遺言執行者の役割
遺言執行者は廃除請求を遺言の執行行為として行う。1012条により遺言執行者は相続財産管理権と遺言執行に必要な行為の権限を有する。
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被相続人は、いつでも、推定相続人の廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
2前条の規定は、推定相続人の廃除の取消しについて準用する。
廃除取消請求権
被相続人はいつでも推定相続人の廃除取消しを家庭裁判所に請求できる。廃除制度の柔軟性を確保する一方的形成権。
「いつでも」の意義
期間制限なし。被相続人の翻意・関係修復等により廃除を撤回できる。生前廃除・遺言廃除のいずれにも適用。
遺言による取消(2項)
前条(893条)が準用される結果、遺言による廃除取消も可能。遺言で廃除取消意思を表示すれば、遺言執行者が家裁に請求する。
効果
取消し審判確定により廃除は遡及的に効力を失う。当該推定相続人は当初から相続権を失わなかったものとして扱われる。
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推定相続人の廃除又はその取消しの請求があった後その審判が確定する前に相続が開始したときは、家庭裁判所は、親族、利害関係人又は検察官の請求によって、遺産の管理について必要な処分を命ずることができる。
2推定相続人の廃除の遺言があったときも、同様とする。
3第二十七条から第二十九条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が遺産の管理人を選任した場合について準用する。
廃除審判確定前の遺産管理
推定相続人の廃除又は取消請求があった後、審判確定前に相続が開始したとき、家庭裁判所は親族・利害関係人・検察官の請求により遺産管理の必要な処分を命じることができる。
遺言廃除の場合の準用(2項)
推定相続人廃除の遺言があったときも同様。遺言効力発生後・廃除審判確定前の管理空白を埋めるため、家裁による財産管理処分を可能にする。
不在者財産管理規定の準用(3項)
27条〜29条(不在者の財産管理)が遺産管理人選任に準用される。管理人の権限・職務・財産処分の許可等について不在者財産管理と同様のルール。
立法趣旨
廃除手続中は相続人の確定が遅延し、その間の遺産管理空白が問題となる。家裁の関与による財産管理人選任で管理空白を防ぐ手続的補完規定。
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相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。
2ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
包括承継の原則(本文)
相続人は相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。
一身専属権の例外(但書)
被相続人の一身に専属したものは承継しない。例:扶養請求権・年金受給権・身元保証債務・代理権等。
承継時期
相続開始(被相続人の死亡)と同時。登記・引渡し等の手続なくして当然に承継。
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系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。
2ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
3前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。
祭祀承継者の決定(1項)
系譜・祭具・墳墓の所有権は、相続財産の一般承継規定(896条)にかかわらず、慣習に従って祖先祭祀を主宰すべき者が承継。被相続人指定がある場合は指定者が承継。
慣習不明時の家庭裁判所決定(2項)
慣習が明らかでないときは家庭裁判所が祭祀承継者を定める。祭祀財産の特殊性に対応した相続法の特則。
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家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、いつでも、相続財産の管理人の選任その他の相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。
2ただし、相続人が一人である場合においてその相続人が相続の単純承認をしたとき、相続人が数人ある場合において遺産の全部の分割がされたとき、又は第九百五十二条第一項の規定により相続財産の清算人が選任されているときは、この限りでない。
3第二十七条から第二十九条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が相続財産の管理人を選任した場合について準用する。
相続財産の保存処分(2021年改正で新設)
家庭裁判所は利害関係人又は検察官の請求により、いつでも相続財産の管理人選任その他保存に必要な処分を命じることができる。所有者不明土地問題対応の一環として新設された相続財産管理の一般則。
適用除外(ただし書)
①単独相続人が単純承認したとき、②共同相続で遺産全部の分割がされたとき、③952条1項により相続財産清算人が選任されているとき、は適用なし。これらは相続財産管理の必要性が消滅・転換した場面。
不在者財産管理規定の準用(2項)
27条〜29条(不在者の財産管理)が準用される。管理人の財産管理権限・職務・財産処分の許可等について不在者財産管理と同様のルール。
改正の意義
旧法では相続財産管理人選任は限定承認・相続人不存在等の特殊場面に限られていたが、本条により相続開始から相続人確定までの全期間で柔軟に管理人選任可能となり、所有者不明土地の発生防止に寄与。
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相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
2相続財産について共有に関する規定を適用するときは、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分をもって各相続人の共有持分とする。
相続財産の共有
相続人が数人あるときは相続財産はその共有に属する。
「共有」の性質
通常の共有(249条以下)と同質(判例・通説)。遺産分割までの暫定的状態。各共同相続人は持分を譲渡可能(最判昭38・2・22)。
可分債権の例外(判例)
金銭債権等の可分債権は相続開始と同時に法定相続分に応じて当然分割(最判昭29・4・8)。ただし預貯金債権は遺産分割対象(最大決平28・12・19判例変更)。
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各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。
持分による承継
各共同相続人はその相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。
債務の承継
金銭債務等の可分債務は法定相続分に応じて当然に分割承継される(判例)。指定相続分は債権者に対抗できない(902_2条)。
899_2による第三者対抗
法定相続分超の権利取得は登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗できない(899_2条)。
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相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
2前項の権利が債権である場合において、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなして、同項の規定を適用する。
相続承継の対抗要件(2018年改正で新設)
相続による権利承継は、遺産分割によるか否かにかかわらず、法定相続分を超える部分については登記・登録等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗できない。判例(最判昭46・1・26)の遺産分割と登記論を立法化。
立法趣旨
従来は遺言による特定遺産取得(特定財産承継遺言)は登記なくして第三者に対抗可能と解されていたが、対抗要件主義を貫徹することで取引安全と相続人間の公平を確保する改正。
債権承継の通知特則(2項)
債権承継の場合、法定相続分超過部分を承継した共同相続人が遺言内容(又は遺産分割内容)を明らかにして債務者に通知すれば、共同相続人全員が通知したものとみなされる。467条対抗要件具備の簡素化。
効果
法定相続分は対抗要件不要で当然承継。超過部分は登記しないと第三者に負ける。例:相続させる旨の遺言で長男が単独取得しても、登記しないうちに他相続人の債権者が差し押さえれば差押が優先。
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同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
2子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
3配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
4配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
5子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。
6ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
配偶者と子(1号)
配偶者1/2、子1/2(子は均等)。非嫡出子も嫡出子と均等(最大決平成25・9・4違憲決定後の改正)。
配偶者と直系尊属(2号)
配偶者2/3、直系尊属1/3。
配偶者と兄弟姉妹(3号)
配偶者3/4、兄弟姉妹1/4。半血兄弟姉妹は全血の1/2(4号但書)。
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第八百八十七条第二項又は第三項の規定により相続人となる直系卑属の相続分は、その直系尊属が受けるべきであったものと同じとする。
2ただし、直系卑属が数人あるときは、その各自の直系尊属が受けるべきであった部分について、前条の規定に従ってその相続分を定める。
3前項の規定は、第八百八十九条第二項の規定により兄弟姉妹の子が相続人となる場合について準用する。
代襲相続人の相続分
被代襲者が受けるべきであった相続分と同じ。
複数代襲者の場合
被代襲者の相続分を頭割り。
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被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。
2被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前二条の規定により定める。
指定相続分(1項)
被相続人は遺言で900条・901条の規定にかかわらず共同相続人の相続分を定めることができる。第三者にその指定を委託することもできる。
遺留分との関係
遺留分(1042条)を侵害する指定も無効ではないが、遺留分権利者は侵害額請求権(1046条)を行使できる。
債権者への効力(902_2)
相続分の指定がなされた場合でも、相続債権者は各共同相続人に対して法定相続分に応じた履行を請求できる。指定相続分を承認した場合は除く。
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被相続人が相続開始の時において有した債務の債権者は、前条の規定による相続分の指定がされた場合であっても、各共同相続人に対し、第九百条及び第九百一条の規定により算定した相続分に応じてその権利を行使することができる。
2ただし、その債権者が共同相続人の一人に対してその指定された相続分に応じた債務の承継を承認したときは、この限りでない。
相続分指定と相続債権者の権利行使(2018年改正で新設)
相続債権者は、被相続人の相続分指定があっても、各共同相続人に対し法定相続分(900条・901条)に応じた権利行使ができる。指定相続分に拘束されない債権者保護規定。
立法趣旨
旧法下では指定相続分による債務承継の効果について判例(最判平21・3・24)と学説対立があった。本条で「相続債権者は法定相続分で行使可能」を明文化し、被相続人の指定により債権者の地位が不利にならないことを確保。
債権者の承認による例外(ただし書)
債権者が共同相続人の一人に対し指定相続分に応じた債務承継を承認したときは、その指定相続分が債権者にも対抗可能。債権者が任意に指定相続分を受け入れる場合は当然許容。
実務での意義
事業承継等で長男に多くの財産・債務を承継させる遺言があっても、債権者は法定相続分で他相続人にも請求可能。相続人間の内部関係(指定相続分)と対外関係(法定相続分)を分離する規定。
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共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。
4婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。
特別受益(1項)
婚姻・養子縁組のため又は生計の資本としての贈与・遺贈。
持戻し
相続財産に加算して具体的相続分を算定。
受益額が相続分を超える場合(2項)
超過分の返還義務なし。
持戻し免除の意思表示(3項)
被相続人は持戻しを免除可能。配偶者間の居住用不動産贈与は推定免除(4項)。
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前条に規定する贈与の価額は、受贈者の行為によって、その目的である財産が滅失し、又はその価格の増減があったときであっても、相続開始の時においてなお原状のままであるものとみなしてこれを定める。
特別受益(本文)
共同相続人中に被相続人から遺贈または婚姻・養子縁組のため・もしくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始時に有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなす。
持戻し計算
特別受益者の相続分から特別受益額を控除して具体的相続分を算定する。
持戻し免除の意思表示(903条3項)
被相続人が持戻し免除の意思表示をしたときはその意思に従う。配偶者居住権との関係で20年以上の婚姻について居住用不動産の持戻し免除が推定される(903条4項)。
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共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。
2前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。
3寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
4第二項の請求は、第九百七条第二項の規定による請求があった場合又は第九百十条に規定する場合にすることができる。
寄与分(1項)
共同相続人中に被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした者があるときは、その者の相続分は法定または指定相続分にこの寄与分を加えた額とする。
寄与の類型
①事業従事、②財産給付、③療養看護、④その他の方法による特別の寄与。「特別の寄与」とは通常の親族間扶助義務を超える程度のもの。
協議・審判(2項・3項)
寄与分は協議で決定。協議不調のときは家庭裁判所が一切の事情を考慮して定める。遺産分割の請求があったときに限り審判可能。
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前三条の規定は、相続開始の時から十年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。
2ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
3相続開始の時から十年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。
4相続開始の時から始まる十年の期間の満了前六箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から六箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。
10年経過後の特別受益・寄与分主張制限(2021年改正で新設)
前三条(特別受益903・寄与分904・904_2)の規定は、相続開始から10年経過後の遺産分割には適用しない。長期未了の遺産分割で特別受益・寄与分の調整を切る原則ルール。
立法趣旨
所有者不明土地問題の温床である長期未了遺産分割を解消するため、10年経過後は法定相続分での画一処理を促す。証拠散逸・記憶喪失も理由として、紛争解決を早期化。
1号の例外(10年前の分割請求)
10年経過前に家裁に遺産分割請求していれば本条適用なし。早期に手続を開始した相続人は10年後でも特別受益等の調整を維持可能。
2号の例外(やむを得ない事由)
10年経過前6か月以内にやむを得ない事由で分割請求できなかった場合、事由消滅後6か月以内に請求すれば本条適用なし。災害・行方不明・心身不調等の救済規定。
この条文の練習問題を解く
共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。
2前項の権利は、一箇月以内に行使しなければならない。
相続分取戻権(1項)
共同相続人の一人が遺産分割前に相続分を第三者に譲渡したとき、他の共同相続人は価額・費用を償還して相続分を譲り受けることができる。共同相続人外への遺産分割関与を防ぐ。
立法趣旨
遺産分割は相続人間の協議で進めるべき家族的・親族的関係であり、第三者が共同相続人として遺産分割に参加することは関係の安定を害する。第三者を排除する形成権により共同相続人の利益を保護。
1か月の権利行使期間(2項)
取戻権は譲渡を知ってから1か月以内に行使しなければならない。判例(最判昭53・7・13)は除斥期間と解する。
「相続分」の意義
判例(最判昭53・7・13)は「相続財産全体に対する譲渡人の有する持分の割合」と解する。個別財産の持分譲渡は本条の対象外。
この条文の練習問題を解く
遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。
遺産分割の基準
遺産の分割は遺産に属する物または権利の種類および性質、各相続人の年齢・職業・心身の状態および生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。
意義
遺産分割の指針となる基本原則。家庭裁判所の審判分割でも考慮要素。
分割方法
①現物分割、②換価分割、③代償分割、④共有分割。家庭裁判所は事案に応じて選択する。
この条文の練習問題を解く
遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる。
2前項の規定にかかわらず、共同相続人の一人又は数人により同項の財産が処分されたときは、当該共同相続人については、同項の同意を得ることを要しない。
遺産分割前の処分財産のみなし算入(2018年改正で新設)
遺産分割前に遺産財産が処分された場合、共同相続人全員の同意により、処分財産を遺産分割時に遺産として存在するものとみなすことができる。事実上の遺産減少を回復する規定。
立法趣旨
旧法下では相続開始後の処分財産を遺産分割対象に含められず、不公平な結果が生じていた(判例:最判平17・12・8)。本条で全員同意により処分財産を遺産として扱える制度を新設。
処分者の同意不要(2項)
共同相続人の一人又は数人が処分したときは、当該処分者の同意は不要。処分者は事実上自己の取得分を確保しているため、本条みなし処理に同意する必要はないとする趣旨。
効果
処分財産が遺産分割時の遺産とみなされる結果、各相続人の具体的相続分計算において処分財産を含めた上で分割可能。処分者は処分財産分を取得済みとして他相続人の取得分が増加。
この条文の練習問題を解く
共同相続人は、次条第一項の規定により被相続人が遺言で禁じた場合又は同条第二項の規定により分割をしない旨の契約をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。
2遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。
3ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、この限りでない。
協議による遺産分割(1項)
共同相続人は被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでもその協議で遺産の全部または一部の分割をすることができる。
審判による分割(2項本文)
協議が調わないときまたは協議をすることができないときは、各共同相続人はその全部または一部の分割を家庭裁判所に請求できる。
10年経過後の制限(904_3)
相続開始時から10年を経過すると特別受益・寄与分の主張は原則として制限される(2023年改正)。
この条文の練習問題を解く
被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。
2共同相続人は、五年以内の期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割をしない旨の契約をすることができる。
3ただし、その期間の終期は、相続開始の時から十年を超えることができない。
4前項の契約は、五年以内の期間を定めて更新することができる。
5ただし、その期間の終期は、相続開始の時から十年を超えることができない。
6前条第二項本文の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、五年以内の期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。
7ただし、その期間の終期は、相続開始の時から十年を超えることができない。
8家庭裁判所は、五年以内の期間を定めて前項の期間を更新することができる。
9ただし、その期間の終期は、相続開始の時から十年を超えることができない。
遺言による遺産分割方法の指定・委託(1項)
被相続人は遺言で、遺産分割の方法を定め、又は定めることを第三者に委託でき、又は相続開始から5年を超えない期間で遺産分割を禁ずることができる。被相続人の遺志による分割方法のコントロール。
共同相続人間の不分割契約(2項)
共同相続人は5年以内の期間を定めて遺産の全部又は一部の不分割契約ができる(2021改正で明示)。期間終期は相続開始から10年を超えられない(所有者不明土地問題対応)。
不分割契約の更新(3項)
5年以内の期間で不分割契約を更新できる。更新後の期間終期も相続開始から10年が上限。
家裁による不分割審判(4項・5項)
907条2項本文の場合に特別事由があれば、家庭裁判所は5年以内(相続開始から10年が上限)で遺産分割禁止を命じられる。家裁による不分割審判は更新可能。
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遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。
2ただし、第三者の権利を害することはできない。
分割の遡及効(本文)
遺産の分割は相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。
第三者の権利保護(但書)
第三者の権利を害することはできない。
債権の分割帰属(判例)
可分債権は当然分割により相続人帰属となるため遺産分割の対象外(最判昭29・4・8)。預貯金は判例変更により分割対象(最大決平28・12・19)。
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各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の三分の一に第九百条及び第九百一条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。
2この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。
遺産分割前の預貯金債権行使
各共同相続人は遺産に属する預貯金債権のうち、相続開始時の債権額の3分の1に法定相続分を乗じた額(金融機関ごとに150万円を上限)について、単独でその権利を行使できる。
趣旨
預貯金が遺産分割対象となった判例変更(最大決平28・12・19)後の不便を緩和。葬儀費用・生活費等の当座の資金需要に応える。
効果
行使された預貯金は当該共同相続人が遺産の一部分割により取得したものとみなされる。
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相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。
認知された相続人の価額支払請求権
相続開始後に認知により相続人となった者が遺産分割を請求しようとする場合、他の共同相続人が既に分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払請求権を有する。
立法趣旨
認知の遡及効(784条)により被認知者は相続開始時から相続人として扱われるが、既了の遺産分割を覆すと取引安全を害する。価額支払請求権で被認知者を救済しつつ、既了分割の安定性を確保する。
対象となる「処分」
遺産分割のほか、共同相続人間の和解、共同相続財産の第三者への譲渡等を含む。判例(最判平28・2・26)は債権の弁済受領も「処分」に含まれるとする。
価額算定の基準時(判例)
最判平28・2・26は遺産分割時の財産価額を基準とする。被認知者の価額請求は遺産分割時の価額相当の金銭債権として処理される。
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各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任を負う。
共同相続人間の担保責任
各共同相続人は他の共同相続人に対し、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任を負う。遺産分割により取得した財産の権利・性状の瑕疵について共同相続人間で担保責任を負う。
「売主と同じく」の意味
売買の担保責任規定(562条以下:契約不適合責任)を準用。遺産分割は形式上は遺産共有関係の解消だが、実質的に売買類似の財産の対価関係に立つため、売主の担保責任を準用する構造。
相続分応じた分担
1人の共同相続人が取得財産に瑕疵を発見した場合、他の全共同相続人が相続分に応じて担保責任を分担。例:相続分1/3ずつの兄弟3人で、長男取得財産に瑕疵があれば次男・三男が各1/3ずつ責任。
914条による排除
914条により被相続人が遺言で別段の意思表示をすれば本条は適用されない。担保責任のルールも遺言による調整が可能。
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各共同相続人は、その相続分に応じ、他の共同相続人が遺産の分割によって受けた債権について、その分割の時における債務者の資力を担保する。
2弁済期に至らない債権及び停止条件付きの債権については、各共同相続人は、弁済をすべき時における債務者の資力を担保する。
債権の担保責任(1項)
各共同相続人は相続分に応じ、他の共同相続人が遺産分割によって受けた債権について、分割時における債務者の資力を担保する。債権譲渡の担保責任類似の規律。
569条との対比
569条は売主が債権譲渡時の債務者資力を担保する旨を明示した場合のみ責任を負うが、本条は遺産分割で当然に分割時資力を担保する。共同相続人間の連帯責任的構造。
弁済期未到来・停止条件付債権の特則(2項)
弁済期未到来の債権や停止条件付債権については、各共同相続人は「弁済すべき時」(将来の弁済期到来時又は条件成就時)における債務者資力を担保する。将来時点での資力を保証する強い担保責任。
立法趣旨
遺産分割で債権を取得した相続人が後に債務者の無資力により回収不能となれば、他相続人より不利な結果となる。共同相続人間の公平を確保するため、債務者資力を共同相続人間で担保する。
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担保の責任を負う共同相続人中に償還をする資力のない者があるときは、その償還することができない部分は、求償者及び他の資力のある者が、それぞれその相続分に応じて分担する。
2ただし、求償者に過失があるときは、他の共同相続人に対して分担を請求することができない。
資力のない共同相続人の分担転嫁
担保責任を負う共同相続人中に償還資力のない者があるときは、償還不能部分は求償者及び他の資力ある者が、各相続分に応じて分担する。
立法趣旨
担保責任を負う共同相続人の一部が無資力で支払不能の場合、その分の負担を求償者だけで負わせるのは不公平。他の資力ある共同相続人と求償者間で分担する平等処理ルール。
求償者の過失例外(ただし書)
求償者に過失があれば他の共同相続人に分担を請求できない。求償者が早期に求償しなかったため無資力共同相続人からの回収が不能になった場合等が典型。
他の担保関係との比較
464条の連帯債務者間求償(一部無資力時の分担)と類似する構造。共同相続関係を連帯関係的に処理する規定として整合的。
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前三条の規定は、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、適用しない。
遺言による担保責任規定の適用排除
911条から913条までの担保責任規定は、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは適用しない。担保責任のルールも被相続人の意思で調整可能であることを明示。
立法趣旨
担保責任は任意規定的性格を持ち、被相続人の遺志による調整を許容する。例:「相続人間の担保責任は問わない」「特定の相続人のみ担保責任を負う」等の遺言指定を有効と認める。
遺言の方式
別段の意思表示は遺言の方式(960条以下)を満たさなければならない。生前の口頭合意・覚書等では本条の意思表示として認められない。
実務での活用
事業承継・農地承継等で特定相続人に資産集中する遺言を作る際、他相続人への担保責任を遺言で免除することで、財産配分の調整を簡素化できる。
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相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。
2ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
3相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。
熟慮期間(1項本文)
自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内。
起算点の解釈
判例は相続財産の全部又は一部を認識しうべき時から起算する場合あり(最判昭和59・4・27)。
期間伸長(1項但書)
家庭裁判所による伸長可能。
限定承認・放棄なき場合の単純承認
期間内に手続しない場合921条2号で単純承認擬制。
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相続人が相続の承認又は放棄をしないで死亡したときは、前条第一項の期間は、その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算する。
相次相続における承認・放棄期間の起算
相続人が承認又は放棄をしないで死亡したときは、915条1項の3か月期間は、その相続人の相続人が「自己のために相続開始があったことを知った時」から起算する。相次相続(再転相続)における熟慮期間の特則。
「自己のために」の意義
判例(最判令元・8・9)は、再転相続人自身が再転相続の対象である一次相続の相続人としての立場を取得したこと(被相続人の死亡及び自己の相続権)を知った時と解する。一次相続と二次相続の両方を認識した時点が起算点。
再転相続の構造
A死亡→Bが相続人だが3か月以内に死亡→Bの相続人Cが二重に相続人となる場合。Cは(i)Bの相続を承認・放棄、(ii)Aの相続を承認・放棄、の2つの選択を独立に行使可能。
Cの一次相続放棄の制限
Cが先にBの相続を放棄すればAの相続権も承継しないため、Aの相続については承認・放棄の選択権を失う。判例(最判昭63・6・21)は順序のロジック上、Bの相続放棄が先決問題となる。
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相続人が未成年者又は成年被後見人であるときは、第九百十五条第一項の期間は、その法定代理人が未成年者又は成年被後見人のために相続の開始があったことを知った時から起算する。
未成年者・成年被後見人の熟慮期間特則
相続人が未成年者・成年被後見人であるとき、915条1項の3か月期間は、その法定代理人が当該未成年者・成年被後見人のために相続開始があったことを知った時から起算する。
立法趣旨
未成年者・成年被後見人本人は熟慮期間内の意思決定能力がないため、法定代理人の認識を起算点とすることで保護を図る。本人の知らない間に熟慮期間が経過する事態を防ぐ。
法定代理人の判定
未成年者は親権者又は未成年後見人(818条・838条)、成年被後見人は成年後見人(843条)。複数の法定代理人がいる場合は、最初に認識した者を基準とするのが通説。
本条の射程
未成年者・成年被後見人のみで、被保佐人・被補助人は含まれない。被保佐人・被補助人は本人が熟慮期間内に行動する能力があると評価され、本人の知った時が起算点(保佐人・補助人の同意取消で対応)。
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相続人は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産を管理しなければならない。
2ただし、相続の承認又は放棄をしたときは、この限りでない。
相続人の固有財産同一注意義務
相続人は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産を管理しなければならない。承認・放棄前の暫定的な管理義務。
「固有財産における同一の注意」
善管注意義務(644条)より軽い、自己の財産と同程度の注意義務。相続人がまだ相続人として確定しておらず、自己の財産的負担と受益が明確でない段階での管理基準。
承認・放棄後の例外(ただし書)
相続の承認・放棄をしたときは本条の管理義務は適用されない。承認後は所有者として全責任を負い、放棄後は無権限となり管理関係から離脱する(940条による限定的管理義務に移行)。
違反の効果
管理義務違反により相続財産に損害が生じれば、相続を承認した場合は自己責任で受忍するが、放棄した場合は他の相続人や次順位相続人に対する損害賠償責任を負う可能性がある。
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相続の承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、撤回することができない。
2前項の規定は、第一編(総則)及び前編(親族)の規定により相続の承認又は放棄の取消しをすることを妨げない。
3前項の取消権は、追認をすることができる時から六箇月間行使しないときは、時効によって消滅する。
4相続の承認又は放棄の時から十年を経過したときも、同様とする。
5第二項の規定により限定承認又は相続の放棄の取消しをしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
承認・放棄の撤回禁止(1項)
熟慮期間内でも撤回不可。
総則編の取消事由による取消(2項)
詐欺・強迫・錯誤・制限行為能力等。家裁への申述(4項)。
取消権の期間制限(3項)
追認可能時から6か月又は承認放棄時から10年。
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相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。
単純承認
無限定の相続。
包括承継
被相続人の権利義務を一切承継。
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次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
2相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。
3ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
4相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
5相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。
6ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。
法定単純承認事由(3類型)
①相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき(1号、ただし保存行為・短期賃貸借は除く)、②熟慮期間内に限定承認・放棄をしなかったとき(2号)、③限定承認・放棄をした後でも相続財産を隠匿・消費・財産目録に悪意で記載しなかったとき(3号)。
効果
単純承認したものとみなされる。被相続人の権利義務を無限に承継する(920条)。
1号「処分」の意義
判例は経済的価値の高い遺産物の売却・贈与・破棄等を含む。形見分け程度は含まない(最判昭42・4・27)。
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相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。
限定承認の意義
相続人は相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務および遺贈を弁済すべきことを留保して相続の承認をすることができる。
性質
債務超過のリスクを回避しつつ相続を受ける制度。財産目録作成・債権者公告等の煩雑な手続を要する。
方式
熟慮期間内(915条)に財産目録を調製して家庭裁判所に提出(924条)。共同相続では全員共同のみ可能(923条)。
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相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。
共同相続人の限定承認
相続人が数人あるときは限定承認は共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。
趣旨
限定承認は財産・債務の包括的清算手続のため、一部相続人の単独行使を許すと手続が機能しない。
1人放棄の場合
1人が放棄すれば残り全員で限定承認可能。
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相続人は、限定承認をしようとするときは、第九百十五条第一項の期間内に、相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述しなければならない。
規律
相続人は限定承認をしようとするときは915条1項の熟慮期間(自己のために相続開始を知ったときから3か月)内に、相続財産目録を作成し家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述しなければならない。
趣旨
限定承認は相続人が相続によって得た財産の限度でのみ被相続人の債務を弁済すれば足りる制度(922条)。被相続人の積極財産と消極財産のどちらが多いか不明な場合の合理的選択肢として用意されている。
目録の意義
財産目録は限定承認の効果(責任財産の限定)の前提となる相続財産の範囲を確定する基礎資料。故意の不記載・隠匿は法定単純承認事由(921条3号)となり、限定承認の効力が否定される。
共同相続の特則
判例(最判昭和30.9.30)は923条により共同相続人全員が共同してのみ限定承認できるとし、1人でも単純承認した者がいれば他の相続人も限定承認不可とする。
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相続人が限定承認をしたときは、その被相続人に対して有した権利義務は、消滅しなかったものとみなす。
規律
限定承認をしたときは、被相続人に対して相続人が有していた権利義務は混同(179条・520条)によらず消滅しなかったものとみなす。
趣旨
限定承認では相続財産と相続人固有財産を清算上分離するため、相続人個人が被相続人に対して有していた債権債務を消滅させずに維持することで、相続債権者・受遺者間の公平な配当を確保する。
混同排除の効果
原則として相続人は被相続人の地位を承継するため自己の債権・債務が混同で消滅するはずだが、限定承認では消滅させない。これにより相続人は他の相続債権者と按分弁済を受けられる立場に立つ。
財産分離との並行
950条2項により財産分離(941条以下)の場合にも準用され、清算手続全般で相続財産の独立性を確保する共通の技術として機能する。
この条文の練習問題を解く
限定承認者は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産の管理を継続しなければならない。
2第六百四十五条、第六百四十六条並びに第六百五十条第一項及び第二項の規定は、前項の場合について準用する。
規律
限定承認者は固有財産におけるのと同一の注意(自己と同一の注意)をもって相続財産の管理を継続しなければならない(1項)。委任の受任者の義務規定のうち報告義務(645条)、引渡義務(646条)、利息支払義務・損害賠償義務(650条1・2項)を準用する(2項)。
注意義務の程度
善管注意義務ではなく自己同一注意義務(固有財産と同程度)に軽減されている。これは限定承認者が無償で清算事務を担うことの均衡から、通説は責任を緩めると説明する。
委任規定の準用範囲
報告義務・受領物引渡義務・自己消費利息+損害賠償が準用される。一方で善管注意(644条)は準用されず、注意義務だけは1項で別途規律される点が重要。
違反の効果
義務違反は相続債権者・受遺者に対する損害賠償責任(934条参照)を発生させ、悪質な場合は法定単純承認(921条3号)として限定承認の効果自体を失う。
この条文の練習問題を解く
限定承認者は、限定承認をした後五日以内に、すべての相続債権者(相続財産に属する債務の債権者をいう。以下同じ。)及び受遺者に対し、限定承認をしたこと及び一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。
2この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。
3前項の規定による公告には、相続債権者及び受遺者がその期間内に申出をしないときは弁済から除斥されるべき旨を付記しなければならない。
4ただし、限定承認者は、知れている相続債権者及び受遺者を除斥することができない。
5限定承認者は、知れている相続債権者及び受遺者には、各別にその申出の催告をしなければならない。
6第一項の規定による公告は、官報に掲載してする。
規律
限定承認者は限定承認後5日以内にすべての相続債権者・受遺者に対し限定承認をしたこと及び一定期間内(2か月以上)に請求の申出をすべき旨を公告し、その期間内に申出をしないと弁済から除斥される旨を付記しなければならない。知れている債権者・受遺者は除斥できず、各別に催告を要する。公告は官報による。
趣旨
相続財産という限定された責任財産を相続債権者・受遺者間で公平・迅速に配当するため、債権の集合的把握と除斥手続を導入したもの。破産手続における債権届出に類似する集団的清算規律。
知れている債権者の保護
知れている債権者は公告のみでは除斥されず、限定承認者の各別催告義務の対象となる。催告を怠った場合は934条により損害賠償責任を負う。
公告期間の意義
2か月以上の公告期間中は928条により全債権者・受遺者への弁済を拒める。期間満了後に申出のあった債権者・知れている債権者を対象に按分弁済(929条)が行われる。
この条文の練習問題を解く
限定承認者は、前条第一項の期間の満了前には、相続債権者及び受遺者に対して弁済を拒むことができる。
規律
限定承認者は927条1項の公告期間(2か月以上)が満了する前は、相続債権者・受遺者に対して弁済を拒むことができる。
趣旨
債権者総体の把握が終わらないうちに先着順で弁済すると配当の公平が崩れるため、清算開始前の弁済義務を一律に停止する規律。破産手続の弁済禁止と同趣旨。
拒絶の範囲
知れている債権者・受遺者にも適用される。弁済期到来の有無を問わず拒絶可能で、遅延損害金等の発生についても通説は同期間中は責めに帰すべき事由を欠くとする。
違反の効果
公告期間中に特定の債権者に弁済して他の債権者への配当を害したときは934条により損害賠償責任を負い、知って受領した債権者には求償が可能(934条3項)。
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第九百二十七条第一項の期間が満了した後は、限定承認者は、相続財産をもって、その期間内に同項の申出をした相続債権者その他知れている相続債権者に、それぞれその債権額の割合に応じて弁済をしなければならない。
2ただし、優先権を有する債権者の権利を害することはできない。
規律
公告期間満了後、限定承認者は相続財産をもって、期間内に申出をした相続債権者その他知れている相続債権者に、それぞれ債権額の割合に応じて弁済する。優先権を有する債権者の権利を害してはならない。
趣旨
限定された責任財産を一般債権者間で按分配当する原則を定め、相続財産清算の中核規律として機能する。破産手続の配当と類似の構造。
優先権の例外
担保権者(先取特権・質権・抵当権)や租税債権など、実体法上の優先権を持つ債権者は按分前に優先弁済を受ける。優先権を害する按分弁済は934条の不当弁済となる。
受遺者との関係
931条により受遺者への弁済は相続債権者への弁済後でなければできず、相続債権者優先・受遺者劣後の順序が貫かれる。これは相続が債務の引受けでもあることに基づく。
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